土曜ナイトドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)が放送折り返し地点を迎え、高い人気を守っています。土曜23時15分~放送のこのドラマ、視聴率自体は2.9%~4.2%~3.8%~3.5%と、この枠のドラマとして可もなく不可もなく(前クールと大差なし)。同じ時間帯で金曜放送の『家政夫のミタゾノ2』が7%前後をキープしていることを考えれば、『おっさんずラブ』がさらに急上昇してもおかしくないのですが、視聴率測定器の置かれた世帯は限られていますから仕方がないのでしょうか(視聴率はすべてビデオリサーチ調べ、関東地区)。
でも「ザテレビジョン」が毎日発表している“視聴熱(しちょうねつ)”ではブッちぎりの1位を独走中。これまで視聴熱の高かったドラマは『アンナチュラル』『カルテット』『逃げるは恥だが役に立つ』(いずれもTBS系)、『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)など。視聴熱とは何ぞやというと、「ザテレビジョン」がSNSでの盛り上がりなどを独自調査して集計、“今熱い番組・人物・コトバからテレビの流行に迫る新指標”なわけですが、まあ確かに『おっさんずラブ』はどう考えてもアツい。
タイトル通り、おじさんである吉田鋼太郎のラブを主軸に描いてきた『おっさんずラブ』。吉田鋼太郎演じる黒澤武蔵55歳は、職場ではスーツをびしっと着こなすかっこいい部長で仕事もデキて部下に信頼されている上司なのですが、職場の部下である“はるたん”こと春田創一33歳(田中圭)の可愛さにヤラれてしまってですね、完全に恋するヒロインになってしまっています。でも武蔵だけじゃなく、同僚の営業部員・牧凌太25歳(林遣都)も、はるたんの魅力にハマッてしまってガチ恋に落ちちゃったので、はるたんを巡る三角関係勃発。おっさんだけじゃない、若者のラブも描かれているわけなんですね。
第一話から吉田鋼太郎の振り切ったヒロインぶりと田中圭のすっとぼけた顔芸リアクションで視聴者抱腹絶倒、一躍大人気ドラマとなった『おっさんずラブ』ですが、5月12放送の第四話で前半戦が終了。全七話の予定で撮影中ですから、次週からは怒涛の後半戦となります、というわけで、前半戦のおさらいが必要ですね!
真っ当な純愛で楽しませる
物語の舞台は天空不動産東京第二営業所。部長の武蔵は既婚者(妻・蝶子を演じるのは大塚寧々)なのですが、はるたんの存在が罪なほどの可愛らしさや優しさに胸キュンしてしまい、キュンが積み重なってマジ惚れ、妻に離婚を切り出すに至りました。仕事でもプライベートでも横柄なところがなく、ちょっとはるたんの意思を無視して暴走しちゃうところはあるけれど、誠実で温厚な人柄の武蔵さん。愛されキャラのヒロインとして視聴者からは熱烈応援されています。
でも強力なライバルが出現! それは本社から異動してきた部下の牧です。はるたんは実家暮らしなのですが、お母さんが出て行ってしまい(父親やきょうだいは最初から不在)、牧を「一緒に住む?」と軽い気持ちで招き入れました。すると牧は家事が万能で、美味しい料理を作ってくれるうえ世話を焼いてくれてはるたんは「うひょっラッキー♪」とばかりに甘え放題。でも牧ははるたんに恋愛感情を持っているのでした。第一話では部長が舞台仕込みの発声で「はるたんが、好きで~~~~~~~す!!!!!」と告白したかと思いきや、牧はシャワー中のはるたんを壁ドンして「(巨乳じゃなくて)巨根じゃダメですか?」と強引キッス。波瀾の三角関係が幕を開けたのでした。
第二話では牧と部長がはるたんを巡ってとっくみあいの喧嘩。混乱するはるたんをよそに、二人とも仕事中は超平静なデキる会社員だから面白いです。牧はドSという触れ込みですが、全然そんな感じではないと思います。ただすこぶる頼りになる男で、プロの執事になれるレベルで家事スキルが高く、人の心を察する気遣い屋さんでもあります。頭もキレるし仕事の営業成績も優秀、顔はチワワみたいに可愛い……なのにどうしてはるたんなんだよ? 嫉妬しちゃう気持ち、わかります、武川さん(後述)。でもはるたんは罪深きレベルで超絶可愛い男子だから仕方がないんですよ……。
はるたんはヘテロセクシャル(武川さんの言う“あっち側”の人)ですが、告白してくれた彼らにはっきりNOを突きつけず、「エッ?」と戸惑うばかり。部長の頭を優しくなでちゃったり、牧に胸がざわついたりで、どんなルートに着地するのかさっぱり読めません。この恋愛模様に、牧の元カレで今も想い続けている同僚で主任の武川44歳(眞島秀和)や、はるたんの幼馴染女子ちず27歳(内田理央)も絡んできて、大混戦……というのが第四話まで。
ちなみに部長から離婚を切り出された蝶子さんは、夫と「ハルカ」という人物との浮気を疑い、はるたんに不貞調査の協力を依頼するのですが、夫が好きなのはその“はるたん”。真実を知った蝶子さんの、というか大塚寧々さんのコメディエンヌぶりは圧巻でした。さすがの一言! 第四話の後半ではるたんは部長に「お付き合いすることは出来ない」とはっきり断りを入れたのですが、その場面を木陰からこっそり覗いていた蝶子さんは、フラれた夫への同情心なのか「ウッ」と清い涙を流すのでした。
「俺は巨乳女子が好きだし……」と公言してきたはるたんは、上司や後輩から愛の告白を受けて戸惑うばかりではありますが、この世界には「ゲイなんてダメ」とか「ゲイになっちゃダメ」と変な発言をするような登場人物は今のところ1人もおりません。男は女を、女は男を愛し、異性に性欲を抱くのが当然だという規範を押し付けるキャラクターは、ここにはいないわけです。つまりレッテル貼りがない。ノイズがない。そのまっさらな世界観を前提に、とことん面白い台本と細かい演出、役者陣のアドリブに卓越した演技力(会話のテンポがすっごい自然!)、作りこまれた小道具なども含めたすべてが、すさまじく完成度の高いラブコメドラマを作り上げています。
牧の心を奪われて嫉妬に燃える武川主任は、はるたんに唐突にセクハラをかまし、偶然にしては多すぎる連れションでイチモツを凝視したり、牧にもパワハラチックな当たり方をするのですが、それすらも「そうか~元カレだからなのかあ~」と伏線回収して視聴者を納得させます。田中圭と林遣都のやりとり(特に食卓の二人が最高!)もキュンキュンの連続で、かと思えば田中圭と内田理央のやりとりもキュンキュンで、もうはるたんがどのルートに着地しても変じゃない。そしてみんながはるたんに好意を抱くのもよくわかります。これでこそ主人公でしょう。
第四話のラストシーンで、はるたんは幼馴染と恋愛に発展するのだろうと先読みした牧は「出て行きますね。僕は武川さんのところに行きます。お幸せに」と荷物をまとめて去ろうとするのですが、はるたんは思わず牧に抱きついて引き止めます。バックハグです。武川さんの未練を利用しようとした牧ってばズルイぞ! 自分の気持ちがどこにあるのか全然自覚できないはるたんはもどかしすぎるぞ! この二人、どうなっちゃうの~!
次回、第五話では、はるたんと牧が正式に付き合いはじめるものの、しかし妻に「はるたんは死んでもゲットしなさいよ~(にっこり)」とエールを送られた武蔵も再び「ちょっと待ったあああ!」で参戦して混戦状態が続く模様です。
発売中の「週刊女性」(主婦と生活社)が、はるたん・武蔵・牧の鼎談を掲載しているのですが、田中圭は<男女でもいい話を男同士で演じているけど、人が人を好きになることに性別や年齢は関係ないと思います><人が人を好きになることに真剣に向き合って表現しようと思い、特にラブシーンは真剣に演じています>と語っており、そうなんだよぉぉぉぉぉ~~~~~と激しく首を縦振りせずにいられませんでした。綺麗事のように聞こえるかもしれませんが、まさにその通りなんです。吉田さんが<根底に流れているのは純愛><純愛の部分がいちばん大事>と相槌を打てば、林さんも監督との打ち合わせで<恋愛ドラマとしてちゃんと成立する方向性が見えて、納得できました>と繋ぎます。だからこれは正当派ラブコメ。“一風変わった”とかの枕詞は正直、不要だと思います。だって見ていると本当に面白くてせつないラブ・コメディ・ドラマだから。
きっとそのうちはるたんのお母さんも帰ってきて牧との同棲は解消するのでしょうし、簡単にハッピーエンドになるとは予想できないのですが、違和感の強い着地点にはならないはず、という信頼を持って見続けることができるすごいドラマです。ちなみに吉田鋼太郎さんは5月15日に開幕(30日まで上演)した日生劇場での舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』の稽古と並行して連続ドラマの撮影をしてきて、今もまだ舞台と撮影を同時進行しているはず。すごすぎるお人であります。
(hin-nu)
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