西日本を襲った記録的な豪雨で、甚大な被害が出ている。11日午前11時現在、死者162人、行方不明者56人に上っており、自治体や自衛隊、さらにボランティアによる捜索・復旧作業が続いている。
今回の豪雨では、事前に気象庁が「これまでに経験したことのないような大雨」「重大な危険が差し迫った異常事態」「土砂崩れや浸水による重大な災害がすでに発生していてもおかしくない状況」と呼びかけていたにもかかわらず、8日になるまで非常災害対策本部を設置しなかった安倍政権の対応の遅れに批判の声が上がっているが、そんな中、迅速かつ的確な対応で注目を集めている被災自治体がある。
岡山県総社(そうじゃ)では、市内を流れる高梁川が6日午後7時に「氾濫危険水位」の8メートルを超え、10時以降は観測不能に。市内の広い範囲で浸水被害が出る中、さらに11時半ごろには、アルミ工場で浸水による漏電が原因と思われる爆発が発生。周辺の住宅や車庫計3棟が全焼した。
そんな中、同市の片岡総一市長は、6日朝に総社市災害対策本部を設置し、Twitterを通して避難指示を始め、リアルタイムで情報を発信。さらに、避難所への物資支給を早々に開始したり、支援に駆けつけてくれた自治体や企業への感謝のツイートも随時アップしている。
そんな市長の動きに感銘を受けた地元の高校生が、SNSでボランティアを呼びかけ、8日にはおよそ600人の中高生が災害ボランティアが現地に集結。被災した住宅の片づけ作業などを開始した。
実は、同市は以前から災害支援に対して熱心な自治体で、「プッシュ型支援」(被災した自治体からの要請を待たず、自発的に行う支援)を実施。2011年の東日本大震災の際も、いち早く岩手県釜石市に駆けつけ、支援を開始した。その後、14年の広島市の土砂災害、15年の関東・東北豪雨はもちろん、16年の熊本地震の際は、アルピニストの野口健氏とともに、益城町で日本初の「テント村」を開設した実績を持つ。また、国際NGO「AMDA」と同市を含む10の自治体で「AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム」を発足させ、南海トラフ地震が発生した際には、AMDAと被災した自治体で連携し合って助け合う体制作りも進めている。
そんな“災害支援に強い”市が、今回の豪雨で支援される側になったのだが、普段から危機管理意識が高いこともあり、冷静かつ迅速で的確な対応が取られているようだ。さらに注目すべきは、自ら被災しながら、隣の倉敷市への災害支援活動も同時に行っていること。
こういった動きに、ネット上では「総社市長、有能すぎる」「自民党はアテにならない。こういう人が議員になるべき」といった声が相次いでいる。
実は片岡市長は、故・橋本龍太郎首相の公設第一秘書で、95年の阪神・淡路大震災の際には最前線で現場を見てきた災害支援のエキスパートでもある。
災害支援でよく問題になるのが「公平性」だが、この基準をどこに置くかで状況はまったく異なり、時に支援の妨げになることもある。片岡市長と交流のある野口氏は以前、当サイトのインタビュー(参照記事)で、熊本地震の際、テント村の開設にあたり、この公平性を訴える地元自治体とうまく連携が取れず、苦労したという話の中で「(片岡市長が)こういう有事のときはそんなの(公平性は)関係ない。私は自分の職員に対しては『有事のときはルールを無視しろ』『破れ』と言っているからねと。野口さん、ルールを破りましょう! って」と、およそ行政の人間らしからぬ片岡市長の思い切った言動を明かしていた。
もちろん、総社市のような自治体は数えるほどで、いまだトップダウンで動いているところが大半であろう。だが、日本が災害大国であることは周知の事実。南海トラフをはじめ、数年以内に大規模地震が来るといわれている今、総社市に学ぶことは多いはずだ。
なお、各所で支援の輪が広がる中、ふるさと納税サイトのシステムを利用した寄付金の受け付けや、自治体による避難施設の設置費用を調達するクラウドファンディングといった、新しい動きも始まっている。たとえば、3年前の豪雨で深刻な被害を受けた茨城県境町と筑西市は、「ふるさとチョイス」に集まった被災自治体への寄付金を代理で受け取り、事務作業を代行することにより、自治体職員が復旧作業に専念できる体制を整えている。
「平成で最悪」ともいわれる今回の豪雨被害。復旧には時間を要すだろうが、これまでの災害支援の経験が生かされることを祈りたい。
(文=編集部)
