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どうも、紫帆です。都内の某飲み屋街で小さなバーを経営している私が、夜毎の営業中に目撃したクソ客・変な客・珍事件について、お話させていただきますね。さて、今宵のお客さまは――

「バー初体験」ではしゃぐ男子3人が犯した悲劇
ある夏の夜。この日が「バー飲みデビュー」という若者3人組が来店しました。「これまで仲間内で居酒屋チェーンでしか飲んだことがない」という、大学生と思しき20代前半の草食男子たちは、フルーティーなカクテルをはしゃいだ様子で飲んでいました。
1時間ほどたったところで、若者のうち1人がトイレに立ちました。グループのなかで最も口数が少なく、クールなキャラの彼は20分ほどトイレにこもり、やっと出てきたかと思うと「夜風に当たってきます」と言い残しどこかへ。飲み慣れていない人が調子よくお酒を飲んで、気持ちが悪くなりトイレにこもることはよくある失態。友達が店に残っているなら少し外の空気を吸って酔い覚ましするのも悪くはないでしょう。いくら待っても彼が店に戻ってくることはありませんでしたが、それもまたよくあること。残された2名が彼の分の会計も済ませ、和やかに店を後にしました。
ほどなくして飲みにいらしたのは近所のお店のママさん。久しぶりに顔を突き合わせ、過去の恋愛や人生観などをぽつりぽつりと語らう穏やかな時間を過ごしていました。薄めのウーロンハイを傾けながら、しゃべり続ける大人の女ふたり。気が付くと外はすっかり明るくなっていました。そろそろお開きにしようとママさん、帰宅前にトイレに立ったかと思ったら数秒で出てきて、
「ちょっと! ここではトイレ使う気になれないから!」
と小走りで自分の店に戻ってしまいました。

どうしたことかとトイレを覗いたところ、なんと洋式便器の外、トイレの床に茶色いブツがふたつ、コロンと転がっているのです。
「トイレにうんこが転がっている」――
そのこと自体はそこまで不思議なことではありませんが、当店は飲み屋街の狭小物件。トイレも入ったらドアの方向に回れ右して便座に腰掛けるのがやっとで、便座以外の狭いスペースにうんこを落とすのは至難の業です。うんこの主が便座の前に立った時にはすでにコンニチハしていて、パンツを下ろしながら回転した勢いで床に転がったのか、それともうんこをテレポートさせることのできる能力者が存在するのか……その状況はわかりませんが、とにかくこの光景を目の当たりにして近所のママさんがドン引きしたことだけは確かです。
いったい犯人は誰なのか……。
捜査線上に浮かび上がったのは、もちろん若者グループの彼でした。普段はほかの2人の会話を俯瞰して、クールなツッコミ役という立場を担っているであろう彼。自らがうんこを便器の中におさめきれなかった現実を受け止めきれず、店に戻れなかったのでしょう。トイレにこもっていた20分間は、彼にとって相当な修羅場だったに違いありません。このように、素敵な夜が一瞬で悪夢に転じることがあるのがバーというもの……。
一方、突如としてうんこ処理という重要なミッションを抱えたわたし。はじめこそ「下痢じゃなくてよかった」とのんきに構えていたのですが、彼らが退店してうんこ発見に至るまで実に2時間。その間、放置されたうんこはほどよく表面が乾いて粘度が増し、タイルにこびりついて、予想以上に掃除が大変でした。
つーか、自分の出したうんこくらいティッシュでつまんで流しとけ!
(隔週金曜日・次回は5月25日更新)
プロフィール
浮川紫帆(うきがわ・しほ)
東京都内の繁華街の一角でバーを経営する30代バツイチ女性。ママ歴は6年。好きなお酒はマカストロングのお湯割り。
(イラスト=ドルショック竹下)