「ノストラダムスの大予言」など、この世には、古今東西さまざまな“予言”が飛び交っている。奇奇怪怪な予言をエンターテインメントとして楽しむ文化が広がっている一方で、予言の具体性やタイミング、また伝達方法によって、炎上を巻き起こしてしまう場合もある。元モデルの霊感占い師・鈴木えりか氏が6月24日、Twitter上で「テロ予言」と取れる内容のツイートを行い、一部ネットユーザーが騒然となった。
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「わたしがいる限り好きな事はさせない
6月25日0時。ワールドカップとともに何かが始まる
ファブリックビューイング
渋谷
国立競技場、大江戸線地下
警報がなる。ガス。上からなんか降ってくる。触れれないで。
絶対いかないで。リツイート。お願い。」
「黒い格好、マスク、帽子、気をつけて。バイカラーが目印」
「もし出逢ってしまったら、前屈みになり顔を下にむけて低い姿勢で。」
(全て原文ママ)
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6月25日0時は、『2018FIFAワールドカップ ロシア』グループステージ「日本対セネガル戦」がキックオフする時間。実際、この日時に、大規模なテロが起こることはなく、ネット上では、鈴木氏に対して「不謹慎な予言だとは思いませんか?」「本当に怖がっている子もいたと思う」「恐怖心を煽って脅迫してるみたい。腹立たしい」といった怒りの声が飛び交ったのだ。
「占い師」を自称する者が、地震やテロなど、大規模な被害を伴うであろう災害・事件を予言することは少なくない。鈴木氏も以前から地震の予言を行っており、6月17日には、自身のブログで、関西を中心とした地震が発生すると指摘。すると、翌18日朝に最大震度6弱の大阪北部地震が起こり、世間を驚愕させたこともあるのだ。しかし一方で、23日もしくは24日に起こると予言していた大地震は起きず。この際は、関西在住の人を中心に「無駄に不安がらせるのはやめろ」と抗議の声が上がっていた。
大阪北部地震を“当てた”ことにより、世間の注目を集めたものの、その後は立て続けに予言を外した鈴木氏。ネット上では、彼女が人々の恐怖心を煽るような言動をすることを“脅迫”のように捉え、批判する向きもあるが、実際に罪に問わることはあるのだろうか。弁護士法人ALG&Associatesの山岸純弁護士は、次のように語る。
「自分の力だけではどうにもならないような出来事を、直接相手方に対し、または、複数の人に吹聴しても、『脅迫罪』などの罪にはなりません。例えば、先の戦争の後、『人民政府が成立したら、お前は投獄されるぞ』と脅かした人がおり、それが『脅迫罪』に問われるか否かという裁判が行われたことがあるのですが、この場合、脅かした人がどうこうできるわけではないので、『無罪』となりました。また、『知り合いのヤクザに頼んで、腕をへし折ってやる』と脅かしたような場合には、その人がヤクザと付き合いがあるか、真実性があるかどうかを検討し、脅迫罪となるかどうか判断します」
「地震が起きる」「テロが起きる」といった言葉が、たとえ人の恐怖を呼び起こしても、実際に予言で指摘した地域や施設を閉鎖させたり、また交通機関をマヒさせたりしない限り、「これだけでは罪にはなりません」(同)とのことだ。
占い師がその予言で、人の恐怖心を煽ったとしても罪に問われることはないというが、占い師の“倫理観”的にはどうなのだろうか。鈴木氏の予言を、同業者である占い師に意見を聞いた。
霊感タロット占い師である稗田おんまゆら氏は、「前提として、鈴木先生は名前を明かしておっしゃってるわけですから、言論の自由というものは尊重されるべきです。また、この方の能力云々は脇に置いてお話します」と述べ、持論を語ってくれた。
「昔、国家事業として災害などを占う時代がありました。卑弥呼もそうですよね。今でもそういったことを行っている神社もあります。しかし現代においての占い師は、依頼があった方に対して行うべきものだと思っています。メディアの依頼であれば、その予言を載せたメディアも責任を負います。不特定多数に対して、依頼もないのにそういったことを占うのは、かなりリスキーなのではないでしょうか」
稗田氏は「言論の自由はあれど、そこには責任が伴います。能力があるとされる人が、予言を行うとどういった影響があるのかを考えなければいけません」と言う。
「鈴木先生は、予言を行うことについて『人を救いたいから』『悪い予言を外すために』と言っていますが、私も占いはそのように使われるべきだと思います。ただ、不特定多数の人に向けて発信すると、それを酒の肴にするだけの人もいれば、本気で怖がる人もいますし、また便乗して炎上させようとする人もいるかもしれません。そういったことを十分に考えて発言するべきだと思います」
とりわけ、地震が来ると予言して、実際に起こった際にそれを誇るようなことは「個人的にはどうかと思います。災害は毎年起きています。予言よりも、地震への備えや地震後の行動などを啓蒙して、不安を取り除くことの方がよっぽど大事です」と語る稗田氏。その言葉の背景には、かつて稗田氏も雑誌で「大地震が起こる」と予言し、実際に大きな地震が発生してしまったことがあるといい、「それ以来、私は災害の予言はしないことにしました。流言飛語になりかねないことはやはり言ってはいけないと思います」。
テロ予言は地震予言より責任が重大
一方で、今回問題となったのは「テロ予言」だが、稗田氏いわく「テロは災害と違って、“人為的”に起こすものであり、地震予言よりも問題だと思います」と厳しい目を向ける。
「例えば、予言の場所で『黒い格好、マスク、帽子、バイカラー』の人物を偶然見かけた人が、写真を撮ってTwitterで拡散したり、『あいつが犯人だ』と思い込んで危害を加えたりするなどの危険性が出てきます。関東大震災の時、『朝鮮人(当時の呼称)が井戸に毒を入れている』という情報が飛び交い、一般市民が無実の朝鮮人やそれと誤認した人々を暴行・殺害した事件がありました。そのような事態を招く可能性もあり得るのです。まったくの無実の人を犯人に仕立て上げて、冤罪事件を生んでしまったらどうするのでしょうか」
さらに、愉快犯を生んでしまう可能性も捨て置けない。わざと黒い衣服に身を包んで予言の場所を訪れる人が出てくる、また、「最悪なのは、テロ予言を現実に実行する人が現れる可能性があることです。オウム真理教の信者は、教祖の『この世は終わる』といった予言を当てるために、サリン等一連の事件を起こしたという面もあるのではないかと言われています」。
稗田氏の話を聞くに、占い師の予言には、大きな責任が伴い、軽い気持ちで行ってはいけないものだということがわかるが、そもそも彼女にどれだけの能力があるのかも定かではない。
「鈴木先生がそうだとは言いませんが、“テクニックによる予言”というのもあります。これはある作家の先生の受け売りですが、『尾翼に赤いマークのある飛行機が、落ちてゆく様子が見えます。1年以内に起きます』といった予言は、大概当たります。というのも、飛行機事故というのは毎年起きますし、尾翼に赤や赤を含むマークをつけている飛行機は結構あるんですよ」
鈴木氏は、こうした予言について「予言を公開して広まれば広まるほど的中率は下がると思う」といった発言をしており、ネット上では「外れた時の言い訳をしているのではないか」「占い師の間で、本当にそんなこと言われているのか?」などと疑惑の目を向けられているが……。
「少なくとも私は寡聞にして存じませんし、『的中率が下がる』という意味はよくわかりません。ただし、このようにおっしゃいたかったのかもしれませんね。『予言を公開して、広まれば広がるほど、警戒をする人が増えて被害が少なくなる』と」
最後に稗田氏は、「鈴木先生がそうだとは言いませんし、言論の自由がある」とことわった上で、人が不幸になる予言を行う占い師について、「何か起きたときに、『私は予言していた』と後出しする人もいますが、卑しくも人の不幸を、自分の承認欲求を満たすために使ってはいけません。占いは不安をあおるためではなく、取り除くためにあります」という力強く語ってくれた。
今後もさまざまな予言が飛び出すだろうが、それを聞く側も、いま一度「信じるのも信じないのも自分次第である」という意識を持って、「どう受け取るべきか」を考える必要があるのかもしれない。
稗田おんまゆら(ひえだ・おんまゆら)
現代の卑弥呼と称される霊感タロット占い師。幼少時から神秘世界に興味を持ち、大学では心理学・宗教学・神話学を専攻。卒業後は出版社に勤務する傍ら、鑑定活動を始め、評判を呼ぶようになり、天命により鑑定を職業とする。
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