今年に入り、不祥事やタレントの退所、活動休止が相次ぐジャニーズ事務所。前編では、SMAP解散騒動以降、事務所の実権を握っているとされる藤島ジュリー景子副社長について、企業コンサルタント・大関暁夫氏から「コミュニケーションの流れを変える組織運営こそが重要」という話をお聞きした。後編では、その具体例を探っていきたい。
(前編はこちら)
――今年、ジャニーズ事務所はトラブル続きですが、一方で明るいニュースもありました。King&Princeという若手の新しいグループがデビューし、5月に発売されたシングル「シンデレラガール」は初週57.7万枚を売り上げています。ジャニーズにいい流れをもたらしてくれる存在と、期待を寄せるファンも多いです。
大関暁夫氏(以下、大関) それは、先ほど述べたような「コミュニケーションの流れを変える」というのとはまた別の話。組織内でどのような意思決定があって彼らを売り出すことになったのかはわかりませんが、傍から見ていると、小手先の戦略に近い感じがします。もう一度、サッカー日本代表を例に出しますが、これはつまり、ハリルホジッチ監督と選手間のコミュニケーションがうまくいっていない中、「だったら若い選手を集めて新しいチームを作り直そう」と言っているようなものでしょう。それは現実的に考えて問題解決にはならない。新しい選手も、監督に対して同じ不満を抱くことになるでしょうし、気持ちの緩みが出てくると思います。日本代表は、年齢層が高いことから「おっさんJAPAN」などと呼ばれていましたが、ジャニーズも同様に、稼ぎ頭となっているのは、ベテラン勢ではないでしょうか。やはり内部のコミュニケーション円滑化に彼らの力を借りないと、組織としての立て直しはあり得ないと思います。
――確かに、露出の多い嵐は30代半ばから後半、TOKIOも長瀬智也は39歳ですが、ほかのメンバーは40代です。
大関 そういった中心で動いているベテランの気持ちを組織に引き戻す、気持ちを1つにすることが重要だと感じます。小手先で「若い奴らに変えればいいじゃないか」というのは、最終的にはうまくいかないと思います。
SMAPが解散、TOKIOの山口達也さんが不祥事を起こし、関ジャニ∞の渋谷すばるさんが退所……と、上から崩壊していっている点も気になります。次に、V6や嵐が何か問題を起こすとなると、それこそ雪崩のように組織が崩壊していくのではないかと。それが一番怖いですよね。組織のトップは、それをいかに食い止めるのかを考え、行動を起こすべきでしょう。
――具体的にどうすればいいのでしょうか?
大関 例えば、タレントも含めて“これからのジャニーズアイドル”はどうあるべきかと議論するなどでしょうか。SMAPの元チーフマネジャーは、これまで“歌って踊る”のがメインだったアイドルを、バラエティやドラマにどんどん進出させ、今のアイドルのスタイルを築き上げました。今のジャニーズのアイドルは、その流れに乗っかっていると思いますが、危機に瀕している今、あらためて“みんなで”“イチから”、今後のジャニーズアイドルの在り方を考えてみてもいいのではないでしょうか。それが、ジャニーズ事務所のコミュニケーションの流れを変えることにもつながる気がします。
――ジャニーズ事務所は、ジャニー氏の審美眼に支えられている部分も大きかったと思います。“売れるアイドル”を見抜く目があると、業界内外で言われていました。
大関 確かに、ジャニー氏のような能力のある人物はなかなかいません。であればジュリー氏は、“天才がいなくてもいい運営方法”を考えなくてはいけないんです。それが企業として、大きく発展できるかの鍵になります。例えば、ソニー創業者の井深大氏と盛田昭夫氏はどちらも優秀な技術者でしたが、あるとき、井深氏は開発に、盛田氏は経営に専念するようになりました。なんでも“天才発明家”として才覚を発揮していた井深氏が、盛田氏に「ソニーを次の世代に引き継ぐために、君にはマネジメントに専念してほしい」と提案したそう。ソニーにとって、この開発と経営を分離したことこそが、世界に名だたる大企業としての基礎になったんですね。
――ソニーの話を聞いて思ったんですが、ジャニー氏はそもそも演出家で、メリー氏とタッグを組み、それぞれ「開発」と「経営」を担っていたとされています。ただ、ジュリー氏の代になって、その分離がうまくいかなくなったということなのでしょうか。
大関 ジャニー氏とメリー氏が、次の世代に事務所を渡す準備をしていなかったのが大きいと思います。芸能界で栄華を極めているがゆえの、油断や安心感もあったのかもしれませんね。どれだけ立派な組織であっても、未来永劫続くものはありません。
――このままでは、ジャニーズ事務所も衰退の一途を辿るのでしょうか。
大関 ジャニーズは、SMAP、そして嵐という2大グループが大きく花開いて20年といったところでしょうか。どこの企業でもそうなのですが、例えば一事業が大きく花開いても、それが続くのは長くて30~40年。20年というのはピークアウトに近いといえるでしょう。「金のなる木」というマーケティング用語があります。投資を続けて事業を大きくしていき、ある時、投資しなくてもどんどんお金が入ってくるようになる……その状態を「金のなる木」と呼びます。ただ、お金が入ってくるからといって、そのまま放置しておくのではなく、次のビジネスモデルを考えて、新たな投資をしていかなくてはいけないんです。
ジャニーズ事務所も、SMAP型のビジネスモデルは既にこの「金のなる木」なのかもしれませんが、結局、同じタイプのアイドルの売り方をしてもダメ、いずれ飽きられてしまいます。King&Princeが一時期売れたとしても、第2の嵐、第2のSMAPにはなり得ない、まったく別のアイドルのあり方を作らなければいけない。そういう危機感も持つべきだと思います。それに、時代とともに、ファン層も、ファンがアイドルに求めるものも変わっていくものです。それを敏感に察知して、新しいアイドル像に取り入れていくことも念頭に置いた方がいいのではないでしょうか。
――いかに新しさを取り入れるかが重要なのでしょうか。
大関 やはり先取りをするから、大きなヒットが生まれると思います。SMAPはその典型例。『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の番組構成は、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(同)と同じだと聞いたことがあります。アイドルに、芸人と同じことをやらせてみるというのは、当時かなり新しかったと思います。「タブーを極力を失くす」という方針で生まれたのがSMAPだったわけです。今まさに、その考え方がジャニーズ事務所に必要なことなのではないでしょうか。
――今では逆に、「アイドルに何でもかんでもやらせすぎている」といった声も出ています。嵐・櫻井翔が、報道番組『NEWS ZERO』でキャスターを務めたり、NEWS・手越祐也や関ジャニ∞・村上信五がワールドカップでキー局のメインキャスターを務めるなど、ジャニーズの息がかかっていない分野はないのではないかと思うほどです。
大関 これは私の思いつきですが、野球選手の大谷翔平くんのように、“本気の二刀流”を目指すというのはどうでしょうか。これまでも打撃のいい投手はいましたが、大谷くんは、投手と打者を本格的に両立する二刀流として人気を博しています。同じように、アイドルだけでなく、もう1つの分野でもプロになる……という。例えば、櫻井さんも、キャスター業に真正面から向き合っているとは思いますが、どこまで本気かはわからない。というのも、彼は『NEWS ZERO』内ではコメンテーター的な役割も担っていますが、ほかのメディアから、政治問題や事件に関してコメントを求められることはありません。本業はアイドル、バイトとしてニュース番組に出ているような感じなんです。そうではなく、アイドルとコメンテーター、どちらも本業にするというのが、新しいスタイルになり得るかもしれません。まぁ、これはあくまで私の思いつきでしかありませんが、新しいアイドル像を築くやり方は、たくさんあると思いますよ。
――ジュリー氏は、今まで以上に現状を厳しく受け止めた方がいいのかもしれませんね。
大関 どれくらい危機感を持ってやっていらっしゃるか。独裁的ではなく、みんなで一緒に考えて作っていく、これが今一番大切なことなのではないかと思いますね。
取材協力:大関暁夫(おおぜき・あけお)
All About「組織マネジメント」ガイド。東北大学卒。横浜銀行入行後、支店長として数多くの企業の組織活動のアドバイザリーを務めるとともに、本部勤務時代には経営企画部門、マーケティング部門を歴任し自社の組織運営にも腕をふるった。独立後は、企業コンサルタントの傍ら上場企業役員として企業運営に携わる。