家庭を持っている女性が、家庭の外で恋愛を楽しむ――いわゆる“婚外恋愛”。その渦中にいる女性たちは、なぜか絶対に“不倫”という言葉を使わない。どちらの呼び名にも大差はない。パートナーがいるのにほかの男とセックスする、それを仰々しく “婚外恋愛”と言わなくても、別に“不倫”でいいんじゃない? しかしそこには、相手との間柄をどうしても“恋愛”だと思いたい、彼女たちの強い願望があるのだろう。
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昨年から引き続き、不倫報道がお盛んである。中でも最近の不倫報道において、注目を集めたのが、「一線を越えていない」という、元神戸市議の橋本健の言葉である。
誰もが本気にしていないこの言葉だが、仮に2人が本当に「一線を越えていない」、つまり体の関係がまったくないとしたら、これ以上リスクの高い純愛は存在しないだろう。
ホテルの部屋で二人一緒に一晩過ごしてセックスもせずに純愛を貫いたとしても、それを信じる者など存在するわけがない。だったらいっそのこと体の関係を持ってしまった方が気楽ではないだろうか。
「そうですよね、だから私たちは絶対に体の関係を怪しまれるような場所へは行きませんよ」
手もつながない、キスもしない、そんな婚外恋愛をもう3年以上続けている美沙さん(仮名)は、笑顔でそう答えた。
■短大を卒業後、すぐに結婚
小柄でトーンの高い声を持つ美沙さんは、「もうすぐ30歳」という実年齢よりもだいぶ若く見える。その愛らしいルックスは、大学を卒業したばかりと言っても通用するほどである。
彼女の結婚歴は長く、現在のご主人と結婚をしたのは、短大を卒業して間もなくだという。
「夫は、私が学生時代にアルバイトへ行っていた会社の社員でした。わりと社員同士の仲が良くて、アルバイトも飲みに誘われることが多かったので、数回飲みに行ってデートに誘われて……っていう感じでしたね」
当時まだ10代だった美沙さんにとって、年上のご主人は「すごく大人に感じた」そうだ。短大を卒業した翌年に結婚。恋人同士の延長のようだった結婚生活も、数年後に少しずつ崩壊へと進んでいく。
「夫が浮気していたんです。当時はガラケーでロックもしていなかったので、メールを調べたらすぐにわかりました。やっぱりな、とは感じましたね。もともと女好きですし、私に内緒でキャバクラや風俗にも行ってたみたいなので……」
あまり男性経験のない美沙さんは、それ以来、ご主人に触れられることをしばらく拒んだ。
「当時は『そろそろ子どもを作ろうか』って話していた矢先の出来事だったので、相当凹みましたね。体重も落ちましたし」
落ち込んでいた美沙さんの救世主となったのが、現在の恋人である男性だ。
「彼は、中学生の時に付き合っていた人です。地元に帰省した時、内輪の同窓会があって……婚外恋愛の出会いの定番だからちょっと恥ずかしいんですけど」
彼もまた結婚をしていて、子どももいたそうだ。同窓会を終えたあと、2人で飲みに行き、交際当時によく遊びに行った神社で互いの家庭の不満を語り合っていたら「自然と『好き』みたいになりました」。
以来、美沙さんは帰省をするたびに彼と会い、また彼も、都心に来た時には必ず美沙さんに会うという。
「中学時代に果たせなかった恋を、今実らせた感じですかね。映画を見たり、ボーリングをしたり、この前はディズニーシーにも行きました。夫はあまりアクティブな遊びが好きではないので新鮮ですし、彼といると中学生に戻った気がして……見返りを求めない恋愛ってこんなに楽しいんだ、って実感しています」
しかし2人は、絶対に破ってはいけないルールを設けていた。それは「一線を超えないこと」だ。
「彼の子どもが成人したらお互いに離婚をして、結婚をしようと約束しています。そのためには法的に不利になるようなことは絶対にしないと誓ったんです」
あくまでも純愛を貫き通したかったという美沙さんだが、彼はセックスをしたいと思わなかったのだろうか? そう尋ねると美沙さんは恥ずかしそうに微笑んだ。
「実は、何度も誘われました。付き合い始めた時はもちろんですが、今でもたびたび『我慢できない、ホテルに行こう』と言われますね。でも私は必死で阻止しています。本音を言えば、私だってすぐに彼に抱かれたいですけれど……」
離婚時に慰謝料を求められるケースは「不貞が認められた時」である。体の関係はもちろん、それを匂わせる状況を作ると即アウトだ。
しかし過去には、美沙さんのように、手もつながず、キスもしていない男女の関係を、裁判所が“不倫”認定した事例がある。夫と同僚女性の不倫関係を疑った妻が、女性に賠償を求めた裁判で、実際に裁判所から44万円の賠償命令が下ったというのだ。
「もし私たちがそうなったとしたら、逆に私は主人を訴えて、私たちが支払う額を取り返しますよ。当時の夫がした不倫の証拠は、まだ保存してありますし、キャバクラや風俗へ通うことを黙認はしていましたが、私にとっては“精神的苦痛”でしたから」
若いうちに結婚をして、現在再び彼と純潔を守った交際をしている美沙さんは、婚外恋愛というよりも“青春をやり直している”ように筆者には感じた。果たして、美沙さんが離婚をし、彼と再婚をする日は訪れるのだろうか――。
(文・イラスト/いしいのりえ)




