――男は風俗嬢にどんな姿を見せているのだろうか。恋人や友人には見せない、男たちの情けなさ、みっともなさ、滑稽さ、そして優しさをアラフォー風俗嬢がつづります。
どこの店に行っても一定数いるのが、未経験や新人と書かれた子が大好物のキモいおじさん客。私が初めて風俗デビューしたお店には、入店してすぐの子を指名しては、嬢の方から「リピート指名はNG」と言われる有名な地雷客がいた。
そのお客さんは基本的に本指名をせず、新しい子が入れば片っ端から一通り試すという遊び方。だから、「次回はNGで」と言ったところで本人に気付かれないし意味がない。この男性に指名されると、泣いて戻ってくる子もいて「あまりにもひどい」と、そのまま辞めてしまった子もいた。
初めての風俗デビューで初っ端から、この強い印象を残すおじさんに当たってしまうと、確かに風俗のトラウマが一生残ると思う。とにかく、嬢同士の間でも笑えないと話題に上がるほど有名だった。誰が付けたのか、その方の店での呼び名があった。その名も「猫屋敷おじさん」。
なぜ、そう呼ばれるようになったのか。それはおじさんがとある下町の路地の、さらに路地奥にある、いわゆる建て直し不可物件の斜めに崩れかけた木造アパートの2階に住んでいたからだ。2階へ上がる階段は斜めになっており、電気もないのか点かないのか、暗闇を上がってたどり着く1DKほどの家に3匹の猫とおじさんは暮らしている。あまりの汚さとボロさに絶句。人が住むところじゃない、言葉にならない強烈さ。
掃除は年に一度しかしないらしく、玄関入ってすぐのダイニングキッチンの床一面には、新聞紙や段ボールが一面に敷き詰められていて、床一面というか部屋全体が猫のトイレ仕様。敷き詰められた新聞紙も段ボールも取り替えてない様子から、とにかくネコのおしっこが臭う。
悪臭すぎて鼻呼吸ができない。口呼吸しても、口の中がおしっこの味がしているような感覚になるほど。終了した後の数時間は、しばらく臭いが鼻に残るほどだ。そして、奥の和室は万年床の萎びたせんべい布団が1枚敷かれ、人間のスペースは布団の上のみという状態。その上も、ゴミや猫の毛だらけでザラザラしており、座ると服や足にいろんなものがくっつく。
初めて行ったとき、靴下が毛だらけで大変なことになった。強烈な汚さゆえ、脱いだ服が汚れないように畳の上に置かず、全てカバンの中にしまう。お風呂に入ってもタイル壁から床もあちこち黒カビだらけで、湯船なんて使っていないのではというほどの汚さ。プレイ前にお風呂で行うイソジンうがいも、なんとコップを持っていないから、手の平にイソジンとお湯を入れ、すくって口に入れてもらった。
家にコップが1つもないとかおかしいけれど、長年独身の男性の家では意外とありえる光景。そしてシャワーから上がり、タオルを借りようと待っていたら、なんとこのおじさんが自分の体を拭いた後のタオルを渡してきた。ひいぃぃ~と思いながらも、タオルを持参していなかったので、仕方なくこのおじさんが拭いた後の湿ったタオルを借りるしかなかった。
さらにプレイが始まると、裸体の私たちを猫たちが囲ってきて、すり寄ってきたり、じっと見つめてきた。猫に見られながら、視線を感じながらのプレイはなんとも落ち着かない。
プレイが終わり帰りの送迎車の中で「大丈夫でしたか?」なんて店長が一応心配はしてくれたけど、あまりのひどさに、ただただ笑うしかなかった。ただ、お店の人から同じ女の子をリピートしないお客さんと聞いていたので、特に「次回NGにします」とは言わなかった。
ところがその衝撃を忘れた頃、数カ月後に二度目の指名が入ったのだ。
承認欲求は満たされても、誰もが嫌う地雷客に気に入られてしまった気持ちは複雑。行きたくなかったが、太ったばばぁはお客が付かないので、選んでる場合じゃない。半泣きの気持ちを抑え、有り難く引き受けることにした。
気合を入れ、まずは猫の毛だらけになるので車の中で靴下は脱いで行った。いざ覚悟を決め入室。一度目は、この世のものとは思えない猫と住むゴミ屋敷に衝撃とショックを受け、何も聞けなかったが、今回はここぞとばかりに開き直り、「なぜ……?」という疑問をたくさん質問した。
Qおしっこの臭い気にならないの?
A猫屋敷のお兄さん:臭いなんてする?
Qどうして新人さんしか指名しないの?
A猫屋敷のお兄さん:なかなかイキにくいから、合う人を探している。
Qなんで家の中なのに、そんな怪しい色付きのサングラスをずっとかけているの?
A猫屋敷のお兄さん:目が弱いから。
Qどうして私を久々にリピートしたの?
A猫屋敷のお兄さん:途中何度か指名しようとしたけど、予約が取れなかった。
どうやら、いつも手と口じゃなかなかイケないのに、前回私のフェラでイクことができたのがとても良かったらしい。さらにキスが上手と褒めてくれた。おじさん的には、キスから始めたいのに、わりとキスをしてくれる子が少ないらしく、それがなかなかイカない原因らしい。
そりゃあ新人嬢は、お化け屋敷のようなネーミングの場所に派遣されてビクビクしてるだろうし、こんな衝撃的な部屋の中でキスから雰囲気を作れるわけがない。普通の女の子なら固まってしまうはず。本人だけが気づいてないって、つくづく幸せな奴だ。
幸か不幸か今回二度目の指名だったから、少し気持ちに余裕もあり、心の準備ができたので「すごくいろんな意味で強烈ですよー」ってズバズバ言ってやった。ところが、話をして打ち解けてきたら意外といい人で、かわいらしいおじさんだった。
そしてたくさん話したせいか、不覚にも気に入られてしまい翌週も指名してきやがった。三度目の訪問にもなると、だいぶ余裕が生まれる。足の裏にゴミがくっつくのが気持ち悪いので、スリッパを持参してみたり。泣いて辞めてしまった子がいた話も教えてあげてみたり。「実は私、動物アレルギーなんだ」と言ってみたり。「家の中で色付きサングラスは気味悪がられますよ」と言ってみたり。心を開きすぎなくらい、溜まっていた不満を失礼なくらい連発した私。
あぁスッキリした。そのせいかどうかはわからないが、不快になったか? プレイ後のシャワー時に言われた。
「この店で君だけだよ、生で本番させてくれない子」
ありがたいことに、それから呼ばれることはなくなった。いくら落ちぶれてお金がなくても、私にだって選ぶ権利があるし、そこまでしてお前の本指名なんていらねーよ。と思ってしまった私もまだまだだなぁ。

*曼荼羅*(まんだら)
デリヘルで風俗デビューし、出稼ぎ&吉原ソープを掛け持ちした後、現在は素人童貞などSEXに自信のない悩める男性のためにプライベートレッスンをしているアラフォー風俗嬢。子宮筋腫と腎臓の手術経験があり、現在は子宮頸がん中等度異形成持ち。売りはHカップのおっぱい。
ブログ「続・おちぶれ続けるアラフォーでぶ女の赤字返済計画」