
ストリートで生まれ、若者を中心に人気を博してきたヒップホップダンス。ヒップホップダンス大会の参加年齢は7歳以上というだけあって、踊るのはやはり若い人たちが中心だ。そんなヒップホップに挑んだ話題のダンスグループがある。ニュージーランドの東にある人口約8,000人の小さな島、ワイヘキ。こののどかな島にあるヒップホップダンスグループ「The Hip Op-eration Crew(ヒップ・オペレーション・クルー)」がそれだ。メンバーの平均年齢はなんと83歳! 文句なしに世界最高齢のこのグループが、ヒップホップの世界大会に出場するまでを収めたドキュメンタリー映画『はじまりはヒップホップ』が日本公開となる。人生を謳歌する彼らの様子は、言葉にできない感動を与えてくれる。
そんなヒップ・オペレーション・クルーからメンバーが来日、インタビューに応じてくれた。ジャック・ロングさん a.k.a. JJ Rizzell(85歳)とブレンダ・ロングさん a.k.a.BB Rizzell(83歳)の夫婦、レイラ・ギルクリストさん a.k.a.Leila G(72歳)、マリー・ターフレイさん a.k.a.Missy M(72歳)、レン・カーチスさん a.k.a.Big Deal(75歳)の5人。ちなみに名前の後ろに書かれているのは彼らのヒップホップネームである。

マリー「(しかめっ面をして)初めてヒップホップの音楽を聞いたときは、思わずこんな顔をしてしまったわ! 想像していたものと全然違ったから。私の家はしつけが厳しかったので、もともと若者に人気の音楽はあまり聴いてこなかったし、バック転したり頭でぐるぐる回ったりするダンスなんて見たこともなかったの。ヒップホップダンスを見たとき、これは私たちの歳で踊るものではないと思ったけど、始めてみたらすごく楽しかったわね」
ブレンダ「ヒップホップの音楽を初めて聴いたときは、とっても驚いたわよ。ショックと言ってもいいぐらいね。それまで親しんできたものとはまったく違うものだったから。私はダンスの経験すらなかったけれど好奇心がわいて、とにかくリーダーのビリーについていってみようと思ったの」
ワイヘキ島の老人たちにヒップホップのダンスを教えようと思いついたのは、彼らのマネジャーで振付師でもある若き女性ビリー。ダンスの経験はないけれど、メンバーたちに楽しい毎日を過ごしてほしいと、家にこもりがちだった老人たちに明るく声をかけ続けた。
レイラ「私はもともとダンスには慣れていたし、孫娘がちょっとヒップホップをやっているから音楽はなんとなく知っていたの。だから踊ること自体はそんなに大変じゃなかった。ただ私はすごいあがり症で、人前に立つのが本当に苦手だったの。でもダンスのコンテストに出るためには自信をつけなくちゃいけない。最初はそれが大変だったわね」


ヒップ・オペレーション・クルーのメンバーの年齢は、下は60代から上は94歳まで。ドキュメンタリーの中では94歳のスターダンサー、関節症を患う女性、認知症で入院中の夫を頻繁に見舞う女性など、さまざまな事情や体調を抱えるメンバーが数多く登場する。
レイラ「家族に支えながら活動しているメンバーは多いし、私自身も娘や孫たちが熱心に応援してくれている。ただ、姉たちだけはいい顔をしないのよね(笑)。私はきょうだいの末っ子なのだけど、姉たちに『今ドキュメンタリー映画を作っているのよ』『世界大会に出ることになったの』と説明しても、渋い顔をしてばかりだった。だけどもう、姉たちの反応は気にしないことにしたわ。ダンスを始めたおかげで私は自信がついたし、もう昔の私じゃない。孫たちは『おばあちゃんすごい!』って喜んでくれているから、それだけで充分に嬉しいしね。孫たちは地区大会に駆けつけてくれて、ヒップホップの格好で応援してくれたのよ。でも姉たちも、今ではちょっとぐらい見直してくれているんじゃないかしら」
マリー「ちょっと体調が良くなかったり、少し夜更かしをしたりして、今日は体が重たいわって感じる日もあるけれど、音楽がかかれば気分が乗るので大丈夫。いつもヒップホップの音楽が私を助けてくれているわ」

ジャックとブレンダの夫妻はゴルフ好きだったけれど、妻のブレンダは、今はゴルフよりもヒップホップに夢中なのだとか。心の底からヒップホップを楽しんでいる彼らは、ヒップホップのニュージーランド国内大会に出場する。そこで大きな評判を呼び、なんとラスベガスで行われた世界大会に特別招待されることに! 1万5,000人の観客の前でパフォーマンスをするシーンは必見だ。
レイ「あのステージはとても緊張したし、正直怖かったよ。観客を意識しすぎず、会場の後ろを見るようにして、なんとか1曲踊り終えたね。でもだんだんと慣れていったし、何より励みになったのは、会場にいたたくさんの若者や子どもたちの存在だった。会場内を歩いているといろんな国の子どもたちが『ヒップ・オペレーション!』って声をかけてくれたんだよ。感動して泣きそうになったし、本当に忘れられない日になったね」
ヒップ・オペレーションのメンバーがこのドキュメンタリーを通して教えてくれるのは、新しいことに挑戦することの意義。何かを始めるのに年齢など関係ない、ということも。
ブレンダ「メンバー全員、何かを得たでしょうね。私がヒップホップをやって一番良かったと思ってることは、人々との出会い。最初はご近所付き合いをしているだけの間柄で、名前すらわからない人もいた。でもみんなでホールに集まってダンスをするようになってからは、本当にみんなと仲良くなったのよ。今ではしょっちゅうカフェでお茶をしたり、一緒に出かけたり、お互いのバースデーパーティをしたり。ビリーのことは娘のように思っているわね。私たち、すごく幸せな大きい家族なのよ」
観る人にきっとパワーを与えるこの実話、なんとハリウッドで映画化されることも決定している。マネージャーのビリーを主人公にした、奇跡のストーリーとなりそうだ。ヒップ・オペレーションの活動もまたずっと続いていく。これからも目が離せないグループだ。
(取材・文=大曲智子/撮影=尾藤能暢)

●『はじまりはヒップホップ』
8月27日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
配給:ポニーキャニオン
コピーライト:(c) 2014 Rise And Shine World Sales / Inkubator Limited / photo_Ida Larsson
http://hajimari-hiphop.jp/