5月6日、ジャニーズ事務所が、TOKIOのメンバー・山口達也の契約を解除したと発表した。4月25日、未成年への強制わいせつ容疑で書類送検されたとNHKが報じてから契約解除の発表があるまで、山口本人とTOKIOメンバーがそれぞれ謝罪会見を行い、また並行して、事務所、ジャニー喜多川社長もマスコミ各社に謝罪FAXを送付した。
この一連の謝罪劇には、世間からさまざまな反響があったが、果たして、不祥事対応のプロの目には、どのように映ったのだろうか。企業不祥事発覚時の記者会見対応などの“クライシスマネジメント(危機管理)サポート”を行う会社ブライト・ウェイ代表で、レピュテイション(※評判)・コンサルタントの高祖智明氏に話を聞いた。
【1】事務所からの謝罪FAX「一般企業とはまるで違う」
TOKIOの『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)を毎週楽しみにしているという高祖氏。まず、第一報後、ジャニーズ事務所からマスコミ各社に送付された謝罪FAXをどのように見たのだろう。「お酒を飲んで、被害者の方のお気持ちを考えずにキスをしてしまいましたことを本当に申し訳なく思っております。被害者の方には誠心誠意謝罪し、和解させて頂きました」という文面には、ネット上で「小学生の作文」「企業の謝罪文としてはあり得ない」といった声が飛び交っていたが、高祖氏も、「びっくりしました。マスコミが、文面の一部分だけ抜き取って報じているのかと思ったら、あれが全文だったなんて」と振り返る。
「あのFAXもそうですが、TOKIOのメンバーが謝罪会見を行う前までのジャニーズ事務所の対応は、一般的な企業が行う不祥事対応とはまるで違うと感じました。普通の企業であれば、不祥事が起こったら、すぐにどのような対応を取るか準備をし始めるものですが、時間は十分すぎるほど有ったにもかかわらず、ジャニーズ事務所は明らかに“準備不足”だったと思います。脇が甘いのか、今回の件をそんなに真剣に考えていなかったのか……これまでのジャニーズ事務所とメディアの関係性から、ああいった対応になってしまったのかもしれません」

ジャニーズ事務所としては、示談が成立したため“報道されない”と踏んでいたとも考えられるが、こうした不祥事には、“最悪の事態”を考えて対策を取らなければいけないという。「隠していても『週刊文春』(文藝春秋)や『週刊新潮』(新潮社)がいずれ嗅ぎつけて取材に来ることも想定できた」と語る高祖氏は、山口の謝罪会見も同様に、準備された会見ではなかったと感じたそうで、「事務所としては、あの弁護士の方をつけたことで、安心しきってしまったのかもしれない」と言及する。山口とともに会見に登場した弁護士は、元東京地検特捜部検事などを歴任したジャニーズ事務所の顧問弁護士で、主にコンプライアンス、危機管理に長けた人物と伝えられる。しかし、事務所はそれ以前に、謝罪会見ではあり得ない対応を行っていたという。
「『文春オンライン』で配信された記事(TOKIO山口達也の謝罪会見 ジャニーズ幹部との“異常な”やりとり)で、ジャニーズの幹部が『文春』の記者に対して、高飛車な態度を取ったと書かれていましたが、普通の企業の謝罪会見ではそんなこと絶対にあり得ないですからね」
高祖氏いわく、会見場のセッティングや進行自体も「慣れた人が仕切っているとは思えなかった」という。会見場には、山口と弁護士の席、またマスコミの席も用意されていなかったというが、「一般的な企業の謝罪会見では、それぞれ席が用意され、企業側とマスコミ側に(心理的な)境を作り、ある程度の距離を持たせて向き合います。しかし、山口さんの会見では、囲み取材の形でした」。
さらに山口が弁護士とともに登場し、その後、弁護士が事件の経緯を説明、山口の質疑応答に移るといった流れも、「子どもが親と一緒に謝りに来たような印象。記者から、『可能な範囲で経緯を自分の言葉で説明してほしい』といわれ、山口さんがあらためて説明を行っていましたが、最初から山口さんがすべきだったのではと感じますし、質疑応答の際も記者の方が一斉に質問するような形になってしまうなど、会見の進行がうまくいっていないように思いました」。
また、山口の発言についても、高祖氏は厳しい目線を向ける。
「山口さんは、まず謝罪からではなく、メディアに対して『私の起こしてしまった件について、個人的なことでお集まりいただき、ありがとうございます』とお礼を言ったんです。謝罪会見とは、マスコミにではなく、被害者やファンに謝罪をする場なわけですから、まずは謝罪から入るべき。それに、“ポジションペーパー(見解を示した書類、方針書、声明書)”を作成していなかったのではないかとも感じます。普通は事前に、事件の経緯といった事実関係を整理し、『なぜこういうことが起こったか』『今後どうするのか』などをまとめたもの、また想定される質問とその回答をまとめたものを準備するのですが、あの会見は、どう見てもそういったものを作成している様子がありませんでした」
世間だけでなくメンバーからも猛批判を浴びた「もし待ってくれる場所、私の席がそこにあるのであれば、またTOKIOとしてやっていけたら」という発言に関しても、高祖氏は「普通、ポジションペーパー同様、口にしてはいけないことを事前に確認する“ネガティブリスト”というものも作るのですが、それもなかったのでは。企業の謝罪会見では、必ず経営の責任問題とTOPの進退について問われますから、回答を準備して臨みます」と指摘。今後の本人の進退についてやメンバーに対しての思いは、記者から聞かれるであろうことは想定できるだけに、やはり準備不足が露呈してしまったようだ。
「あと、泣いて会見しちゃいけないですよね。被害者の親御さんの言葉を聞いて涙を流すなど、他者から見て、“感情があふれて涙が出た”と理解できればいいのですが、山口さんの場合、会場に入って来たときから、ずっと鼻をすすって泣いていたんです。恐らくですが、会見について何も整理されていなかったから、不安もあって涙が出てしまったのではないかなと。事前の準備ができていれば、自分の中で頭の中を整理して話そうとするでしょうし、もう少し冷静でいられたような気がします」

5月1日、山口に不起訴処分が下されると、ジャニー社長がマスコミ各社にFAXを送付。「本日、山口達也に不起訴処分が下されましたが、山口が起こしました事件の事実並びにことの重大さに変わりございません。弊社としましては、ことの重大さを真摯に受け止め、全員がそれぞれの立場で信頼回復に全力を尽くす覚悟です」と謝罪を述べた。物議を醸した、第一報後の謝罪FAXからは一転、その内容自体が批判を呼ぶことはなかったものの、「いまさら遅い」「もっと早く社長が対応すべきだった」とネット上には厳しい意見も散見された。
「確かに遅ればせながらではあるものの、翌日のTOKIOメンバーの謝罪会見を控え、“彼らをほったらかしにしていない”“自分も気にかけている”というのを表明する意図があったのでは」
【4】TOKIOメンバー謝罪会見「入念な下準備を感じさせた」
翌2日に行われたTOKIOメンバーの謝罪会見について、山口の会見とは一転、高祖氏は「非常によく準備ができていた。PR会社など、プロの方を入れたのでは」と見解を述べる。メンバーの席とマスコミの席が明確に分かれている会場のセッティング、メンバーの入場・退出、冒頭で25秒間90度のおじぎをする、記者の挙手制による質疑応答といった進行などに、“入念な下準備”があったことを感じさせたそうだ。
「それは、会見が行われたホテルスタッフの対応にも表れていました。メンバーが座るときと立つときに、4人のスタッフがイスを引くサポートをしていたのですが、会見が終わりメンバーが立ち上がる際にもすっと現れ、すぐに去りました。そのタイミングで、4人がおじぎをしたんです。会見を見ていて見事だなと感じました。これができるのは、事前に打ち合わせをしていたからです。また、メンバーの足元が見えないようにテーブルの前を布で覆っていたのもきちんと考えられた証拠です。人は緊張すると、テーブルの下で足を組んだり、手をもじもじさせたりするなどしてしまい、そこに心理状態が表れてしまうのです。記者の方にそういったものを見せない工夫がされていました」
メンバーは会見で、それぞれ山口に対する思いや考えを語ったが、その発言内容に関しても、「事前に5人の関係性がわかるように役割分担をしていたのではないでしょうか。あくまで、“許してはいけない”けれども、厳しく言うメンバー、多少フォローするメンバーとがいる……という。厳しさはありますが、その裏にある山口さんへの愛情を感じる内容だったと思います」と高祖氏は評する。

TOKIOメンバーの謝罪会見の4日後である5月6日、事務所が山口の契約解除を発表した。山口自らの希望によって、この対応が取られることになったという。
「もし“全面的に自分が悪い”ということを認めるのであれば、最初に“これ以上はないだろう”という対応を考えるんです。例えば、製品に何かが混入していたという問題を起こした企業であれば、『工場を閉鎖する』『商品を回収する』など、まずは会社にとって負担は大きいけれど、消費者にとって最善の策を考え、その後、世の中の反応などを見て、どこが一番の落としどころかを見つけていきます。今回の件でいうと、山口さん自身が責任を取って、自らTOKIO、ジャニーズ事務所から離れることを望み、それを事務所が認めたというのが、ファンにとっては苦しいものの、世間にとって“最も抵抗のない”落としどころだったような気がします」
山口の進退を保留にせず、すぐに契約解除を発表した点についても、「これ以上、世間は責めようがない。現時点では、最良の選択だったのでは」と高祖氏は語る。
こうして、山口は退所に至ったものの、ジャニーズ事務所が「(山口に)必要な支援を今後も積極的かつ継続的に行う」と明言しているため、世間では再契約の可能性も浮上している。果たして山口自身は今後、被害者とその家族、そして自らとどう向き合っていくのだろうか。
高祖智明(こうそ・ともあき)
ブライト・ウェイ代表、レピュテイション(※評判)・コンサルタント。1981年、リクルートに入社し、「ケイコとマナブ」など、数々の情報誌の編集・創刊に携わる。95~98年福岡ドーム広報宣伝部長を経て99年より現職。九州大学大学院芸術工学府 デザインストラテジー専攻 非常勤講師(マーケティング・デザイン)も務める。
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