シャネルのデザイナーで、「モード界の皇帝」として君臨しているカール・ラガーフェルド。83歳という高齢だが、シャネルの現役デザイナーとして第一線で活躍している彼は、創業者ココ・シャネルの死後、低迷していたブランドを蘇らせた“シャネルの救世主”。シルバーヘアーのポニテールとサングラスがトレードマークで、貪欲に美を追求し続ける姿勢は世界中からリスペクトされ、“ファッション界の生きる伝説”として強烈な存在感を放っている。
そんなカールが、ファッション業界紙「WWD」のインタビューで、大御所女優メリル・ストリープに対する怒りを炸裂させたのである。
2月23日に公開された「WWD」電子版の記事によると、メリルはカールが手がけた「シャネル2017年春オートクチュールコレクション」の「刺繍を施したグレーのシルクガウン・ドレス」を気に入り、今年のアカデミー賞授賞式用に発注。ネックラインを少し高くしてほしいというリクエストを受け、シャネルはデザインの微修正を行った上でドレス制作に着手した。
しかし、その最中、メリルの事務所から突然「中止通達」が届いたとのこと。カール自らスケッチを描き上げ、それを基にドレスを作り始めていたが、メリルの事務所は「ドレスはもう作らなくって結構です。お金を払ってでもドレスを着てほしいというデザイナー(ブランド)が現れたので」と、電話1本で断るという無礼な振る舞いを見せたという。カールは「シャネルは、セレブに金を払い、服を着てもらうということはしない」と強調し、メリルほどの大御所女優であっても特例は作らない姿勢を示唆。
「着てもらうために金は払わない」というが、ドレスは無料でプレゼントされる。制作に費やされる時間やコストはかなりのもので、今回のドレスには10万ユーロ(約1,180万円)もかかったとのこと。カールは、インタビューで「10万ユーロのドレスを贈った上で、(それを着てもらうのに)金を支払わなければならないと知った」「我々はドレスをプレゼントする。ドレスも作る。でも、それを着てもらうために金は払わない」とイラ立ちをあらわにした。キャンセルされたドレスについて、カールは、「(メリルに)プレゼントしますよ。彼女のサイズに合わせて作り上げたのですから」「彼女に完璧にフィットしますよ」と皮肉たっぷりにコメントし、ブランドデザイナーとしてのプライドを見せた。その上で、「彼女は天才的な女優。でも、せこい人だね。違うかな?」と皮肉たっぷりにディスったのだ。
この件に対して、業界誌「The Hollywood Reporter」からコメントを求められたメリルの代理人は、事実無根だと主張。「レッドカーペットで金をもらったドレスを着るというのは、メリルの個人倫理に反する」と強調した。メリルの代理人の反撃を受け、カールとシャネルは共同で「ストリープ氏が、報酬目当てでほかのデザイナーを選んだと誤解した」という声明を発表。「物議を醸してしまい、残念に思っている。20回目のノミネートをされたストリープ氏が受賞することを祈っています」とコメントした。
すぐに声明を出したカールとシャネルだったが、アカデミー賞授賞式という女優にとって晴れの舞台の直前に「せこい人」だと大恥をかかされたメリルは、「誤解した」という言葉では納得できないと大激怒。25日には、「有名なデザイナーであるカール・ラガーフェルドは、私を中傷したのです。私のスタイリスト、そして私がドレスを着ようと決めた優れたデザイナーも中傷しました」と、強く非難する声明を出した。この声明でメリルは、WWDに対しても「このような中傷を、確認もせずに記事にした」と批判。「記事は世界中で報じられ、今も拡散され続けている」「アカデミー賞20回目のノミネートということで、メディア、同業者、観客から注目されるであろう、私のオスカーの舞台を台なしにした」と怒りを炸裂させた。
そして「決して軽く受け止めることなどできない」とし、「ミスター・ラガーフェルドが出した“声明”は、今回の“物議”に対する遺憾の意であり、謝罪ではない」「彼はウソをつき、その偽りの言葉が掲載されたのです。謝罪声明が出されることを、お待ちしております」という攻撃的な言葉で締めくくった。
英大手紙「ガーディアン」によると、シャネルの広報は「メリルのスタイリストとアカデミー賞に着ていくドレスについて話し合ったが、ほかのデザイナーの服も候補に挙がっていることは認識していた」「後日、メリルのスタイリストから、別のドレスを選んだという連絡を受けたが、その理由は聞いていない」と説明しているそう。「シャネルは、これからもストリープ氏に対して敬意を表し、関係を継続していきたいと思っている」という言葉を紹介した。しかし、この言葉も謝罪ではないことから、メリルの怒りの炎に油を注ぐのではないかと懸念されている。
そのメリルだが、日本時間の27日に開催された第89回アカデミー賞のレッドカーペットには、レバノンのデザイナーが立ち上げたエレガントな高級ブランド「エリー サーブ」のドレスで登場。深い紺色の、裾の長い高級感あふれるドレスで、首元が美しく見えるオフショルダーだった。授賞式では終始にこやかな表情を浮かべ、司会者がオープニングトークで、トランプ大統領がメリルのことを「過大評価された女優だ」とこき下ろしたネタで会場を沸かせたときは、少女のように恥ずかしがり、隣に座る夫の肩にしなだれかかった。そして、司会者から起立を促されると、サッと立ち上がり、会場から割れんばかりの拍手を浴びて満面の笑顔で投げキッスをするなど、「今夜のアカデミー賞は私のもの」という感じにノリノリだった。残念ながら主演女優賞は逃したが、その存在感は相変わらず。
ネット上では、あのカールが「自分が間違っていた、心からお詫びしたい」などと言うはずはないとの意見が多い。生きる伝説である2人の対決は、今後、どのような展開を見せるのだろうか?



