羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「フラれましたぁ~」SHELLY
『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系、2月23日)
結婚や出産、そして離婚といったプライバシーは、できれば他人に明らかにしたくないものかもしれない。しかし、タレントにとっては、キャラを変更する絶好の機会でもある。うまくいけば、仕事につながることもあるので、これを利用しない手はないだろう。
かつて芸能人の離婚はマイナスイメージでしかなかった。しかし、2017年に離婚した小倉優子は、仕事と子育てに邁進するシングルマザーにキャラチェンジし、同年、オリコン調査の「好きなママタレント」ランキングで1位を獲得。このように「好きなママタレ」は結婚しているかどうかは問題でなくなってきている。また一般的に芸能人にとって、CMはおいしい仕事と言われるが、小倉は大手消費財メーカーのCMにも出演しており、「芸能人として」見るのなら、離婚はまったくマイナスではなかったと言えるだろう。
小倉優子とSHELLYの離婚は「笑いのネタ」に
しかし、結婚や出産と違って、「離婚ウリ」というのはプライドを捨てないとできないのかもしれない。
小倉が離婚後に『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)に出演したときのこと。「チャチャッとキッチン」というコーナーで、小倉は「小倉家のハッピー豚丼」を披露する。しかし、石橋貴明に「ハッピー? 今、アンハッピーなんでしょ」と、離婚したのだからアンハッピーなはずだと言われてしまう。小倉が「毎日、ハッピーなんですよ」と力説すると、おぎやはぎ・矢作兼は「本当に楽しい人は、そんなこと言わない」と小倉が“不幸”であると主張して止まない。小倉が披露した豚丼は、母親の直伝のレシピだそうだが、それを元夫の好みにアレンジしたものと説明すると、木梨憲武は「前の旦那丼」、石橋は「同じ事務所の女の子を……」とかぶせていく。「週刊文春」(文藝春秋)が報じた小倉の夫(当時)の不倫相手が、小倉の事務所の後輩であったことから、このような表現を取ったのだろう。
昨年の11月に離婚したSHELLYも、最近よくイジられている。『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)で本人が語った離婚の経緯は、
・テレビディレクターをしている夫から突然離婚を切り出され、晴天の霹靂
・喧嘩が絶えなかったことに気づいて、別居をしてみたら生活がすごく楽になった
・夫とは離婚をした後も、共同で子育てをしている。今はとてもハッピー
だそうだ。
そのSHELLYが、2月23日放送の『行列のできる法律相談所』(同)に出演した。ゲストの俳優・窪田正孝は、昨年9月に結婚したばかりだが、東野幸治は「ちょっと、SHELLYさんもいるので、あんまり幸せなことは……」と茶々を入れ、SHELLYは「本当にもう大丈夫ですから」とカメラ目線かつ険しい顔で答える。誰が発言したかはわからないが、「負のオーラ」と言っている人もいた。
また、昨年の12月に結婚したゲストのバカリズムも、「結婚したいと思って、SHELLYさんにアドバイスもらっていた」と言い、東野が「恥ずかしい」とかぶせる。なんでもバカリズムは、SHELLYから「男が言う『家事を手伝う』っていうのは、奥さんが家事をするのが前提の言い方だから絶対ダメ」と聞いていたので、「結婚して、言われた通りやっていて。(でも)テレビつけたら、(SHELLYが)めっちゃ離婚してる」と笑う。さらに、司会のアンジャッシュ・渡部建は、「珍しいパターンで、向こうに(離婚を)切り出される」、東野も「芸能人とスタッフが結婚して、スタッフにフラれる」と指摘。SHELLYはおどけて「フラれましたぁ~」と応じていた。
そのほかにも、お子さんを元夫に預けている時間は完全にフリーとなったため、最近はいとうあさこや中村アンなどと飲みに行くことが可能になったというSHELLYに対し、渡部が「みんな、どっか腹の奥で笑っているみたいなところ、あるでしょ」と畳みかけるシーンもあった。
小倉もSHELLYも、番組の制作側や共演者と協力し、あえてイジらせ、笑いにすることで、離婚を暗いイメージにせず、腫れ物のように扱われるのを避けていると見ることもできるだろう。しかし、『みなさんのおかげでした』や『行列のできる法律相談所』の出演者の発言を聞いていると、小倉とSHELLYが抱いているかもしれない思いとは裏腹に、「夫に不倫されて離婚するオンナ、夫から離婚を言い渡されたオンナというのはみっともない、恥ずかしい。だから、バカにしてもいい」という価値観を、制作側、もしくは出演者が持っているのではないかと思わされる。
特にSHELLYは、バラエティーが主戦場のタレントなので、イジりがきつい。渡部はSHELLYを「笑いを食いつぶす野犬」とも表現していたが、離婚話は腕次第で、笑いのネタになる。制作サイドはそうしたエピソードを知りたいと思ったのか、事前アンケートで「最近イライラしたことは何ですか?」と尋ねたが、SHELLYは「喉を痛めてしまい、あまりしゃべらないようにしていました」と、離婚とは全然関係ない回答をする。「最近、気になることは?」という質問にも「ナマケモノに会いたい」、「弁護士軍団に相談したいこと」という質問にも「『SHELLYおすすめの店』と勝手に宣伝されて、困ってます」と頑として離婚に触れなかった。
東野は「勘のいいSHELLYならわかるやろ」と突っ込んでいたが、離婚前のSHELLYが、家事をやらない夫への不満などをはっきり口にし、それがウケていたことを考えると、つまり番組は「元夫の不満、悪口」を求めていたのだろう。しかしSHELLYは、わかっているからこそ、あえて応じなかったのではないかと思うのだ。
SHELLYは『Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース』(Abema TV)で、「相手(元夫)を悪者にして、笑いを取るのってすごい簡単で。だけど、それをやったときに子どもたちがかわいそう。お母さんがお父さんの悪口をテレビで言ってるって、最悪じゃないですか」と話している。つまり、元夫の悪口は言わないと決めているということだろう。
「元夫の悪口を言わない」というと、スザンヌのことが思い出される。福岡ソフトバンクホークスの元投手・斉藤和巳氏から離婚を切り出されたスザンヌは、話し合いを希望したものの拒否され、弁護士を介してしか、やりとりができなくなったという。しかし、離婚会見で、スザンヌはそんな身勝手な夫を責めなかった。「いろんなことがあっても我慢していたんだと思う」「私の余裕がなかった」といったふうに、どちらかというと自分を責めてみせた。男を責めずに、自分がへりくだるスザンヌの会見は称賛を浴びたと記憶している。
しかし、SHELLYはスザンヌとは違って、夫も責めないが、自分も責めない。それは偶然というよりも、信条と言えるのではないだろうか。SHELLYの「お母さんがお父さんの悪口をテレビで言ってるって、最悪じゃないですか」という理論で言うのなら、お母さんが「私がダメなオンナなので、愛想を尽かされ、離婚されてしまいました」といった具合に自虐することも、お子さんたちは喜ばないだろう。
もちろん、バラエティータレントとしてギャラをもらっている以上、ある程度は番組の方針に沿って「離婚されたオンナ」を面白おかしく演じなくてはならない。だから、おどけて「フラれましたぁ~」と言ったりもする。けれどSHELLYには「ここだけは譲れない」というポイントがあり、それが「元夫のことも、自分のことも責めないこと」なのではないだろうか。
「オンナを笑うこと」に疑問を持たない日本のバラエティーでは、SHELLYのように主義主張のあるタレントは扱いにくい部分があるのかもしれない。けれど、結婚も離婚も両者の合意があって成立するわけだから、どちらが離婚を言い出したかに意味があると、私は思わない。明るくしていたが、少し細くなったようにも見えるSHELLY。体に気を付けて、頑張っていただきたいものである。