少年忍者にSixTONES乱入で波紋、HiHi Jets・橋本は“心機一転”の姿披露【ジャニーズJr.チャンネル週報】

 ジャニーズ事務所が動画配信サイト・YouTubeに開設した「ジャニーズJr.チャンネル」。現在、少年忍者(水曜)Travis Japan(木曜)7 MEN 侍(金曜)美 少年(土曜)HiHi Jets(日曜)がオリジナル動画を投稿中だが、その出来ばえは実にさまざま。そこで、「しょせんジャニオタ向け」と切り捨てるにはもったいない動画と、「ジャニオタでもしんどい」動画をジャニーズウォッチャー・中村チズ子が解説&ツッコミ! 今回は、1月30日~2月5日日公開の動画を注目度順にチェックします!

少年忍者の動画、SixTONES乱入で波紋呼ぶ

 5日の動画は「少年忍者 【大縄跳び】SixTONESが乱入…連続22回成功するまで終われません!」。5グループ内で最もメンバーの多い少年忍者が、22人という特性を活かした企画「大縄跳び連続22回成功するまで終われません!」にチャレンジしている。企画会議(1月22日配信)にて稲葉通陽が提案したもので、今回は1人ずつ順番に入っていき、全員が大縄に入りきったところからカウントがスタート。引っかかった人には、「Jr.チャンネル」恒例の罰ゲーム・ノニジュースが待ち受けていた。大縄を回す係は、身長差がない鈴木悠仁&北川拓実が担当。1回目が始まると、さっそく久保廉がミスしてしまい、いきなり中断。1分48秒頃、なぜか直立不動の久保の後ろ姿が面白く、筆者は思わず吹き出してしまった。

 こうして、“激マズ”と言われるノニジュースを飲むハメになった久保。大人のTravis Japanは原液で飲んでいるものの、少年忍者は初回とあって水で薄めているそう。とはいえ、中学2年生の彼がニオイや味に苦悶してノニジュースを完飲する姿は、見ていられないほど可哀相。以降も、青木滉平、瀧陽次朗らが次々にノニジュースの被害に遭ううち、筆者が注目したのはあるメンバーの行動だ。山井飛翔と、巻き添えになった田村海琉がノニジュースを飲み終えた際、白いパーカーを着た人物がお水のペットボトルを持ってカメラ前に登場する(お水をもらってきちんとお辞儀ができる田村も偉い)。さらに、縄担当の2人が餌食になったシーンも、再び白パーカーがそろりと現れ、北川と鈴木に無言でお水を手渡した。

 横顔や服装で確認する限り、このスタッフばりの活躍を見せていたのは、長瀬結星だろう。先頭で縄を跳ぶ場面では、一生懸命に足を上げて頑張っていたほか、7分37秒頃はまたもやそ~っと画面にインしてくる長瀬。ノニジュースの衝撃で大暴れする元木湧にお水を差し入れていた。そんな長瀬といえば、1月1日配信の「新年の抱負」で、「個人的に言うと、MCにも挑戦したいっていう。(川崎)皇輝くん第2号にちょっとなってみたいなと思うんで」と、目標を掲げていた子。あこがれの川崎は周りの言動をよく見て話を振るなど状況判断能力に優れており、普段からリーダーシップを発揮している。今回のように“裏方”としてサポートができる長瀬は、川崎第2号になれる素質が十分にあるのではないかと感じた。

 一方、なかなか回数がこなせず失敗続きの少年忍者は、次の仕事があるため、制限時間は「残り10分」に。作戦を変えて全員が大縄に入った状態から22回クリアを目指すことになり、縄係も鈴木が外れ、檜山光成にチェンジ。「拓実オッケ~?」「拓実いくよ~!」などと相棒に声をかけ、全体の結束力は深まっている様子だったが……。残念ながら22回に届かぬままラストチャンスとなり、奇跡を起こすことはできなかった。そして、罰ゲームの“全員で原液ノニジュース”を受ける少年忍者たち。

 ここで終わりかと思いきや、偶然その場を通りかかったSixTONESメンバーが乱入し、田中樹は「まだできてないんでしょ? もう1回やれば?」と、サラリ。そこに京本大我&森本慎太郎も加わり、「じゃあ、俺も入っていい?」(京本)「俺と慎太郎が回してやるよ」(田中)「失敗したら全員でノニジュース」(森本)「俺が入ることはマイナスになるからね。跳べないから」(京本)と、自信がないにもかかわらず、再挑戦に持ち込んだ(ただ大縄跳びがやりたいだけ?)。案の定、京本が引っかかった上に、田中&森本は縄を回すフェイントをかけた後、二列に並ぶ少年忍者に縄をあてる悪ふざけ。“バチン”と鈍い音が響き、森本はしたり顔で楽しそうに笑った。

 続いて、田中は「廉、お前回せよ」と久保に縄係を託すも、身長差があるだけに大きな円にならずに終了。満足した田中はノニジュースを運んでくるなり、リーダー・川崎をご指名。「ノニジュースって、体にいいんだよね? 本当だったら、俺も飲みたいしね。でも、俺はもう静岡に行かなきゃいけない」と言いつつ、ただ現場をかき回して去って行った。結局、ラストは川崎が結構な量のノニジュースを一気飲み。今にも泣きそうな表情でこらえるさまは、気の毒で仕方がなかった。個人的に、この一連の絡みで唯一ほっこりしたのは、松村北斗がペットを扱うように久保の頭を撫でる場面くらいだった(12分40秒~47秒)。

 今回の動画について、「SixTONES、短い時間で『撮れ高を意識した撮影』を教えてくれてて良い先輩」「後輩相手にも好き放題やるSixTONESが見れて幸せ。少年忍者、ありがとう」と好意的な感想は上がっているが、「少年忍者の動画、ただのいじめじゃん」「中学生とかに縄をあてたらダメでしょ。ノリだとしても可哀相」「忍者Tube、胸糞悪い。あくまで少年忍者の動画なのに、縄で叩く、後輩に対して『お前』呼び、ノニジュースの強要……」「忍者Tubeに乱入してきたSixTONES、マジで怖い……。忍者は次の仕事があったのに、そこを無視するのは先輩のパワーハラスメントでは?」「縄あてて笑ってるのは人としてヤバい。バラエティとかそういう問題じゃないし、ただのパワハラ」「あれがバラエティの洗礼? 先輩が後輩をいじめてるようにしか見えなかった」と、批判的な意見も目立っている。

 また、「Snow Man×忍者の引き継ぎ動画と見比べたら、どれだけSnow Manがいい先輩なのかがわかる」「少年忍者の動画、Snow Manの回と比べてしまう。Snow Manはフォローしてあげていい先輩って感じだけど、SixTONESは自分たちがやりたいことだけやって帰るとか、いじめでしかない。パワハラと言われても仕方ない」と、Snow Manを引き合いに出す人も。さらには、田中たちがTravis Japan・吉澤閑也らにムチャブリをした合同企画「蓮とビス」(昨年7~8月公開)を思い出し、「『蓮とビス』の悪夢再び。面白いけど、ところどころ笑えない」「『蓮とビス』や今回の忍者へのノニジュースの悪ノリは全く面白くなかったし、SixTONESのこういうところが好きじゃない」「SixTONES、カメラ前だけでもいいから、後輩への態度をあらためて。自分は笑って見れなかった。『蓮とビス』で反省したと思ったのにな」との愚痴も出ている。

 SixTONESの暴走だけでなく、そもそもこの動画はノニジュースに関しても懸念がある。これは“奇跡のフルーツ”ことノニを圧搾して作ったもので、「免疫力アップ」「美容や健康に効果がある」などと言われている。しかし、何事も過剰摂取は禁物であり、ましてや少年忍者はまだ体が成長しきっていない中高生がほとんど。また、例えば飲み過ぎてしまった場合、その人の体質や体調によってはおなかを下す……といったデメリットも考えられるだろう。原液ノニを飲む流れになった10分1秒頃、同25秒頃に男性スタッフの笑い声が漏れていることもあり、運営側は少年忍者&ノニのコラボレーションに対して、さほど深刻には捉えていないようだ。

 少年忍者のお兄ちゃんポジションである平塚翔馬らは18歳とあって、一部の美 少年やHiHi Jetsメンバーよりも年上。この2組が飲んでいるとはいえ、少年忍者にノニジュースの刑を与える点については、個人的に引っかかりを覚えてしまった。視聴者からも「さすがに忍者のチビちゃんたちがノニジュースを飲んでる姿は心配しちゃう」「ノニジュースを罰ゲームの定番にしてほしくない。自分の応援する子が苦しんでいる姿を見て面白いとは思えない」との声が出ており、今後はもう少し可愛げのある罰ゲームの施行をお願いしたいところだ。再生回数はSixTONES効果もあるのか、7日時点で34万台だった。

 2日の動画は「HiHi Jets【バレンタイン秘話】雑誌のお仕事に密着したら(マル秘)トークが!!」。HiHi Jetsは、2週にわたってテレビ情報誌「ザテレビジョン」(KADOKAWA)のグラビアに登場するといい、今回はその撮影に密着した映像だ。そんな彼らといえば、昨年9月に作間龍斗と橋本涼のプライベート写真が流出し、活動自粛した影響で、1月19日配信分より5人体制に戻ったばかり。本格的に復帰した橋本はバッサリと髪を切っており、心機一転のスタイルになっていた。

 猪狩蒼弥がこの話に触れると、本人は「ファンの人の中でも、やっぱ『お前は襟足伸ばせ』みたいな方がいらっしゃるかもしれないから。だから新年一発目のYouTubeさんは、ちゃんと髪長めで。あれ見納めです。だから、あそこで髪長くて良かったって思ってから、短髪になったから……すみませんでした」と、深々とお辞儀。ファンの気持ちも汲み取り、2つのバージョンをお披露目しようと考えていたようだ(アイドルとしては素晴らしい姿勢)。そんな流れで、橋本を除く4人が「長髪か短髪どっちがイイ?」のアンケートを行っていた。

 本題である「ザテレビジョン」の撮影はバレンタインデー特集で、「Sweet」「Bitter」と、2つのコンセプトに挑む5人。橋本のメイク中には、作間が食品サンプルのパスタを片手に現れ、コミュニケーションを図るシーンも。仲が良さそうな“はしさく”の姿に、筆者はなんだか妙に安心してしまった。密着中はメンバーがバレンタインの思い出を語る場面もあり、井上瑞稀が「バレンタイン俺、毎年一番楽しみにしてますからね。隠してるけど」「高校を卒業した今、誰がくれるのか? っていう不安。だから、今話してるのは、マジで(美 少年の)岩崎大昇と“互いにチョコを作り合う”っていう。手作りチョコを渡すっていう……」と、ファンにとってはうれしい情報も出ていた。再生回数は7日時点で42万台。

 1月30日に公開されたのは「Travis Japan【祝成人★松田元太】メンバーの愛情を検証!?」。昨年4月に20歳になった松田元太のメイン企画で、本人自らが問題を出し、メンバーが答えるクイズを行っている。周囲がどれほど松田を理解しているか、“愛”を検証するテーマでもあるが、天然なキャラクターで知られる松田だけに、一筋縄ではいかない展開が待ち受けていた。「松田元太の今日の気分は?」の問題は、吉澤閑也が「からアゲ↑↑」とハイテンションな一芸を披露したほか、七五三掛龍也が「(松田の顔は)俺の知り合いの猫に似てるんだよね」と発言すると、川島如恵留は「『知り合いの猫』ってなんだよ! このグループ、やべぇ奴しかいねぇな」と、ツッコミ。

 肝心の松田の答えは「ふつー」というゆる~いもので、口癖などを予想していた6人は「はい、お前やった」(中村海人)「今回はこういうテイストで来るってことね?」(川島)「チュートリアルはOK!」(宮近海斗)と、この先のクイズの空気感を察した。以降も「今夜食べたい物は?」「今年メンバーにやってほしいことは?」「一生のうち一度はやってみたいことは?」と問題が進む中、“松田元太脳”で考えていくメンバー。松田が愛されているのは十分伝わるが、6人は掴みどころがない彼に翻弄されっぱなしだった。

 また、「Travis Japanに加入して印象が変わったメンバーは?」のトークタイムでは、松田が川島について「Travis Japan入る前、頭良いっていう。大学も青山(学院)大学行ってて、知ってたから。頭も良くて、アクロバットもできて、完璧主義者で。ちょっと“怖い”みたいな。もうガチガチの人みたいな、思ってたの。で、いざTravis Japan入りました……チョロい!」と、爆弾発言。とはいえ、よく聞いてみると「もっと自分をふざけて出してくれる感じになってきてくれたし、一緒にふざけられる。一緒にバカできる」という意味の褒め言葉だったらしく、川島は「うれしい」と、安堵。吉澤仕込みの変顔を見せていた。なお、個人的に12分46秒頃の宮近の動きは、“音に反応するおもちゃ”のような愛らしさがあるため、ぜひ注目してもらいたいポイントだ。

 ちなみに、こちらの動画は19分の長編だが、正直に言って内容は“ファン向け”であり、一般のYouTube視聴者が興味本位で再生するようなタイトルでもないだろう。しかし、再生回数は公開後8日で51万台と、圧倒的な数字を稼いでいる。明確なルールは不明ながら、チャンネルトップページの「ヘッダー」と呼ばれる上部の画像は、期間内に再生回数が多かったグループが選ばれると言われており、Travis Japanファンをはじめ、これを勝ち取る目的で地道に視聴するファンは少なくない。前週、計6本の動画をアップした7 MEN 侍は合算の数字が反映されたのか、2月7日時点でヘッダーに輝いている。

 さらに、5日公開の少年忍者の動画は、視聴者の増加が見込めるSixTONESが登場したとあって、一部では「ヘッダー、なんで侍なのかと思ったら、6本合算なのね。頑張って再生してるトラジャファンが不憫」「ストとのコラボで再生回数を稼ごうとしないで……合算だったりコラボしたり、トラジャが正々堂々と7人だけで動画を撮ってるのがバカみたい」「合算の翌週にストとのコラボ動画をぶつけられて、トラジャファンが張り切るほど、ヘッダーを取らさないようにしてるように思える」と、落胆の声が出ていた。一方で、最近はこうした“ヘッダー争い”に嫌気が差したTravis Japanファンの書き込みもチラホラ見受けられる。精神的に疲れない程度に、それぞれのペースで楽しむことも重要なのかもしれない。

 2月1日に配信されたのは「美 少年【おバカ実験】大量のタピオカを餅つき機でついたらどうなる?」(再生回数は7日時点で32万台)。彼らは、東京B少年時代の「Jr.チャンネル」初期に「おバカ実験!卵を1万回振るとどうなる?」(18年3月24日公開)「新B級グルメを考案!◯◯を天ぷらにしてみた!!」(18年5月19日公開)といった実験系の企画に挑戦していたが、今回はそのテイストを引き継いだ内容となっている。テーマは「タピオカを餅つき機でつくと、果たしてどうなるのか?」。まずは、普通に餅つき機でお餅を作って味わった上で、“タピオカ餅つき”にトライした。

 完成を待つ間、岩崎大昇は「藤井(直樹)でもくすぐるか」と言い出し、過去の「こちょこちょを10分続けると何も感じなくなる?」(18年3月31日公開)を再現する場面も。また、「負けた人がこねたタピオカを試食する」として、指を使った「いっせーの」ゲームで盛り上がる6人。その後、餅つき機の蓋を開けてみたところ……。タピオカの形状はさほど変わっておらず、進行役の岩崎が理想の状態に近づけるべく、尽力していたのだった。

 一方で、特にこの回は“美 少年の休憩時間”を大放出しているような動画だけに、「そうそう、ゲーム企画言うてな……違います」「使えるトークをお願いします」などテロップでのツッコミが多くなっている(よりポップになった印象)。こういった点を含めて、ファンからは「編集が違う……? なんかスゴい!」「編集が変わった気がするし、美 少年の楽しい雰囲気が伝わる」「美Tube、編集の雰囲気がいつもと違って面白い」と高評価があるものの、中には「編集変わった!? 前の方が好き」「正直に言って、美Tubeは前の編集の方が好き。いちいちツッコミが激しい」「編集にクセがあってまともに見れない」「今回の編集、なんか見づらい」と、嫌悪感を抱いてしまった人も。美 少年の担当スタッフ、もしくは編集方針が変わったのか……?

 1月31日の動画は「7 MEN 侍【最優秀作品は?】5人で佐々木大光をガチでカッコ良く撮る!」(再生回数は2月7日時点で15万台)。前週、メンバーの今野大輝、菅田琳寧、中村嶺亜、本高克樹、矢花黎が、佐々木大光を主人公に据えた各1本の動画を作成。共通タイトルは「5人の佐々木大光」で、「スター”佐々木大光”の特別インタビュー」(監督A)「伝わらぬ想いが思わぬ行動に…」(監督B)「それが見えたら…」(監督C)「落としすぎる男」(監督D)「Reverse Taiko」(監督E)と、監督名を伏せた状態で1分前後のショートムービーをアップしていたのだった。29日時点で「再生回数が最も低かった人が罰ゲーム」という条件があり、今回はその結果発表と、メイキング映像を含めた答え合わせを行っている。

 筆者は、謎やちょっとした仕掛けの多い「落としすぎる男」の完成度に感心し、エンタメサイト・ISLAND TVでも凝った動画を作っていた矢花が監督なのではないかと予想していた。実際、やはりこれをプロデュースしたのは矢花だったといい、独自のセンスに脱帽。“矢花監督”のさまざまな作品を見てみたいという衝動に駆られた。そんな中、メイキングで筆者が気になったのは、中村の私服だ。撮影時にスマートフォンを構える中村の後ろ姿がよく映るのだが(11分4秒頃、11分46秒頃など)、なかなか刺激的なプリントのアウターを着ている。

 調べてみると、どうやら「春画」(江戸時代を中心に描かれた性風俗の絵画)を題材にしたフラグスタフ(F-LAGSTUF-F)の「SHUNGA COACH JACKET」らしい。使用されている春画はそこまで過激ではないものの、ジャニーズアイドルが着るにしては珍しいものだけに、ついつい目で追ってしまった(しかもこの格好で撮影しているのがホラー映像)。また、今回はメンバーのヘアスタイルがいつもと異なっていたが、その詳細は後日明らかになるとのこと。今後の動画に期待したい。

 

少年忍者にSixTONES乱入で波紋、HiHi Jets・橋本は“心機一転”の姿披露【ジャニーズJr.チャンネル週報】

 ジャニーズ事務所が動画配信サイト・YouTubeに開設した「ジャニーズJr.チャンネル」。現在、少年忍者(水曜)Travis Japan(木曜)7 MEN 侍(金曜)美 少年(土曜)HiHi Jets(日曜)がオリジナル動画を投稿中だが、その出来ばえは実にさまざま。そこで、「しょせんジャニオタ向け」と切り捨てるにはもったいない動画と、「ジャニオタでもしんどい」動画をジャニーズウォッチャー・中村チズ子が解説&ツッコミ! 今回は、1月30日~2月5日日公開の動画を注目度順にチェックします!

少年忍者の動画、SixTONES乱入で波紋呼ぶ

 5日の動画は「少年忍者 【大縄跳び】SixTONESが乱入…連続22回成功するまで終われません!」。5グループ内で最もメンバーの多い少年忍者が、22人という特性を活かした企画「大縄跳び連続22回成功するまで終われません!」にチャレンジしている。企画会議(1月22日配信)にて稲葉通陽が提案したもので、今回は1人ずつ順番に入っていき、全員が大縄に入りきったところからカウントがスタート。引っかかった人には、「Jr.チャンネル」恒例の罰ゲーム・ノニジュースが待ち受けていた。大縄を回す係は、身長差がない鈴木悠仁&北川拓実が担当。1回目が始まると、さっそく久保廉がミスしてしまい、いきなり中断。1分48秒頃、なぜか直立不動の久保の後ろ姿が面白く、筆者は思わず吹き出してしまった。

 こうして、“激マズ”と言われるノニジュースを飲むハメになった久保。大人のTravis Japanは原液で飲んでいるものの、少年忍者は初回とあって水で薄めているそう。とはいえ、中学2年生の彼がニオイや味に苦悶してノニジュースを完飲する姿は、見ていられないほど可哀相。以降も、青木滉平、瀧陽次朗らが次々にノニジュースの被害に遭ううち、筆者が注目したのはあるメンバーの行動だ。山井飛翔と、巻き添えになった田村海琉がノニジュースを飲み終えた際、白いパーカーを着た人物がお水のペットボトルを持ってカメラ前に登場する(お水をもらってきちんとお辞儀ができる田村も偉い)。さらに、縄担当の2人が餌食になったシーンも、再び白パーカーがそろりと現れ、北川と鈴木に無言でお水を手渡した。

 横顔や服装で確認する限り、このスタッフばりの活躍を見せていたのは、長瀬結星だろう。先頭で縄を跳ぶ場面では、一生懸命に足を上げて頑張っていたほか、7分37秒頃はまたもやそ~っと画面にインしてくる長瀬。ノニジュースの衝撃で大暴れする元木湧にお水を差し入れていた。そんな長瀬といえば、1月1日配信の「新年の抱負」で、「個人的に言うと、MCにも挑戦したいっていう。(川崎)皇輝くん第2号にちょっとなってみたいなと思うんで」と、目標を掲げていた子。あこがれの川崎は周りの言動をよく見て話を振るなど状況判断能力に優れており、普段からリーダーシップを発揮している。今回のように“裏方”としてサポートができる長瀬は、川崎第2号になれる素質が十分にあるのではないかと感じた。

 一方、なかなか回数がこなせず失敗続きの少年忍者は、次の仕事があるため、制限時間は「残り10分」に。作戦を変えて全員が大縄に入った状態から22回クリアを目指すことになり、縄係も鈴木が外れ、檜山光成にチェンジ。「拓実オッケ~?」「拓実いくよ~!」などと相棒に声をかけ、全体の結束力は深まっている様子だったが……。残念ながら22回に届かぬままラストチャンスとなり、奇跡を起こすことはできなかった。そして、罰ゲームの“全員で原液ノニジュース”を受ける少年忍者たち。

 ここで終わりかと思いきや、偶然その場を通りかかったSixTONESメンバーが乱入し、田中樹は「まだできてないんでしょ? もう1回やれば?」と、サラリ。そこに京本大我&森本慎太郎も加わり、「じゃあ、俺も入っていい?」(京本)「俺と慎太郎が回してやるよ」(田中)「失敗したら全員でノニジュース」(森本)「俺が入ることはマイナスになるからね。跳べないから」(京本)と、自信がないにもかかわらず、再挑戦に持ち込んだ(ただ大縄跳びがやりたいだけ?)。案の定、京本が引っかかった上に、田中&森本は縄を回すフェイントをかけた後、二列に並ぶ少年忍者に縄をあてる悪ふざけ。“バチン”と鈍い音が響き、森本はしたり顔で楽しそうに笑った。

 続いて、田中は「廉、お前回せよ」と久保に縄係を託すも、身長差があるだけに大きな円にならずに終了。満足した田中はノニジュースを運んでくるなり、リーダー・川崎をご指名。「ノニジュースって、体にいいんだよね? 本当だったら、俺も飲みたいしね。でも、俺はもう静岡に行かなきゃいけない」と言いつつ、ただ現場をかき回して去って行った。結局、ラストは川崎が結構な量のノニジュースを一気飲み。今にも泣きそうな表情でこらえるさまは、気の毒で仕方がなかった。個人的に、この一連の絡みで唯一ほっこりしたのは、松村北斗がペットを扱うように久保の頭を撫でる場面くらいだった(12分40秒~47秒)。

 今回の動画について、「SixTONES、短い時間で『撮れ高を意識した撮影』を教えてくれてて良い先輩」「後輩相手にも好き放題やるSixTONESが見れて幸せ。少年忍者、ありがとう」と好意的な感想は上がっているが、「少年忍者の動画、ただのいじめじゃん」「中学生とかに縄をあてたらダメでしょ。ノリだとしても可哀相」「忍者Tube、胸糞悪い。あくまで少年忍者の動画なのに、縄で叩く、後輩に対して『お前』呼び、ノニジュースの強要……」「忍者Tubeに乱入してきたSixTONES、マジで怖い……。忍者は次の仕事があったのに、そこを無視するのは先輩のパワーハラスメントでは?」「縄あてて笑ってるのは人としてヤバい。バラエティとかそういう問題じゃないし、ただのパワハラ」「あれがバラエティの洗礼? 先輩が後輩をいじめてるようにしか見えなかった」と、批判的な意見も目立っている。

 また、「Snow Man×忍者の引き継ぎ動画と見比べたら、どれだけSnow Manがいい先輩なのかがわかる」「少年忍者の動画、Snow Manの回と比べてしまう。Snow Manはフォローしてあげていい先輩って感じだけど、SixTONESは自分たちがやりたいことだけやって帰るとか、いじめでしかない。パワハラと言われても仕方ない」と、Snow Manを引き合いに出す人も。さらには、田中たちがTravis Japan・吉澤閑也らにムチャブリをした合同企画「蓮とビス」(昨年7~8月公開)を思い出し、「『蓮とビス』の悪夢再び。面白いけど、ところどころ笑えない」「『蓮とビス』や今回の忍者へのノニジュースの悪ノリは全く面白くなかったし、SixTONESのこういうところが好きじゃない」「SixTONES、カメラ前だけでもいいから、後輩への態度をあらためて。自分は笑って見れなかった。『蓮とビス』で反省したと思ったのにな」との愚痴も出ている。

 SixTONESの暴走だけでなく、そもそもこの動画はノニジュースに関しても懸念がある。これは“奇跡のフルーツ”ことノニを圧搾して作ったもので、「免疫力アップ」「美容や健康に効果がある」などと言われている。しかし、何事も過剰摂取は禁物であり、ましてや少年忍者はまだ体が成長しきっていない中高生がほとんど。また、例えば飲み過ぎてしまった場合、その人の体質や体調によってはおなかを下す……といったデメリットも考えられるだろう。原液ノニを飲む流れになった10分1秒頃、同25秒頃に男性スタッフの笑い声が漏れていることもあり、運営側は少年忍者&ノニのコラボレーションに対して、さほど深刻には捉えていないようだ。

 少年忍者のお兄ちゃんポジションである平塚翔馬らは18歳とあって、一部の美 少年やHiHi Jetsメンバーよりも年上。この2組が飲んでいるとはいえ、少年忍者にノニジュースの刑を与える点については、個人的に引っかかりを覚えてしまった。視聴者からも「さすがに忍者のチビちゃんたちがノニジュースを飲んでる姿は心配しちゃう」「ノニジュースを罰ゲームの定番にしてほしくない。自分の応援する子が苦しんでいる姿を見て面白いとは思えない」との声が出ており、今後はもう少し可愛げのある罰ゲームの施行をお願いしたいところだ。再生回数はSixTONES効果もあるのか、7日時点で34万台だった。

 2日の動画は「HiHi Jets【バレンタイン秘話】雑誌のお仕事に密着したら(マル秘)トークが!!」。HiHi Jetsは、2週にわたってテレビ情報誌「ザテレビジョン」(KADOKAWA)のグラビアに登場するといい、今回はその撮影に密着した映像だ。そんな彼らといえば、昨年9月に作間龍斗と橋本涼のプライベート写真が流出し、活動自粛した影響で、1月19日配信分より5人体制に戻ったばかり。本格的に復帰した橋本はバッサリと髪を切っており、心機一転のスタイルになっていた。

 猪狩蒼弥がこの話に触れると、本人は「ファンの人の中でも、やっぱ『お前は襟足伸ばせ』みたいな方がいらっしゃるかもしれないから。だから新年一発目のYouTubeさんは、ちゃんと髪長めで。あれ見納めです。だから、あそこで髪長くて良かったって思ってから、短髪になったから……すみませんでした」と、深々とお辞儀。ファンの気持ちも汲み取り、2つのバージョンをお披露目しようと考えていたようだ(アイドルとしては素晴らしい姿勢)。そんな流れで、橋本を除く4人が「長髪か短髪どっちがイイ?」のアンケートを行っていた。

 本題である「ザテレビジョン」の撮影はバレンタインデー特集で、「Sweet」「Bitter」と、2つのコンセプトに挑む5人。橋本のメイク中には、作間が食品サンプルのパスタを片手に現れ、コミュニケーションを図るシーンも。仲が良さそうな“はしさく”の姿に、筆者はなんだか妙に安心してしまった。密着中はメンバーがバレンタインの思い出を語る場面もあり、井上瑞稀が「バレンタイン俺、毎年一番楽しみにしてますからね。隠してるけど」「高校を卒業した今、誰がくれるのか? っていう不安。だから、今話してるのは、マジで(美 少年の)岩崎大昇と“互いにチョコを作り合う”っていう。手作りチョコを渡すっていう……」と、ファンにとってはうれしい情報も出ていた。再生回数は7日時点で42万台。

 1月30日に公開されたのは「Travis Japan【祝成人★松田元太】メンバーの愛情を検証!?」。昨年4月に20歳になった松田元太のメイン企画で、本人自らが問題を出し、メンバーが答えるクイズを行っている。周囲がどれほど松田を理解しているか、“愛”を検証するテーマでもあるが、天然なキャラクターで知られる松田だけに、一筋縄ではいかない展開が待ち受けていた。「松田元太の今日の気分は?」の問題は、吉澤閑也が「からアゲ↑↑」とハイテンションな一芸を披露したほか、七五三掛龍也が「(松田の顔は)俺の知り合いの猫に似てるんだよね」と発言すると、川島如恵留は「『知り合いの猫』ってなんだよ! このグループ、やべぇ奴しかいねぇな」と、ツッコミ。

 肝心の松田の答えは「ふつー」というゆる~いもので、口癖などを予想していた6人は「はい、お前やった」(中村海人)「今回はこういうテイストで来るってことね?」(川島)「チュートリアルはOK!」(宮近海斗)と、この先のクイズの空気感を察した。以降も「今夜食べたい物は?」「今年メンバーにやってほしいことは?」「一生のうち一度はやってみたいことは?」と問題が進む中、“松田元太脳”で考えていくメンバー。松田が愛されているのは十分伝わるが、6人は掴みどころがない彼に翻弄されっぱなしだった。

 また、「Travis Japanに加入して印象が変わったメンバーは?」のトークタイムでは、松田が川島について「Travis Japan入る前、頭良いっていう。大学も青山(学院)大学行ってて、知ってたから。頭も良くて、アクロバットもできて、完璧主義者で。ちょっと“怖い”みたいな。もうガチガチの人みたいな、思ってたの。で、いざTravis Japan入りました……チョロい!」と、爆弾発言。とはいえ、よく聞いてみると「もっと自分をふざけて出してくれる感じになってきてくれたし、一緒にふざけられる。一緒にバカできる」という意味の褒め言葉だったらしく、川島は「うれしい」と、安堵。吉澤仕込みの変顔を見せていた。なお、個人的に12分46秒頃の宮近の動きは、“音に反応するおもちゃ”のような愛らしさがあるため、ぜひ注目してもらいたいポイントだ。

 ちなみに、こちらの動画は19分の長編だが、正直に言って内容は“ファン向け”であり、一般のYouTube視聴者が興味本位で再生するようなタイトルでもないだろう。しかし、再生回数は公開後8日で51万台と、圧倒的な数字を稼いでいる。明確なルールは不明ながら、チャンネルトップページの「ヘッダー」と呼ばれる上部の画像は、期間内に再生回数が多かったグループが選ばれると言われており、Travis Japanファンをはじめ、これを勝ち取る目的で地道に視聴するファンは少なくない。前週、計6本の動画をアップした7 MEN 侍は合算の数字が反映されたのか、2月7日時点でヘッダーに輝いている。

 さらに、5日公開の少年忍者の動画は、視聴者の増加が見込めるSixTONESが登場したとあって、一部では「ヘッダー、なんで侍なのかと思ったら、6本合算なのね。頑張って再生してるトラジャファンが不憫」「ストとのコラボで再生回数を稼ごうとしないで……合算だったりコラボしたり、トラジャが正々堂々と7人だけで動画を撮ってるのがバカみたい」「合算の翌週にストとのコラボ動画をぶつけられて、トラジャファンが張り切るほど、ヘッダーを取らさないようにしてるように思える」と、落胆の声が出ていた。一方で、最近はこうした“ヘッダー争い”に嫌気が差したTravis Japanファンの書き込みもチラホラ見受けられる。精神的に疲れない程度に、それぞれのペースで楽しむことも重要なのかもしれない。

 2月1日に配信されたのは「美 少年【おバカ実験】大量のタピオカを餅つき機でついたらどうなる?」(再生回数は7日時点で32万台)。彼らは、東京B少年時代の「Jr.チャンネル」初期に「おバカ実験!卵を1万回振るとどうなる?」(18年3月24日公開)「新B級グルメを考案!◯◯を天ぷらにしてみた!!」(18年5月19日公開)といった実験系の企画に挑戦していたが、今回はそのテイストを引き継いだ内容となっている。テーマは「タピオカを餅つき機でつくと、果たしてどうなるのか?」。まずは、普通に餅つき機でお餅を作って味わった上で、“タピオカ餅つき”にトライした。

 完成を待つ間、岩崎大昇は「藤井(直樹)でもくすぐるか」と言い出し、過去の「こちょこちょを10分続けると何も感じなくなる?」(18年3月31日公開)を再現する場面も。また、「負けた人がこねたタピオカを試食する」として、指を使った「いっせーの」ゲームで盛り上がる6人。その後、餅つき機の蓋を開けてみたところ……。タピオカの形状はさほど変わっておらず、進行役の岩崎が理想の状態に近づけるべく、尽力していたのだった。

 一方で、特にこの回は“美 少年の休憩時間”を大放出しているような動画だけに、「そうそう、ゲーム企画言うてな……違います」「使えるトークをお願いします」などテロップでのツッコミが多くなっている(よりポップになった印象)。こういった点を含めて、ファンからは「編集が違う……? なんかスゴい!」「編集が変わった気がするし、美 少年の楽しい雰囲気が伝わる」「美Tube、編集の雰囲気がいつもと違って面白い」と高評価があるものの、中には「編集変わった!? 前の方が好き」「正直に言って、美Tubeは前の編集の方が好き。いちいちツッコミが激しい」「編集にクセがあってまともに見れない」「今回の編集、なんか見づらい」と、嫌悪感を抱いてしまった人も。美 少年の担当スタッフ、もしくは編集方針が変わったのか……?

 1月31日の動画は「7 MEN 侍【最優秀作品は?】5人で佐々木大光をガチでカッコ良く撮る!」(再生回数は2月7日時点で15万台)。前週、メンバーの今野大輝、菅田琳寧、中村嶺亜、本高克樹、矢花黎が、佐々木大光を主人公に据えた各1本の動画を作成。共通タイトルは「5人の佐々木大光」で、「スター”佐々木大光”の特別インタビュー」(監督A)「伝わらぬ想いが思わぬ行動に…」(監督B)「それが見えたら…」(監督C)「落としすぎる男」(監督D)「Reverse Taiko」(監督E)と、監督名を伏せた状態で1分前後のショートムービーをアップしていたのだった。29日時点で「再生回数が最も低かった人が罰ゲーム」という条件があり、今回はその結果発表と、メイキング映像を含めた答え合わせを行っている。

 筆者は、謎やちょっとした仕掛けの多い「落としすぎる男」の完成度に感心し、エンタメサイト・ISLAND TVでも凝った動画を作っていた矢花が監督なのではないかと予想していた。実際、やはりこれをプロデュースしたのは矢花だったといい、独自のセンスに脱帽。“矢花監督”のさまざまな作品を見てみたいという衝動に駆られた。そんな中、メイキングで筆者が気になったのは、中村の私服だ。撮影時にスマートフォンを構える中村の後ろ姿がよく映るのだが(11分4秒頃、11分46秒頃など)、なかなか刺激的なプリントのアウターを着ている。

 調べてみると、どうやら「春画」(江戸時代を中心に描かれた性風俗の絵画)を題材にしたフラグスタフ(F-LAGSTUF-F)の「SHUNGA COACH JACKET」らしい。使用されている春画はそこまで過激ではないものの、ジャニーズアイドルが着るにしては珍しいものだけに、ついつい目で追ってしまった(しかもこの格好で撮影しているのがホラー映像)。また、今回はメンバーのヘアスタイルがいつもと異なっていたが、その詳細は後日明らかになるとのこと。今後の動画に期待したい。

 

普通の母親が抱える「今、目の前にいる赤ちゃんとの暮らしが怖くて辛い」感情 弱さや危うさ、受け止めて

 親による子どもへの体罰禁止を明記した改正児童虐待防止法が来年4月に施行される。これに先立ち厚生労働省は12月3日、具体的にどのような行為が体罰にあたるのか、ガイドラインをまとめた。

 たとえば、以下の行為は体罰にあたる。

・口で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた
・大切なものにいたずらをしたので、長時間正座させた
・友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
・他人のものを盗んだので、罰としてお尻を叩いた
・宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
 また、暴言等、たとえば「お前なんか生まれてこなければよかった」など、 子どもの存在を否定するようなことを言ったり、やる気を出させるために、きょうだいを引き合いにしてダメ出しや無視をすることも、子どもの人権を侵害し、子どもの心を傷つける行為であると記載されている。

 しかし「体罰が法律で禁止される」ことについて、ネット上では否定的な声が目立つ。「体で教えないと子どもはわからない」と、“体罰は必要”とする意見も少なくないが、一方で「じゃあどうすればいいんだ」「言うことを聞かない子どもをしつける方法があるなら教えてほしい」という戸惑いの声も聞こえる。

 こうした声からわかるのは、体罰をなくすためには法律で禁止するだけではなく、子育てする親のフォローも同時にしていくことが不可欠ということだ。

 子どもを虐待から守ると同時に、親への支援も行っている社会福祉法人子どもの虐待防止センター(以下、CCAP)で相談員を務める広岡智子さんに、話を伺った。

広岡智子
1980年代に、親の病気や虐待を理由に中学卒業と同時に自立を余儀なくされた子どもたちの暮らす「憩いの家」で寮母を務め、1991年に故広岡知彦(元憩いの家、子どもの虐待防止センター代表)が進めていた子どもの虐待防止センターの設立に電話相談員として参加。電話相談をきっかけに、自助的ケアグループMCG「母と子の関係を考える会」を子どもの虐待防止センターで始め、現在は研修会の講師を務めるとともに、母親たちに向けては「怒って、泣いて、時々笑って子育てを!」と講演活動を行っている。

「叩いちゃダメだ」ではなく、「なぜ叩いちゃうのかな?」
――CCAPでは子育ての悩みを受け付ける電話相談を実施しています。どのような親御さんが電話をかけてきますか。

広岡:このままだと虐待になってしまうという危機感を持って、電話をかけて来られる方が多いです。中にはお父さんからの電話もありますが、専業主婦や育休中のお母さんなど、子どもと24時間一緒にいる方からの相談が多いです。

保育園に子どもを預けることのできる共働き家庭やひとり親家庭は、子どもと離れる時間を確保されるという意味で、現実的な虐待予防になっていると思います。

――相談員の方たちはどのような言葉をかけているのでしょうか。

広岡:電話をかけてくる親たちは、子どもを叩くことは「よくない」と認識していますし、子どもにひどい態度を取ってしまった自分自身を責めています。

「私はダメな親だ。子どもを可愛く思えないし、叩いちゃうし、差別しちゃうし。昨日だって子どもを泣かせてしまった」と泣きながら電話かけてくるお母さんもいますから。

ストレスを抱えて子どもを叩いてしまったと苦しんでいるお母さんに対して、「子どもを叩くことは虐待だから許されない」と断罪したら、彼女を追い詰め、ますます子どもを叩くようになるかもしれません。

ですから、私たち相談員は「叩いちゃダメだ」ではなく、「なぜ叩いちゃうのかな?」と、まずは叩いてしまう理由を問いかけます。ダメだとわかっても叩かざるを得ないような現実があるわけで、その状況を理解し、叩かずに子育てをする方法を一緒に考えていくのです。

――叩いてしまう理由、どのようなものが多いですか。

広岡:子どもを叩いてしまう理由は、色々あるでしょう。子どもは一人一人生まれながらの気質もあるし、家庭環境も育休を取れるお父さんもいれば、帰りが遅く土日も仕事で忙しいお父さんもいるなど、一人一人違いますよね。

電話をかけてくる親たちは、本当は「悪いことをするけれど、この子は子どもで、私から叩かれてかわいそうなんだ」とわかっているし、葛藤しています。そのような葛藤は子育ての苦しみともいえ、子どもを守り育てていくためには「あり」なのです。

――電話相談を終える頃には、相談者さんの反応は変わりますか。

広岡:匿名の電話相談の場合、自分が子どもにしてしまった本当のことを言えるので、語った後はすごく楽になるようです。 

どうやって子どもをしつけければいいのかといった葛藤は、子どもを守り育てていくためには必要なことであり、子育てに悩むことは“当たり前”なんです。子育てに悩みを抱えることはとても自然なことであり、「ダメ親」ではありません。

――子どもはそうそう親の思い通りにはなりませんよね。

広岡:子育ては誰がやっても、子どもとの関係に多かれ少なかれ苦しくなります。もともと人間の子どもはとても手がかかる存在です。生理的早産といわれ、生まれて最初の1年はひと時も目が離せません。今は出産の疲れを抱えたまま、母親が寝る時間を削ってひとりで子育てを行う家庭も多く、肉体的にも精神的にもキツイですよね。

1年が経って、ようやく赤ちゃんとの生活に慣れ自信がついてくると、今度は凄まじいイヤイヤ期や反抗期が訪れ、特に初めて子育てをする親は戸惑ってしまいます。そのような状況であれば、誰だって悩みを抱えます。子どもと向き合おうとしている親ほど、追い詰められてしまうものです。

――真面目にやろうとする親ほど、悩みやすいのかもしれません。

広岡:真面目というよりも、子どもとまともに向き合っているお母さんですね。また自己嫌悪感が強い親ほど、「自分のようになってほしくないのに、自分に似ている」と苛立ってしまい、ダメな自分を叩くように子どもに手を上げてしまうケースもあります。

 子どもと親は似て非なる人間ですが、親が子どもに自分自身を投影してしまうことも特別なことではなく、どこの誰にでも起きることです。

 そして親に叩かれることなく、愛情を受けて育ったお母さんでも、子どもがかわいいと思えないことや、自分がダメ親だと感じることはあります。

――そういった悩みを持つことを“普通”と捉えられず、「みんなうまくやっているのに、自分はダメだ」と思い込んでしまうのですね。

広岡:子育てに悩むことこそ“普通”だと、お母さんたちに届いていませんよね。聞き分けのよい子どものお母さんが「いいお母さん」で、言うことを聞かない子どものお母さんは「育 児が下手」「弱くてダメな親」というイメージも根強いです。

 育休中のお母さんからの電話相談もあります。傍から見ると育休中の母親は、待機児童問題もあるものの基本的には1~2年後に職場に戻れますし、そもそも育休を取れるような恵まれた環境にいるわけですから、職場復帰を楽しみに子どもとの時間をエンジョイできるような気がしますよね。

 ところが現実には育休中のお母さんでも、1年後のことより「今、目の前にいる赤ちゃんとの暮らしが怖くて辛い」と言います。実際のところ誰にとっても、赤ちゃんとの暮らしは「怖くて辛いもの」なのです。そんな時期にお母さんを一人にさせてはいけないし、お母さんの弱さや危うさを責めずに受け止めてあげる必要があるのではないでしょうか。電話相談やグループケアもその一つです。

――自分だけがダメな親なのだと思っていると、周囲にいる人たち、いわゆる「ママ友」などにも相談しづらくなります。

広岡:「重い話をして引かれるんじゃないか」といった懸念から、辛くて苦しい子育ての悩みは、ママ友に話せない方が多いです。本当はみんなが同じことを感じている、あるいはそう感じないように頑張ってごまかしているのですが。

 どうか、ひとりで溜め込むことはしないでほしいんです。そのために、CCAPの電話相談があります。

――身近な人に相談した結果、かえって追い詰められてしまうこともありますよね。

広岡:自分の周囲の人に相談をする場合は、場所や人を選ぶ必要があります。もし相手に否定をされて苦しい思いをしたとしても、自分を責めるのではなく、話す相手を間違えただけだと考えてください。必ず、叱るのではなくあなたの状況を理解し、一緒に解決方法を考えてくれる場所や人はいるはずです。私たちはそういう場所や人にならないといけないと思っています。

――CCAPでは電話相談だけではなく、親たちのグループワークも実施していますよね。

広岡:グループワークは、子育ての悩みや自分自身の体験について親同士で話せる場になっています。保健師や相談員が進行役を務め、ルールは「批判をしない」「無理をして話さない」「聞いたことや話したことを外に持ち出さない」の3つ。自分の名前を言うか匿名にするかは自由です。グループケアの間は保育も行っているので、子どもを預ける場所がない親御さんも参加いただけます。

――グループワークに参加し、お互いに悩みを共有することで、「みんな子育てに悩んでいる」と前向きになれるのでしょうか。

広岡:それもありますが、ほとんどのお母さんは、最初から自分の中に正解を持っています。
グループワークでは、自分の気持ちをみんなが聞いてくれて、認めてくれる。そうすることで、自分の気持ちが再確認でき、深刻な顔をしていたお母さんでも、グループケアが終わると、別人のような笑顔で子どもを抱いています。

虐待親にも治療やケア、支援を受ける権利がある
――虐待をしてしまう親は自らも虐待を受けて育った割合が多いということが、調査でわかっています。電話相談やグループワークに参加する親御さんの中にも、虐待を受けた経験のある方はおそらくいらっしゃいますよね。

広岡:そうですね。深刻な虐待をしている親ほど子ども時代に虐待を受けた体験を持つ、かつて放置された子どもたちです。子どもながらに児相に助けを求めたけれど、相手にしてもらえなかったという方もいました。

 もちろん、親に虐待された経験があっても、ほとんどの方は虐待せずに自分の子どもを育てています。しかし中には、叩くことは子どもを傷つけるとわかりながらも、自分の子どもを叩いてしまい、虐待だとして児童相談所に子どもを引き取られるケースもあります。

 子どもの命を守ることが最優先ですが、自分が虐待されていた頃は誰からも助けてもらえなかったのに、親になったら今度は「子どもを叩くダメな親」と否定され、加害者にされる。

 加害者である親たちもかつては虐待を受ける子どもであり、そういう意味では虐待をした親にも治療やケア、支援を受ける権利があるはずです。電話相談やグループケアは、親の悩みを解消し児童虐待の世代間連鎖をストップさせるための一つのツールですが、国全体で、過去に虐待を受けた親のケアや支援プログラムをつくっていくべきだと感じています。

――来年4月から、しつけのための体罰禁止を明記した改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が施行されることになっています。しかし、「叩かなければ子どもは理解しない」「自分は親に叩かれて強くなった」「いきなり禁止と言われても困る」など、反発する声も少なくありません。

広岡:これまで日本では、「親の言うことを聞かない子どもは叩かれて然るべき」という親の立場が優先されていましたが、子どもへの暴力が「虐待」だと認識され、社会の意識は大きく変わりました。

 しかし、暴力に頼らない子育てはまだ浸透していません。「虐待」という言葉には残忍な印象を持つけれど、「しつけで叩いちゃうのは仕方ないよね」という風潮や、いけないこととはわかっていても、叩く以外の方法を知らずに悩んでいる親が多数です。

 小さな子ども抱える親の世代はしつけとして体罰を受けてきた人も少なくなく、自分の親がしていた行為を否定することは、過去や今の自分を否定することになると考えている人もいるのだと思います。

――法律を変えるだけでなく、人々の意識も変えていく必要がありますよね。

広岡:よくよく考えてみれば、大人が大人をたたくことは糾弾されるのに、大人が子どもを叩くのが許されているというのはおかしいですよね。大人と同じように子どもにも叩かれない傷つけられない権利があるのです。

 父親からの電話で、ママが勉強しないと5才の娘を叩くので、彼がママを注意したら、娘から「ママは私のために叩いてくれる、だからパパも叩いて」と言われて、それを聞いていたママが「こんなことを子どもに言わせてる私はおかしい」と初めて泣いたという話がありました。

 法律が私たちの考え方を変えてくれるわけではありません。小さな暴力も体罰と考えて、「愛のムチ」はもうないんだと一人ひとりが悩みながら学び直さなければならないのですね。「叩かれて育った子どもは叩くことを学び、愛された子どもは愛することを学ぶ」のは本当です。

 もちろんそれだけでは一方通行です。虐待を禁止すると同時に、叩かないで子どもを育てる方法や、虐待を受けて育ったり、ストレスをかかえる親をどうケアしていくのかも、子どもだけでなく、親の目線にたって議論していくことが重要です。

カテゴリー: 未分類

普通の母親が抱える「今、目の前にいる赤ちゃんとの暮らしが怖くて辛い」感情 弱さや危うさ、受け止めて

 親による子どもへの体罰禁止を明記した改正児童虐待防止法が来年4月に施行される。これに先立ち厚生労働省は12月3日、具体的にどのような行為が体罰にあたるのか、ガイドラインをまとめた。

 たとえば、以下の行為は体罰にあたる。

・口で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた
・大切なものにいたずらをしたので、長時間正座させた
・友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
・他人のものを盗んだので、罰としてお尻を叩いた
・宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
 また、暴言等、たとえば「お前なんか生まれてこなければよかった」など、 子どもの存在を否定するようなことを言ったり、やる気を出させるために、きょうだいを引き合いにしてダメ出しや無視をすることも、子どもの人権を侵害し、子どもの心を傷つける行為であると記載されている。

 しかし「体罰が法律で禁止される」ことについて、ネット上では否定的な声が目立つ。「体で教えないと子どもはわからない」と、“体罰は必要”とする意見も少なくないが、一方で「じゃあどうすればいいんだ」「言うことを聞かない子どもをしつける方法があるなら教えてほしい」という戸惑いの声も聞こえる。

 こうした声からわかるのは、体罰をなくすためには法律で禁止するだけではなく、子育てする親のフォローも同時にしていくことが不可欠ということだ。

 子どもを虐待から守ると同時に、親への支援も行っている社会福祉法人子どもの虐待防止センター(以下、CCAP)で相談員を務める広岡智子さんに、話を伺った。

広岡智子
1980年代に、親の病気や虐待を理由に中学卒業と同時に自立を余儀なくされた子どもたちの暮らす「憩いの家」で寮母を務め、1991年に故広岡知彦(元憩いの家、子どもの虐待防止センター代表)が進めていた子どもの虐待防止センターの設立に電話相談員として参加。電話相談をきっかけに、自助的ケアグループMCG「母と子の関係を考える会」を子どもの虐待防止センターで始め、現在は研修会の講師を務めるとともに、母親たちに向けては「怒って、泣いて、時々笑って子育てを!」と講演活動を行っている。

「叩いちゃダメだ」ではなく、「なぜ叩いちゃうのかな?」
――CCAPでは子育ての悩みを受け付ける電話相談を実施しています。どのような親御さんが電話をかけてきますか。

広岡:このままだと虐待になってしまうという危機感を持って、電話をかけて来られる方が多いです。中にはお父さんからの電話もありますが、専業主婦や育休中のお母さんなど、子どもと24時間一緒にいる方からの相談が多いです。

保育園に子どもを預けることのできる共働き家庭やひとり親家庭は、子どもと離れる時間を確保されるという意味で、現実的な虐待予防になっていると思います。

――相談員の方たちはどのような言葉をかけているのでしょうか。

広岡:電話をかけてくる親たちは、子どもを叩くことは「よくない」と認識していますし、子どもにひどい態度を取ってしまった自分自身を責めています。

「私はダメな親だ。子どもを可愛く思えないし、叩いちゃうし、差別しちゃうし。昨日だって子どもを泣かせてしまった」と泣きながら電話かけてくるお母さんもいますから。

ストレスを抱えて子どもを叩いてしまったと苦しんでいるお母さんに対して、「子どもを叩くことは虐待だから許されない」と断罪したら、彼女を追い詰め、ますます子どもを叩くようになるかもしれません。

ですから、私たち相談員は「叩いちゃダメだ」ではなく、「なぜ叩いちゃうのかな?」と、まずは叩いてしまう理由を問いかけます。ダメだとわかっても叩かざるを得ないような現実があるわけで、その状況を理解し、叩かずに子育てをする方法を一緒に考えていくのです。

――叩いてしまう理由、どのようなものが多いですか。

広岡:子どもを叩いてしまう理由は、色々あるでしょう。子どもは一人一人生まれながらの気質もあるし、家庭環境も育休を取れるお父さんもいれば、帰りが遅く土日も仕事で忙しいお父さんもいるなど、一人一人違いますよね。

電話をかけてくる親たちは、本当は「悪いことをするけれど、この子は子どもで、私から叩かれてかわいそうなんだ」とわかっているし、葛藤しています。そのような葛藤は子育ての苦しみともいえ、子どもを守り育てていくためには「あり」なのです。

――電話相談を終える頃には、相談者さんの反応は変わりますか。

広岡:匿名の電話相談の場合、自分が子どもにしてしまった本当のことを言えるので、語った後はすごく楽になるようです。 

どうやって子どもをしつけければいいのかといった葛藤は、子どもを守り育てていくためには必要なことであり、子育てに悩むことは“当たり前”なんです。子育てに悩みを抱えることはとても自然なことであり、「ダメ親」ではありません。

――子どもはそうそう親の思い通りにはなりませんよね。

広岡:子育ては誰がやっても、子どもとの関係に多かれ少なかれ苦しくなります。もともと人間の子どもはとても手がかかる存在です。生理的早産といわれ、生まれて最初の1年はひと時も目が離せません。今は出産の疲れを抱えたまま、母親が寝る時間を削ってひとりで子育てを行う家庭も多く、肉体的にも精神的にもキツイですよね。

1年が経って、ようやく赤ちゃんとの生活に慣れ自信がついてくると、今度は凄まじいイヤイヤ期や反抗期が訪れ、特に初めて子育てをする親は戸惑ってしまいます。そのような状況であれば、誰だって悩みを抱えます。子どもと向き合おうとしている親ほど、追い詰められてしまうものです。

――真面目にやろうとする親ほど、悩みやすいのかもしれません。

広岡:真面目というよりも、子どもとまともに向き合っているお母さんですね。また自己嫌悪感が強い親ほど、「自分のようになってほしくないのに、自分に似ている」と苛立ってしまい、ダメな自分を叩くように子どもに手を上げてしまうケースもあります。

 子どもと親は似て非なる人間ですが、親が子どもに自分自身を投影してしまうことも特別なことではなく、どこの誰にでも起きることです。

 そして親に叩かれることなく、愛情を受けて育ったお母さんでも、子どもがかわいいと思えないことや、自分がダメ親だと感じることはあります。

――そういった悩みを持つことを“普通”と捉えられず、「みんなうまくやっているのに、自分はダメだ」と思い込んでしまうのですね。

広岡:子育てに悩むことこそ“普通”だと、お母さんたちに届いていませんよね。聞き分けのよい子どものお母さんが「いいお母さん」で、言うことを聞かない子どものお母さんは「育 児が下手」「弱くてダメな親」というイメージも根強いです。

 育休中のお母さんからの電話相談もあります。傍から見ると育休中の母親は、待機児童問題もあるものの基本的には1~2年後に職場に戻れますし、そもそも育休を取れるような恵まれた環境にいるわけですから、職場復帰を楽しみに子どもとの時間をエンジョイできるような気がしますよね。

 ところが現実には育休中のお母さんでも、1年後のことより「今、目の前にいる赤ちゃんとの暮らしが怖くて辛い」と言います。実際のところ誰にとっても、赤ちゃんとの暮らしは「怖くて辛いもの」なのです。そんな時期にお母さんを一人にさせてはいけないし、お母さんの弱さや危うさを責めずに受け止めてあげる必要があるのではないでしょうか。電話相談やグループケアもその一つです。

――自分だけがダメな親なのだと思っていると、周囲にいる人たち、いわゆる「ママ友」などにも相談しづらくなります。

広岡:「重い話をして引かれるんじゃないか」といった懸念から、辛くて苦しい子育ての悩みは、ママ友に話せない方が多いです。本当はみんなが同じことを感じている、あるいはそう感じないように頑張ってごまかしているのですが。

 どうか、ひとりで溜め込むことはしないでほしいんです。そのために、CCAPの電話相談があります。

――身近な人に相談した結果、かえって追い詰められてしまうこともありますよね。

広岡:自分の周囲の人に相談をする場合は、場所や人を選ぶ必要があります。もし相手に否定をされて苦しい思いをしたとしても、自分を責めるのではなく、話す相手を間違えただけだと考えてください。必ず、叱るのではなくあなたの状況を理解し、一緒に解決方法を考えてくれる場所や人はいるはずです。私たちはそういう場所や人にならないといけないと思っています。

――CCAPでは電話相談だけではなく、親たちのグループワークも実施していますよね。

広岡:グループワークは、子育ての悩みや自分自身の体験について親同士で話せる場になっています。保健師や相談員が進行役を務め、ルールは「批判をしない」「無理をして話さない」「聞いたことや話したことを外に持ち出さない」の3つ。自分の名前を言うか匿名にするかは自由です。グループケアの間は保育も行っているので、子どもを預ける場所がない親御さんも参加いただけます。

――グループワークに参加し、お互いに悩みを共有することで、「みんな子育てに悩んでいる」と前向きになれるのでしょうか。

広岡:それもありますが、ほとんどのお母さんは、最初から自分の中に正解を持っています。
グループワークでは、自分の気持ちをみんなが聞いてくれて、認めてくれる。そうすることで、自分の気持ちが再確認でき、深刻な顔をしていたお母さんでも、グループケアが終わると、別人のような笑顔で子どもを抱いています。

虐待親にも治療やケア、支援を受ける権利がある
――虐待をしてしまう親は自らも虐待を受けて育った割合が多いということが、調査でわかっています。電話相談やグループワークに参加する親御さんの中にも、虐待を受けた経験のある方はおそらくいらっしゃいますよね。

広岡:そうですね。深刻な虐待をしている親ほど子ども時代に虐待を受けた体験を持つ、かつて放置された子どもたちです。子どもながらに児相に助けを求めたけれど、相手にしてもらえなかったという方もいました。

 もちろん、親に虐待された経験があっても、ほとんどの方は虐待せずに自分の子どもを育てています。しかし中には、叩くことは子どもを傷つけるとわかりながらも、自分の子どもを叩いてしまい、虐待だとして児童相談所に子どもを引き取られるケースもあります。

 子どもの命を守ることが最優先ですが、自分が虐待されていた頃は誰からも助けてもらえなかったのに、親になったら今度は「子どもを叩くダメな親」と否定され、加害者にされる。

 加害者である親たちもかつては虐待を受ける子どもであり、そういう意味では虐待をした親にも治療やケア、支援を受ける権利があるはずです。電話相談やグループケアは、親の悩みを解消し児童虐待の世代間連鎖をストップさせるための一つのツールですが、国全体で、過去に虐待を受けた親のケアや支援プログラムをつくっていくべきだと感じています。

――来年4月から、しつけのための体罰禁止を明記した改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が施行されることになっています。しかし、「叩かなければ子どもは理解しない」「自分は親に叩かれて強くなった」「いきなり禁止と言われても困る」など、反発する声も少なくありません。

広岡:これまで日本では、「親の言うことを聞かない子どもは叩かれて然るべき」という親の立場が優先されていましたが、子どもへの暴力が「虐待」だと認識され、社会の意識は大きく変わりました。

 しかし、暴力に頼らない子育てはまだ浸透していません。「虐待」という言葉には残忍な印象を持つけれど、「しつけで叩いちゃうのは仕方ないよね」という風潮や、いけないこととはわかっていても、叩く以外の方法を知らずに悩んでいる親が多数です。

 小さな子ども抱える親の世代はしつけとして体罰を受けてきた人も少なくなく、自分の親がしていた行為を否定することは、過去や今の自分を否定することになると考えている人もいるのだと思います。

――法律を変えるだけでなく、人々の意識も変えていく必要がありますよね。

広岡:よくよく考えてみれば、大人が大人をたたくことは糾弾されるのに、大人が子どもを叩くのが許されているというのはおかしいですよね。大人と同じように子どもにも叩かれない傷つけられない権利があるのです。

 父親からの電話で、ママが勉強しないと5才の娘を叩くので、彼がママを注意したら、娘から「ママは私のために叩いてくれる、だからパパも叩いて」と言われて、それを聞いていたママが「こんなことを子どもに言わせてる私はおかしい」と初めて泣いたという話がありました。

 法律が私たちの考え方を変えてくれるわけではありません。小さな暴力も体罰と考えて、「愛のムチ」はもうないんだと一人ひとりが悩みながら学び直さなければならないのですね。「叩かれて育った子どもは叩くことを学び、愛された子どもは愛することを学ぶ」のは本当です。

 もちろんそれだけでは一方通行です。虐待を禁止すると同時に、叩かないで子どもを育てる方法や、虐待を受けて育ったり、ストレスをかかえる親をどうケアしていくのかも、子どもだけでなく、親の目線にたって議論していくことが重要です。

カテゴリー: 未分類

ママ友LINEグループの「教えてママ」に怒り爆発! 「保護者会には来ないのに!」と不満も

今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。かつては子どもの送迎時に、ママたちが立ち話をしているような光景が見かけられたが、時間に追われ忙しく過ごす共働き世帯が増えた今、ママたちのコミュニケーションの場は、LINEのグループチャットになっているという。そんな、ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。

 日々子育てに奔走するママ同士は、「持ちつ持たれつの関係」とよく言われ、頻繁に頼みごとが交わされているという。その内容は、例えば、「うちの子が〇〇ちゃんの持っているおもちゃを気に入ってしまったので貸してほしい」「万札しか持ち合わせていないので、ランチの支払いを一時的に立て替えてほしい」といった具合に、何かを貸してもらうケースが多いイメージがある。しかし、今はアプリでおもちゃの中古品が廉価で手に入り、たとえ現金がなくてもキャッシュレス決済ができるようになった。そのため、「〇〇を貸してほしい」より、「〇〇をやってほしい」という頼みごとが増えているという。モノや金銭の貸し借りに比べ、トラブルに発展しにくそうにも見えるが、そうとは言い切れない現状があるようだ。

「うちの子の写真も買っといて」ママ友の頼みごとに不満爆発

 恵里佳さん(仮名・33歳)は、関東近県のベッドタウンにある幼稚園に4歳になる女児を通わせている。数年前から、駅前や工場跡地などにマンションが建設されたため、ファミリー層の新規住民が増えたという。

「職場へのアクセスが良かったので引っ越しを決めました。自分たちと同じように、結婚や出産などで移住してきた人も多いですが、駅から少し離れると古い住宅地になるので、もともとの地元の人も結構住んでいるんです。幼稚園には『親子2代で通っている』という人もいます」

 こうした「自分もこの幼稚園の卒園生」という保護者が、行事などで率先して役員を手伝う“リーダー的な立場”にいるという。

「そのうちの一人である40代のAさんも、園で会うと、小学校の学区情報や夏祭りの情報などを共有してくれて、ほかのママより年上ということもあり、みんなのリーダー的存在になっています。でも、ちょっと困ったことがあって……Aさんって、スマホやパソコンを使うのが苦手みたいなんです。親しいママ友とのグループチャットで、『AさんはLINEで連絡が取りづらい』『スマホやパソコンを使う頼まれごとをされて困っている』と話題になったんです」

 その頼まれごとの一つが、園行事の写真購入を代行してほしいというものだ。

「うちの園では、プライバシーの問題から、カメラマンに撮影してもらった行事の写真を、園内に掲示しないことになっています。代わりに、専用の販売サイトからほしい写真を選び、有料で購入するんです。自宅にいながら、空いた時間にスマホやパソコンで写真を確認できるため、とても便利なのですが、Aさんから『私の娘の分も買って』と頼まれるようになって、正直面倒に感じています……」

 園専用の写真販売サイトは、専用のログインパスワードなどが付与され、関係者しか閲覧できない仕様になっている。

「ママ友とのランチで、『子どもの有料販売の写真を購入しているか』という話題になり、『私は毎回購入している』と答えたのがまずかったみたいで。Aさんから『買いたいけど、よくわからなくて。送料はこちらが払うから、私の娘の分も買ってくれないかしら』と言われて、つい承諾してしまったんです」

 後悔したような表情を浮かべる恵里佳さん。Aさんは、「うちの子が写っているものであれば、あなたの判断で選んでもらいたい」と頼んできたという。

「運動会などの大きなイベントの写真は、全部で100枚以上にもなります。子どもの顔を登録しておくことで、近い顔の画像が表示される機能もあるのですが、精度が低くて、同じ髪形の別の子の写真が表示されるんですよ。また、学年ごとに分けて表示されることもない。子どもの良い表情の写真が欲しければ、結局全ての写真に目を通すしかないんです」

 こうした実情を、親しいママ友とのグループチャットで愚痴ったという恵里佳さん。「確かにAさんってそういうところあるよね」などと盛り上がったそうだ。

「全ての画像を見るだけで一苦労なのに、送られてきた写真をAさんに渡すと、気に入らないのか『いらない』と言いたげな不機嫌な顔をされたりもします。仲の良いママ友から『毎回は面倒だよね、パシリみたいじゃん』『送料を浮かしたいママをグループチャットで探したらいいのに』と、グループチャットで励まされ、ちょっとすっきりしましたが……」

 このように、幼稚園や保育園では、保護者や保育士の負担を減らそうとIT化が進んでいるが、恵里佳さんのように、また別の負担を強いられるケースもあるようだ。

 都内にある認証保育園に4歳になる息子を通わせている保奈美さん(仮名)は、園からの連絡方法が全てプリントされた紙で渡されるのを、不便に感じている。

「親しいママ友が、課外学習の持ち物や保護者会の時間などを、毎回グループチャットで聞いてくるんです。わからないことを聞く手段として、グループチャットは便利なのですが、連絡帳に入っている配布物にきちんと目を通していないような気がして……。最近は『なんでもかんでも気軽に「教えて」と頼みすぎなのでは?』と感じるようになりました。そもそも園が、プリントではなくメールで連絡事項を送ってくれればいいんですけどね」

 保護者会で取り上げられた内容を、親切なママがグループチャットで共有することもあるという。

「仕事が忙しいのかもしれませんが、中にはたったの一度も顔を出さないママもいます。『誰かが教えてくれるから、別に行かなくてもいい』って空気を感じ、モヤモヤするんですよ。参加しているママたちは時間を割いているのに……保護者会後にだけグループチャットにやってきて、『教えてください』って、どうなんでしょう」

 一方、小学生の子どもを持つママたちにとって、「欠席の連絡」は頭を悩ませるものの一つだという。多くの公立小学校では、欠席の連絡のために、保護者が学校に電話するのが禁止事項となっている。なんでも、インフルエンザなどが流行した際、職員室の電話がつながらない状況になってしまうのを避けるためだという。その代わりに、家が近所の子や同じクラスの友達に、欠席の旨を書いた連絡帳を預け、担任の先生に渡してもらわなければならないそうだ。

 なんともアナログな方法での欠席連絡だが、入学前の説明会が行われる2月のシーズン、ネット上では「誰も知り合いがいない、欠席連絡はどうしよう」というママたちの悲痛な声を見かける。

 昨年から、都内にある小学校に息子を通わせている裕美さん(仮名)は、子どもの具合が悪くなると、自分も気分が落ち込むという。

「学区から遠い保育園に子どもを預けていたため、小学校に知り合いが誰もいなかったんです。入学してみると、すでに園時代のママ友たちがグループをつくっていて、欠席時の連絡帳の受け渡しもグループチャットでささっと連絡を取り合い、仲間同士で快くやっているようでした。私は、交流がなかった近所のママさんに、思いきってLINEの連絡先を交換してもらい、欠席の時には『連絡帳をお願いします』とメッセージを送りました」

 連絡帳をほかの児童に預ける場合、保護者にLINEであらかじめ頼むことが主流となっているようだ。

「うちの子は体調を崩しやすいタイプで、よく学校をお休みするんですが、LINEで『お願いします』と送ると、いつも『大丈夫ですよ』と一言しか返信がなくて……。このママさんと私は、PTAのメンバーで、彼女はそのグループチャットでは、とても張り切ってメッセージを送っているんです。そのギャップを見ると、自分が参加していないグループチャットで、『あの人は頼んできてばかりで図々しい』と言われていないか、勝手に心配になってしまいます」

 今はLINEのおかげで、頼みごとがしやすくなった半面、お礼などの礼節が欠けてしまっているのかもしれない。一方で、「こんな気軽に頼んでしまって、相手にどう思われているか」と過剰に不安に駆られるケースもある。そんな便利さゆえにこじれてしまう、ママ友コミュニケーションの側面を見たような気がした。

ママ友LINEグループの「教えてママ」に怒り爆発! 「保護者会には来ないのに!」と不満も

今や日常生活において、かかせないツールとなっているコミュニケーションアプリ「LINE」。かつては子どもの送迎時に、ママたちが立ち話をしているような光景が見かけられたが、時間に追われ忙しく過ごす共働き世帯が増えた今、ママたちのコミュニケーションの場は、LINEのグループチャットになっているという。そんな、ママたちの「グループチャット」から浮き彫りになった、彼女たちの悩みや、苦悩、気になる話題を覗いてみる。

 日々子育てに奔走するママ同士は、「持ちつ持たれつの関係」とよく言われ、頻繁に頼みごとが交わされているという。その内容は、例えば、「うちの子が〇〇ちゃんの持っているおもちゃを気に入ってしまったので貸してほしい」「万札しか持ち合わせていないので、ランチの支払いを一時的に立て替えてほしい」といった具合に、何かを貸してもらうケースが多いイメージがある。しかし、今はアプリでおもちゃの中古品が廉価で手に入り、たとえ現金がなくてもキャッシュレス決済ができるようになった。そのため、「〇〇を貸してほしい」より、「〇〇をやってほしい」という頼みごとが増えているという。モノや金銭の貸し借りに比べ、トラブルに発展しにくそうにも見えるが、そうとは言い切れない現状があるようだ。

「うちの子の写真も買っといて」ママ友の頼みごとに不満爆発

 恵里佳さん(仮名・33歳)は、関東近県のベッドタウンにある幼稚園に4歳になる女児を通わせている。数年前から、駅前や工場跡地などにマンションが建設されたため、ファミリー層の新規住民が増えたという。

「職場へのアクセスが良かったので引っ越しを決めました。自分たちと同じように、結婚や出産などで移住してきた人も多いですが、駅から少し離れると古い住宅地になるので、もともとの地元の人も結構住んでいるんです。幼稚園には『親子2代で通っている』という人もいます」

 こうした「自分もこの幼稚園の卒園生」という保護者が、行事などで率先して役員を手伝う“リーダー的な立場”にいるという。

「そのうちの一人である40代のAさんも、園で会うと、小学校の学区情報や夏祭りの情報などを共有してくれて、ほかのママより年上ということもあり、みんなのリーダー的存在になっています。でも、ちょっと困ったことがあって……Aさんって、スマホやパソコンを使うのが苦手みたいなんです。親しいママ友とのグループチャットで、『AさんはLINEで連絡が取りづらい』『スマホやパソコンを使う頼まれごとをされて困っている』と話題になったんです」

 その頼まれごとの一つが、園行事の写真購入を代行してほしいというものだ。

「うちの園では、プライバシーの問題から、カメラマンに撮影してもらった行事の写真を、園内に掲示しないことになっています。代わりに、専用の販売サイトからほしい写真を選び、有料で購入するんです。自宅にいながら、空いた時間にスマホやパソコンで写真を確認できるため、とても便利なのですが、Aさんから『私の娘の分も買って』と頼まれるようになって、正直面倒に感じています……」

 園専用の写真販売サイトは、専用のログインパスワードなどが付与され、関係者しか閲覧できない仕様になっている。

「ママ友とのランチで、『子どもの有料販売の写真を購入しているか』という話題になり、『私は毎回購入している』と答えたのがまずかったみたいで。Aさんから『買いたいけど、よくわからなくて。送料はこちらが払うから、私の娘の分も買ってくれないかしら』と言われて、つい承諾してしまったんです」

 後悔したような表情を浮かべる恵里佳さん。Aさんは、「うちの子が写っているものであれば、あなたの判断で選んでもらいたい」と頼んできたという。

「運動会などの大きなイベントの写真は、全部で100枚以上にもなります。子どもの顔を登録しておくことで、近い顔の画像が表示される機能もあるのですが、精度が低くて、同じ髪形の別の子の写真が表示されるんですよ。また、学年ごとに分けて表示されることもない。子どもの良い表情の写真が欲しければ、結局全ての写真に目を通すしかないんです」

 こうした実情を、親しいママ友とのグループチャットで愚痴ったという恵里佳さん。「確かにAさんってそういうところあるよね」などと盛り上がったそうだ。

「全ての画像を見るだけで一苦労なのに、送られてきた写真をAさんに渡すと、気に入らないのか『いらない』と言いたげな不機嫌な顔をされたりもします。仲の良いママ友から『毎回は面倒だよね、パシリみたいじゃん』『送料を浮かしたいママをグループチャットで探したらいいのに』と、グループチャットで励まされ、ちょっとすっきりしましたが……」

 このように、幼稚園や保育園では、保護者や保育士の負担を減らそうとIT化が進んでいるが、恵里佳さんのように、また別の負担を強いられるケースもあるようだ。

 都内にある認証保育園に4歳になる息子を通わせている保奈美さん(仮名)は、園からの連絡方法が全てプリントされた紙で渡されるのを、不便に感じている。

「親しいママ友が、課外学習の持ち物や保護者会の時間などを、毎回グループチャットで聞いてくるんです。わからないことを聞く手段として、グループチャットは便利なのですが、連絡帳に入っている配布物にきちんと目を通していないような気がして……。最近は『なんでもかんでも気軽に「教えて」と頼みすぎなのでは?』と感じるようになりました。そもそも園が、プリントではなくメールで連絡事項を送ってくれればいいんですけどね」

 保護者会で取り上げられた内容を、親切なママがグループチャットで共有することもあるという。

「仕事が忙しいのかもしれませんが、中にはたったの一度も顔を出さないママもいます。『誰かが教えてくれるから、別に行かなくてもいい』って空気を感じ、モヤモヤするんですよ。参加しているママたちは時間を割いているのに……保護者会後にだけグループチャットにやってきて、『教えてください』って、どうなんでしょう」

 一方、小学生の子どもを持つママたちにとって、「欠席の連絡」は頭を悩ませるものの一つだという。多くの公立小学校では、欠席の連絡のために、保護者が学校に電話するのが禁止事項となっている。なんでも、インフルエンザなどが流行した際、職員室の電話がつながらない状況になってしまうのを避けるためだという。その代わりに、家が近所の子や同じクラスの友達に、欠席の旨を書いた連絡帳を預け、担任の先生に渡してもらわなければならないそうだ。

 なんともアナログな方法での欠席連絡だが、入学前の説明会が行われる2月のシーズン、ネット上では「誰も知り合いがいない、欠席連絡はどうしよう」というママたちの悲痛な声を見かける。

 昨年から、都内にある小学校に息子を通わせている裕美さん(仮名)は、子どもの具合が悪くなると、自分も気分が落ち込むという。

「学区から遠い保育園に子どもを預けていたため、小学校に知り合いが誰もいなかったんです。入学してみると、すでに園時代のママ友たちがグループをつくっていて、欠席時の連絡帳の受け渡しもグループチャットでささっと連絡を取り合い、仲間同士で快くやっているようでした。私は、交流がなかった近所のママさんに、思いきってLINEの連絡先を交換してもらい、欠席の時には『連絡帳をお願いします』とメッセージを送りました」

 連絡帳をほかの児童に預ける場合、保護者にLINEであらかじめ頼むことが主流となっているようだ。

「うちの子は体調を崩しやすいタイプで、よく学校をお休みするんですが、LINEで『お願いします』と送ると、いつも『大丈夫ですよ』と一言しか返信がなくて……。このママさんと私は、PTAのメンバーで、彼女はそのグループチャットでは、とても張り切ってメッセージを送っているんです。そのギャップを見ると、自分が参加していないグループチャットで、『あの人は頼んできてばかりで図々しい』と言われていないか、勝手に心配になってしまいます」

 今はLINEのおかげで、頼みごとがしやすくなった半面、お礼などの礼節が欠けてしまっているのかもしれない。一方で、「こんな気軽に頼んでしまって、相手にどう思われているか」と過剰に不安に駆られるケースもある。そんな便利さゆえにこじれてしまう、ママ友コミュニケーションの側面を見たような気がした。

母の死でわかった“一族の支配者”――「ママがいなくなったんだから……」優しい伯母の正体

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

 「ヨロヨロ・ドタリ」期の親を持ち、介護に直面している子ども、特に娘たちは、「ヨロヨロになって子どもの世話になる前に、さっさとこの世を去りたい」と口を揃える。「ただ、親を置いて先には逝けない」というのも、また共通した思いだ。それはつまり都合の良い「ピンピンコロリ」幻想でもある。それができるなら誰も苦労しない。ヨロヨロの親たちも、過去そう思って生きてきたはずなのだから。

女が強い家系

 浅倉貴代さん(仮名・37)は、5年前に母親を亡くした。母親はまだ50代。体調が悪くなり、検査をしたときにはがんが広がり、すでに手術もできない状態だった。たった半年の闘病であっけなく逝ってしまった。

 浅倉さんはもちろん、祖母や母の姉である伯母の悲しみは大きかった。というのも、浅倉さん一族は、自他ともに認める「女が強い家系」。祖母は、早くに亡くなった祖父に代わり事業を営んでいたし、その祖母と伯母一家は同居していた。そして、その離れに浅倉さん家族が住んでいて、伯父や浅倉さんの父親の影は薄かったという。

「祖母は、婿である伯父に事業を譲りましたが、自由になるお金も持っていたし、ずっと存在感は大きかった。私たち家族が出かけるときには、いつも祖母や伯母、従姉たちと一緒でした。夏休みや冬休みになると祖母が持っている別荘に滞在したり、年に1回は必ず一族の女たち全員でハワイに行って楽しんでいました」

 浅倉さんに女きょうだいはいないが、従姉は皆女。浅倉さんが夫と結婚したのも、伯母の紹介だった。だから夫との結婚後も、生活スタイルはそれまでとほとんど変わらなかった。

 浅倉さんが、東北にある夫の実家に行くのは年に1回あるかないか。娘2人が生まれると、移動が大変だという理由でますます足が遠のいた。浅倉さんが友人と会うときには、実家に娘を預けるか、母親が浅倉さん宅に泊まり込んで娘たちの世話をしてくれる。夫はおとなしい人だったので、実家べったりの浅倉さんに対して、意見をすることもなかった。

「夫は仕事も忙しかったので、私が実家の母に子育てを手伝ってもらえてラッキーくらいにしか考えていなかったんだと思います。お正月やお盆などでも夫の実家に帰らずに、祖母の別荘に滞在して、夫が仕事に戻ったあとも母と娘、祖母、伯母、従姉たちと女ばかりで楽しんでいました」

 母親の死は、祖母や伯母にとっても、ぽっかり大きな穴が開いたようだった。

「それでも伯母は、早くに母を亡くした私のことを不憫に思ったんでしょう。それまで母がやってくれたように、私が出かけるときは娘たちを預かってくれたり、娘を迎えに行くと夕食のおかずを作っておいてくれたりしました。だから、もちろん母が突然亡くなったのは悲しかったのですが、伯母や祖母、従姉たちがいてくれることはまだ恵まれていると、感謝していたんです」

 そんな関係に少しずつ変化が表れてきたのは、母親の三回忌が終わった頃だった。

「実家に父の様子を見に行ったついでに、祖母のところにも顔を出したんです。というか、父のところに行こうとすると、必ず祖母と伯母の家の敷地を通らないといけなくなっているんです。すると、伯母からこんなことを言われました。『別荘に行くのはいいけれど、貴代ちゃんの子どもたちが使ったものが出しっぱなしだったり、掃除ができていなかったりする。これまでは貴代ちゃんのママが気を配ってきれいにしてくれていたし、別荘の使用料や管理費を毎年おばあちゃんに払ってくれていたのよ。貴代ちゃんは知らなかったかもしれないけど、別荘を維持するのに結構な金額がかかっているの。ママがいなくなったんだから、これからは貴代ちゃんにも使った分の費用くらいは払ってね』って」

――後編は2月23日更新

 

母の死でわかった“一族の支配者”――「ママがいなくなったんだから……」優しい伯母の正体

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

 「ヨロヨロ・ドタリ」期の親を持ち、介護に直面している子ども、特に娘たちは、「ヨロヨロになって子どもの世話になる前に、さっさとこの世を去りたい」と口を揃える。「ただ、親を置いて先には逝けない」というのも、また共通した思いだ。それはつまり都合の良い「ピンピンコロリ」幻想でもある。それができるなら誰も苦労しない。ヨロヨロの親たちも、過去そう思って生きてきたはずなのだから。

女が強い家系

 浅倉貴代さん(仮名・37)は、5年前に母親を亡くした。母親はまだ50代。体調が悪くなり、検査をしたときにはがんが広がり、すでに手術もできない状態だった。たった半年の闘病であっけなく逝ってしまった。

 浅倉さんはもちろん、祖母や母の姉である伯母の悲しみは大きかった。というのも、浅倉さん一族は、自他ともに認める「女が強い家系」。祖母は、早くに亡くなった祖父に代わり事業を営んでいたし、その祖母と伯母一家は同居していた。そして、その離れに浅倉さん家族が住んでいて、伯父や浅倉さんの父親の影は薄かったという。

「祖母は、婿である伯父に事業を譲りましたが、自由になるお金も持っていたし、ずっと存在感は大きかった。私たち家族が出かけるときには、いつも祖母や伯母、従姉たちと一緒でした。夏休みや冬休みになると祖母が持っている別荘に滞在したり、年に1回は必ず一族の女たち全員でハワイに行って楽しんでいました」

 浅倉さんに女きょうだいはいないが、従姉は皆女。浅倉さんが夫と結婚したのも、伯母の紹介だった。だから夫との結婚後も、生活スタイルはそれまでとほとんど変わらなかった。

 浅倉さんが、東北にある夫の実家に行くのは年に1回あるかないか。娘2人が生まれると、移動が大変だという理由でますます足が遠のいた。浅倉さんが友人と会うときには、実家に娘を預けるか、母親が浅倉さん宅に泊まり込んで娘たちの世話をしてくれる。夫はおとなしい人だったので、実家べったりの浅倉さんに対して、意見をすることもなかった。

「夫は仕事も忙しかったので、私が実家の母に子育てを手伝ってもらえてラッキーくらいにしか考えていなかったんだと思います。お正月やお盆などでも夫の実家に帰らずに、祖母の別荘に滞在して、夫が仕事に戻ったあとも母と娘、祖母、伯母、従姉たちと女ばかりで楽しんでいました」

 母親の死は、祖母や伯母にとっても、ぽっかり大きな穴が開いたようだった。

「それでも伯母は、早くに母を亡くした私のことを不憫に思ったんでしょう。それまで母がやってくれたように、私が出かけるときは娘たちを預かってくれたり、娘を迎えに行くと夕食のおかずを作っておいてくれたりしました。だから、もちろん母が突然亡くなったのは悲しかったのですが、伯母や祖母、従姉たちがいてくれることはまだ恵まれていると、感謝していたんです」

 そんな関係に少しずつ変化が表れてきたのは、母親の三回忌が終わった頃だった。

「実家に父の様子を見に行ったついでに、祖母のところにも顔を出したんです。というか、父のところに行こうとすると、必ず祖母と伯母の家の敷地を通らないといけなくなっているんです。すると、伯母からこんなことを言われました。『別荘に行くのはいいけれど、貴代ちゃんの子どもたちが使ったものが出しっぱなしだったり、掃除ができていなかったりする。これまでは貴代ちゃんのママが気を配ってきれいにしてくれていたし、別荘の使用料や管理費を毎年おばあちゃんに払ってくれていたのよ。貴代ちゃんは知らなかったかもしれないけど、別荘を維持するのに結構な金額がかかっているの。ママがいなくなったんだから、これからは貴代ちゃんにも使った分の費用くらいは払ってね』って」

――後編は2月23日更新

 

「好きな男に会えずイライラした」さいたま連続放火魔、法廷で呻き続けた中年女の姿【ドン・キホーテ放火事件・後編】

埼玉県さいたま市緑区。店員3人が死亡、8人が重軽傷を負うとい大被害をもたらした「ドン・キホーテ浦和花月店」の全焼から2日後、「ドン・キホーテ大宮大和田店」で火災が起こった。犯人として浮上したのは、当時47歳の渡辺ノリ子。「浦和花月店」と「大宮大和田店」の火災だけでなく、イトーヨーカドーやサティの女子トイレに火を放ち続けていたのだ。職場では「おとなしくて目立たない。真面目な人」という評判だったが、「交際相手とのトラブルが絶えなかった」と知人は語る。

(前編はこちら:万引き常習犯からさいたま連続放火魔へ――真面目な中年女のウラ側【ドン・キホーテ放火事件・前編】)

「好きな男性に会えずイライラした」二転三転する供述

 恋愛が、万引きと放火にどう関連したのか――。動機はいったい何だったのか――。ところが、ノリ子は取り調べにおいても、公判においても、供述を二転三転させ、日本中を困惑させた。当時は裁判員制度施行前のため、捜査が進んだものから追起訴を重ね、審理は細切れに行われていた。

 2005年3月、最初に起訴されたのは「ドン・キホーテ大宮大和田店」で毛布を燃やし、腕時計などを万引きした事件についてだった。さいたま地裁での初公判で、ノリ子は「ものを盗むつもりはなかった」と万引きをするつもりはなかったと否定し、放火未遂罪についても「火はつけていません」と否認。

 それでも県警が状況証拠を積み重ねたことで、翌月、ノリ子は「ドン・キホーテ浦和花月店」を全焼させた放火の罪で逮捕される。このときノリ子は「もう裁判でうそは言いたくない」と7件すべての放火と放火未遂罪について関与を認めたのである。

「好きな男性に会えず、イライラして火をつけた。人が死ぬとは思わなかった」

 一連の放火事件についてノリ子はこう供述したという。連続放火の動機としては弱いものの、ようやく犯行を認めたことで捜査員らがホッとしたが、それはつかの間だった。ノリ子は再び、煙に巻こうとする。

 全てを認めたその翌日、弁護人と接見して「どこにも火をつけていない」と話し、あっという間に否認に戻ったのである。結局、全焼して3名が命を落とした「ドン・キホーテ浦和花月店」の放火事件についても「殺意があったと認めるに足りる証拠がない」と、殺人罪での起訴はなされなかった。

 動機どころか犯行そのものも認めなくなったノリ子。しかし、犯行当時に同居していた男性が証人出廷し、前後のノリ子の行動を明かした。ドン・キホーテの放火事件当日に彼女は「(好きな男性の)家に火をつけてくる」と言い残し、外出。翌日の朝方、家に戻ってきたという。テレビで放火の様子が流れているのを見ながら、男性は聞いた。

「お前がやったのか」

 このとき「やってない」と答えたというが、逮捕後に川越署の留置場で同じ房にいた女性は、公判に出廷しこう証言する。

「渡辺さんが3月上旬『事件のことで悩んでいる。まさか死ぬとは思わなかった』と話しているのを聞いた」
「『私は無期かコレだから』と言いながら、左手の親指で首を切る仕草をした。死刑のことだとわかり、3人が亡くなった浦和花月店の火災のことを言っているのだと思った」

 ノリ子は法廷でその女性の名をブツブツと小声でつぶやきながら、その後ろ姿をじっと見つめていた。

 一度は認めながらも否認に転じ、そのまま一連の放火を認めず、被告人質問でも「わかりません」「やってません」「覚えていない」を繰り返したノリ子には、求刑通りの無期懲役の判決が言い渡された。

 判決を不服として即日控訴したが、いざ控訴審が始まっても、ノリ子の態度はやはり変わらなかった。それどころか、控訴審で弁護人はこう訴え始めた。

「被告人は自分がなぜ、裁判を受けているのかすら、わかっていないのです」

 いわく、ノリ子が前頭側頭型認知症に罹患している疑いが精神鑑定などで浮上したのだという。だが、「交際相手やその家族に対してだけ嫌がらせをしていた」ことなどから、「認知症で判断能力が落ちていた可能性は否定できないが、責任能力がある70~80歳の高齢者と同程度の判断能力はあった」と認定し、08年5月に控訴を棄却している。

 この判決言い渡しの際、ノリ子は呻くようにブツブツとささやき始めた。

「……やってません」
「……お願いします。……やってません」

 読経のような呻きは、判決言い渡しが終わるまで続き、終わってもブツブツと続いた。

「うるせえよ!」

 傍聴席から怒号が上がると一瞬、呻き声も途切れたが、しばらくするとまた、ブツブツと始まるのだった。

 真っ赤なシャツにピンクのジャージの上着、紺色のジャージのズボン。白髪が混じったつやのない髪を左側頭部で結わえ、鼻先にメガネをかけたノリ子は、法廷で呻き続けた 。その後、ノリ子は上告したが、08年11月にこれも棄却され、無期懲役が確定した。

 近年では、万引きを繰り返す「クレプトマニア」という病の存在も知られ、クレプトマニアに前頭側頭型認知症の患者がいることも徐々にわかってきた。長年勤めた病院を退職してから、交際相手宅への奇妙な行動や万引きが目立ち始めたノリ子。この時点で周囲が通院を勧めていれば、事件は起こらずに済んだだろうか。

 当時取材した記者によれば、「そもそもの放火の動機というのが、交際していた男性とトラブルを起こしてイライラし、そのストレスから万引きをするようになった」というが、ノリ子は語らなかった。 クレプトマニアだったのか、男性関係のストレスだったのか――。

 全焼した「ドン・キホーテ浦和花月店」は事件翌年に解体された。その跡地にはドラッグストアが建ち、事件の痕跡は残っていない。火災で命を落とした店員3名の遺族らは、さいたま市消防局が適切な対応を怠ったとして、市に損害賠償を求める訴訟を提起していたが、11年に賠償義務が発生しない形で和解が成立している。

参考文献
・「週刊新潮」2005.3.3号、2005.5.5・12号
・「週刊ポスト」2008.7.11号
・「週刊女性」2008.3.11号

「好きな男に会えずイライラした」さいたま連続放火魔、法廷で呻き続けた中年女の姿【ドン・キホーテ放火事件・後編】

埼玉県さいたま市緑区。店員3人が死亡、8人が重軽傷を負うとい大被害をもたらした「ドン・キホーテ浦和花月店」の全焼から2日後、「ドン・キホーテ大宮大和田店」で火災が起こった。犯人として浮上したのは、当時47歳の渡辺ノリ子。「浦和花月店」と「大宮大和田店」の火災だけでなく、イトーヨーカドーやサティの女子トイレに火を放ち続けていたのだ。職場では「おとなしくて目立たない。真面目な人」という評判だったが、「交際相手とのトラブルが絶えなかった」と知人は語る。

(前編はこちら:万引き常習犯からさいたま連続放火魔へ――真面目な中年女のウラ側【ドン・キホーテ放火事件・前編】)

「好きな男性に会えずイライラした」二転三転する供述

 恋愛が、万引きと放火にどう関連したのか――。動機はいったい何だったのか――。ところが、ノリ子は取り調べにおいても、公判においても、供述を二転三転させ、日本中を困惑させた。当時は裁判員制度施行前のため、捜査が進んだものから追起訴を重ね、審理は細切れに行われていた。

 2005年3月、最初に起訴されたのは「ドン・キホーテ大宮大和田店」で毛布を燃やし、腕時計などを万引きした事件についてだった。さいたま地裁での初公判で、ノリ子は「ものを盗むつもりはなかった」と万引きをするつもりはなかったと否定し、放火未遂罪についても「火はつけていません」と否認。

 それでも県警が状況証拠を積み重ねたことで、翌月、ノリ子は「ドン・キホーテ浦和花月店」を全焼させた放火の罪で逮捕される。このときノリ子は「もう裁判でうそは言いたくない」と7件すべての放火と放火未遂罪について関与を認めたのである。

「好きな男性に会えず、イライラして火をつけた。人が死ぬとは思わなかった」

 一連の放火事件についてノリ子はこう供述したという。連続放火の動機としては弱いものの、ようやく犯行を認めたことで捜査員らがホッとしたが、それはつかの間だった。ノリ子は再び、煙に巻こうとする。

 全てを認めたその翌日、弁護人と接見して「どこにも火をつけていない」と話し、あっという間に否認に戻ったのである。結局、全焼して3名が命を落とした「ドン・キホーテ浦和花月店」の放火事件についても「殺意があったと認めるに足りる証拠がない」と、殺人罪での起訴はなされなかった。

 動機どころか犯行そのものも認めなくなったノリ子。しかし、犯行当時に同居していた男性が証人出廷し、前後のノリ子の行動を明かした。ドン・キホーテの放火事件当日に彼女は「(好きな男性の)家に火をつけてくる」と言い残し、外出。翌日の朝方、家に戻ってきたという。テレビで放火の様子が流れているのを見ながら、男性は聞いた。

「お前がやったのか」

 このとき「やってない」と答えたというが、逮捕後に川越署の留置場で同じ房にいた女性は、公判に出廷しこう証言する。

「渡辺さんが3月上旬『事件のことで悩んでいる。まさか死ぬとは思わなかった』と話しているのを聞いた」
「『私は無期かコレだから』と言いながら、左手の親指で首を切る仕草をした。死刑のことだとわかり、3人が亡くなった浦和花月店の火災のことを言っているのだと思った」

 ノリ子は法廷でその女性の名をブツブツと小声でつぶやきながら、その後ろ姿をじっと見つめていた。

 一度は認めながらも否認に転じ、そのまま一連の放火を認めず、被告人質問でも「わかりません」「やってません」「覚えていない」を繰り返したノリ子には、求刑通りの無期懲役の判決が言い渡された。

 判決を不服として即日控訴したが、いざ控訴審が始まっても、ノリ子の態度はやはり変わらなかった。それどころか、控訴審で弁護人はこう訴え始めた。

「被告人は自分がなぜ、裁判を受けているのかすら、わかっていないのです」

 いわく、ノリ子が前頭側頭型認知症に罹患している疑いが精神鑑定などで浮上したのだという。だが、「交際相手やその家族に対してだけ嫌がらせをしていた」ことなどから、「認知症で判断能力が落ちていた可能性は否定できないが、責任能力がある70~80歳の高齢者と同程度の判断能力はあった」と認定し、08年5月に控訴を棄却している。

 この判決言い渡しの際、ノリ子は呻くようにブツブツとささやき始めた。

「……やってません」
「……お願いします。……やってません」

 読経のような呻きは、判決言い渡しが終わるまで続き、終わってもブツブツと続いた。

「うるせえよ!」

 傍聴席から怒号が上がると一瞬、呻き声も途切れたが、しばらくするとまた、ブツブツと始まるのだった。

 真っ赤なシャツにピンクのジャージの上着、紺色のジャージのズボン。白髪が混じったつやのない髪を左側頭部で結わえ、鼻先にメガネをかけたノリ子は、法廷で呻き続けた 。その後、ノリ子は上告したが、08年11月にこれも棄却され、無期懲役が確定した。

 近年では、万引きを繰り返す「クレプトマニア」という病の存在も知られ、クレプトマニアに前頭側頭型認知症の患者がいることも徐々にわかってきた。長年勤めた病院を退職してから、交際相手宅への奇妙な行動や万引きが目立ち始めたノリ子。この時点で周囲が通院を勧めていれば、事件は起こらずに済んだだろうか。

 当時取材した記者によれば、「そもそもの放火の動機というのが、交際していた男性とトラブルを起こしてイライラし、そのストレスから万引きをするようになった」というが、ノリ子は語らなかった。 クレプトマニアだったのか、男性関係のストレスだったのか――。

 全焼した「ドン・キホーテ浦和花月店」は事件翌年に解体された。その跡地にはドラッグストアが建ち、事件の痕跡は残っていない。火災で命を落とした店員3名の遺族らは、さいたま市消防局が適切な対応を怠ったとして、市に損害賠償を求める訴訟を提起していたが、11年に賠償義務が発生しない形で和解が成立している。

参考文献
・「週刊新潮」2005.3.3号、2005.5.5・12号
・「週刊ポスト」2008.7.11号
・「週刊女性」2008.3.11号