
かつて都内有名暴走族の中心人物として恐れられたプロボクサーの大嶽正史(37)が15日、日本フライ級タイトルマッチに挑んだ。選手生活15年、ボクサー定年の37歳にして迎えた最初で最後のビッグチャンス。会場の後楽園ホールには、不良時代の仲間や格闘界の友人ら数百名が応援団として大集結。その中には、14歳のときから大嶽の“心友”として付き合いを続けてきた“元アウトローのカリスマ”こと瓜田純士(36)の姿もあった。
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試合前、後楽園ホールのロビーは、アウトローの見本市と化していた。本職とおぼしき御仁や、筋骨隆々な格闘家、日焼けしたコワモテらが行き交い、まさに百鬼夜行といった様相。だが、その空気感は、どこか平和だ。笑顔で挨拶を交わし、近況を報告し合い、旧交を温める男たち。現在の立場はさまざまだろうが、いずれも「大嶽を応援する」という目的のもと集まっているため、過去に何があろうとも、この日ばかりは一致団結しようという不文律があるのかもしれない。
不良系格闘技大会「THE OUTSIDER(以下:アウトサイダー)」の出身者も散見された。現在は政治家として活動する与国秀行(谷山秀行)、現在はチャリティーファイトの「ASIATO」を主催する大山勇樹、現在はプロ格闘家として活躍中の小林聖人などだ。
そして、同じくアウトサイダー出身で、日刊サイゾーが追い続ける瓜田純士も、母・恭子と妻・麗子を連れて会場入り。昭和54年生まれの瓜田と大嶽、その付き合いは14歳のときに始まったという。瓜田が刑務所にいるときには大嶽が手紙で励ましたり、大嶽が試合に勝ったときには瓜田がネックレスをプレゼントしたりと、長きにわたって絆を深めてきた間柄だ。

“心友”の大一番を前に、瓜田は何を思うのか?
話を聞こうとしたら、丁重に断られた。「今日の主役はマーちゃん(大嶽の愛称)だから、僕が目立つわけにはいかない」というのがその理由。「試合後に別の場所で時間を作りますので、会場では応援に専念しましょう。マーちゃんの勝利を一緒に祈ってください」。
瓜田の真摯な要請を受け、記者も大嶽応援団に加わることになった。
試合開始。大声援に背中を押されながら、王者・粉川拓也(31)に立ち向かった大嶽だったが、フルラウウンドに及ぶ戦いの末、大差の判定で敗れた(100-90、100-90、99-91)。だが、打たれても打たれても倒れることなく前進を続け、最後のラウンドでは撃沈覚悟のノーガード戦法も見せた大嶽に対し、応援団からは惜しみない拍手が送られたのである。
声を枯らして応援を続けた瓜田ファミリーに、試合後、会場の外でインタビューを行った。

――残念な結果に終わりました。
瓜田 最後の勇姿を、しかと見届けましたよ。規定上、引退しないといけない年齢。ここまでやれれば、本人も納得いったと思う。最後の執念がすごかったな。バテたふりして殴ったり、笑った直後に殴ったり。まさになりふり構わぬ戦いぶりで、どうしても勝ちたいんだという執念が伝わってきた。結果は負けですが、魂を揺さぶられる試合でしたね。
母 あの強いチャンピオン相手に、よく10ラウンドも戦ったわよ。アッパレだわ。
――大嶽選手は途中から顔がだいぶ腫れていましたね。
瓜田 こっちまで痛くなっちゃって、ちょっと見てるのがつらくなった。あんなに頑張らんでもいいだろうに、とも思ったけど、彼にも意地があったんでしょう。ホント、すごい戦いを見せてもらいました。
――応援団の人数もすごかったですね。
瓜田 何がすごいって、彼がデビューしてからの15年間、応援団の顔ぶれがほとんど変わってないってことですよ。いろんなことが変わっても、彼の応援となるとみんな来る。普通、15年は来ないですよ。みんな、ハートがあるよ。チケット買って来てるんだもん。
――これだけ応援団が大人数だと、中には反目の人もいたりするのでは?
瓜田 いたとしても、今日は無礼講ですね。みんな「大嶽正史」を見に来てる。「マーちゃんの試合の日になんかあっちゃいけない」という思いは、みんな一緒でしょう。
妻 わざわざ純士のところまで挨拶に来てくれた人もおったよね。
瓜田 会う人会う人に「いい顔になった」と言われてうれしかったですね。大山くんにも言われました。そういう大山くんも、いい顔してましたよ。彼が「ASIATO」でみんなから慕われてるのも、よくわかる気がします。彼は僕も入ったことがある松本少年刑務所でもカリスマ的存在でしたらからね。
妻 前の席に、純士の元カノもおったな。
母 元カノ?
瓜田 ……わかんない。とにかくマーちゃんの試合になると、いろんな人たちが集まるんですね。都市伝説クラスの人たちが毎回。それだけマーちゃんはみんなの心をつかんでるってことですよ。
母 中学時代の友人知人もたくさん来てたね。
瓜田 中学の同級生が子供4人くらい連れて来てたり。ちゃんと落ち着いて家庭持ってえらいな、と思いましたよ。あとは、ほとんど忘れかけてた後輩とかも挨拶に来てくれてうれしかった。そういうのがまったくないのも、寂しいもんな。蚊帳の外みたいで。
母 みんな、大人になったよねぇ。相変わらず下品なのは私だけだった。アハハハハ!
瓜田 お袋がいきなり相手の応援団に向かって「黙れ!」と吠え出したから、勘弁してくれよ、と思いつつ笑いましたよ。でもお袋がヤカってくれたおかげで、相対的に僕がおとなしくなったように見えるというエフェクトがあるから、まぁ、助かってはいるんですが。
――格闘技の会場でこれほどおとなしい瓜田さんを初めて見ました。以前は必ず、氷結やジャックダニエル片手に与太ってましたが、現在は禁酒禁煙して背筋を伸ばして観戦ですからね。
母 純士がここまで落ち着いたのは、ひよっけ(瓜田の妻の愛称)のおかげ。やっぱ男は、女の人で変わるんだねぇ。今日は純士がおとなしくしてくれたから、私は安心してガーガーやれました。私はもういいトシだから、何が来ようが大丈夫なんで(笑)。

瓜田 でも今後はこういう機会がないのが寂しいね。一つのイベントが終了したような感じだね。
母 なんだかんだで今まで、マーちゃんの試合があるから、何年かに一度は仲間たちと会えてた部分があるもんね。毎回楽しみだったのよ。
瓜田 お袋は今回も、準備段階からすげえ張り切ってたもんなぁ。
母 私は毎回、脱ぐから(笑)。脱いでも大丈夫なように体型をキープしないといけないから、毎回準備が大変なのよ。応援しながら腕の贅肉をプルプルさせてたらみっともないでしょ?
瓜田 マーちゃんが引退かけて死ぬ気で戦うっていうのに、お袋とひよっけはすっかりイベント気分で、「大嶽戦までにあと何キロ痩せる」とか「服はどれにしよう?」とか直前までウダウダやってるんですよ。すっかり主役が自分らになってるんです。お前らの日じゃねぇよ! っていうのにさぁ……。
母 その点、純士は落ち着いたし、着る服も変わったよね。以前はギンギラギンだったけど、最近はおとなしい格好ばかりだもんね。
――お母様としては、純士さんが変わったことは、うれしいんですか?
母 もちろんですよ! 以前の息子は怖すぎましたから。おかげで私は人の何千倍も苦労しましたよ。……ウソぴょーーーーーん!
瓜田 この人、僕より何倍も怖い人ですから。小学生の頃、お袋ってすごいな、と思ったことがあって。同級生にSっていう学級委員長がいて、そいつにクラスの運営を1日だけ任せて、先生は見てる、みたいな催しがあったんですよ。そしたらそのSが、「瓜田くんがこの学校から消えたほうがいいと思う人、手を上げてください」とか言って、いきなり多数決を取り始めたんです。だから僕はSをベランダにソッコー連れ出して、ボコボコにしたら、アバラにヒビが入っちゃって、親子で謝りに行くことになったんです。
――相手も相手ですが、瓜田さんもやりすぎましたね。
瓜田 お袋からも「ケガをさせたアンタが悪い」「悔しくても頭を下げろ」と言われて、死ぬほど行きたくないSの家に2人で謝りに行きました。ここまではまぁ、よくある話だけど、大変だったのはそこから先ですよ。Sんちのババアが鬼面倒臭い奴で、ザーマス言葉でウチの家族のことを見下しながらボロクソに言ってきた。そのとき僕は、平身低頭謝り続けるお袋を横目で見ながらこう思いましたよ。「この人はこうして謝ってるけど、内心はめちゃくちゃ悔しいんだろうな。すべて俺のせいだ。でもこの人は俺をシバキもせずにグッと耐えてる。自分の親ながら、よくできた人間だ」と。で、Sの家を出て、ドア閉めて、そこから30メートルくらいお袋は無言だったんですよ。だから僕は、「いっぱい思うところあって悔しいながらも夜の風に吹かれてすべてを忘れようとしてくれてるんだろうな」と思ってたんですよ。ところが曲がり角を曲がって、人目につかない路地に入った途端、俺、ボッコボコにされましたからね(笑)。履いてたハイヒールを手に取って、ヒールの尖った部分で、バッチバチにシバかれました!

母 覚えてないなぁ。
妻 ふふふ。純士と性格がよく似てますね。
母 面倒臭いところが?
妻 いや、優しいところが。ホントに、ホントに!(笑)
――カッとなったら手が出てしまうところも、遺伝なのかもしれませんね。もとは暴れん坊だった瓜田さん。今回の大嶽選手の試合を見て、触発される部分もあったのでは?
瓜田 触発も何も、尊敬の念しかないですよ。だって普通はみんな、若いときヤンチャしててもどっかで丸くなって落ち着いて、少年のときのそういう思いを忘れてただのおっちゃんになっていくじゃないですか。そんな中、マーちゃんみたいに現役で戦ってる人間がいると、夢を諦めた男たちが、そいつに賭けるっていうか、夢を託すようなところがあるんですよ。だから今日は全員の夢が終わったような瞬間でもあった。よくこれまでみんなの期待に応えてくれたと思います。マーちゃんには「ありがとう」「おつかれさまでした」って言いたいですね。
妻 純士のファンもそうやと思うで。私も、お母さんも、純士に夢を託してるんやで。でもお母さんは、「あの試合」だけはイヤなんですよね?
母 やだ冗談じゃない。あれだけは安目売るからやめてちょうだい!
――「あの試合」とは?
瓜田 まだ詳細は明かせませんが、実は僕、ある格闘技の試合にエントリーしてるんですよ。
母 絶対やだ! あんなのに負けたら最悪じゃん。やだそんなの。ダメですよ。絶対に反対です。
瓜田 つっても俺はやるんで(笑)。出場できるかどうかは未定だけど、もし今回この試合が決まったら、相手をパンチで仕留めたい。僕も大谷の真似して、横に回り込んで鉄槌しようと思ってるんですよ。
――大谷とは、アウトサイダーの第二回大会で瓜田さんをKOした“北海の頑固一徹”こと大谷匡弘選手のことですね?
瓜田 ええ。回り込んで鉄槌。大谷にやられたように、やってやろうかと。「秘技・大谷返し」です。ちなみに、のちのアウトサイダーで大谷のセコンドに付いたのが、マーちゃんを含む大嶽兄弟なんですよ。「ひとりで遠くから来て可哀想だ」つって、セコンドに付いてあげた上、菓子パンまで食わせてやったのに、大谷は礼もごちそうさまも言わずに北海道に帰ったらしい(笑)。俺をボコボコにした上、大嶽兄弟をパシリに使うとは、あの大谷って男が一番のアウトローかもしれませんね(笑)。

――それにしても、瓜田さんが格闘技復活を企んでいたとは驚きです。
瓜田 人前で裸になっても大丈夫なようにトレーニングを続けてます。8月くらいには腹筋が6つに割れる予定です。
母 私もこないだ仲良しの美容師さんに「ズボンの上にお腹の脂肪が乗ってる」と言われたのがショックで、ダンベル買ってトレーニングを始めたわよ。
妻 お母さんはトレーニングの必要なんかないですよ。そのままで十分きれいです。小泉今日子に似てますから。
母 似てない、似てない(笑)。
瓜田 僕、最近パーマをかけてから、自分が誰似かわかったんですよ。楳図かずおです。
母 やだ! 全然似てない。何言ってんのよ。
――でも赤と白のボーダーシャツ着てグワシしたら、確かにソックリかもしれませんね。
瓜田 ……自分で言う分にはいいけど、人に言われると腹立つな。なぁお袋、ちょっとコイツのこと、そこの路地裏でぶっ飛ばしてくるわ!(笑)
母 ハイヒール貸そうか?(笑)
(取材・文=岡林敬太)
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