宗教団体「幸福の科学」の創始者兼総裁である大川隆法氏が設立し、信者の2世が通うとされる男女共学の全寮制中高一貫私立校「幸福の科学学園」。同校の設立から5年後となる2015年、幸福の科学は、4年生大学の開学計画として「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)」も設立している。大学設置基準の要件を満たさないとして大学の認可は得られず、大卒認定は受けられない私塾の位置づけだが、偏差値70とも言われる幸福の科学学園から8割近い生徒が進学している実情もあるようだ。
サイゾーウーマンではこれまで3回にわたって、高校1年生からの3年間、幸福の科学学園に在籍した1期生・Aさんに、ベールに包まれていた学園生活を聞いてきた。最終回となる4回目は、HSUに関するエピソードとともに、Aさんが今、幸福の科学自体をどのようにとらえているのかに迫る。
【第1回】「私は選ばれた人間」と思った――大川隆法登場に涙した入学式
【第2回】社会科で「霊言」「過去世」の話題も――知られざる授業内容
【第3回】セックスした生徒は独房懲罰、鍵のない部屋で私物物色――息苦しい寮生活
HSUの入学を辞退したら「悪魔が憑いている」と説教
――幸福の科学が大学としての認可を目指す「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(以下、HSU)」については、何かご存じですか?
Aさん(以下、A) 私は幸福の科学学園を卒業後、一般の大学に進学しましたが、1年生のときに「次年度からHSUの1期生として編入しないか」と親に勧められたので、ある程度は知っています。HSUには、人間幸福学部、経営成功学部、未来産業学部、芸能未来創造学部という4つの学部があって、政治、経済、宇宙、芸能など、幸福の科学グループの活動に関連する内容を教えているんです。卒業後は、出家して幸福の科学の職員になったり、幸福実現党に入ったり、幸福の科学が運営する芸能プロダクションに所属したりする人が多いみたいですね。大学として認可されていない分、好き勝手やっているというか、幸福の科学学園より宗教色が濃い印象もあります。
――Aさんは、親から勧められて入学したのですか?
A いいえ、していません。HSUの話が持ち上がったときは、大学の認可が下りる前提だったし、幸福の科学学園の卒業生であれば推薦で合格できたようなので、私もはじめは「転学してもいいかな」って思っていました。でも、開校の数カ月前に、不認可の通知が出て私塾になることが決定したので、「大学を辞めてまで入り直すことはない」と思い直したんです。でも、親には「HSUに行かなかったら絶対に不幸になる」と言われ、「不幸になったときに親のせいにしない」という誓約書まで書かされました。
――不認可になったことで入学を辞退した人も多かったのでは?
A 辞退したのは少数で、ほとんどみんな入学したみたいですよ。辞退したの子の中には、辞退を申し出てから開学までの間、数人の教授と何回か面談させられたことがあったと言っていました。教授から突然電話がかかってきて「あなたには悪霊が憑いている」「私が教育し直す」などと説教されたといった話も聞きましたね。
――なかなか衝撃的ですね。
A 実は幸福の科学学園に在籍していたときにも、似たような話を聞いたことがあるんです。学園を辞めようか悩んでいた生徒が、現在校長を務める女性に突然呼び出されて、カフェテリアで数時間くらい説教されたなんて話も。幸福の科学の信者は、表向きは穏やかで優しい人が多いのですが、幸福の科学を否定された瞬間、態度が豹変したり、悪霊が憑いていると言い出したりする人もいるんです。
――現在Aさんは幸福の科学を脱会されているのでしょうか?
A 気持ちの上では脱会していますし、信仰も活動も一切していません。でも、書類上では除籍されていないので、正式に辞めたことにはなっていないと思います。2世の場合、脱会しようとすると親に連絡がいくようなんです。それで揉めた知り合いもたくさんいます。私は親に連絡がいくのが嫌で、正式な手続きはせずに抜けたのですが、親がどうやら感づいたようで、ひとり暮らしの家に「このままでは不幸になる」「今あなたには悪霊がとり憑いている」みたいな手紙がいきなり送り付けられてきました。無視していると、今度は「私にとって、どれだけあなたがかわいい子だったか」といった親の思いをしたためた内容の手紙に変わり、それも無視したら、LINEで直接連絡をよこしてきました。いろいろな手で引き戻そうとしていたようですが、「気持ち悪い」というのが正直な気持ちです。
――そもそも、脱会しようと思われたきっかけは何だったのでしょうか?
A 親への不信感が一番ですね。親が信者だったことで、私も6~7歳くらいのときに幸福の科学に入会しています。当時の記憶はないし、親の影響もあって、何の疑問も抱くことなく信じ続けてきました。でも、幸福の科学学園に入ってから、山奥で常に大人の信者に監視されていることに息が詰まると感じるようになり、また、1期生ということでカリキュラムや先生の言うことがコロコロ変わったので、だんだんと「自分たちは“お試し”なんだ」「大人の都合に振り回されている」ということもわかってきたんです。それを親に訴えたものの、理解してもらなかったことが引き金になりましたね。親に対して疑問や反感を持つようになったら、親のバックにある幸福の科学自体にも疑問を感じるようになって、サラッと抜けたという感じです。
――現在の親御さんとの関係は?
A 親は“幸福の科学を信じている私”には優しかったのですが、幸福の科学を辞めるか辞めないかで揉めてからは関係がこじれ、結局、戸籍を抜きました。ひとり暮らしの家も数回引越し、住民票の閲覧もできないようにしているので、事実上の絶縁状態です。
――2世が脱会するのは、親子の縁を切るに等しいのでしょうか?
A 周囲の2世に話を聞くと、「親に説得を試みたらわかってもらえた」とか「幸福の科学を離れることを親が黙認してくれた」とか、そういう家庭もあるんです。うちのように親がストーカー化するような家庭は珍しいのかもしれません。どんな宗教にも言えることですが、結局は家庭環境なんですよ。ひどい親の下でなければ、私は現在も幸福の科学を信じて、幸せに暮らしていたかもしれません。親の言う通りHSUに編入して、今ごろは信者がやっている会社で働いていた可能性もあります。たとえ安月給でも、「私は選ばれた人間だから、この苦労は主が使命を課しているんだ」なんて、都合よく解釈して。実際、そういう2世もたくさんいるのではないでしょうか……そう考えると、もしかしたら、この親の下でよかったのかもしれませんね。幸福の科学に疑問を持てたので。
――元信者として、今は幸福の科学をどのように、とらえていらっしゃいますか?
A 幸福の科学信者には、「幸福の科学の教えを知っている人は選ばれた人間」という選民思想を持っています。信者ではない一般の人を「選ばれなかったかわいそうな人たち」ととらえ、だから「教えを伝導してあげましょう」と、上から目線のスタンスになるというか……。それはどうなんだろうと感じることはありますね。あと、公式サイトに、正心法語を読むことで「末期がんが完治した」「エイズが回復した」といった衝撃的な体験談がたくさん書かれているので、それは問題かなとも思います。また私自身、「家が裕福ではない」「親がちょっとおかしい」という2世信者の生きづらさは、身をもって実感しているところです。
ただ実際のところ、信者ではない“一般の人の視点”で幸福の科学を見た時、家族、親戚、友⼈や同僚が信者だと⼤変なこともありますが、「まったくの無関係」であれば、強引な勧誘を受けたり、危害を加えられたりといったことはないので、無害なのではないかとも思いますね。
――脱会後の生活の中で、幸福の科学の教えなどが影響していると感じたことはありましたか?
A 幸福の科学の信者はみんなすごく優しくて、幼い頃から「選ばれた子」としてすごく大切にしてくれていたので、私自身も「選ばれた人間として、きっと他人とは違う優秀なところがあるはず」「私は人々を救うために生まれてきたんだ」って、ずっと信じて生きてきました。その影響からか、脱会後も選民思想が抜けず、「相手を見下していたな」「偉そうに言っちゃったな」と、後悔したことが何度もあります。また、幸福の科学の外の世界を、誰も教えてくれなかったので、社会に出てからは自力でイチから学ばなければなりませんでした。それはそれで楽しい面があったものの、結局15年以上を幸福の科学信者として過ごしてきて、その教えがしみついているので、世間とのギャップを感じ「もういいや、死のう」と思ったことも、正直ありました。今は「私の青春はエル・カンターレに捧げちゃったんだな」と冷静に自分のことを見ている……そんな感じかもしれません。