なぜ彼らは残虐行為ができるのか? メキシコ犯罪組織との戦い描く『ボーダーライン』が問うもの

【リアルサウンドより】  FBIが指揮する武装チームが誘拐団のアジトに踏み込むと、そこは壁一面に大量の被害者の腐乱死体がびっしりと塗り固められた「死の家」だった。経験豊かで屈強な捜査官でさえ、耐え難い腐臭とおぞましい光景に思わず嘔吐してしまう。エミリー・ブラントが演じる捜査官の目を通し、凶悪化するメキシコの犯罪組織との戦いを描いた本作『ボーダーライン』は、実際の事件を基にした、このおそろしいシーンによって観客に衝撃的な先制パンチを食らわせる。  「なぜ彼らは、こんなにも非人間的な残虐行為ができるのか」  特異な作家性を押し出したミステリー映画で話題を集めてきた、本作の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴは、このクライム・アクション映画の中でも、主人公ケイトの目を通し、やはりある種の謎を観客に投げかけている。今回は、映画ファンの支持も高い『ボーダーライン』の魅力を追いながら、この冒頭で提示された謎の答えを解き明かしていきたい。
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 ここで描かれたようなアメリカ国内でのメキシコ犯罪組織の犯行は、彼らの悪行の氷山の一角でしかない。国外での捜査活動を許されないFBIに所属しているケイトは、犯罪組織の中核を叩けないことに不満を感じていた。彼女はアメリカ政府の要請を機に、対策チームに同行し国境を越え、「世界で最も危険」といわれる、メキシコのシウダーフアレス市街に入っていくことになる。そこで目にしたのは、体を切り刻まれ吊り下げられ、路上でさらしものにされたいくつもの死体だった。  ここで描かれる残虐描写は、とくに面白おかしく誇張しているわけではない。実際に2000年以降、メキシコの一部地域の治安は急激に悪化してきている。麻薬を栽培・精製し流通させる、違法で巨額のビジネスを営む「麻薬カルテル」が、このようなおそろしい見せしめと軍隊並みの装備によって街を恐怖支配しているという。現地警察は多くが買収され、凶悪化していく組織のあらゆる犯罪を見逃し協力すらしている。さらにカルテル同士の抗争、武装した自警団や軍隊との攻防など、いくつかの街は日常的な戦闘地域になっており、この「麻薬戦争」の死者は10万人規模ともいわれている。そして麻薬や犯罪者の流入など、その余波はアメリカ社会にも及び、無視できない事態になっているのだ。    「南部ゴシック」と呼ばれる、アメリカ南部の未開的な文化を娯楽的に描く文学ジャンルがあるが、『悪の法則』の脚本を書いた南部文学者コーマック・マッカーシーの作品のように、近年ではメキシコ犯罪の凶悪化にしたがって、このようにメキシコとアメリカとの負の関係が描かれることも多くなってきている。より殺伐とした南部ゴシックとして『ボーダーライン』は、緊張感をはらむ異界への越境作品として、いささか悪趣味な娯楽作として楽しめるものになっている。そのような特異な映像世界を監督とともに作り出しているのが、撮影監督ロジャー・ディーキンスだ。実際の街のロケと美術スタッフ達によって再現されるセット撮影を組み合わせ、ドキュメンタリーと見まがうようなリアリティある世界を作りあげながらも、その映像はときに美学的に先鋭化する。装甲車の中に差し込む光の不気味な美しさは南部ゴシックの手触りであり、必要以上の高度からの俯瞰撮影は、反リアリズム的な抽象表現に近づき、多くの犯罪映画とは区別されるような、ある種の哲学的予感を感じさせ、作品の方向を定めている。ちなみに『プリズナーズ』からのヴィルヌーヴとディーキンスのコンビは、今後製作される『ブレードランナー』続編まで継続が予定されている。
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 本作でケイトが帯同したチームは、市街地でいきなり銃撃戦を始めたり、容疑者に拷問を行うなど違法行為を犯し始める。ケイトは作戦に手を貸すことに強い違和感を覚え、チーム自体に疑念を深めていくが、その彼女自身も、やがて違法行為に踏み込む事態に陥っていく。容赦のない悪を倒すためには自分自身すら悪の世界に身を投じなくてはならないだろうか。ケイトはこの善悪の「ボーダーライン」の前で立ち尽くす。作品はそこでの彼女の選択を描くことで、善悪の問題について、観客を甘ったるいヒューマニズムの外に連れ出して考えさせるきっかけを与えている。  映画『ボーダーライン』のアメリカ本国でのタイトルは"Sicario"である。これは、スペイン語で「殺し屋」を意味する言葉だ。本作ではその語源に解説が加えられている。これはもともと「短剣の男」を意味するラテン語で、同時に「武装したユダヤ教の狂信者」、すなわちマントの中に短剣を隠し、異教徒を闇で殺害していたという武力組織「熱心党」の実行部隊のことでもある。キリストが生きていた時代は、彼らによる殺人事件が日常的に多発していたという。 新約聖書のなかでは、十二使徒のひとりに「熱心党のシモン」という人物も登場する。シモンは聖書のなかでも記述が少ない謎の人物で、実際に武力組織に入党していたかどうかは定かではないが、聖人の伝記集「黄金伝説」のなかで、キリスト教に改宗した彼が、異国の地で異教徒の手によって生きたままノコギリで体を切られ吊り下げられるという、まさに本作で描かれたような状況で、殉教者として最期を遂げたことが記されている。
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 メキシコ犯罪組織の現在の蛮行は、このような古代や中世の暴力的暗黒時代に世界を引き戻そうとするかのようだ。それを意識したのか、2015年にボスが逮捕された実際の麻薬犯罪組織は、自らを「テンプル騎士団」と名乗っていた。ここでは、非人間的な暴力行為の起源を古代や中世ヨーロッパに求めているのである。暴力行為は全人類に共通する問題である。現代のアメリカですら「衝撃と畏怖」と称しイラクの街を爆撃し見せしめを行うなど、やっていることはメキシコの犯罪者集団に近いものがある。本作の麻薬組織のボスは、このような暴力について「誰がこれを始めた?」と問いかける。それは麻薬戦争の報復合戦を示していると同時に、歴史的、世界的なスケールで我々に突き刺さってくる言葉だ。  「なぜ彼らは、こんなにも非人間的な残虐行為ができるのか」  本作では、ケイトの物語とともに、シウダーフアレスの汚職警官と幼ない息子の物語が並行して語られている。警官は犯罪に加担しながらも、家庭では善き父親として描かれ、息子は典型的なメキシコのサッカー小僧だ。元気にサッカーに興じる少年達のすぐ近くでは、今日も銃声や爆発音が鳴り響いている。彼らはごく一般的な小市民だが、そのような普通の人々までも残虐な暴力や犯罪の世界に、すでに巻き込まれているのだ。キリストの生きた時代、暴力や殺人は日常的な風景だった。その恐怖のなかで生まれる子供達は、モラルから切り離された現実のなかで生きることになる。我々がその時代、その環境に置かれたとしたら、非人間的な残虐行為から果たして無関係でいられるだろうか。『ボーダーライン』の真の凄さは、このように「暴力」というものを、メキシコ麻薬戦争の中だけで完結させず、より大きな枠組みの中で捉えた作り手の確かなまなざしにこそあるだろう。 ■小野寺系(k.onodera) 映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト ■公開情報 『ボーダーライン』 角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほかにて公開中 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 脚本:テイラー・シェリダン 撮影監督:ロジャー・ディーキンス 出演:エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン 配給:KADOKAWA 提供:ハピネット/KADOKAWA (c)2015 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved. 公式サイト:http://border-line.jp/

宇多田ヒカル“主題歌争奪戦”に『とと姉ちゃん』が勝った裏事情「フジじゃ数字が取れない……」

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『First Love -15th Anniversary Edition-』(EMI Records Japan)
 最終回で27.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)の高視聴率を叩き出したNHK連続テレビ小説『あさが来た』の後を受けて始まった『とと姉ちゃん』。4月4日放送の初回は22.6%の好発進で、1週目の平均視聴率はすべて20%超え。朝ドラで今世紀最高の数字を記録した『あさが来た』でも1週目は20%を割った回があったことから、メガヒット作といっていいだろう。 「さすが、宇多田さんも狙い通りといった感じ」  音楽関係者を感心させたのは、番組主題歌「花束を君に」を担当した宇多田ヒカルだ。新曲を書き下ろすのは、2012年11月に公開されたアニメ映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のエンディングテーマ以来、3年4カ月ぶり。 「父親でプロデューサーの照實さんが5年半ぶりの活動再開にあたって、自ら曲のタイアップ先を探していたんですが、『番組主題歌なら、高視聴率が取れるものに限る』と、かなり力を入れて探っていたそうです」と関係者。  昨年12月、宇多田の活動再開について、スポーツ報知がスクープ。春に番組主題歌になることもきっちり報じていたが、このとき照實氏は「まったくのガセネタ」と否定していた。しかし、筆者は当時、本サイトで別の音楽関係者が「宇多田サイドがサプライズ発表を潰されて激怒していた」という話を紹介、情報番組とのタイアップが進んでいる話も書いており(記事参照)、実際に日本テレビ系『NEWS ZERO』のエンディングテーマが決まった。照實氏がガセネタと言ったのは、「最大のタイアップ先」を取り付けている最中だったからだろう。  もともと宇多田はメディアコントロールに非常に長けていて、デビュー時に露出を減らすなど、父親主導の絶妙な戦略で商品価値を上げていった歌手。今回は当初、フジテレビのドラマ関係者が宇多田の新曲タイアップに躍起になっていたというが、「それがまとまらなかったのは、高視聴率が予想されていなかったということ。タイアップの値段を吊り上げても、宇多田サイドは高視聴率でCDが売れることのほうに重きを置いているので、結果として決まったのがNHKの連ドラ。そのもくろみが大当たりといえます」と前出音楽関係者。  かつて、デビューアルバム『First Love』(EMI Records Japan)を800万枚前後売った宇多田も、CDが売れない業界の地盤沈下に加え、休業によるブランクで人気が低下。とてもセレブとはいえないバーテンダーのイタリア人との再婚はカリスマ性を下げるような話で、今回の新曲が外れたら“過去の人”にもなりかねなかった。だが、これでまたトップアーティストに返り咲いた形だ。 「かつてブレーク後のテレビ初登場時には、フジテレビのトーク番組で28.5%の視聴率を叩き出したこともあった。今後の出演番組も、高く売るという話ですよ」(同)  もっとも、生活の拠点はロンドンに置いたままだというから、音楽活動再開といっても、稼げるとき以外、日本にいることはなさそうだ。 (文=ハイセーヤスダ/NEWSIDER Tokyo)

『月曜から夜ふかしSP』15%、福山「月9」に完勝! フジを潰した日テレの本気

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 4月11日、福山雅治3年ぶりの連ドラ主演となる『ラヴソング』(フジテレビ系)の初回が放送され、視聴率は10.6%(ビデオリサーチ調べ、関東/以下同)に終わった。
 
 「月9」という高視聴率が期待される枠にもかかわらず、出だしから大コケとなってしまったが、対して15.3%で同時間帯トップに立ったのは、その裏で同じく午後9時から放送されていた『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)。「春爛漫!日本の大大大問題 一斉調査2時間SP 」と銘打たれた2時間のスペシャルのうち、なんと約50分にわたってオンエアされていたのが、株主優待券だけで生活するおじさん、桐谷広人さん(66歳)の引っ越しだ。
 

「本誌にも載せてくれよ……」℃-ute・萩原舞の“文春報道”がネット記事だけ! AKB48との格差か明らかに

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『まい2』(ワニブックス)
 アイドルグループ℃-uteの萩原舞の熱愛スキャンダルが、「週刊文春デジタル」(文藝春秋)で報じられた。記事によると、相手はファン歴10年の一般男性。仲睦まじく手をつないだ2人がコンビニに立ち寄ったあと、一緒にどちらかの自宅とおぼしき家に入っていく様子が報じられている。  萩原のファンにとっては、相手がジャニーズなどの芸能人ならまだしも、彼女が自分たちと同じドルヲタと付き合っていたとは複雑な心境に違いないが、それよりも彼らが怒り心頭なのは、このニュースの扱い。というのも、文春は℃-uteの知名度が低いからと、サイトのみの掲載で本誌では報じなかったからだ。 「もともと文春はAKBメンバーを張り込んでいたらしいのですが、そこにたまたま萩原らが居合わせてしまった。完全なもらい事故ですね。萩原のファンたちは『AKBと絡むとロクなことがない』と、ボヤくことしきりです。しかも、ニュースの扱いも小さかったことで、彼らの怒りの矛先はファンを裏切った萩原ではなく、『℃-uteはそんなにマイナーじゃない』と、文春に向けられています」(アイドル誌編集者)  確かに℃-uteは結成11年目と、ハロー!プロジェクトの中ではモーニング娘。’16に次ぐ人気グループで、決して無名というわけではない。これまでリリースしたシングル曲もほとんどがチャートのトップ5にランクインしており、ライブパフォーマンスにも定評がある。リーダーの矢島舞美はビジュアルのよさで知られ、ハロプロの5代目リーダーも務めている。また、岡井千聖はバラエティ番組での露出も増え、鈴木愛理に至っては同業者であるアイドルたちが憧れるカリスマ的な存在でもある。 「それでも一般的な認知度の低さが否めないのは、グループとしてテレビの歌番組などへの出演が少ないからでしょう。彼女たちは昨年6月に『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演しましたが、なんと7年ぶりでしたからね。歌番組への露出が少ない理由は、もちろんAKB の存在。姉妹グループだけでなく、乃木坂46や欅坂46の存在もあって、℃-uteやモー娘。などハロプロ勢の出る幕がないのが実情です。こうした現状が改善されなければ、いつまでもドルヲタ限定の人気にとどまり、一般的な認知度はなかなか高まっていかないでしょうね」(同)  AKBのおかげでブレークを阻まれ、もらい事故でスキャンダルまで報じられてしまう。℃-uteにとって、AKBはまさに鬼門というしかないだろう。

「C-C-B」に「歌のおにいさん」連続覚せい剤逮捕! 根深い芸能界薬物汚染の「深層」とカラクリ

 14日、覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで、バンド「C-C-B」の元メンバー・田口智治容疑者(55)が神奈川県警に逮捕された。田口容疑者は昨年7月にも覚せい剤所持で逮捕されており、執行猶予の中にあった。  「またやってしまったか」と田口容疑者の逮捕に世間が耳を傾けたのも束の間、今度はNHKの番組で“歌のお兄さん”として出演していた俳優の杉田光央容疑者が覚醒剤を所持していたとして現行犯逮捕されたと速報が。いったいぜんたい芸能界はどうなっているのだという状況である。  昨年は女優の高部あいが逮捕され、今年に入ってからは元プロ野球選手の清原和博が薬物逮捕と、世間の注目が追いつかないテンポで芸能人が逮捕され続けている。それだけ警察も検挙に力を入れているということなのかもしれないが……。  杉田容疑者に関しては以前より「薬物使用」のウワサが流れており、ネット上でも「やはり本当だったか」「おくすりといっしょだったのね」などのコメントが出ている。同容疑者は慶應義塾大学文学部を卒業して芸能界入り。どちらかというと育ちのいい経歴なのだが、どこで道を踏み外してしまったのか。  今さらな話ではあるが、芸能界は「100か0か」の世界。一時でも注目されればサラリーマンとは比較にならない金銭が一気に転がり込み、生活が一転する。逆に売れなければいつまでも停滞し続けることになり、金銭的な生活不安に襲われる場合が多数。ブレイクのほとんどには法則性もなく、売れても一過性であるパターンも数えればキリがないほど。ジェットコースターのような年月を繰り返す一流芸能人も少なくはない。  華やかなイメージのある芸能界だが、成功できるのはほんの一握りであることは誰もが知るところ。きらびやかなステージを夢見てその世界に入っても、突きつけられるのは厳しい現実ばかりだ。その中でチャンスをつかむ人の話だけが横行することで、盲目的に目指す人が増えるという部分もあるだろう。得たことのない金銭に舞い上がる芸能人、または厳しい現実から逃避したいと願う芸能人は少なくないはずだ。薬物の売人などは、こうした芸能人の心の隙間を見つけて取り入るのが非常に上手いのだろう。  しかし、ストレスのはけ口が「薬物」というのはなんとも悲しい話だ。彼らには悩みやストレスを相談できる友人などはいなかったのだろうか。これほど世間が「芸能界の薬物」に対して敏感になっている中、それでも手を出してしまう人がいるというのが、正直なところ信じられない。  一時の現実逃避、快楽に「薬物」を使用するというのは「ハイリスクノーリターン」である。こうして2人もの逮捕者が出てしまった今、まだまだ芸能界の薬物汚染が深刻なのを露呈してしまった。警察にはぜひ、芸能界の薬物ルートを根絶やしにしていただきたい。

打倒“月9”に燃える日テレ火“水10”枠、嵐・大野智『世界一難しい恋』まずまずの好発進!

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日本テレビ系『世界一難しい恋』
 ドラマといえば、昔はフジテレビの「月9」が鉄板でしたが、近年では日本テレビの「水10」がその牙城を崩しています。2000年前半の『ごくせん』に始まり、後半には『ホタルノヒカリ』。そして、2011年には『家政婦のミタ』が最終回で視聴率40%を獲得し、そのブランドを確固たるものにしました。  そんな水10の今作は、『死神くん』(テレビ朝日系)以来、2年ぶりの連ドラ主演となる嵐・大野智主演の『世界一難しい恋』。ヒロインには昨年、NHK連続テレビ小説『あさが来た』のヒロイン役で大ブレークした波瑠、そして小池栄子や北村一輝など実力派が脇を固めます。また、制作側にも大野のヒット作である『怪物くん』を手掛けたオフィスクレッシェンドと、期待が高まる陣容です。  ということで、第1話。鮫島ホテルズの社長・零治(大野)は気難しく、自分の基準に満たない仕事ぶりの従業員をバッサバッサとクビにしていきます。ものすごいスピード感です。その合理的な性格は、恋愛においても変わりません。ライバルであるステイゴールドホテルの社長・和田(北村)に対抗するために、2カ月後のパーティーまでに婚約すると宣言するものの、女心がまったくわかっていません。  お見合いでは、すぐさま相手に「俺の印象はどうだ?」と聞き、「君は写真加工していないようだ」と謎の褒め言葉を言い放ち、「この前の女はひどかったから、割り勘にしてやった」とジョークにならないジョークを飛ばします。それに相手がドン引きしているのが察せないところも、痛すぎます。でも、こういう人、現実世界にも意外といます。特に、お金を持ってる人に多いですね。「わかるわ~」と女性視聴者がうなずいたところで、社長秘書の舞子(小池)が零治をバッサリ切り捨てます。 「恋愛に必要なのは、正直さではありません。心地よさです」 「女性へのウソはやさしさであり、時として愛です。ウソがつけない男は、絶対にモテません」  それでも、恋愛経験値が著しく低い零治には、まったく伝わりません。そんな零治に、舞子は翌日、簡単なテストを出します。 「デートに彼女が遅れて来て、『待った?』と聞かれたらどうしますか?」 「一般的な男性はそこでウソをつくんです。『ううん。いま着たところ』と」  これには零治だけでなく、参考になった男性視聴者も多いのではないでしょうか。そして、舞子は「相手の話を否定せずに聞いてあげることも、立派な優しいウソ」と教えます。ですが、恋愛はそう簡単ではありません。次のお見合いでは、舞子の言葉を気にしすぎて無口になってしまい、結果、失敗。  この零治と舞子のやりとりは、『花より団子』(TBS系)での姉・道明寺椿(松嶋菜々子)による司(松本潤)への恋愛講座や、『ホタルホヒカリ』の高野部長(藤木直人)とホタル(綾瀬はるか)の言い合いを彷彿とさせる、ラブコメの定石ですね。  一方、ヒロイン・美咲(波瑠)は、パリの高級ホテルで働いていた経験を持つ、鮫島ホテルズの中途採用社員。大浴場で零治に「牛乳を置くべき」と進言し、「俺は牛乳が嫌いだ」と却下されて以降、目立った動きがありませんでしたが、なぜかメダカの餌をやりに社長室へ。そこへ帰ってきた零治は、勝手に社長室に入った社員をクビにしようとしますが、美咲と気づき、口ごもります。  なぜ、急に美咲を意識したのでしょう? 零治と美咲は過去に出会っていたという伏線なのでしょうか。謎めいた美咲には、陳腐ではない過去があってほしいですね。  零治は物怖じせずに意見を言う美咲が気になり始め、近づくために早速、新入社員歓迎会に出席しますが、そこで美咲から「箱根ホテルの2人のクビを取り消してほしい」と懇願されます。すると急に非情なホテル経営者の顔を取り戻し、「慣れ合いや義理人情は必要ない」と突き放します。ここまでの展開で忘れていましたが、もともとは合理主義者です。  この返答に対し、美咲は「なら、どうして会に来たんですか? 皆さん社長と飲みたいですか?」と返します。仕事は合理的に進めたいものの、美咲とはひとりの人間としても付き合いたい。ドラマあるあるですね。  ですが、零治はその葛藤以上に、社員たちに嫌われていたことを知り、ショックを受けます。帰宅し、豪華な部屋の小さなソファーで小さくなります。その十分すぎる哀愁感は、嵐のリーダーとしての苦悩が演技に生きたのでしょうか。  事細かに人物像が描かれる零治に対し、謎なのは美咲です。時折届くフランス語のメールに心痛めているようで、ジムで泣きだしてしまいます。それを見かけた零治はなんとかしてあげたい気持ちに駆られ、出した答えは「美咲が大好きな牛乳を、彼女の前でおいしそうに飲むこと」。  そうです。零治が「優しいウソ」を習得した瞬間です。無理しているのがバレバレですが、それでもウソを突き通します。そんな零治の姿に、美咲も笑顔になり、一礼して去っていきます。この美咲の立ち振る舞いに零治は完全に恋に落ちた表情を見せて、第1話は終了となりました。  誠実でウソがつけないがゆえに、相手に敬遠されてしまう男が、人を好きになることで、相手の気持ちを考えた行動を覚えていく。美咲に好かれたいという思いから、零治は人間として成長し、経営者としても立派になっていくのでしょう。ある意味では、『花より団子』の司と同じです。違うのは、司に説教する姉はたまにしか登場しませんでしたが、『世界一難しい恋』では舞子が秘書として常にそばにいます。舞子がいることでコミカルさが増し、テンポも上がります。ただし、ストーリー自体が目新しいものではなかったので、2話目に注目といったところでしょうか。 (文=@FBRJ_JP)

打倒“月9”に燃える日テレ火“水10”枠、嵐・大野智『世界一難しい恋』まずまずの好発進!

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日本テレビ系『世界一難しい恋』
 ドラマといえば、昔はフジテレビの「月9」が鉄板でしたが、近年では日本テレビの「水10」がその牙城を崩しています。2000年前半の『ごくせん』に始まり、後半には『ホタルノヒカリ』。そして、2011年には『家政婦のミタ』が最終回で視聴率40%を獲得し、そのブランドを確固たるものにしました。  そんな水10の今作は、『死神くん』(テレビ朝日系)以来、2年ぶりの連ドラ主演となる嵐・大野智主演の『世界一難しい恋』。ヒロインには昨年、NHK連続テレビ小説『あさが来た』のヒロイン役で大ブレークした波瑠、そして小池栄子や北村一輝など実力派が脇を固めます。また、制作側にも大野のヒット作である『怪物くん』を手掛けたオフィスクレッシェンドと、期待が高まる陣容です。  ということで、第1話。鮫島ホテルズの社長・零治(大野)は気難しく、自分の基準に満たない仕事ぶりの従業員をバッサバッサとクビにしていきます。ものすごいスピード感です。その合理的な性格は、恋愛においても変わりません。ライバルであるステイゴールドホテルの社長・和田(北村)に対抗するために、2カ月後のパーティーまでに婚約すると宣言するものの、女心がまったくわかっていません。  お見合いでは、すぐさま相手に「俺の印象はどうだ?」と聞き、「君は写真加工していないようだ」と謎の褒め言葉を言い放ち、「この前の女はひどかったから、割り勘にしてやった」とジョークにならないジョークを飛ばします。それに相手がドン引きしているのが察せないところも、痛すぎます。でも、こういう人、現実世界にも意外といます。特に、お金を持ってる人に多いですね。「わかるわ~」と女性視聴者がうなずいたところで、社長秘書の舞子(小池)が零治をバッサリ切り捨てます。 「恋愛に必要なのは、正直さではありません。心地よさです」 「女性へのウソはやさしさであり、時として愛です。ウソがつけない男は、絶対にモテません」  それでも、恋愛経験値が著しく低い零治には、まったく伝わりません。そんな零治に、舞子は翌日、簡単なテストを出します。 「デートに彼女が遅れて来て、『待った?』と聞かれたらどうしますか?」 「一般的な男性はそこでウソをつくんです。『ううん。いま着たところ』と」  これには零治だけでなく、参考になった男性視聴者も多いのではないでしょうか。そして、舞子は「相手の話を否定せずに聞いてあげることも、立派な優しいウソ」と教えます。ですが、恋愛はそう簡単ではありません。次のお見合いでは、舞子の言葉を気にしすぎて無口になってしまい、結果、失敗。  この零治と舞子のやりとりは、『花より団子』(TBS系)での姉・道明寺椿(松嶋菜々子)による司(松本潤)への恋愛講座や、『ホタルホヒカリ』の高野部長(藤木直人)とホタル(綾瀬はるか)の言い合いを彷彿とさせる、ラブコメの定石ですね。  一方、ヒロイン・美咲(波瑠)は、パリの高級ホテルで働いていた経験を持つ、鮫島ホテルズの中途採用社員。大浴場で零治に「牛乳を置くべき」と進言し、「俺は牛乳が嫌いだ」と却下されて以降、目立った動きがありませんでしたが、なぜかメダカの餌をやりに社長室へ。そこへ帰ってきた零治は、勝手に社長室に入った社員をクビにしようとしますが、美咲と気づき、口ごもります。  なぜ、急に美咲を意識したのでしょう? 零治と美咲は過去に出会っていたという伏線なのでしょうか。謎めいた美咲には、陳腐ではない過去があってほしいですね。  零治は物怖じせずに意見を言う美咲が気になり始め、近づくために早速、新入社員歓迎会に出席しますが、そこで美咲から「箱根ホテルの2人のクビを取り消してほしい」と懇願されます。すると急に非情なホテル経営者の顔を取り戻し、「慣れ合いや義理人情は必要ない」と突き放します。ここまでの展開で忘れていましたが、もともとは合理主義者です。  この返答に対し、美咲は「なら、どうして会に来たんですか? 皆さん社長と飲みたいですか?」と返します。仕事は合理的に進めたいものの、美咲とはひとりの人間としても付き合いたい。ドラマあるあるですね。  ですが、零治はその葛藤以上に、社員たちに嫌われていたことを知り、ショックを受けます。帰宅し、豪華な部屋の小さなソファーで小さくなります。その十分すぎる哀愁感は、嵐のリーダーとしての苦悩が演技に生きたのでしょうか。  事細かに人物像が描かれる零治に対し、謎なのは美咲です。時折届くフランス語のメールに心痛めているようで、ジムで泣きだしてしまいます。それを見かけた零治はなんとかしてあげたい気持ちに駆られ、出した答えは「美咲が大好きな牛乳を、彼女の前でおいしそうに飲むこと」。  そうです。零治が「優しいウソ」を習得した瞬間です。無理しているのがバレバレですが、それでもウソを突き通します。そんな零治の姿に、美咲も笑顔になり、一礼して去っていきます。この美咲の立ち振る舞いに零治は完全に恋に落ちた表情を見せて、第1話は終了となりました。  誠実でウソがつけないがゆえに、相手に敬遠されてしまう男が、人を好きになることで、相手の気持ちを考えた行動を覚えていく。美咲に好かれたいという思いから、零治は人間として成長し、経営者としても立派になっていくのでしょう。ある意味では、『花より団子』の司と同じです。違うのは、司に説教する姉はたまにしか登場しませんでしたが、『世界一難しい恋』では舞子が秘書として常にそばにいます。舞子がいることでコミカルさが増し、テンポも上がります。ただし、ストーリー自体が目新しいものではなかったので、2話目に注目といったところでしょうか。 (文=@FBRJ_JP)