【リアルサウンドより】
偉大なるミュージシャン、プリンスが4月21日(現地時間)、自宅で急死した。57歳だった。その衝撃は音楽界のみならず、映画界にも及んでいる。プリンスの音楽的な功績については、こちら(プリンスがすべてだった 宇野維正による追悼文)を参照してもらうとして、ここではプリンスと映画の関係性について、ひと通り整理しておきたいと思う。
『プリンス/パープル・レイン』(1984年)

プリンス『パープル・レイン』
1978年にアルバム『フォー・ユー』でデビューしたプリンスだが、その名を世界的なものとしたのは言うまでもなく、1984年の映画『パープル・レイン』と同作のサウンドトラックである同タイトルのアルバムだった。“キッド”という役名ではあるものの、複雑な家族関係などはプリンス自身の半生とも重なる青春物語。全編“パープル”の衣装で身を包んだ、その圧倒的なロックスターぶりに度肝を抜かれた人は数知れず。「レッツ・ゴー・クレイジー」、「ビートに抱かれて」、「パープル・レイン」など、その後、プリンスの往年のヒットソングとなってゆく数々の名曲を収録した本作は、彼の紛うことなき代表作のひとつと言えるだろう。そして、この映画で彼はアカデミー賞歌曲・編曲賞(当時)を受賞し、映画界にも大きなインパクトを残すことになる。
『プリンス/アンダー・ザ・チェリー・ムーン』(1986年)

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前作の世界的な成功に気を良くしたプリンスが、遂に自ら監督も手掛けたラブロマンス映画。全編モノクロであることはもちろん、フランスの高級リゾート地、リヴィエラを舞台としたピアニストの物語であることなど、プリンスの知られざる“フランス映画”への憧憬に満ちた一作となっている。映画としては酷評を受けたが、「キッス」など数々の名曲を収録した本作のサウンドトラックも兼ねたアルバム『パレード』は全米ナンバー1ヒットを記録。評論家筋からも高い評価を受けるなど、プリンスの代表的な一枚となっている。
『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』(1987年)

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自身のバンドである「ザ・レヴォリューション」を解散させ、作詞・作曲・演奏・プロデュースをほぼひとりで行った2枚組の同名アルバムのコンサートを収録したドキュメント・フィルム。『アンダー・ザ・チェリー・ムーン』に続き、プリンス自ら監督を手掛けた本作は要所要所にプリンス自身の「芝居」が挿入されるなど、虚実入り混じった異形のライヴ・ドキュメンタリーとなっている。ちなみに、『ジョジョの奇妙な冒険』で知られる漫画家・荒木飛呂彦が、そのフェイバリットに挙げている一本でもある。
『バットマン』(1989年)

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『バットマン』のテレビ・シリーズの大ファンで、幼少時にはそのテーマソングを自らピアノで弾いて妹を楽しませていたという逸話も有名なプリンスは、ティム・バートン監督の依頼を受け、その主題歌「バットダンス」を書き下ろした。同曲は、“ジョーカー”ならぬ“パーティマン”に自らが扮したミュージック・ビデオともども世界的なヒットを果たす。映画のオリジナル・スコアはダニー・エルフマンが担当したが、プリンス自身も本作にインスパイアされたオリジナル盤を制作し、全米チャートで首位を獲得するなど世界的なヒットを記録。この時期にプリンスの存在を知ったという人も多いことだろう。
『プリンス/グラフィティ・ブリッジ』(1990年)

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『パープル・レイン』の続編として作られた半自伝的映画パート2。監督、脚本、主演、音楽をプリンスが担当。ロックテイストの強かった『パープル・レイン』に比べてかなりファンク路線が強くなるなど、サウンド的な冒険に満ちた作品ではあったものの、興行的には大失敗に終わる。日本では劇場公開もされなかった。それまで映画制作になみなみならぬ意欲を注いできたプリンスだが、自身が制作した長編映画は本作が最後となってしまった。
『ガール6』(1996年)

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プリンスの訃報を受けていち早くブロック・パーティを開催するなど、旧知の間柄として知られるスパイク・リー監督の映画。コントロール・フリークであるため他者の映画の音楽を担当することはほとんどなかったプリンスが、珍しく音楽を担当したことでも知られる本作。タイトル曲をはじめ書き下ろしの新曲は3曲のみだが、自身のファミリーとも呼べるアーティストの楽曲など、そのサントラ盤はプリンス・ファンのあいだでも評価が高い。ちなみに当時は“シンボルマーク”時代ではあったものの、このサウンドトラックは“プリンス”名義として表記されている。
『ハッピーフィート』(2006年)

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『マッドマックス』のジョージ・ミラー監督が手掛けたフルCGアニメ映画『ハッピーフィート』。タップ・ダンスが得意なコウテイペンギンを主人公とした本作は、ペンギンたちが歌い踊る往年のヒットソングが見どころの一作となっている。その一曲としてプリンスの「キッス」を使用する際に、レイティングを踏まえて歌詞の変更を打診されたプリンスは、当初そのオファーを一蹴。しかし、実際の映像を観て快諾するどころか、エンディングテーマ「Song of the Heart」を書き下ろして提供した。ちなみに同曲はゴールデングローブ賞主題歌賞を獲得している。
なお、5月11日から開催されるカンヌ映画祭では、プリンスのスペシャル・トリビュートが行われることが早々と発表されている。
■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「CUT」、「ROCKIN’ON JAPAN」誌の編集を経てフリーランス。映画、音楽、その他諸々について、あちらこちらに書いてます。