11月18日の『カンニング竹山の土曜The NIGHT』(AbemaTV)に、ZOZOTOWNを運営する株式会社ZOZOのコミュニケーションデザイン室長・田端信太郎氏と、生活困窮者の相談や支援を行うNPO法人ほっとプラス代表理事・藤田孝典氏が生出演し、富裕層への課税や労働問題について公開討論を繰り広げた。
先月、田端氏と藤田氏はTwitter上で大激論を展開していた。きっかけは、10月4日、株式会社ZOZOの前澤友作代表取締役社長によるツイートだ。
<2016年度77億円、2017年度34億円、2018年度70億円(予定)。個人での国内における所得税や住民税などの納税額です。買い物もするけど、税金もしっかり納めております。これからももっと稼いでいっぱい買い物して、いっぱい納税します!>
これに藤田氏は意見した。
藤田氏<ZOZOTOWN前沢社長のように、普通は開示しないから見えないだけで、年収が一億円を超える富裕層は就労収入ではなく、株や不動産、運用による資産収入が大半。いわゆる「不労所得」であり、ここに課税強化しなければ社会保障は回らないし、消費税増税の合意も形成されない。税が安すぎるよ>
すると田端氏が<いっそのこと「不労所得」とやらは税率100%にしたら?とか具体的な税率の提案が欲しいですねー>とリプライを送り、田端氏と藤田氏によるTwitter上での大激論が勃発。
藤田氏<「経済力ないヤツは子どもを産むな」から「経済力なくても産まれた子どもはみんなで支えるよ」に変われないなら、そんな国は無くなった方が未来の人類、子どものためだと思う>
田端氏<これ要するに「貧乏人の子沢山」でもオッケー!!ってことでしょ?女性の皆さん、どう思います???>
藤田氏<もう現代日本では「貧乏人の子沢山」は死語だし、現実に多子世帯は高所得者が多いというのは様々な論者が指摘していますよ。低所得世帯への再分配を強めないと世帯形成は困難になっています。対談以前に社会構造の理解で噛み合わない気がします。ZOZOには人が他にいないのでしょうか?>
田端氏<現実がそうなら、日本の少子化を救うには、高所得者の子沢山を増やすしかないですが、それに対しては藤田さんはNOなんですよね?じゃあ、どうやって日本の少子化を解決なさるおつもりなのでしょう?>
このような具合で両名の議論は続き、前澤氏が<田端さん、ツイッターだともう追いきれないから、この藤田さんって方と公開討論してよ。見れたら見るから>と提案。その後も非正規労働者の時給をめぐって、田端氏と藤田氏の議論は続いた。
富裕層への課税案と強い反発
そして11月18日、前澤氏の提案に便乗する形で、『カンニング竹山の土曜The NIGHT』が田端氏と藤田氏をゲストに招き、公開討論が実現。田端氏、藤田氏のみならず、パーソナリティを務めるカンニング竹山も今回のテーマについて自らの考えをぶつけた。
主なテーマは以下4つだった。
1)富裕層にはもっと課税するべきなのか?
2)最低賃金を上げるべきなのか?
3)ZOZO前澤社長の月旅行について
4)貧富の差は広がっているのか?
討論冒頭、まず藤田氏は「今の富裕層の税金・保険料負担は非常に軽い」と主張する。
藤田氏「日本の高齢化率は27.3%と世界トップにもかかわらず、社会保障が極めて足りず、介護、年金など、困っている人たちへの支給が足りない。かなり厳しい生活をしている人たちがいる中で、基本的に社会は助け合いの仕組みだから、(お金を)持っている人たちがある程度負担していかないと社会が回らない。持っている人たちが払うことが基本的に必要で、(法律で)金額を一応提示してくれてはいるが、昔は今の時代より税率が高かった。金融資産取引への税率は、他の国と比べると課税される金額が少ない。社会保障の財源はないし、高齢者は多いし、こういった人たちが税金を払うのは当たり前」
すると田端氏は、“鉄の女”と呼ばれたかつてのイギリスの首相・マーガレット・サッチャーの「お金持ちを貧乏人に引きずりおろしたところで、貧乏人がお金持ちになれるわけじゃありません」という言葉を挙げ、藤田氏の主張は「富裕層が持っているものを奪えばいい」という暴論ではないかと反論。課税するならば「ちゃんと国会で議決を経て、多数派の同意を得て」すべきと主張した。
ここで“富裕層の定義”について議論が及び、田端氏はこう言う。
田端氏「僕は相続(への課税)すればいいと思っている。それは相続には自分の努力とは関係ないから。でも前澤さんとかソフトバンクの孫さんみたいに、一代で自分の努力で作った人から奪えばいいというのは、おかしくないですか? 俺はお金持ちのバカ息子、バカ娘からはどんどん巻き上げたらいいと思う。だって本人の努力じゃないんだもの。だけど、孫さんや前澤さんみたいに一代で自分の力で築いた人の資産をなぜ奪う必要があるんですか? 脱税しているわけじゃない。税金は議会で決まるんだから、民主的な決定に基づいて今の税法だって決まっているわけだから、それは今の日本国の大多数の人がそれをOKしているわけだから」
これに藤田氏は、政治家への献金は富裕層にしかできず、「ひとり一票」は建前であると反論。また藤田氏は「一世代で努力をしたから稼いでるんだっていうのは、『努力』は誰がしたのかを議論すべき」と言う。
藤田氏「努力したのは(社長らに)稼がせてあげた労働者の人たちであり、基本的に会社は労働者が稼いで頑張って努力して、それを株主や役員に配当するわけだから。今の社会は労働者に還元されていない」
田端氏「前澤さんの貢献はゼロなのか? 役員報酬を適正だと決めるのは社員ではなく株主。社員の声が弱いというのであれば、それは社員の不満がないから」
すると藤田氏は、ZOZOの非正規労働者たちからの「時給が安い」「儲かっているとは思えない賃金の水準」という声を紹介し、ZOZOに限らず「上場企業の正規と非正規の待遇差がすごい」、「儲かっているなら賃金を出そうよ」と訴える。
これについても田端氏は、経営者側の理屈で反論した。
田端氏「労働基準法で業績不振を理由とした賃下げは禁じられており、赤字だから時給や給料を下げることは無理。経営者の立場とすれば、黒字だとある程度は(賃金を)上げられるが、景気変動で赤字になっても下げることはできない。ZOZOは5年前に比べて正社員の平均年収が24%上がっている」
藤田氏「正社員だけ? 派遣は? 非正規の時給を上げよう」
田端氏「非正規の方だって、今、都心の牛丼屋さんの時給は1400~1500円するわけだから、時給上げたいんだったらそっちいけばいいだけじゃない。給料上げたいんだったら他に選択肢がある」
「給料が低いなら転職すればいい」
転職という選択肢に話が及ぶと、どこまでも社会的弱者の立場に立つ藤田氏は「(他の仕事に)行けない事情だってある」とするが、田端氏には理解ができないようだった。
藤田氏「今労働者に対する分配率が極めて低くなっている。アベノミクス効果もあり大体の企業がそこそこ儲かっていて、景気もいい。企業の業績も上がっているのに、このままの賃金水準だと、労働分配率が低く、労働者に支払われる賃金が低く、個人消費が伸びず、経済も伸びず、物価も上がらない。経済全体にとっても賃金を上げなきゃいけない状況。大企業は非正規雇用の賃金を上げ、背中を見せてほしい。問題は、労働者の4割にあたる非正規雇用」
田端氏「いや、特に都心では、サービス業の給料は、正社員の給料より、時給のアルバイト、パートのほうがはるかに上がっている。賃上げは賛成だが、最低賃金はどんな企業にも適用されるから、それで潰れる中小企業もある。そんなに職場が嫌だったら、いくらでももっと高い賃金のところあるじゃない」
藤田氏「そんなに職場を転々と変えられない。転々と変えたら、経歴に傷が付く。転職って簡単じゃない」
まだ議論は平行線だ。田端氏は「最低賃金があること自体は否定しない」が、「実際1000円分の働きしてない人もいるかもしれない」「頑張ったって価値がなければ給料払うに値しない」と手厳しい。価値のない人間は斬り捨てていく姿勢なのだろう。
カンニング竹山も、議論に参戦した。竹山は売れっ子芸人であり、「努力して稼げるようになった人間」との自負があるだろう。
カンニング竹山「ものすごく才能がある働ける人と、働けない人とを、『平等だから』と(賃金を)一緒にしちゃうと、ものすごく働ける人がやる気なくす部分もあるんじゃない。それはやっぱり給料を分けなければいけない」
藤田氏「能力に差があったり、ある程度の格差はしょうがない。でも格差が開きすぎている」
田端氏「日本の所得税って実効税率でいうと、年収800万~900万以下の人は、払っているお金より、国から受けているサービスのほうが多い。高齢化社会なら、高齢者の中で資産持っている人いっぱいいる。所得税は45%で限界」
カンニング竹山「個人的な意見だけど、稼いで何が悪いという世の中じゃないとおかしいような気がする。そうじゃなければ共産主義になればいいじゃないかと思う。収入よりも社会保障を受けている人が日本は圧倒的に多い」
すでに富裕層は、社会保障を多く支払い、低所得者への福祉に貢献しているとの見方だ。藤田氏は将来的にいっそう高齢化する日本社会の社会保障を懸念しており、「富裕層の税率を引き上げてほしい。株取引で20%しか日本は課税されない」とあらためて訴えた。
田端氏「今生きてる高齢者じゃない人にとって、高齢化している日本って別に自分の責任でも何でもない。だから高齢化しているからって税金上げろって言われても(富裕層としては)納得感ゼロ。そうだとしたら僕は海外行ってもいい」
カンニング竹山「あまりに税率を上げすぎると、株取引に興味がなくなっちゃう」
藤田氏「30~40%に上げません? 他の国はやっている」
まだまだお互いの考えは交わらない。
努力不足の貧困層が、努力した富裕層から「奪う」構図?
田端氏とカンニング竹山は、努力して富を築き上げた人間から「奪うな」と主張する。それは、「努力もしてない底辺の奴ら(貧困層、社会的弱者)が、努力をした人間たちから奪う」ように捉えている節があるからだろう。
カンニング竹山「起業してものすごくお金持ちになった人も、簡単になったわけじゃないと思う。実はものすごく裏で努力したり、みんなが寝ているときに寝ないで努力したり。で、それでお金を得ているわけじゃないですか。その人たちは金持ちになった理由がもちろんあると思うんですけど、(税負担を上げると)金持ちになるのが損みたいにもなると思うんです」
一方の藤田氏は、努力すれば誰でも金持ちになれるわけではないし、努力できる/努力が実を結ぶ環境というもの自体が平等ではないことに言及していく。
藤田氏「まず、金持ちになる前提条件がまずないと金持ちにはなれないんです。たとえば社会から義務教育を受けたり、病気になったら医療を受けたりとか、社会から色々と恩恵を受けるわけです。それって税金です、基本的には。だから色んな恩恵を受けて、努力ができて、大成したと。大成したらちゃんとそれ応分のお返しを社会にしなければならない」
カンニング竹山「貧困層でなかなか教育を受けられない人もいるけど、貧困層でもものすごい自分で勉強してうまく頑張っているやつもいますよね。そこはいつも目を向けてくれないじゃないですか、なかなか。そこじゃなくて、この子は貧困だからダメなんだ、仕事がないんだって、お前らの中にも頑張って出世したやついくらでもいるぜって思うんです。その辺はどう説明なさるんですか」
藤田氏「圧倒的多数が失敗しちゃうし、なかなか大成できないし、お笑いの業界と同じだと思います。そういった人たちに社会保障として支給したり、再分配ですね」
カンニング竹山「実際、分配することによって、また甘えちゃってやらない人もいますよね。貧困層で難しいと思うのは、確かに社会保障しなければならないし、助けなければならないし、働ける環境作らなければいけないけど、実際1個1個見てみると『そりゃあんた、なかなかそれダメだよ』って人も結構いる。個人的な意見だけど、NPO団体とか真面目に助けている人もいっぱいいるんだけど、それ逆に火に油注ぐじゃないけど、逆に立ち直れなくなってない? 甘えてる人いっぱいいるじゃんってこともあると思うんだけど」
藤田氏「そういう人もいる、甘えている人も一定数はいる。日本って甘えていると食えない社会なんです。社会保障もらえるって言っても極めて少ない金額しかもらえないし、基本的に働くことをがんばろうとみんなやっているわけなんですね。賃金が低すぎて、がんばってる人も儲からない、ちゃんとした暮らしができない」
しかし田端氏は、低賃金の仕事にしかつけないのも自己責任だと言う。
田端氏「賃金が低いのって一方的に労働者が正しくて、資本者側が悪いんですか?」
藤田氏「まあそうは言わない、今、労働組合も弱いし……」
田端氏「じゃあやっぱ労働者のせいもあるわけですよね?」
藤田氏「労働者の人たちがちゃんと賃上げ要求するとか、『がんばったんだからちゃんとお金出して』という要求も以前と比べて弱くなっている。だから頑張って働いている人も頑張ってない人も基本的にはあまり報われない」
田端氏「頑張ってて不満だったら別の会社に行ったり、転職したり、時給の安いところから高いところに……」
藤田氏「そんな簡単に転職できない」
田端氏「何で転職できないの? 職業選択の自由って憲法に書いてあるよ」
ここで田端氏の言う「労働者のせいもある」というのは、「労働者が権利を主張しないせい」との意味ではなく、「労働者の能力が低いせい」ということだろう。
「がんばれない奴は甘え!!」竹山がヒートアップ
ここで視聴者の42歳男性からのメールが紹介された。労組の強い会社と労組のない会社、どちらも経験したというこの男性は、田端氏の意見に賛同する。<世の中俗に言うブラック企業ばかりではありません。時給1500円の仕事、2000円の仕事、たくさんあります。待遇や労働環境に不満があれば社会や環境、企業のせいにして交渉やデモなんかに時間を費やすのではなく、自らのスキルアップに時間を費やし、いつでも転職やステップアップできるように備えるべき。学歴、職歴関係ありません。ちょっとした意識の差です。極端な話全員の意識がそうなれば企業も低賃金や長時間労働や低賃金で雇うようなことはできなくなると思いますし、そのほうが社会や企業を変えるよりもてっとり早いのではないでしょうか>
そして竹山は、「一般論だと思いますけど」と前置きし、日本は恵まれた国だと説いた。
カンニング竹山「日本という国はね、なんだかんだ文句言っても、餓死して死ぬって何人かいますけどそこまでじゃないですよね。働こうと思えば、言ったら何の仕事でも、とりあえず金が要ると、働こうと思えば何だってできる国だと思うんです。世界各国見るとそうじゃない国なんかめちゃめちゃあるんです。今日の夜飯食えない国だっていっぱいあるんです。僕は、自分が生活できている云々関係なく、なんかやっぱりそこにちょっとこう甘えじゃないけど、何言ってんのこの人って人も世の中、結構いると思うんです。だから藤田さんたちの活動でそういう人たちを助けるみたいになるけど、もちろんそういうところも必要だけど、(支援を)やり過ぎているところもあるんじゃないかって思ったりしているんです」
藤田氏は、「全体的に社会保障も給付弱いし、NPOの数も少ないし、日本はキリスト教もないし、助けてくれる人ってまずそんなにいない」と反論。すると竹山が“自己責任論”でヒートアップしていった。
カンニング竹山「でも自力じゃないですか人間て。自力でないと困ったって助けてくれる人誰もいないですよね」
藤田氏「でも病気になったらどうします? 病気になったりとか、介護が必要になったら」
カンニング竹山「だからそうならないため今自分で勉強します。自分が病気になった時にどうしたらいいのかって言うのは今のうちからちゃんと勉強します。何も知らないでいきなり倒れてって人世の中にいっぱいいますよ。でもそれは勉強してないからでしょ先に、なんぼでも 勉強する機会あった」
藤田氏「辛辣だなあ」
カンニング竹山「だって今調べられますよね。自分が身体ヤバくなったら介護必要になったら、自分が住んでいる町内で何があるのか、自分が住んでいる区役所に何があるのか調べることできますよね。そこ調べること辛辣ですか」
藤田氏「情報を得られるかどうかっていうのも、地方だったりとかパソコン環境だったりとか色んな」
カンニング竹山「だから僕はそれが甘えだって言うの! 情報なんか日本で腐るほど得られる、北海道から沖縄まで情報得られないところないよ今っ! ないでしょ今っ! 40代で情報得られないのどこ?」
藤田氏「40代はネット環境広がってますから。いろんな環境在りますよね。全部恵まれない環境にある者も」
カンニング竹山「誰ですかどんな人ですか? 日本人で今」
藤田氏「虐待を受けて育つとか、ブラック企業を転々とするとか、うつ病になるとか」
カンニング竹山「病気は簡単には言えないけど、ブラック企業転々としている人と取材で会ったけど、でも話してみると『お前そこダメだぜ』っていう。なんでそこチョイスしたの? 前も失敗してるじゃんって」
田端氏「考えずに、何回も二回も三回もブラック企業入っちゃう奴がブラック企業を生かしているんですよ」
カンニング竹山「ちいと自分で考えろ、NPOやり過ぎ。がんばんない奴はいっぱいいる、がんばんないバカいっぱいいる。優しくしすぎ」
田端氏「自分の椅子は自分で作ればいい。今って資本金千円で会社作れるし」
カンニング竹山「俺は20代の頃、寝ずに頑張った。人ってそんなもんなんじゃないの?」
藤田氏「それは成功できる条件があったんです。企業が払うべきものを払っていないことを問題にしている」
田端氏「いや、最低賃金は守っている」
最終的な番組の結論は、「賃上げは自分次第」「他人に期待している暇があったらまず自分から動け」というものだった。
努力して勝ち組のポジションを手に入れたと自負するカンニング竹山や田端氏と、到底「がんばればできる」で片付けられない環境の人もこの日本に数多く存在していると主張する藤田氏。それぞれが見ている世界はあまりにも違うことがわかった。そして、政治家も企業経営者も、この国の指針を定めることのできる人々はほぼ、前者だろう。格差社会という言葉をしみじみ痛感する放送となった。
落伍者を切り捨て、充分な福祉を提供しない社会であったら、そのままやがて社会全体が沈没していくと考えられる。そうなる前に手を打つべきだが、前者に属する人々には、切実に福祉を必要とする人々の姿がそもそも見えないのかもしれない。