
多くの女性が毎月繰り返し悩まされている“生理痛”。ネット上には、生理痛をやわらげるさまざまな方法が飛び交い、中でも“食事に気を使うべき”“生理中は食べない方がいいものもある”という説をよく目にする。そこで今回、婦人科医で成城松村クリニック院長の松村圭子先生に、生理痛が起こるメカニズムや、痛みを悪化させる食べ物、また鎮痛剤との付き合い方に関して、話を聞いた。
生理痛はプロスタグランジンが引き起こしていた
――生理痛が起きるメカニズムを教えてください。
松村圭子先生(以下、松村) 生理が始まる少し前から生理中にかけて、子宮内膜で「プロスタグランジン」というホルモンが分泌され、これが子宮を収縮させて経血の排出を促します。生理痛の原因の1つは、この収縮に伴う痛みです。もう1つ、このプロスタグランジン自体が痛みの原因物質のため、血流に乗って全身に回り、頭痛などの痛みを引き起こすのです。
――よく「生理のときは体を冷やしちゃダメ」と聞くのですが、それは何か関係があるのでしょうか?
松村 プロスタグランジンは、血流に乗っていずれ体外に排出されるのですが、冷えて血行が悪くなるといつまでも体内に留まってしまうので、痛みが長引きやすくなるんです。また、冷えると子宮の筋肉が硬くなり、うまく収縮できなくなるため、子宮を収縮させようとプロスタグランジンがさらに分泌されてしまって痛みが強くなる……という悪循環も起きてしまいます。
――よくネットでは、「○○は体を冷やすから、生理中に食べてはダメ!」などと言われているんですが……。
松村 それは特に東洋医学的な発想によるもので、体を冷やしたり、また血行不良を招いたりするとされる食べ物を避けましょうという意味なのではないでしょうか。
――体を冷やすものは生理中に食べてはいけないというと、例えばアイスクリームなどの“冷たい食べ物”でしょうか。
松村 そうですね。それから、糖分や添加物を含む食べ物は、血液をドロドロにするので、血行不良を招きやすい。そうすると、先ほども説明した通り、プロスタグランジンが血液中に留まる期間を長くしてしまうので、例えば、チョコレートやカップラーメンなどは避けた方がいいでしょう。
また、コーヒーなどに含まれるカフェインは血管を収縮させる作用があり、血流を悪くするので、やめておく方がいいですね。それから、肉に含まれるアラキドン酸はプロスタグランジンの原料になるので、積極的な摂取はおすすめしません。
――では逆に、生理中に食べた方がいいものなどはありますか?
松村 アジやイワシなどの青魚に豊富に含まれるDHAやEPAは、プロスタグランジンを合成するのに必要な酵素の働きを抑えるため、生理痛の軽減が期待できます。あと、ビタミンEは血管を拡張して血流を良くしてくれるので、カボチャやゴマ、アボカド、ナッツ類を摂るのもいいでしょう。そもそも東洋医学では、白米や白砂糖のように精製された食べ物は体を冷やすとされているので、玄米や黒糖など、精製度の低いものにした方がいいですね。
――食べるものに気をつけるのは、生理が始まったら……と考えればいいのでしょうか。
松村 生理中に気を配るのはもちろんですが、正直、糖分や添加物などで血流がとどこおってしまうのは日々の積み重ねも大きいので、日ごろから食生活を意識しておくことが大切かと思います。逆にカップラーメンを食べると、すぐに血流が悪くなって痛みが増す……というものではありませんからね。
――そもそも生理痛を起こさない方法などはありますか?
松村 血行不良を招いたり、子宮の収縮を強めたりする“冷え”を起こさないことです。慢性的な冷え性になると、当然生理痛にも影響するので、食生活と一緒で、日ごろから体を冷やさないような心がけが大切ですね。生理中は、バスタブにゆっくり浸かって体を温めたり、適度な運動をしてプロスタグランジンの体外への排出をスムーズにしたりするのもいいと思います。
――食事や運動による生理痛対策は、なかなかハードルが高いという人もいると思います。一方で、鎮痛剤も飲み続けると効かなくなると言われるだけに、あまり飲みすぎるのもよくないと躊躇してしまいます。
松村 それは誤解です。生理痛の薬を飲み続けても、効きにくくなるということはありませんよ。もし薬を飲んでも痛みが緩和されないとか、薬が効かなくなってきたなどであれば、子宮筋腫や子宮内膜症など、何らかの病気を疑った方がいいでしょう。
――薬はいつ飲むのがベストなのでしょうか?
松村 痛みがピークになる前に服用しましょう。早めに薬を飲むことで、プロスタグランジンの分泌が抑えられて痛みにくくなるんです。日本人は我慢を美徳とする傾向がありますが、生理痛を我慢することのメリットって何でしょう? 我慢を重ね、痛みがピークになってからでは、薬に頼ったところでプロスタグランジンを抑えきれません。なので、痛みが本格的になる前に、用法用量を守って薬を服用することが大事です。
(取材・文=千葉こころ)