保育園、幼稚園、小学校、おけいこ事の教室などでは、日々子どもの保護者と施設側の間でトラブルが発生している。ほんの些細なことでも、自分のこと以上に気になってしまうのが親心というものなのか。わが子のことを思ってとクレームを入れるママもいれば、モンペと呼ばれることを恐れて我慢するママも。そんなトラブル事例とママの葛藤をつづる。
少子化と呼ばれて久しい現在、「子どもの数が少ない」という理由から、幼稚園や保育園での親同士の関わり合いが避けられない現状があるという。特に、少人数保育を謳っている園では、保護者参加型のイベントが多く、親同士のコミュニケーションが盛んな園に通わせていると、その人間関係がそのまま小学校まで持ち上がるという。長く付き合えるママ友ができる半面、些細なことがトラブルにも発展することもあるようだ。
子どもが持つ力を伸ばす独自の教育法が注目を浴びている名門幼稚園に、4歳になる女児を通わせている恵子さん(仮名)は、こう語る。
「うちの園は、幼稚園だけではなく小学校、中学校、高校、大学まで併設されているエスカレーター式の学園で、その学園を卒業したママが多いんです。実は私も卒業生なのですが、その時、同級生だったママさんの間で、今トラブルが起きているんです」
恵子さんは、同学園に中学校から通っていたそうだが、独自の教育方針を持つ歴史のある幼稚園の場合、親も卒園生のケースは多い。中には親子三代で、同じ園に通っているというママもいるという。恵子さんの中高時代の同級生であるAさんとBさんは、この幼稚園に自分たちの娘を通わせ、奇遇にも子ども同士も同じ学年となったという。
「AさんとBさんは、幼稚園から大学までずっと同じ学園なのですが、ママ友同士になった今、お互いをライバル視して、火花を散らしているんです。2人は保護者会で“私は誰よりもこの学園を知っている”という顔をして、『自分たちの時はこうだった』と言って仕切り始めたんですが、2人ともプライドがすごく高いので、いつしか対立関係になってしまいました。それから、Aさんの実家は元々資産家で、一方Bさんの家は、彼女の親がレジャー産業や飲食業で財をなしたというお金持ち。Aさんが学生時代からの人間関係を子ども世代にも引きずっていて、『Bさんの家はこの学園にふさわしくない』『あの家とうちが同じ百貨店の外商なんておかしい』と言い出したのがきっかけで、不和がエスカレートしていったんです」
同じクラスの中で、自然とAさんグループ、Bさんグループと派閥ができてしまい、これには、園側も困惑しているという。
「うちの園は、毎年劇をするのですが、Bさんの家の子が主役をやることになり、Aさんが幼稚園側に『不平等ではないですか』と抗議しているのを見ました。このままでは、会自体がボイコットでなくなりそうだったのですが、園側は、2人が同じ役をやり、前半と後半で入れ替える措置を取ることにしたんです」
園長は、学園とつながりの深いAさんとBさんに、遠慮をしている部分があるのか、「なかなか注意しづらそう」だという。
「当時の同級生と親となってまた再会するって面倒だと思うので、娘を併設の小学校に進学させるか、別の私立を受験させるか迷っています」
噛みつきの犯人を探り、親に抗議したが……
保育園でのトラブルといえば、園児同士の思わぬ喧嘩とそれに伴うケガだろう。言葉が未発達な0~2歳児までの間は、入浴や着替えで子どもの服を脱がした時、見えない部分などに痣や切り傷などを見つけたという保護者も多い。子どもを迎えに行った際に、保育士から1日の子どもの様子を聞かされるが、ケガをしていてもそれに触れずに受け渡されるケースもあるため、のちのちトラブルに発展するという。認証型保育所の1歳児クラスに女児を通わせている和代さん(仮名)は、4月に入園できた保育所の対応に不満が募っている。
「子どもが0歳の時に復職したのですが、無認可の保育所に通わせて時短勤務していました。今までずっと不承諾通知だったので、認証に空きが出て4月に入園できた時は、『やっとこれでフルタイムで働ける』って大喜びでしたね。無認可の保育所は、保育料が高くて1カ月7万円もかかり、でもその分、子どもの数が少ないので、保育士さんがよく見てくれたんですが、今の保育所は、噛みつき癖のあるがいて、うちの子はいつも噛まれてしまい、ついに園に行きたがらなくなったんです」
最初はまだ長袖の季節だったため、帰宅後に服を脱がせるまで指や腕に噛まれた跡があることに気が付かなかったという和代さん。保育士に、どこの子から噛まれたのか確認したところ、「1歳児の時は、親と離れた寂しさから噛み癖が出る子が多いみたいで、特定できず、どの子に噛まれたのか教えてもらえなかったんです。多いときは週に3回も噛み跡がついていて、向こうの親から何も謝罪がないこの状態にモヤモヤしました」
和代さんは、娘を噛んだ張本人を見つけるため、名前の代わりに靴箱に貼ってあるマークを指していき、直接子どもに確認したという。あるマークのところで娘がうなずいたため、犯人を発見できた。
「送迎の時間が違うため、相手の親とほとんど会う機会がなかったのですが、保護者会の時に声をかけて『うちの子が噛まれているみたいなんです』と伝えました。保育園側は、噛みつきの事実をきちんと伝えていなかったようで、向こうは“言いがかりではないか”という顔をしていました」
この保護者の態度に怒りを感じた和代さんは、担任の保育士に「どういうことですか?」と問いただした。
「園児同士で噛みついたりするのは成長途中でよくあることと思っていたみたいで、『2歳になれば落ち着きます』と説明されたのですが、納得いきませんでした。また、うちの子がブロックを使う順番を守れず、奪い取ってしまうことがあったため、ほかの子に噛まれることもあったそうですが、そんなの保育士が見ていて防ぐべきじゃないですか。園児数が多い保育園なので、管理が行き届いていないと役所にも伝えました」
保護者間のトラブルを防ぐため、加害者側の名前を教えないよう対応する保育園は多い。しかし、ケガをさせられた方の親は納得がいかず、園長や園を運営している親会社などにクレームを入れることもあるようだ。
幼稚園とは違い、保育園は預かり時間が長く、年齢の違う子同士を同じ部屋で過ごさせる合同保育や、園庭での自由保育などを実施することもある。こういった状況下で、保育士は常に注意を払っているだろうが、小さなケガや、園児同士のじゃれ合いにも似た噛みつき、爪で引っかくという行為は、見過ごしてしまう場合もあるだろう。しかし、どんな小さなトラブルでも、親同士の諍いに発展する可能性はあるだけに、園側も、保護者が納得いくような説明をする、またその環境を作る必要があるのかもしれない。
(池守りぜね)