『THE有頂天ホテル』/東宝
先日CDデビュー25周年を迎えたSMAP。8月に年内解散が発表されたものの、多くのファンからの祝福の声が続出し、あらためて「本当に解散するの?」「信じられない……」と思っている人も多いのでは? そこで今回は、SMAPメンバーの軌跡を振り返ろうと、香取慎吾出演の『THE有頂天ホテル』のDVDをプレゼントにご用意しました。早速あらすじを見ていきましょう。
『THE有頂天ホテル』/東宝
先日CDデビュー25周年を迎えたSMAP。8月に年内解散が発表されたものの、多くのファンからの祝福の声が続出し、あらためて「本当に解散するの?」「信じられない……」と思っている人も多いのでは? そこで今回は、SMAPメンバーの軌跡を振り返ろうと、香取慎吾出演の『THE有頂天ホテル』のDVDをプレゼントにご用意しました。早速あらすじを見ていきましょう。
『HiGH&LOW THE MOVIE』の中で一番印象に残るシーンといえば、世紀の大決戦シーンである。SWORDと呼ばれる5つの不良チームの前に、今作のヒールであり絶対無敵の琥珀(AKIRA)、さらに湾岸地区から来た新勢力MIGHTY WARRIORS、悪徳スカウト集団DOUBTら500人が立ちはだかる。ドラマシリーズでは敵対することもあった5つのチームが、今作では自分たちの街(陣地)を守るべく連合軍を結成。100人対500人の不利な闘いの中で、チームの枠を超えて共闘する姿、さらには無勢が多勢に挑むさまがこの映画のカタルシスの一つにもなっている。 横並び一列に並んだSWORD連合軍の面々を見ると、LDH陣営はもちろんのこと、研音、スターダスト、ナベプロ、ホリプロ……と錚々たる芸能事務所から送り出された若手俳優たちがずらり。しかし、これだけのイケメンたちが並ぶ中、かの組織のイケメンだけがいない。そう、ジャニーズ事務所である。 そこで、ふと思いつく。もしかしてSWORD連合軍、ひいてはこの映画そのものを「対ジャニーズ連合軍」として見ることもできるのではないか?と。半世紀ものあいだイケメン市場で栄華を極めてきた巨大組織ジャニーズ事務所に挑むため、LDHを旗頭に集まった各事務所のイケメンたちが連合軍を組み、今世紀最大のイケメン大決戦へ――。 などというのは、少々大げさな煽りかもしれないが、非ジャニーズの俳優たちが大集合した映画であることは間違いない。 本作は、言わずもがなLDHが自分の事務所を盛り上げるために作った映画である。しかし、そこに協力してくれる俳優たちへのリスペクトがあり、見ていて太っ腹だと感じるところがある。大半のLDHの面々はストーリーを動かす配役であるため、キャラ立ちは控えめになっているが、他事務所から起用した俳優たちに当てられた役はどれもキャラが濃く、衣装も派手で目を引きやすい。その甲斐もあって、登場シーンは短くても、観る者の印象に残るようになっている。実は、ネットで非公式に行われた各チームの人気投票で一位を獲得したのは、TAKAHIRO(EXILE)&登坂広臣(三代目J Soul Brothers)が演じた雨宮兄弟でも、岩田剛典(三代目J Soul Brothers)がリーダーを務める山王連合会でもなく、ダントツで窪田正孝率いるRUDE BOYSだったとも聞く。なんたって全員主役です。「HiGH & LOW SEASON 1 完全版 BOX」
本稿では、そんなLDH外の人気キャラクターを、芸能界のどのような事務所に所属し、どんなバックボーンを持つ俳優たちが演じているのかを見ていきたい。その構成を追っていくと、なぜ筆者が「対ジャニーズ連合軍」と思いついてしまったのか、わかってもらえるのではないだろうか。 最も人気があると言われるRUDE BOYSは、前述の通りリーダーのスモーキーを窪田正孝(1988年8月6日生まれ)が演じる。スターダストプロモ―ションに所属する窪田は、ジャニーズの藤ヶ谷太輔(Kis-My-Ft2)、同じ事務所の山崎賢人、そして大先輩の唐沢寿明まで、どんな人と組んでも、相手を生かしつつ、自分もどんどん輝いていく稀有な俳優である。線は細いが、アクションものは『ガチバン』シリーズ(2010〜14年)や『ヒーローマニア-生活-』(16年)でも経験していて評価も高い。仕事を選ばず、どんな作品でも安定感のある演技をする姿勢に注目が高まっているが、この『HiGH&LOW THE MOVIE』でもそんな経験を活かし、少ない登場シーン、少ないセリフの中で、最も深い印象に残る演技を見せているのではないだろうか。スモーキーの登場シーンは、監督の思い入れがあるのではないかと思われるくらい、スローモーションで美しい映像になっている。 RUDE BOYS、もう一人の他事務所俳優は、シオンを演じる永瀬匡(1993年1月22日生まれ)である。映画版ではあまり説明がない登場の仕方だったが、前日譚であるドラマシリーズでは物語の重要な役回りを担っていた。彼は福士蒼汰を擁する研音所属で、同事務所内で結成されたMEN ON STYLEのメンバーだ。もともとはジャニーズJr.に属していたが、2010年に退所し、現事務所に。『桜蘭高校ホスト部』(11年)で俳優デビューし、『仮面ライダーウィザード』(13年)や『八重の桜』(同)などに出演。昨今では珍しい濃い眉毛に男くさい顔立ちで、映画『天空の蜂』(15年)では、危険をものともせず、地上800mの空中でヘリに乗り込み子どもを救出する若き自衛隊員がハマり役だった。 赤い法被のお祭り集団・達磨一家の頭目・日向紀久を演じる林遣都(1990年12月6日生まれ)も、窪田と同じくスターダストプロモ―ション所属。高校時代に映画『バッテリー』(07年)で主演デビュー。その後も『DIVE!』(08年)や『ラブファイト』(同)など、青春映画で主演を重ねる。デビュー数年は幼く青いイメージもあったが、最近ではピース・又吉直樹原作のNetflixドラマ『火花』(16年)で主人公を演じ、新たな顔を見せ始めたところで、この『HiGH&LOW THE MOVIE』でアクの強いキャラクターを再び演じたことは、非常に良い流れに思える。 鬼邪高校の番長で、ヤンチャな少年特有の愛らしさを持つ村山良樹を演じる山田裕貴(1990年9月18日生まれ)は、ワタナベエンターテインメントのD-BOYSのメンバーである。俳優デビューは『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)。その後は『GTO』(12年)や『イタズラなKiss~Love in TOYO』(13年)などの学園ものに出演。2016年は、前田司郎が脚本・演出を手掛けた舞台『宮本武蔵(完全版)』での、自然な肩の力の抜けた演技で高い評価を得ている。今まさに伸び盛りの俳優と言っていだろう。 鬼邪高校の生徒で村山をライバル視する、メガネで一見真面目風なキャラクターが印象に残る轟洋介を演じる前田公輝(1991年4月3日生まれ)は、ホリプロ所属。映画『ひぐらしのなく頃に』(08年)では主演を果たし、『ごくせん』(同)、『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス~2011』(11年)などの学園ものも経験。若手イケメン俳優が集合する歴史バラエティとして、一部で人気を博した『戦国鍋TV』(12年)にも出演していた。近年は『デスノート』(15年)、『コウノドリ』(同)、『ゆとりですがなにか』(16年)など話題作への出演も続く。そうした作品ではゲストに終わることも多い印象だったが、本作ではひとりクールな風貌で目を引いた。 鬼邪高校・古谷秀人役の鈴木貴之(1990年2月21日生まれ)は、モデル事務所のアイビージージャパン所属。ミス・ユニバース・ジャパンの男性版ミスター・ジャパンの初代に選ばれてデビューしたという経歴を持つ。モデル事務所だけに、俳優としての出演作は多くはないが、『私のホストちゃんS~新人ホストオーナー奇跡の密着6カ月~』(14年)や『ごめんね青春!』(同)、『ダメな私に恋してください』(16年)に出演。永瀬と同じく、近年には珍しい屈強な男臭さが、本作で生かされたように見えた。 傷ついた女性たちを守るWHITE RASCALSのKOOを演じる遠藤雄弥(1987年3月20日生まれ)は、山田と同じくワタナベエンターテインメント所属。D-BOYSの創設メンバーとして活躍し(12年卒業)、『ミュージカルテニスの王子様』では主人公の越前リョーマを初代から二代目にわたって演じていた。映画『クローズEXPLODE』(14年)ではスキンヘッドでヤンキーを熱演し、それまでのイメージを払拭。本作でも存在感を放っている。 WHITE RASCALSのKAITOを演じる柳俊太郎(1991年5月16日生まれ)は、浅野忠信、加瀬亮、新井浩文など、第一線で活躍し、独特の雰囲気を放つ俳優たちを抱えるANOREの所属。「MEN'S NON-NO」モデルグランプリを受賞したことから、この世界に入った。役者としては、映画『劇場版 仮面ティーチャー』(14年)や『クローズEXPLODE』などの学園ものへの出演が多い。国際映画祭で活躍する名だたる監督との仕事も多い先輩たちの活躍にはまだまだ追いつかないが、2016年には清水崇監督(『呪怨』)の『雨女』で重要な役を演じている。これからの活躍が期待される俳優である。 KAITOの公私に渡るパートナーで、同じくWHITE RASCALSのKIZZYを演じた稲葉友(1993年1月12日生まれ)はレプロエンタテインメント所属。デビューのきっかけはジュノン・スーパーボーイ・コンテスト、その後は『仮面ライダードライブ』(14年)に出演と、イケメンのエリートコースを歩んできた。今年は『MARS~ただ、君を愛してる~』に出演したほか、BSスカパー!の『ひぐらしのなく頃に』では連続ドラマ初主演を果たした。 加えて、K-POPの世界からは、BIGBANGでおしゃべり担当のV.Iが海外マフィア・チャンソンの御曹司の李を演じ、さらにビジュアル系エアーバンド・ゴールデンボンバーのメンバー全員もWHITE RASCALSとして出演。全方位型イケメン対応ともいうべき、どこから襲撃されても防衛できる完璧な布陣である。 ここまで見てくるとわかるように、複数の芸能事務所から俳優を起用しているだけでなく、それぞれに『仮面ライダー』、戦隊もの、テニミュ、ジュノンボーイ、ミスター・ジャパン、「MEN'S NON-NO」モデルなど、さまざまなイケメンの登竜門からデビューした人物が多い。まさに、対ジャニーズの連合軍と呼ぶにふさわしい顔ぶれだ。また、彼らのほとんどが、10代の頃に学園もので活躍したのち、20代に入って自分がどこに向かうべきか模索している途中でもあった。そんなときに出会った『HiGH&LOW THE MOVIE』という作品は、彼らに新たな活動のきっかけを与えているのではないだろうか。 (文/韮澤優)連合軍じゃね!? SWORDの連合軍じゃね!?
ジャニーズの生写真を販売するショップが多く軒を連ねる原宿・竹下通り。毎週入荷される新作写真の数々はうれしい半面、厳選するのは一苦労。そこでサイゾーウーマンが生写真人気ランキングをリサーチ。8月に売れたジャニーズ写真を1~18位まで紹介していきます☆
<2016年8月のランキング>
【1位】平野紫耀&永瀬廉
【2位】Kis-My-Ft2
【3位】Sexy Zone・中島健人
【4位】Kis-My-Ft2・玉森裕太
【5位】永瀬廉
【6位】KING
【7位】関ジャニ∞・大倉忠義&丸山隆平
【8位】KING
【9位】Kis-My-Ft2・玉森裕太
【10位】Sexy Zone・中島健人
【11位】Kis-My-Ft2・玉森裕太
【12位】Kis-My-Ft2・玉森裕太
【13位】平野紫耀
【14位】安井謙太郎、渡辺翔太
【15位】岩橋玄樹
家族とは共に支え合い、いたわり合うもの。誰もがイメージする普遍的な家族像だろう。ところが南米アルゼンチンで実際に起きた誘拐事件を題材にした映画『エル・クラン』に登場するプッチオ家はあまりに強烈なモンスターファミリーだ。ブエノスアイレス郊外の高級住宅街で暮らすプッチオ家は一見すると平穏そのものな幸福家族だが、家長である父親の職業はなんと営利目的の誘拐犯。ラグビーで鍛えた息子たちに手伝わせて人質をさらい、身代金の交渉がうまく進まないとあっさり人質は殺してしまう。母親と娘たちは自宅の一室に人質が監禁され、悲鳴を上げているのを知りながら、警察に通報することなく平然と暮らしていた。本作を手掛けたパブロ・トラペロ監督の軽妙な演出ぶりは高く評価され、ベネチア映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞。アルゼンチンで300万人を動員する記録的大ヒットとなった注目作だ。 事件が発覚したのは1985年。アルゼンチンは長らく軍事独裁政権が続いていたが、フォークランド紛争を経て、ようやく民主化の道を進み始めた時代の変換期でもあった。軍事政権下で秘密警察として働いていた父親アルキメデス(ギレルモ・フランセーヤ)は職を失い、家族を路頭に迷わすわけにいかず誘拐業に手を染める。シリアスな社会派ドラマとしても、軽快な音楽に乗せて犯罪が描かれるブラックコメディとしても楽しむことができる。だが、この家族は謎めいた行動がとても多い。長男アレハンドロ(ピーター・ランサーニ)はアルゼンチン代表選手に選ばれるほどの名ラガーマンだったのに、父親は長男と同じチームの選手を誘拐する。父親は「家族のため」と言いながら、同時に子どもたちが逃げられないよう共犯関係に追い込んでいく。一方、次男マキラ(ガストン・コッチャラーレ)は海外で暮らしていたにもかかわらず、一家がそろそろヤバいという状況になって、わざわざ帰国して家族と合流する。本作を観ていると、家族とは何なのか分からなくなってくる。『「毒親」の子どもたちへ』(メタモル出版)や『家族の闇をさぐる 現代の親子関係』(小学館)などの著書で知られる精神科医の斎藤学氏に、本作で描かれた登場人物たちの行動心理について尋ねた。 ──アルゼンチンで実際に起きた事件を題材にした『エル・クラン』ですが、斎藤先生がプッチオ家をカウンセリングするとしたら、まず誰から診ますか? 斎藤 家族の中でいちばん強い人間が一家の代表として、私のところに来ます。強い人間といっても、それは腕力があるとか大きな声を出すということではなく、いちばん柔軟性のある人物ということで、それは母親であることが多いんです。でも、母親はいちばん厄介な存在でもある。家族内で起きたトラブルを母親は黒いベールで覆い隠してしまい、「私は何も見ていません」と答えるわけです。『エル・クラン』の母親エピファニア(リリー・ポポヴィッチ)もそうですし、綾瀬で起きた女子高生コンクリート詰め事件や新潟少女監禁事件のときも、犯人と同居していた母親は犯行に気づきながら、気づかないふりをしていました。母親が家族に与える影響力はとても大きい。事件の真相を解く鍵は女性が握っていることがほとんどです。父アルキメデスを中心にしたプッチオ家。家族の絆パワーで、凶悪犯罪を次々と積み重ねていく。
──母親という存在が凶悪犯罪を補完させてしまうわけですか。威厳たっぷりに息子たちに犯罪計画を指示する父親アルキメデスは罪悪感なさそうですね。 斎藤 あの父親は最後まで罪の意識は感じていないでしょう。軍事政権時代は秘密警察に勤めており、日常的に政治犯を拉致したり拷問していたのが、民主政権に変わり、食べていくために誘拐犯になった。それまで政治犯を拉致していたのが、裕福なご近所さんが標的に変わっただけ。威張っているけれど父親の思考回路は頑迷で、社会が変わったことを認識できずにいるんです。これは私の推測に過ぎないのですが、ご近所さんが集まっての宴会などの場で政治談話など交わしているのを父親のアルキメデスは耳にしており、彼なりの基準で左寄りの人間を選んで犯行に及んでいたんではないかと思うんです。トラペロ監督はあえて細かい描写は省略していますが、アルキメデスは秘密警察時代からの自分の任務をまっとうしていた、くらいの認識だったのではないかと思います。男は社会の中に取り込まれてしまい、その中での自分の立場でしか物事を考えられないので、おかしなことをしでかしても気づかないことが多いんです。逆に妻であり母親であるエピファニアは客観的に状況を把握しています。夫たちの犯罪を知りながら、一家の経済状態を維持するために必要なことだと冷静に受け止めていたのかもしれない。 ──次男マギラは家族とは距離をおいて海外で暮らしていたのに、警察の手が一家に及びそうな段階になって、のこのこ帰国する。自分からわざわざ逮捕されるために家族と合流してしまう次男のこの行動は、理解しがたいものがありますが……。 斎藤 そこが家族の恐ろしさです。毒親の毒に子どもたちもすっかり毒されていたということなのか。私から見ても、この家族はおかしな行動がとても多いですよ。父親はなんで足がつきやすいご近所さんをターゲットにして誘拐を続けたのか。身代金を要求する電話を掛ける際は、地声でしゃべっていますよね。あんなことをしてたら、すぐにバレるでしょうに(笑)。この映画は底が抜けたようなおかしさがありますが、実際の事件の解明には大変な労力と時間が掛かります。裁判所や弁護士から依頼され、当人の精神状態についての「精神鑑定」や「意見書」を私たちが作成するのに最低でも3カ月は要しますが、裁判員制度が導入されてからは迅速化が求められ、1カ月しか与えられていません。こういった事件の真相を知ることが、ますます難しい状況に今の日本はなっていますね。 ──家族とは困ったときに助け合うものだと一般的に言われていますが、プッチオ家の場合は家族の団結が間違った方向に暴走してしまう。家族って一体、何なんでしょうか? 斎藤 家族は温かいもの、というイメージは人間が抱く願望でしょう。家族とは太古からある社会保障制度でしかないんです。国家が成立する以前から家族は存在したわけで、女性や子どもが食べ物に困らないための福祉制度として機能していたシステムだったものです。もちろん家族の存在が癒しをもたらすなどの側面はあるわけですが、システムであり社会制度である家族というものを、あまり美化して幻想を抱くと辛い思いをします。「毒親のせいで、酷いめにあった」と訴えてくる人は私の診療所にもいっぱいいますよ。長男のアレハンドロはラグビー選手として活躍し、地元の人気者だった。でも、家族の秘密は誰にも話せない。
──斎藤先生の著書『家族の闇をさぐる』では、“家族とは「近親姦防止装置」だ”とあまりにも明快に喝破されています。 斎藤 科学的な視点から見ると、人類は家族という制度を生み出したことで近親姦を防ぎ、また世代という概念を作ることで安定した関係性を得ることができたわけです。もともと家族とは毒性の強いものであって、その毒が強まらないように努めてきたというのが人類なんです。中国の孔子の教えは、礼儀に関するものがほとんどですが、それは親や親の世代と適度に距離を保つための知恵でもあったんです。時代によっても、家族の在り方はずいぶんと変わってきています。万葉集に「金も銀も玉も、どんな宝も子どもには及ばない」と歌った一首があり、親子の愛情は昔から変わらないなんて言われていますが、あの時代の日本は集団婚が認められており、現代の家族制度とはずいぶん違ったものでした。「明治時代は良かった」と言う人もいますが、明治時代の家族制度の中では現代人は息苦しさを感じるだけだと思いますよ。跡取りである長男だけが優遇され、次男以下の男の子や女の子は冷遇されていた時代でもあったわけですから。現代の日本も今の家族制度に固執していると、どんどん少子化していく一方でしょう。フランスではシングルマザーが50%を越えていますが、逆に出産率が上昇するようになってきました。「親としての役割を果たそう」「良い子でいよう」という考え方に縛られ過ぎていると、みんな疲れていく一方で、不幸になるだけです。家族の繋がりはもちろんこれからの時代も続くわけですが、もっと緩やかな家族関係が必要になってくると思いますよ。 ──カウンセリングで忙しい斎藤先生ですが、日本では劇場未公開だったグウィネス・パルトロー主演コメディ『恋人はセックス依存症』(12)をご覧になるなど、かなり映画がお好きなようですね。 斎藤 『恋人はセックス依存症』はね、シェアリング(集団セラピー)の様子が描かれているので、患者さんに説明するのが面倒くさいときに、「これを観て」と勧めているんです(笑)。若いころはずいぶん映画を観ましたね。私の生涯ベスト作品は、『ゴッド・ファーザー』三部作と医者が主人公の『ドクトル・ジバゴ』(65)なんです。音楽がいい映画が好きですね。今回、パンフレットに寄稿させてもらった『エル・クラン』は映画としても面白かったので、トラペロ監督の過去の作品もネットで注文しようかなと考えているところです。トラペロ監督は音楽の使い方に才能を感じさせますし、もっと注目されていい監督じゃないですか。機会があれば、またいろいろお話しましょう。 映画『エル・クラン』以外にも、多彩な話題について語ってくれた斎藤先生。南米のジャングルに潜む食人族を描いたイーライ・ロス監督のホラー映画『グリーン・インフェルノ』(13)はどうやら実話らしいという衝撃の逸話まで会話の中では飛び出した。斎藤先生、また取材させていただく機会を楽しみにしています! (取材・文=長野辰次)斎藤先生が要注意人物だと指摘する母親エピファニア。海外で暮らしていた次男マキラだが、家族のもとに戻ってしまう。
『エル・クラン』 製作/ペドロ・アルモドバル、パブロ・トラペロ 監督/パブロ・トラペロ 脚本/パブロ・トラペロ、ジュリアン・ロヨラほか 出演/グレルモ・フランセーヤ、ピーター・ランサーニ、リリー・ポポヴィッチ 配給/シンカ、ブロードメディア・スタジオ 9月17日(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほかロードショー (c)2014 Capital Interlectual S.A./MATANZA CINE/EL DESEO http://el-clan.jp ●さいとう・さとる 1941年東京生まれ。慶応大学医学部卒業後、フランス政府給費留学生、国立療養所久里浜病院精神科医長、東京都精神科医学総合研究所副参事研究員などを経て、95年より「さいとうクリニック」「家族機能研究所」を設立。『「毒親」の子どもたちへ』(メタモル出版)、『「家族神話」があなたをしばる 元気になるための家族療法』(NHK出版生活人新書)、『家族の闇をさぐる 現代の親子関係』(小学館)など多くの著書を執筆している。診療の合間にインタビューに応じてくれた斎藤学先生。動物行動学から少子化問題まで、話の内容は実に多彩。
家族とは共に支え合い、いたわり合うもの。誰もがイメージする普遍的な家族像だろう。ところが南米アルゼンチンで実際に起きた誘拐事件を題材にした映画『エル・クラン』に登場するプッチオ家はあまりに強烈なモンスターファミリーだ。ブエノスアイレス郊外の高級住宅街で暮らすプッチオ家は一見すると平穏そのものな幸福家族だが、家長である父親の職業はなんと営利目的の誘拐犯。ラグビーで鍛えた息子たちに手伝わせて人質をさらい、身代金の交渉がうまく進まないとあっさり人質は殺してしまう。母親と娘たちは自宅の一室に人質が監禁され、悲鳴を上げているのを知りながら、警察に通報することなく平然と暮らしていた。本作を手掛けたパブロ・トラペロ監督の軽妙な演出ぶりは高く評価され、ベネチア映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞。アルゼンチンで300万人を動員する記録的大ヒットとなった注目作だ。 事件が発覚したのは1985年。アルゼンチンは長らく軍事独裁政権が続いていたが、フォークランド紛争を経て、ようやく民主化の道を進み始めた時代の変換期でもあった。軍事政権下で秘密警察として働いていた父親アルキメデス(ギレルモ・フランセーヤ)は職を失い、家族を路頭に迷わすわけにいかず誘拐業に手を染める。シリアスな社会派ドラマとしても、軽快な音楽に乗せて犯罪が描かれるブラックコメディとしても楽しむことができる。だが、この家族は謎めいた行動がとても多い。長男アレハンドロ(ピーター・ランサーニ)はアルゼンチン代表選手に選ばれるほどの名ラガーマンだったのに、父親は長男と同じチームの選手を誘拐する。父親は「家族のため」と言いながら、同時に子どもたちが逃げられないよう共犯関係に追い込んでいく。一方、次男マキラ(ガストン・コッチャラーレ)は海外で暮らしていたにもかかわらず、一家がそろそろヤバいという状況になって、わざわざ帰国して家族と合流する。本作を観ていると、家族とは何なのか分からなくなってくる。『「毒親」の子どもたちへ』(メタモル出版)や『家族の闇をさぐる 現代の親子関係』(小学館)などの著書で知られる精神科医の斎藤学氏に、本作で描かれた登場人物たちの行動心理について尋ねた。 ──アルゼンチンで実際に起きた事件を題材にした『エル・クラン』ですが、斎藤先生がプッチオ家をカウンセリングするとしたら、まず誰から診ますか? 斎藤 家族の中でいちばん強い人間が一家の代表として、私のところに来ます。強い人間といっても、それは腕力があるとか大きな声を出すということではなく、いちばん柔軟性のある人物ということで、それは母親であることが多いんです。でも、母親はいちばん厄介な存在でもある。家族内で起きたトラブルを母親は黒いベールで覆い隠してしまい、「私は何も見ていません」と答えるわけです。『エル・クラン』の母親エピファニア(リリー・ポポヴィッチ)もそうですし、綾瀬で起きた女子高生コンクリート詰め事件や新潟少女監禁事件のときも、犯人と同居していた母親は犯行に気づきながら、気づかないふりをしていました。母親が家族に与える影響力はとても大きい。事件の真相を解く鍵は女性が握っていることがほとんどです。父アルキメデスを中心にしたプッチオ家。家族の絆パワーで、凶悪犯罪を次々と積み重ねていく。
──母親という存在が凶悪犯罪を補完させてしまうわけですか。威厳たっぷりに息子たちに犯罪計画を指示する父親アルキメデスは罪悪感なさそうですね。 斎藤 あの父親は最後まで罪の意識は感じていないでしょう。軍事政権時代は秘密警察に勤めており、日常的に政治犯を拉致したり拷問していたのが、民主政権に変わり、食べていくために誘拐犯になった。それまで政治犯を拉致していたのが、裕福なご近所さんが標的に変わっただけ。威張っているけれど父親の思考回路は頑迷で、社会が変わったことを認識できずにいるんです。これは私の推測に過ぎないのですが、ご近所さんが集まっての宴会などの場で政治談話など交わしているのを父親のアルキメデスは耳にしており、彼なりの基準で左寄りの人間を選んで犯行に及んでいたんではないかと思うんです。トラペロ監督はあえて細かい描写は省略していますが、アルキメデスは秘密警察時代からの自分の任務をまっとうしていた、くらいの認識だったのではないかと思います。男は社会の中に取り込まれてしまい、その中での自分の立場でしか物事を考えられないので、おかしなことをしでかしても気づかないことが多いんです。逆に妻であり母親であるエピファニアは客観的に状況を把握しています。夫たちの犯罪を知りながら、一家の経済状態を維持するために必要なことだと冷静に受け止めていたのかもしれない。 ──次男マギラは家族とは距離をおいて海外で暮らしていたのに、警察の手が一家に及びそうな段階になって、のこのこ帰国する。自分からわざわざ逮捕されるために家族と合流してしまう次男のこの行動は、理解しがたいものがありますが……。 斎藤 そこが家族の恐ろしさです。毒親の毒に子どもたちもすっかり毒されていたということなのか。私から見ても、この家族はおかしな行動がとても多いですよ。父親はなんで足がつきやすいご近所さんをターゲットにして誘拐を続けたのか。身代金を要求する電話を掛ける際は、地声でしゃべっていますよね。あんなことをしてたら、すぐにバレるでしょうに(笑)。この映画は底が抜けたようなおかしさがありますが、実際の事件の解明には大変な労力と時間が掛かります。裁判所や弁護士から依頼され、当人の精神状態についての「精神鑑定」や「意見書」を私たちが作成するのに最低でも3カ月は要しますが、裁判員制度が導入されてからは迅速化が求められ、1カ月しか与えられていません。こういった事件の真相を知ることが、ますます難しい状況に今の日本はなっていますね。 ──家族とは困ったときに助け合うものだと一般的に言われていますが、プッチオ家の場合は家族の団結が間違った方向に暴走してしまう。家族って一体、何なんでしょうか? 斎藤 家族は温かいもの、というイメージは人間が抱く願望でしょう。家族とは太古からある社会保障制度でしかないんです。国家が成立する以前から家族は存在したわけで、女性や子どもが食べ物に困らないための福祉制度として機能していたシステムだったものです。もちろん家族の存在が癒しをもたらすなどの側面はあるわけですが、システムであり社会制度である家族というものを、あまり美化して幻想を抱くと辛い思いをします。「毒親のせいで、酷いめにあった」と訴えてくる人は私の診療所にもいっぱいいますよ。長男のアレハンドロはラグビー選手として活躍し、地元の人気者だった。でも、家族の秘密は誰にも話せない。
──斎藤先生の著書『家族の闇をさぐる』では、“家族とは「近親姦防止装置」だ”とあまりにも明快に喝破されています。 斎藤 科学的な視点から見ると、人類は家族という制度を生み出したことで近親姦を防ぎ、また世代という概念を作ることで安定した関係性を得ることができたわけです。もともと家族とは毒性の強いものであって、その毒が強まらないように努めてきたというのが人類なんです。中国の孔子の教えは、礼儀に関するものがほとんどですが、それは親や親の世代と適度に距離を保つための知恵でもあったんです。時代によっても、家族の在り方はずいぶんと変わってきています。万葉集に「金も銀も玉も、どんな宝も子どもには及ばない」と歌った一首があり、親子の愛情は昔から変わらないなんて言われていますが、あの時代の日本は集団婚が認められており、現代の家族制度とはずいぶん違ったものでした。「明治時代は良かった」と言う人もいますが、明治時代の家族制度の中では現代人は息苦しさを感じるだけだと思いますよ。跡取りである長男だけが優遇され、次男以下の男の子や女の子は冷遇されていた時代でもあったわけですから。現代の日本も今の家族制度に固執していると、どんどん少子化していく一方でしょう。フランスではシングルマザーが50%を越えていますが、逆に出産率が上昇するようになってきました。「親としての役割を果たそう」「良い子でいよう」という考え方に縛られ過ぎていると、みんな疲れていく一方で、不幸になるだけです。家族の繋がりはもちろんこれからの時代も続くわけですが、もっと緩やかな家族関係が必要になってくると思いますよ。 ──カウンセリングで忙しい斎藤先生ですが、日本では劇場未公開だったグウィネス・パルトロー主演コメディ『恋人はセックス依存症』(12)をご覧になるなど、かなり映画がお好きなようですね。 斎藤 『恋人はセックス依存症』はね、シェアリング(集団セラピー)の様子が描かれているので、患者さんに説明するのが面倒くさいときに、「これを観て」と勧めているんです(笑)。若いころはずいぶん映画を観ましたね。私の生涯ベスト作品は、『ゴッド・ファーザー』三部作と医者が主人公の『ドクトル・ジバゴ』(65)なんです。音楽がいい映画が好きですね。今回、パンフレットに寄稿させてもらった『エル・クラン』は映画としても面白かったので、トラペロ監督の過去の作品もネットで注文しようかなと考えているところです。トラペロ監督は音楽の使い方に才能を感じさせますし、もっと注目されていい監督じゃないですか。機会があれば、またいろいろお話しましょう。 映画『エル・クラン』以外にも、多彩な話題について語ってくれた斎藤先生。南米のジャングルに潜む食人族を描いたイーライ・ロス監督のホラー映画『グリーン・インフェルノ』(13)はどうやら実話らしいという衝撃の逸話まで会話の中では飛び出した。斎藤先生、また取材させていただく機会を楽しみにしています! (取材・文=長野辰次)斎藤先生が要注意人物だと指摘する母親エピファニア。海外で暮らしていた次男マキラだが、家族のもとに戻ってしまう。
『エル・クラン』 製作/ペドロ・アルモドバル、パブロ・トラペロ 監督/パブロ・トラペロ 脚本/パブロ・トラペロ、ジュリアン・ロヨラほか 出演/グレルモ・フランセーヤ、ピーター・ランサーニ、リリー・ポポヴィッチ 配給/シンカ、ブロードメディア・スタジオ 9月17日(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほかロードショー (c)2014 Capital Interlectual S.A./MATANZA CINE/EL DESEO http://el-clan.jp ●さいとう・さとる 1941年東京生まれ。慶応大学医学部卒業後、フランス政府給費留学生、国立療養所久里浜病院精神科医長、東京都精神科医学総合研究所副参事研究員などを経て、95年より「さいとうクリニック」「家族機能研究所」を設立。『「毒親」の子どもたちへ』(メタモル出版)、『「家族神話」があなたをしばる 元気になるための家族療法』(NHK出版生活人新書)、『家族の闇をさぐる 現代の親子関係』(小学館)など多くの著書を執筆している。診療の合間にインタビューに応じてくれた斎藤学先生。動物行動学から少子化問題まで、話の内容は実に多彩。
<p> 新学期に慣れた9月半ば。夏休みでだらしなくなった生活が戻り、早起きの日々です。そして娘は今日から2泊3日で林間学校に行っています。やっほー! この解放感はなに!!!</p> <p> 小学校の泊まりの行事は、1年生の時に「震災時の宿泊訓練」、3年生の林間学校、4年生の林間学校&スキー教室です。学校の友達とのお泊まりは宿泊訓練以来だったので、娘は超盛り上がっていました。余談ですが、宿泊訓練の際、先生から「必ず連絡が取れて、迎えに来られる状態でいてください」「過去に宿泊訓練でケガをして、保護者に連絡をしたら、旅行中で迎えに来られないことがありました」と事前に保護者会で言われました。</p>
<p> 新学期に慣れた9月半ば。夏休みでだらしなくなった生活が戻り、早起きの日々です。そして娘は今日から2泊3日で林間学校に行っています。やっほー! この解放感はなに!!!</p> <p> 小学校の泊まりの行事は、1年生の時に「震災時の宿泊訓練」、3年生の林間学校、4年生の林間学校&スキー教室です。学校の友達とのお泊まりは宿泊訓練以来だったので、娘は超盛り上がっていました。余談ですが、宿泊訓練の際、先生から「必ず連絡が取れて、迎えに来られる状態でいてください」「過去に宿泊訓練でケガをして、保護者に連絡をしたら、旅行中で迎えに来られないことがありました」と事前に保護者会で言われました。</p>
ジャニーズメンバーには日頃の疲れを癒やすべく、ペットを飼って溺愛している者も少なくない。テレビ番組でペットを紹介するメンバーもおり、KinKi Kidsの堂本光一もそのひとりだ。
『KinKi Kidsのブンブブーン』(フジテレビ系)の2016年6月12日放送回で、久々にテレビに登場した堂本光一の愛犬パン。番組の冒頭から、パンを見た堂本剛が「食べ過ぎた?」と太ったことを指摘。画面には、5年前のパンの写真が映し出され、剛は「びっくりしたよほんま。僕が前に見たパンはスリムやった」と続けてコメント。するとパンに向かって「なに食べたの? どうせお前、いいもん食べてんのやろ」と話しかけていた。
アメリカン・ドラマにおいて、犯罪ドラマの人気は絶大。毎年、数多くの犯罪ドラマが世に送り出されるが、鉄板ジャンルだけに、あの手この手で工夫をこらしても生き残るのは至難の業。そんな熾烈な犯罪ドラマバトルの中で、派手な演出でもなく、イケメン祭りでもなく、実直なアプローチとおっちゃんたちの力で安定した人気を獲得しているのが『MAJOR CRIMES~重大犯罪課』だ。 舞台は、ロス市警にある重大犯罪課。苦しい台所事情もあり、司法取引で犯人逮捕の効率化を図ることになったロス市警の中でも、特に凶悪事件を扱う重大犯罪課には、その使命が重くのしかかってくる。その重責を担うために抜擢されたのが、シャロン・レイダー警部だ。しかし、元内務調査官だった彼女に、部下となるベテラン刑事たちは猛反発。警察内部の問題を調査する内務調査官は、同僚を疑うという立場的に、署内では嫌われ者。その上、レイダー警部は規則を重視する堅物とあって、たたき上げのベテラン刑事たちとの相性は最悪ともいえる。だが、そんなクセ者ぞろいの部下たちを巧みに操り、次第に確かな信頼関係を築いていくのが、レイダー警部の腕。その手腕は、事件解決にも大きく貢献していく。 犯罪ドラマにちょくちょく登場する司法取引。だが、それをテーマに本格的にクローズアップしている点が、このドラマのひとつの売りになっている。いかに条件のいい取引をまとめるか。それは、事件の早期解決を望む警察側にとっても、もう後がない状況で、その後の人生が左右される犯罪者側にとっても最重要命題となる。いくら事件の早期解決を望むにしても、お気楽にポンポンと取引していては警察の威信に関わるわけで、取調室ではスリリングな駆け引きが展開される。そして、そのスリリングさを派手に演出するのではなく、時に犯した罪には見合わない量刑で涙をのむしかないことがあるシビアな現実もしっかりと描き出し、被害者の関係者や捜査を担当する刑事たちの無念さ、そこからにじむ刑事としてのプライドも実直に描いていく誠実さが、このドラマの魅力になっている。 もっとも、ただひたすら実直にシビアな現実を突きつけられるだけでは、いくらいいドラマでも見続けるのはしんどくなってくるもの。そこでがぜん生きてくるのが、重大犯罪課のおっちゃんたちだ。番組のテーマである司法取引を“ひとつの売り”としたのも、この重大犯罪課のおっちゃんたちの存在感がこのドラマの最大の魅力といっても過言ではないからだ。 いかにも華々しいイケメンなどひとりもいない重大犯罪課。チームの中心人物である古参のプロペンザは、オーバー60にしてバリバリ現役の勤続40年以上になる超ベテラン。“捜査は足で稼ぐもの”というポリシーを貫く頑固者だが、ベテランならではの手の抜き方も熟知する、抜け目のなさを持ち合わせている。バリバリ現役なのは仕事のみならず、私生活では4度の離婚を経験し、40歳以上の女性とは付き合ったことがないというツワモノだ。そんな彼と、いつも楽しそうに嫌み合戦を繰り広げつつ、事件の捜査では共に足で稼ぐ派のフリン。ハイテク関係に詳しく、穏やかながら実は意外とミーハーなところがあるタオ。ギャング関係にも詳しいコワモテだが、実は繊細なところがあるサンチェス。いつも控えめながら、テクノロジーに弱いプロペンザを嬉々としてからかい、サラリと毒を吐く、撮影記録担当の技術者バズ。一癖も二癖もあるその個性豊かなキャラクターがそろい、彼らの日常的なやりとりが絶妙なおかしみを生み出し、シリアスな場面でもクスっとさせられることもしばしば。ここでも露骨にコミカルに寄るわけでもなく、刑事である彼らのチームとしての日常の中で生まれる人間ドラマを、あくまでさり気なく描く実直さが反映されている。だからこそ、彼らの人間臭いキャラクターが、ストレートに伝わってくるのだ。 それは、主人公であるレイダー警部も同様だ。クールであまり感情の起伏を見せない彼女だが、ある事件がきっかけで引き取ったホームレス少年ラスティとの関係が、彼女の人間らしい一面を大きく引き出している。ラスティとの関係が深まるほどに彼女の人間味は増し、それがチームとしてのまとまりにもつながっていく。仕事の面においても、難しい事件で巧みに司法取引をまとめる彼女は、かなりのキレ者。だが、反発する部下に対して頭ごなしに押さえつけるでもなく、キレ者らしく有無を言わせぬ存在感で圧倒するでもなく、ベテラン刑事を納得させるだけの実力を見せつつも、実にしなやかに、そしてスマートにチームをまとめ上げていく。その交渉術の巧みさは、ビジネスの現場でも大いに参考になるのではなかろうか。特筆すべきは、彼女の“声”。演じるメアリー・マクドネルは実力派女優として知られるが、その演技力以上に今作において、淡々としているが声を荒らげても決して耳障りにならない彼女の声の不思議な魅力は際立っている。 おっちゃんたちのクセのある人間力と、“司法取引”というテーマにその声の魅力が間違いなく一役買っているレイダー警部。そんな彼らが繰り広げるキャラクターワークから感じ取れるのは、心地良さだ。どんな場所でも人間関係の難しさは存在するが、対立的な関係からひとつのチームへとまとまっていく中で、いくつになっても人間として成長していく姿にはすがすがしささえ感じる。扱っているのはシビアな犯罪ばかりでありながら、見ていて心地良いと感じさせるその作品個性は、犯罪ドラマにおいて非常に稀有なものだろう。 ちなみに本作は 7シーズン続いた大人気ドラマ『クローザー』のスピンオフ。こちらは巧みなテクニックで容疑者を自白に追い込み、事件をクローズする事にスポットを当てたもの。レイダー警部も多くの重大犯罪課の面々も、『クローザー』から続投しているので、本作との違いを見比べてみるのも面白い。 ★このドラマにハマった人におすすめ! 『クローザー』 『ホミサイド 殺人捜査課』 『リゾーリ&アイルズ』 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin『MAJOR CRIMES~重大犯罪課~<ファースト・シーズン>』
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