Twitterやインスタグラムなど、さまざまなSNSが普及した今、誰もが気軽に情報を発信できるようになった。その一方で、新たなリスクとなっているのが、個人に不特定多数からの批判が集まってしまう「ネット炎上」だ。特に、芸能人のSNSは注目度の高さゆえに、その発言や行動が炎上の標的となることも少なくない。というか、とても多い。
最近でも、女性タレントの木下優樹菜が、歌手・安室奈美恵の電撃引退を受けて号泣する自撮り動画をインスタにアップしたところ、「わざわざ見せるもんじゃない」「安室じゃなくて自分が好きなんでしょ?」などの批判が殺到した。
木下だけでなく、何をアップしても炎上してしまう“可燃性”の女性芸能人は多い。なぜ彼女たちのSNSは燃え上がってしまうのか、ネット中傷や炎上対応を得意とする、法律事務所アルシエン代表の清水陽平弁護士に話を聞いた。
■他者を利用すると炎上しやすい
「木下優樹菜さんの場合、一般的には、わざわざ泣き動画を上げる必要性を感じられないことが、炎上のきっかけになっていると考えられます。さらに突き詰めると、安室奈美恵さんを利用して自己主張をしているという印象を受け手に与えたことも大きい。本人の意思はどうあれ、他人を利用してアクセス数を稼ぐ形になっていると、炎上につながりやすいんです」
このように「自己主張が透けて見えたとき」に、ネットが過剰に反応することが多い、と清水弁護士。
「芸能人は自己主張をしなければならない職業なので、仕方がない部分はあると思いますが、主張する方法を間違えると炎上する可能性は高いです。また、木下さんのように、炎上しやすいキャラクターとして認知されていると、ほかの人よりもその頻度は上がりますよね」
確かに、これまで木下は一般人からの批判的なコメントに対して名指しで反論をして炎上したり、熱が出た子どもの写真をブログにアップして「写メ撮ってる場合かよ」という批判が集まるなど、炎上案件には事欠かない。
「一般人への反論コメントなどからは、木下さんの大人げない態度も感じられますが、炎上キャラになってしまうと、彼女を批判する目的でSNSを見る人も増えるので、ささいなことでも批判を集めることが多くなってしまうのです」と、清水弁護士は語る。
SNSが燃えているのは木下だけではない。女優の真木よう子は主演ドラマの視聴を土下座でアピールする動画をアップしたり、同人誌即売会「コミックマーケット(以下、コミケ)」に参加するためにクラウドファンディングで寄付を募った件などで、立て続けに炎上した。
モデルの紗栄子は撮影禁止のプラダ店内で撮った写真が炎上したり、熊本地震に500万円を寄付した振込明細をインスタにアップしては炎上と、頻繁に燃え上がる「炎上女王」と化している。炎上芸能人たちには、どんな共通点があるのだろうか?
「彼女たちに共通するのは“常識の欠如”です。何をもって常識というか、という問題もありますが、一般的な意味での常識に欠ける点があるとツッコまれやすいです。たとえば、『コミケは商業目的ではない』という暗黙のルールがあり、多くの人が自費で参加しているのに対し、真木さんはクラウドファンディングで資金集めをしてしまった。このことが業界の常識から逸脱してしまい、炎上につながりました」
紗栄子のプラダ店内での撮影も、ルール違反という意味で常識から外れているために批判が集まったと考えられる。そのほか、ネットは“金のニオイにも敏感”と、清水弁護士は指摘する。
「お金のことは妬みの対象になりやすいです。真木さんはクラウドファンディングを使って楽をして儲けようとしていると捉えられてしまいましたし、紗栄子さんのケースは、ねたみの対象になり得るハイブランドでの買い物をしていること自体が妬みの対象で、そこに撮影禁止というルール破りが加わって、叩きやすい状況が生まれました」
■他者の目が入らないSNSによる、芸能人の炎上リスク
炎上にもめげず、SNSで発信を続ける炎上タレントたち。名前を売るための炎上商法という見方もあるが、そこまで考えた上での行動とも思えない。
「炎上を繰り返す人は、投稿してもいい内容か否かを、判断できていない印象を受けます。そもそも芸能人の生活は、一般人の生活とはかけ離れている部分もたくさんあると思うので、一般的な常識から外れてしまうのは仕方がないことではありますが……」
これまで漠然としていた芸能人の価値観と一般人の価値観の違いが、SNSという本人発信のツールを得たことで、より明確になったのだ。
「SNSが出てくるまで、芸能人の生活は、テレビや雑誌などを通してしか垣間見ることはできませんでした。メディアを通すということは、同時に他人のフィルターを通すということ。途中で誰かが『これは表に出せない』と判断すれば、世に出ることはありません。しかし、本人の意思で発信できる現代は、ある意味で彼女たちの本質が出てしまうと考えられますね」
もともと「嫌われがち」な女たちが、ナマの自分自身を不特定多数に披露したら、多くの反感を買うのは当然といえば当然。彼女たちが炎上をさけようとするなら、SNSをやめるしかないのかもしれない。
清水陽平(しみず・ようへい)
2010年法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除・発信者情報開示請求や、ネット炎上対応などを得意分野とする。著書に『サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル第2版』(弘文堂)、『企業を守る ネット炎上対応の実務』(学陽書房)などがある。
・法律事務所アルシエン