今月の「GINGER」(幻冬舎)の特集テーマは「素敵なコンプレックス」です。出ましたよ、唐突な自己啓発特集。以前も、1冊を通して「愛」について語るという、ファッション誌らしかぬトンデモ特集の号がありましたが、今号もまた「コンプレックスの扉を開こう」「幸せを呼ぶネガ→ポジ思考」「弱みが強みに変わった瞬間」……と著者の不安を煽る企画が目白押しです。ページをめくるのが恐ろしいですが、早速中身をチェックしていきましょう~。
<トピックス>
◎弱みが強みに変わった瞬間
◎実はみんな抱えてる! 恋愛コンプレックス
◎セキララVOICE「理想のセックスは週に1回!?」
重すぎる“コンプレックス”特集を読者はどう受け止めればいいのか
冒頭でも述べた通り、今月の「GINGER」の特集テーマは「素敵なコンプレックス」。「コンプレックスとはその人の“短所”なのでしょうか?」「(コンプレックスを)どう受け入れて、どう付き合っていくか―コンプレックスは、自分らしさを見つける“素敵なきっかけ”なのです」という提言の元、表紙に登場した石原さとみのインタビューが始まります。
外見や仕事について、他人と比べて悩みながら試行錯誤を繰り返した20代を経て、現在では「自分が大切にしたい人間関係や必要なモノが定ま」り、「肩に力が入るようなこともぐんと減りました」と、さわやかに語るアラサーの石原。同世代の「GINGER」読者も、「わかるわかる~」と気軽に共感できそうな内容かもしれません。
しかし次ページから始まる「コンプレックスの扉を開こう」では、女優の大竹しのぶ、作家の原田マハ、ヘア&メイクアップアーティストの藤原美智子、精神科医の名越康文といった「その生きざまが、生み出す作品が、私たちを魅了し続けるカリスマ」から、濃厚で有難いメッセージが続き、急に背筋を正して読み込まなければならないモードに。
さらにページをめくると、「GINGER」モデルである山田優、桐谷美玲、岸本セシル、近藤千尋たちが、自らのコンプレックスを赤裸々に告白。ダイエット&リバウンドに苦しんだ日々、仕事のストレスからお酒を飲むようになってしまったエピソードのほか、ネット上での中傷に悩んだ過去など、当時の葛藤やストイックな努力の裏側を明かしているのです。
そしてインタビュー企画のクライマックスを飾るのは「弱みが強みに変わった瞬間」。フリーアナウンサーの田中みな実が、“ぶりっ子”キャラによって「完全に王道から外れた。色モノ担当だと思われていた」局アナ時代から、現在の“闇が深い”キャラまでを振り返り、自身の“イメージ”をめぐるコンプレックスとの付き合い方を語ったかと思えば、国民的スケーター・浅田真央の姉である浅田舞が「妹コンプレックス」に葛藤した日々を明かすという……。そして“性同一性障害”を公表し、2017年に男性から女性への性別適合手術を受けたGENKINGは、「コンプレックスって克服すること以上にその過程に意味がある」「(コンプレックスは)新しい人生が始まる扉。私にだって叶えられたんだから、みんなも叶えられるって思わない?」と読者に語りかけます。
……重い。重すぎる。軽い気持ちでファッション誌を読むような気持ちでは、とても受け止められない重みと切実さが、そこにはありました。もちろん、ここに登場した3人は、現在ではコンプレックスから解放され、自分らしく生き生きと輝いているのですが、またしても極端思考に走りがちな「GINGER」による、やりすぎ感が否めません。
パンチのありすぎるこれらのエピソードを“素敵なきっかけ”なんてポエミーなワードで一括りにしていいものなのか。読者だって、「私のコンプレックスなんてまだまだね……」と思うだけなのでは。
インタビュー企画の合間合間には、体形カバーのコーディネートアドバイス「おしゃれの苦手は克服できる!」「Sサイズのための素敵なスタイリングルール」、またメイクのお悩み解決アドバイス「ヘア&メイク 小田切ヒロさん発『目が小さい』なんて言わせない!」などがはさまれていましたが、正直“取るに足らない小さな悩み”として流し読みすることしかできませんでした。
続いて見ていくのは「実はみんな抱えてる! 恋愛コンプレックス」です。これまで恋愛企画の少なかった「GINGER」ですが、今年度に入ってからチラホラと恋愛企画を入れ込んできています。しかし「経験ナシ、出会いがない、そもそも面倒くさい…!?」「大人になったら、自然に恋をして彼ができて、当たり前に結婚していると思っていたのに……」というキャッチコピーからも「GINGER」女子が恋愛に対して苦手意識を持っている様子が窺えます。
アンケートの結果からも「恋愛に対して、コンプレックスを持っている」と回答した読者が7割強を占めました。そのコンプレックスの内訳を見ていくと1位に「体に自信がない」、3位に「顔に自信がない」という回答がランクイン。「顔よりも体に自信がないと語る人が多いのには少々びっくり」と編集部もコメントしていますが、2位に「傷つくのが怖い」、4位に「恋愛経験がないから怖い」、そして9位に「男の人が怖い」という回答が入ってくるあたり、「GINGER」女子はアラサーにしては相当オクテで、年相応の恋愛関係を築くことに対して消極的なのかもしれません。
また心理カウンセラーの堀越友子さんは「昔に比べて恋の相談自体が減っている」と言い、「今の世の中、女子同士やひとりでも楽しめることがたくさんある。恋愛に苦手意識がある人にとっては、無理して恋をしなくても、人生がそれなりに楽しく送れる」のではないかと恋愛離れの理由を指摘しています。
しかしこの企画、アンケート結果に対する男性陣たちの本音座談会まで開いておきながら(内容はクソ)、「GINGER」女子たちのコンプレックスや現状を分析&解説しただけで、結局どうしたらいいのかという結論が出ないまま、尻切れとんぼで終わっているんです。何ていうか、「GINGER」女子がそもそも恋愛をしたいのかしたくないのか、というところから、企画を考えていかなければいけないのではと感じました。
恋愛が苦手だから最初から諦めてしまっているのか、恋愛以外の仕事や趣味の方が楽しく充実しているので特に欲していないのか。前者であれば、もっと読者の気持ちに寄り添って解決策を提案してほしいですし、後者であれば、アラサー女性誌だからって中途半端に恋愛企画を入れる必要もないので、これまで通り、ファッションや趣味企画に力を注いでほしいものです。
最後に見ていくのは、読者サポーター10000人へのアンケート調査をまとめた巻末連載企画「セキララVOICE」です。今月は「理想のセックスは週に1回!?」というテーマで、読者のセックス事情調査をしているのですが、どうやら「パートナーとのセックスが少ない」と気にしている読者が多いよう。
「自分の性欲を10段階で表すとどのくらい?」という質問には「7以上」と回答した人が半数を超えており、「パートナーがいなくてもエッチしたい時はある」「ムラムラしたらエッチな動画を見る」という意見が多数。また「官能力を高めるため」に「膣トレ」「ヨガ」「スクワット」などのトレーニングに励んでいるという読者が7割もいる結果に。さっそく先に取り上げた“恋愛コンップレックス”特集で見られたオクテな回答と矛盾しているのですが、もしかして「GINGER」女子たちは“恋愛とセックスは別物”という価値観なのでしょうか。恋愛は苦手だし傷つくのも嫌だし面倒くさいけれど、セックスはもっとカジュアルに楽しみたい的な……? そうなってくると話はまただいぶ変わってくるので、そこらへんもうちょっと突っ込んだ企画が待たれます。
(橘まり子)