「セックスレス問題」を赤裸々に綴った内容だとして、現在Twitterを中心に話題沸騰中のコミックエッセイ『今日も拒まれてます 〜セックスレス・ハラスメント 嫁日記〜』。著者・ポレポレ美さんが、実際の体験を元に描いた作品だ。
内容は、9年間交際した彼氏と結婚したポレ美が、セックスレスに悩む日々を送るというもの。ポレ美はあの手この手でセックスレスを解消しようと奮闘するが、夫との関係は悪くなるばかり。周囲からの子作りプレッシャーもあり、追いつめられたポレ美はとうとうノイローゼ状態になってしまう。誰しも起こりうる夫婦間の切実な問題を描く本作に、共感を覚える読者は多い。
本作の著者・ポレポレ美さんへのインタビュー、後編は作品へのモチベーションや反響について感じていることを語っていただきます。
(前編はこちら:「萎えるのは君のせいだよ」――“セックスしない嫌がらせ”に耐える「レスハラ」の実情とは)
――夫の山木さんは、基本的に“自分のほうが立場が上”といったポジションで話しているように感じます。さらにポレ美さんが「セックスをしてください」と頼む土下座の場面で、完全に山木さんのほうが優位だという関係ができてしまったのかな、と。
ポレポレ美氏(以下、ポレ美) そうだと思います。そこから明らかに変わってしまった感じが、夫婦の中ではありまして。土下座は象徴的で、私の中でもすごく印象深いという言い方は変なのですが、心のなかにずっと残っている出来事です。「それをしたらおしまい」だったのですが、それをせざるを得ない状況になってしまって。そこから、私の立場が一気に弱くなってしまいました。
■「悪いのは私」植え付けられた罪悪感
土下座事件のあと、ポレ美夫婦は夫の両親や姉夫婦と一緒に家族旅行に出かける。気が沈むばかりのポレ美だったが、なんとか気持ちを切り替え、平常を装っていた。そんな中、義理の父に子作りについて質問される場面が。思わず本当のことを話しそうになるポレ美だったが、その気配を察した夫が「積極的に妊活している」と嘘をつく。2人きりになった時に、なぜあんなデタラメを言ったのかと問うたポレ美に、夫は「なぜ僕を怒るの」「ポレちゃんを守ろうとしただけ」だと返す。思わず黙りこんだポレ美に対し、夫はさらに「じゃあ聞くけど、どっちが悪い?」「ポレちゃんを守ろうとした僕と、家族の前で本当のことを言おうとしたポレちゃん、どっちが悪いかな?」と責めはじめる。その勢いに気圧されたポレ美が「悪いのは私だね、ごめんなさい」と謝ると、夫は「分かってくれたらいいんだ」と満足気な顔を浮かべる。釈然としない思いを抱き続けていたポレ美は、だんだんと精神を病んでいき、うつ病の診断を下されてしまうのだった。
――山木さんは、すべての責任をポレ美さんに負わせて、先回りして封じ込めるようなやり方をされていますよね。ポレ美さんが正しい判断ができない人間だ、と決めつけている節があります。これは一般的に“モラハラ”ともいえる要素かなと。
ポレ美 そうかもしれません。何を言っても言い負かされるみたいな……。
――この作品を描こうと思ったのは、問題提起として世に伝えたいという気持ちがあったのでしょうか。
ポレ美 はい。いまのところ解決方法を示してあげられる漫画ではないのですけれど、セックスレスで悩んでる人が「私だけじゃない」と思ってもらえればと。手助け、なんて言い方は偉そうですが、ちょっとでも読んでくださった方の心が晴れたらいいなと思っています。
――2月半ばの連載段階では、置き手紙をして山木さんの元を去るなど、不穏な気配を感じさせる展開になってきました。かなり身を削って描いていらっしゃるのでは、と思いますが。
■負のスパイラルの中で、救われた言葉
ポレ美 そうですね(笑)。当時の日記などを読み返しながら描いているのですが、当時の気持ちを思い出してつらい気持ちになることもあります。ですが、描くことで気持ちの整理はついていきます。当時こういうことで悩んでいたけれど、こうすればよかったんだな、と俯瞰して見ることができるのは、面白い体験です。
――まだまだ今後、波乱がありそうな感じですね?
ポレ美 はい、まだまだこれから、大きく話が動いていきます。自分の気持ちに嘘をつきたくなくて、丁寧に描いていこうとすると、どうしても描写が長くなってしまったりするのですが。
――その分、読者側も主人公の気持ちに寄り添って読むことができます。現在、漫画の中のポレ美さんと同じような体験をしている人に言えることがあれば、教えて下さい。
ポレ美 「同じ体験をしている」という読者の方から、悩みを吐露するメールをいただくこともあるのですが、私もすごく気持ちがわかる。誰にも相談できないまま、行動や思考が負のスパイラルに陥ってしまう、根が真面目な方が多いように感じています。だからこそ、読んでもらうことで少しでも楽になってもらえたらありがたいです。「ポレ美」を客観的に見てもらうことで、あんまり悩みすぎなくてもいいのかな、と思ってもらえたら。
――ポレ美さんも漫画の中で、実の妹さんに「頑張らなくてもいい」と言われていましたね。
ポレ美 そうなんです。あのセリフはやっぱりうれしくて。それまでいろんな人から「頑張れ」と言われ続けてきたのですが、自分の中では十分頑張ってるし、でも期待に応えられなくてつらいというのがありまして。そんな中でも、救いの言葉がひとつあるだけで、お守り代わりになりますから。自分の漫画が、そういう“救い”になってくれればいいなと思います。
――自分のつらい状態に名前がつくと「私、今こういう状況なんだ」って安心することがありますよね。カテゴライズの効果といいますか。ポレ美さんが、読者の方に安心してほしいと仰ってましたが、今回、作品で提示された「セックスレス・ハラスメント」という言葉、そして描写されているポレ美さんの経験を作中で追体験できることは、多くの読者に安心を与えると思います。
ポレ美 そうあってくれると、とてもうれしいです!!
(犬塚左恵)
画像提供:まんがアプリ「Vコミ」
ポレポレ美(ぽれ・ぽれみ)
イラストレーター、漫画家。趣味は旅と掃除。
自身の体験を綴ったエッセイ漫画「今日も拒まれてます」を
漫画アプリ・Vコミにて連載中。