
(C)東映アニメーション / 「ポッピンQ」Partners 2016
卒業を直前に控えた、中学3年生の少女たち5人が奇跡の出会いを果たす――ふとした出会いから“ひょい”と異世界へと入り込んでしまった彼女たちは、ポッピン族が住む「時の谷」や世界を救うためにダンスを踊ることに……!
東映アニメーションの60周年記念プロジェクトという非常に重たそうな看板を背負い、気合みなぎるオリジナル新作を描く宮原直樹監督は、『プリキュアオールスターズDX 3Dシアター』をはじめ、『プリキュア』シリーズのEDでCGディレクターを務め、プリキュアたちの超キュートなダンス映像を制作してきたクリエーター。なおかつ、TVアニメ『ドラゴンボールZ』、『ドラゴンボールGT』の作画監督も経験するなど、作画にも定評がある。
そんな宮原監督のもと、キャラクター原案にライトノベル『キノの旅』(作:時雨沢恵一/電撃文庫)でも知られる黒星紅白を招いた『ポッピンQ』の公開ももうすぐそこ(12月23日公開)。
3DCGダンス、超作画によるアクション、小っこくて可愛いポッピン族、悩みを抱えた少女たちの卒業物語――要素たっぷりの『ポッピンQ』の魅力を、宮原監督に語っていただいた!
■CGのダンスと作画でのアクション――2つをつなげられればと
―― いわゆる冬休み映画となるよう公開が前倒しになったり、制作は順調に進んだようですが、企画が動き出したのはいつごろからなんですか?
宮原直樹(以下、「宮原」) 作品づくりとしての実作業は2年ちょっと前くらいからなんですが、企画自体は2011年の後半ぐらいから動いていましたかね。「file(N):project PQ」というプロジェクト名を公表したのが、15年の頭ぐらいでした。
―― 『プリキュアオールスターズDX 3Dシアター』の作業が終わったころですか?
宮原 ちょうど終わってからです。オリジナルの新企画をとなったとき、やはり3DCGダンスを使ってみようというと。ただ、これまではキラキラした華やかなステージで、ショー的なところをいろいろ突き詰めていきましたが、他社さんでも同じようにステージを生かした作品が出てきまして。

伊純が異世界から入り込んだところから物語は始まる。異世界とダンスは果たしてどう融合するのだろうか?
―― アイドルアニメが増えましたよね。
宮原 映像的にもすごく成熟してきたじゃないですか。ですからそこよりも前の段階、ストーリーとダンスをいかにつなげるか。どうして踊るようになったのか、踊る時に何を考えているか、踊ることで何が変わるのか――そういうところをしっかりできれば、映画のクライマックスとして、ダンスが今までとはまたちょっと違う持ち上げ方で立つのではないかと考えたんです。
そのようなことを両プロデューサー(松井俊之、金丸裕)と、こういう話はどうだ、ああいう話でどうだと進めて、今の『ポッピンQ』につながっていったという感じです。
―― 実在のアイドルも、アイドルアニメやゲームも流行っていますが、そちらに行かずに『ポッピンQ』の方向にいったのはどうしてだったんでしょう。他誌さんのインタビューなど拝見すると、監督は生身のアイドルがお好きみたいですけど。
宮原 好きです好きです(笑)。ですが映画を制作していく時に、内容盛りだくさんにしたいという欲が出てきたんです。というのも、自分がアニメーターをやっていた時はアクション作品を担当することが多かったので、作画でがっつりとしたアクションもいつかやりたいなと思っていたんです。CGのダンスと2D作画でのアクション――その2つをつなげられるような物語にできれば一石二鳥でいい感じに、幕の内弁当的なお祭り映画になると考えたんです。
―― 可愛いポッピン族がいて、ファンタジー世界で、ダンスシーンもガッと動かすアクションもある。いい感じに東映アニメーション60周年という看板に相応しい作品になりましたけど、その辺は意図してなかったんですね?
宮原 僕は僕のできる、僕自身が面白いなと思うところを集めたら、ああいう形に結果なってしまったというのが正直なところですかね(笑)。

ダンスを見せるどころかか、得意なはずのに踊ることを拒否する沙紀というキャラクターも
■ダンスシーンはロッキーが海辺を走るイメージ!?
―― ダンスについてお聞きしたいんですが、最初に宮原監督が3DCGでダンス映像を制作されたキッカケは?
宮原 『ONE PIECE』の映画版の短編で『ジャンゴのダンスカーニバル』(『ONE PIECE ねじまき島の冒険』と01年3月3日に同時上映)という作品がありまして。ダンスを中心に据えた作品で、その時初めてモーションキャプチャーを取り入れてみたのですが、それがすごい衝撃だったんです。本当に人の動きをそのままデータに取り込めるぞと。
その当時は、CGキャラクター表現が今ほど進歩してなくて、一旦棒人形に踊らせ、その上から作画でトレスして描いてもらう方法を取ったのですが、それでもやっぱり効果はてきめんなんですよ。すごい可能性があるなと感じていたところに、たまたま『フレッシュプリキュア』のエンディング映像を手伝ってみないかというお話をいただいて。もう面白がって、横から口を出していたらいつの間にかずっと続いていた、という感じですね。
―― ただ、たとえば『プリキュアオールスターズDX 3Dシアター』ではキャラが可愛くウィンクしてみたり、観客を意識している部分がありましたが、『ポッピンQ』はそういうところがあまりないですよね?
宮原 彼女たちは誰かに向けて踊っているのではなく、自分たちが何かを成すために自ら踊っていますから、『ポッピンQ』は。お客さんに向けて、愛想を振りまいてウインクしたりしないし、カメラも意識しない。そのあたりは本当に、彼女たちのパフォーマンスを100%拾っていかなきゃと思います。
―― ダンスサークルなどに所属している女子中学生が、放課後に楽しく踊っているみたいな感じですか?
宮原 そうですね。クライマックスのダンスシーン以外は、本当に部活みたいな光景ですからね、その辺の野原で踊っていたりしますから。逆にその方が何かを一生懸命練習している雰囲気……イメージとしてはロッキーが、海辺で走っているイメージ。
最後のダンスシーンでは、今まで自分が作ってきた華やかなショーステージと違いますから、シーンとして(キャラと背景などを)合成するまで、セットとしてどう見えてくるのか、いまいち自分の中でイメージが構築できなかったですが、CGスタッフがいいアイデアを沢山出してくれたんです。ライブショーではないんだけどそれに相当するようなすごい華やかな舞台を準備してくれたので、僕もびっくりしました。

海辺を走る伊純。作中のかなりの時間、走っていました
■黒星紅白さんと東映アニメの絵の相性が良かった!
―― ダンスに励む女の子5人がみんなカワイイし、ちょっとこじれてるあたりが思春期らしくて良かったし、5人のキャラクターたちの「スーパー戦隊」のような配置も面白かったです。
宮原 よく言われるんですけど、あんまり意識してないんですよ。やはり知らず知らずのうちにすり込まれているんでしょうかね。
とりあえず、こじらせ主人公・小湊伊純を最初に設定して、その周りを固めるべく、どうすれば個性的で、なおかつ伊純の一本のストーリーに華を添えられるかという具合にキャラクターのバランス、配置は考えました。
―― この伊純が最初から最後までずっと走っていましたが、彼女の走りも気持ちよかったです。
宮原 キャスト(瀬戸麻沙美)さんにも、「ハアハア」とばっかり声を出させてしまいましたが(笑)、最初から走るキャラクターにしようと考えていました。もうステレオタイプで申し訳ないですけど、青春ドラマといえば海岸沿いを走る中学生みたいな漠然としたイメージから広げていきました。
―― 黒星紅白さんの原案ですから、キャラが可愛いのはもちろんですが、伊純にしてもアクションがよく映えていました。
宮原 ダンスシーンと並ぶ見せ場として作らせていただきましたが、各アニメーターさんが頑張って動かしてくれました。自分のいい加減なコンテをよくぞあそこまで……感謝しています(笑)。

しかし可愛い。フォームは何パターンかあります
―― 彼女たちがそれぞれ持つ特殊能力も、しっかり見せ場になっていました。
宮原 苦労したんですよ。どういう能力なのか、どこから由来しているのか、キャラクターたちの物語にどうつなげていくか……練って練ってダメ出しされてまた練って、という繰り返しでした。
結局、脚本家(荒井修子)とプロデューサーの方たちと話しあって、能力は彼女たちが今抱えている問題をいかに解決していくかっていうところに紐付けようと最後は決めたんですが、結果的にその辺も面白くできたなと思っています。
―― アクションも含めて、女の子たちを可愛く描いてやるぞっていう執念が見てとれるような映像と感じました。デザインも、決定までにかなり苦労されたのではないですか?
宮原 いえ、基本は黒星さんのセンスにおんぶにだっこじゃないですが、デザインは上げていただいたものが、ほぼほぼ一発でOKという感じでした。これを動かしたら可愛いだろうなというデザインをあげてくれるので、こっちはもう何とかそれに応えたいという一心でした。
―― 黒星さんのデザインは線をいっぱい描く方ではないので、アニメに落とす時に簡単そうに見えて実は難しいタイプなのではと思うのですが。
宮原 そう、シンプルなだけにニュアンスを拾うというのは非常に難しいです。ただ、思ったより東映アニメーションが得意としている絵に合っていたなという感じですね。
黒星さんの絵は、違う角度から、たとえば萌え系が得意なアニメーターさんが描いてもちゃんと可愛い。いろんなアプローチができる絵ですけど、今回は動きのつけやすさを最優先に、シンプルな絵でもちゃんとしっかり地に足のついたデザインという方向で、浦上さん(貴之/キャラクターデザイン・総作画監督)がアプローチしてくれた。それが、結果的に大成功だったと思います。
―― しかもアクションさせるとちゃんと見栄えがつくように、伊純ちゃんのマフラー、(友立)小夏の袖が余っている感じとか、そういう上手い演出をされていたなと思います。
宮原 そうですね。踊った時にフワリとなるようなダンス服としての一面が、みんなの最終フォームにそれぞれあるんですよね。コートの裾だったり、他の娘は髪の毛だったりスカートだったりとか。そういうところが上手くアクションにも効いたなと思います。

最初に発表されたキービジュアル。ちょっと大人っぽい路線かなと思わせられました
■あくまでテイストは“東映まんがまつり”
―― 卒業間近の、それぞれ問題・悩みを抱えた中学3年生たちが主人公です。キャラの設定的にも、小学校高学年から中学生ぐらいの女の子に観てもらいたい作品かなと感じたりもしました。
宮原 当初、たしかにこれまで東映アニメが制作してきた女児向け作品よりも、少し上の世代の女の子たちに見てもらうことを考えていましたが、制作していくうちに、年齢層が多方面に広がっていきました。
また、この層向けにするからこういう描き方をしよう、みたいな器用さは僕にはないですし。ただもう、自分が描きたいもの、観たいもの、面白いと思うものをバッと並べて、結果こういう感じに膨らんでしまったというのが率直なところです。まあ、そこはプロデューサー陣がまた「はみ出しすぎ」とかいうところはちゃんとチェックしてくれたので、良い形にまとめられたと、手応えを感じています。
―― “卒業”という普遍的なものがテーマになっているので、大人も甘酸っぱい感じを思い出しながら楽しく観られる作品でした。卒業をテーマに据えたのは最初からあった考えですか?
宮原 成長するために、何かを通過するのが卒業ですから、そこは描きたかったテーマでした。その上で小学校から中学校ではドラマを作りづらい、高校から大学だと結構大人のドラマになるので、僕にはちょっと手に負えないなと、中学から高校の15歳と設定を固めました。恋愛にはまだ縁がなく、悶々としている女の子たちがどう成長していくかという、そのあたりをドラマとして面白く描けていければうれしいです。
―― いや、卒業前のやり残したみたいな感覚は幅広い層に共感できると思いますし、面白かったです、95分とは思えないくらいの「ああ映画観たな」って満足感もあって。ものすごい凝縮されていましたよね?
宮原 もともと(コンテでは)2時間描いちゃったんですけど、そこから上手くぎゅっと縮めることができました。おかげでストーリーにスピード感も出たし、やっぱり子供が飽きずに観るのは90分ぐらいなんですよね、2時間だと多分退屈しちゃう。
―― 歴代の『プリキュア』劇場版も、大体70分前後に抑えられていますよね。
宮原 ピクサーの映画が90分~100分くらい。あのあたりの、上手いシナリオでギュッとなるような作品になればいいなというところで、90分を目指していました。そこで、当初はまんまと2時間分のコンテを書いて怒られたんですけど(笑)。

メインキャラとそれの同位体たち。キャラ数は多いが、可愛いので問題ない
―― メインキャラが5人、各々に一体ずつポッピン族がいて、さらに謎の敵。単純に登場キャラクターも多いし、よく収まりましたよね。
宮原 キャラクターの数に関しては、単純に黒星さんに描いてもらった可愛いキャラクターを、いっぱい出したいという欲もあったんですけど。1人1人の掘り下げっていう点ではまだ描く余地もありますが、それはいろんな形で埋めていけるだろうということで、今回は一本メインのストーリーを敷いて、その上を走らせようという形になりました。
―― 最後に東映アニメ、そして宮原監督のファン、もちろん個々の声優さんがたのファンにも、一言メッセージをお願いします!
宮原 クリスマスやお正月に観て楽しむにはベストな作品になったと思いますので、ちょっと冬休みの1日劇場に出かけてみては、という感じの締めでいかがでしょう。
―― 卒業というテーマなので感傷的にもなれますけど、基本的にはすごく元気をもらえる作品ですよね。
宮原 そうですね、最後は前向きにドーンと終わるので。あわよくば卒業シーズンまで上映が続いているとうれしいですね。
―― ちなみに今年は劇場アニメのヒットが続きました。その16年の締めみたいな作品だと期待されていますが、いかがですか?
宮原 いやいや。あくまでテイストは“東映まんがまつり”。そういう思いが最初からありましたし、東映アニメーションらしく、幅広い多くの皆さんに楽しんでもらえる作品になったと思いますから。
ダンスに加え、颯爽とした作画でのアクション、ちょっとこじれた感じが可愛いいキャラたち、メルヘンでファンタジーなポッピン族たちとその世界――1本の映画で終わってしまうのがもったいないぐらい、要素が詰め込められまくった感じが、懐かしい“東映まんがまつり”らしい『ポッピンQ』。タイトルの「pop in」どおり、“ひょい”と映画館に入ってみて楽しんでみてはいかがだろうか。
■『ポッピンQ』
12月23日(金・祝)より全国公開!
・公式サイト http://www.popin-q.com/
・公式Twitter @POPIN_Q_staff
(C)東映アニメーション / 「ポッピンQ」Partners 2016
【スタッフ】
監督:宮原直樹
企画・プロデュース:松井俊之/プロデューサー:金丸裕/原作:東堂 いづみ
キャラクター原案:黒星紅白/脚本:荒井修子/キャラクターデザイン・総作画監督:浦上貴之
CGディレクター:中沢大樹/色彩設計:永井留美子/美術設定:坂本信人/美術監督:大西穣
音楽:水谷 広実(Team-MAX)、片山 修志(Team-MAX)
主題歌:「FANTASY」 (Questy)
配給:東映
アニメーション制作:東映アニメーション
製作: 「ポッピンQ」Partners
【キャスト】
瀬戸麻沙美、井澤詩織、種崎敦美、小澤亜李、黒沢ともよ、
田上真里奈、石原夏織、本渡 楓、M・A・O、新井里美、
石塚運昇、山崎エリイ、田所あずさ、戸田めぐみ、
内山昴輝、羽佐間道夫、小野大輔、島崎和歌子