雑誌やテレビ番組、インターネットで数多く紹介される“美容法”。その中には、医学的な根拠が証明されていないものや、「むしろ逆効果」というものまで存在しているようだ。
自身のSNSで、ちまたに広がる真偽不明の美容法に“鋭く”切り込み話題になっている、「表参道スキンクリニック」表参道院の医師・上原恵理先生に、5回に分けて“美容法のウワサ”を斬っていただく当連載。第1回目は「育乳」、第2回目は「鼻が高くなる方法」と「小顔マッサージ」、第3回目は「拭き取りメイク落とし」についてうかがった。4回目となる今回は、ドラッグストアやデパートでもよく見かける、ヒアルロン酸やコラーゲン、プラセンタなど保湿成分を配合したスキンケアコスメにまつわる“真実”についてお聞きした。
ヒアルロン酸、コラーゲン、プラセンタの違いとは
――化粧水などを購入する際、ヒアルロン酸やコラーゲン、プラセンタといった言葉をよく見かけます。美肌効果がありそうな成分ですが、実際の効果や違いがいまいちわかりません。
上原恵理先生(以下、上原) ヒアルロン酸もコラーゲンも、肌の張りや弾力を保つ効果がありますが、性質や構造はまったく違います。詳しく説明すると、ヒアルロン酸は水分を含み、水を加えるとゼリー状になる粉ゼラチンのような性質を持っていて、水分を保持して肌の保湿力を高めます。コラーゲンはタンパク質の一種で、細胞が鎖のように連なり、格子状に規則正しく立体的に張り巡らされることから、肌のハリをキープしてくれるんです。たとえるなら、ベッドのスプリングですね。また、プラセンタは動物の胎盤から抽出した成分で、細胞を活性化し代謝を高める効果があると言われています。特定の何かに効くというより、体全体を一段底上げしてくれるような効果があると考えてください。化粧品などに多い豚由来のプラセンタもありますが、一般的なクリニック(医療機関)では、ヒト由来の注射液(ラエンネックorメルスモン)を使用しています。安全性に関しては、厳格な検査を受けていますが、「生物由来製品」には感染症のリスクがあるので、絶対に安全とは言いきれません。
また、どれも十分な量が存在していれば、赤ちゃんのようにハリのあるみずみずしい肌になりますが、加齢などでヒアルロン酸が減ると肌の水分量が減り、コラーゲンが減ると鎖状の立体構造が破綻して、張りが失われてしまいます。そして、プラセンタは抗酸化作用によって、そうしたコラーゲンのダメージを抑制したり、さまざまな作用があるんです。
――どの成分も美肌に重要ですね。手軽にスキンケアコスメやサプリで補えますか?
上原 残念ながら、無理です。スキンケアコスメに含まれるヒアルロン酸やコラーゲン、プラセンタが肌の奥に浸透することはありません。というのも、皮膚は人間の体を守るバリアの役目をしているので、ウイルスやバクテリアといった微生物や汚れを侵入させないよう、分子量が500~1000以上のものは通さないといわれています。ヒアルロン酸やコラーゲンは分子量が数十万~数百万、プラセンタは数万~数十万と大きいので、どんなに肌の表面から塗り込んでも、角層の奥までは浸透しないんです。
また、口からこれらの成分を摂った場合ですが、小腸が吸収できる分子量は600、大腸は300くらいなので、せいぜい消化器官で吸収できる“小さい”アミノ酸やブドウ糖に分解されるだけ。ダイレクトに肌へ届くなんて都合のいいことは起こりません。また、コラーゲンの一種で、より分子が細かく、体への吸収性が高いと言われる「コラーゲンペプチド」という成分もありますが、吸収されたペプチドは肌以外にも血液や内臓、髪など全身に行き渡るので、これだけで“美肌”を実感することはまず無理でしょう。効果がほぼないのに、サプリメントや「コラーゲンたっぷり」などと言われるフカヒレに何万円も出すなら、同様に名前が挙がる手羽先など安い食材を食べた方がマシだと思います(笑)。
――では、低分子化させた「ナノヒアルロン酸」や「ナノコラーゲン」であれば、浸透するでしょうか?
上原 確かに、分子量的に通るかもしれませんが、通過したところで、小さいヒアルロン酸やコラーゲンが大きい分子と同様の働きをするかというと、疑わしいです。例えば、ベッド用マットレスのスプリングがへたった時、細かく裁断したスプリングを大量に入れても、弾力性は復活しませんよね。それと同じです。
――結局、スキンケアコスメにヒアルロン酸やコラーゲン、プラセンタが含まれていても無意味なのですか?
上原 蒸発してしまう水分をキープするという意味では、“保湿効果”はありますが、それだけ。「肌の奥に浸透して、肌に存在するコラーゲンやヒアルロン酸を本来の状態に再構築する」と思っている人が多いようですが、それは誤解なので覚えておいてください。また、美容皮膚科でも、肌にヒアルロン酸やコラーゲンを “肌に入れる”というアプローチはせず、医療機器や医薬品を用いて、生成を促進するという治療法を取ります。医療でも、“間接的”にヒアルロン酸やコラーゲンを増やしているのですから、市販の化粧水で効果を得られたとしたら、プラセボ効果でしょう。
――通販などで「原液100%」と書かれた、いかにも効果がありそうな美容液も、意味がないってことなんですね……。
上原 もちろん! 原液をボトルリングしたようなパッケージですが、クリニックが使用する医薬品とはまったくの別物です。
スキンケア用品は「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」により、全成分を配合量の多いものから記載するという決まりになっています。実際に「原液100%」を謳っている商品の成分を見てみると、最初に書かれているのが「水」で、美容成分は全体の“約0.2%”だけってことも。法律上、材料メーカーから出荷された美容成分に、化粧品メーカーや工場が手を加えなければ、比率関係なく「原液100%」と表記しても問題ではないんです。
ただ、消費者はまさか0.2%しか入っていないなんて思わないでしょう? 「原液100%=プラセンタエキスだけ」と思い購入したとして、99.8%が水でできているって違和感を覚えませんか!? 「100%=効果が高い」というような消費者の思い込みを利用し、法律の網をかいくぐっている製品が許せないですし、私は怒り狂っています!
インフルエンサーは医学の知識がない素人
――最近はインフルエンサーや口コミサイトなど、一般人の感想を参考に商品を選ぶ人も少なくないですよね。今こそ、消費者一人ひとりが正しい知識を持たなければいけないと感じました。
上原 今は正しい情報を探すのが大変なくらい、誤った“美容の常識”で溢れています。例えば、化粧水にせよ乳液にせよ、「濃密な方が効果もある」と思い込んでいる“こってり信仰”も一概には良いとは言えません。実際、“こってり”させる成分が邪魔をして、有効成分が皮膚に浸透しないってこともあるんですよ。
インフルエンサーは医学の知識がない素人です。彼女たちは、良い製品を見極める知識があるわけでもなく、“仕事”として商品をアピールしているだけなので、そのからくりや危険性に気付いてほしいです。私たち医者は医学部で6年学び、国家資格の医師免許を取得。そして現在でも新しい情報を得るために勉強し続けています。また、クリニックで新商品を導入する際は論文を読み、効果や安全性を確かめているので、インフルエンサーのように根拠のないものは勧めたりしません。ただ、最近はそのような、ステマドクターもいるので……信頼できる医師や正しい美容知識を、消費者自身が見極める力が必要です。
美容皮膚科・外科に高額なイメージがあって、ハードルが高いと感じるのもわかりますが、カウンセリング時に予算を相談することもできます。月1~2万円代の施術もありますし、効果がわからないデパコスよりよっぽど安上がりなのでは。もうちょっと我々を信用、そして頼ってくれたらうれしいです(笑)。
上原恵理(うえはら・えり)
2006年群馬大学医学部医学科卒業後、同年東京大学医学部附属病院研修医として勤務。08年に東京大学形成外科医局、10年帝京大学医学部附属病院を経て、18年より表参道スキンクリニック勤務。豊胸や乳房再建の最先端術式を数多く手掛けており、美容外科医の目線から、症例や美容法に切り込んだSNSが話題に。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)や多数メディアに出演するなど、活動の場を広げている。
表参道スキンクリニック表参道院
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