日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。1月19日の放送は「私って嫁ですか 妻ですか ~農家に嫁いだ友紀子の結婚~」。「子どもはつくらない」「農業は手伝わない」と宣言する農家に嫁いだ女性と、その夫の生活を追った。
あらすじ
岩立友紀子、現在32歳。サラリーマン家庭に育つが、街コンをきっかけに500年続く柏市の専業農家の長男、昌之と結婚し6年。義両親の家の敷地内に建てた夫婦の家で暮らしている。友紀子は「子どもは嫌いでつくる予定はない」「農業は手伝わない」と宣言。農家の男性を対象にした婚活サイトを立ち上げるなど婚活事業に邁進し、さらには婚活バーを昌之の金で開業するも、客が来ず1カ月半で閉店となってしまう。
そんな友紀子は、徐々に農業を手伝い始め、子どもに関しても人工授精による妊活を始める。4度の人工授精で妊娠はかなわなかったが、由紀子の婚活サイトは15組目の農家夫婦を誕生させた。
農家界の革命児か? 反抗期か?
番組では友紀子の婚活サイトに登録している米農家の青年が紹介されていた。さわやかで物腰柔らかなイケメンだったが、婚活では苦戦していると話していて「農業男子」の厳しい現実をあらためて感じた。農家の人たちがいなければコンビニで野菜サラダもおにぎりも食べられない。命を支える仕事をしている人たちが、結婚できないという焦燥感や、つらい思いを抱えて生活しているのは切ない。
しかし、家族総出で農作業する“オールドスタイル”を崩さない農家サイドにも問題はあると思う。「嫁=農作業人員+子づくり要員」は、令和の労働観、ジェンダー観にしてみれば、無理な話と思う女性の方が多いだろう。
友紀子はそのような中で「家業は手伝わない」「子どもはつくらない」との方針を打ち立てた。オールドスタイルをぶっ壊す革命児なのか、と思ったが、番組後半になって家業を手伝いだし、結婚6年目で妊活も開始する。番組スタッフから、子どもは作らない主義では、と聞かれると、「(子どもは)好きじゃないけど農家に嫁いだ時点でそこは覚悟してますよ 」と話していた。「家業を手伝わない」「子どもをつくらない」との宣言は、新たな農家の妻像を作りだしてやるといった信念より、最初から“イエ(家制度)”に従うのはしゃくだという反抗期のようなものだったのかもしれない。
しかし人は反抗期を過ぎることで大人になれる。これから農家と婚活サイトを兼業していく……と思いきや、番組の最後、妊活をいったん終了させた友紀子は、ゲストハウスをやりたいと語っていた。昌之に開業資金を出させたバーを1 カ月半で閉店した前科があるにもかかわらず、新たな「事業」を立ち上げるという。友紀子に限らず、猪突猛進タイプは始めるまでは勢いがあるが、続けることが苦手な人が多い。
昌之は、嫁に来てもらった負い目があるのかもしれないが、とりあえず友紀子に金をあまり渡さないほうがいいのでは、と他人事ながら思う。一方で、なし崩し的に“嫁”にならない友紀子のしぶとさにはたくましさも感じた。
見たところ岩立夫婦は「猪突猛進で我の強い妻・友紀子と、穏やかで辛抱強い夫・昌之」という構図に映るし、大体の場面ではそうなのだろう。しかし友紀子にだって夫への不満がある。
友紀子は夫婦間の家事負担について、昌之が担当するはずの家事を行わないため、結局、自分がしていると番組スタッフに話していた。さらに妊活は、当初は自然妊娠を考えていたものの、友紀子が「この日だ」という日を夫に伝えても、今日は無理、疲れたと協力してくれず、それで人工授精になったのだという。
妊活関係の記事を読むと、「いかに夫のプライドに抵触せず、その日その気になってもらうか」といったものが多い。しかし、そんな妻側だけの努力でいいのだろうか。しかも、岩立夫妻の場合は友紀子ではなく、昌之が子どもを望んでいるのだ。それなのに、「今日は無理」との理由で、手間も費用も、そして友紀子の体にも負担がかかる人工授精を4度も行っている。これでは友紀子の気持ちが妊活から離れ、ゲストハウスという新規事業に向くのも仕方ない気がする。
感情をあらわにする友紀子のワガママは目立つが、一見穏やかな昌之の「いつの間にか家事負担は妻の方へ」「妊活時の『今日は無理』」というワガママは見えにくい。そしてこれらは昌之固有のワガママというより、少なくない男性が共通して持っているワガママともいえるのではないだろうか。
こうしたワガママの根底には、少なくない男性が意識的/無意識的に持つ「面倒なことは女がやればいい」という考えを感じさせる。夫たちは、おそらく自分がワガママを言っている自覚すらなく、むしろ妻がうるさいことを言っている程度にしか思っていないのではないか。夫たちのこうした態度に、イラついている妻たちは多いだろう。昌之のこうした無自覚に対し、友紀子が腹を立てることに関しては、大いに応援したい。