
撮影=後藤秀二
ある時は合唱に熱くなりすぎる音楽教師、ある時はバンドマン好きの女、ある時は3児を抱えるモーレツママ……。圧倒的な人間観察力で“いそうでいなそうで、でもやっぱりいそうな”ウザい女を憑依させる注目の芸人、横澤夏子。昨年からじわじわとテレビに進出、ルミネでの初単独ライブは即完売(※当日券アリ)と、売れる予感しかない彼女だが、芸人活動以上に夢中になっているものがあるようで……。
――ルミネtheよしもと初単独ライブ『ダントツガール』即日完売、おめでとうございます!
横澤夏子(以下、横澤) ありがたいですぅ。ほんと、ニヤニヤしちゃう。天狗になっちゃう~! でも、ルミネでやるのが本当に夢だったんです。それが完売するなんて、思ってもみなくて。婚活パーティーで出会った男の人に、頭下げて来てもらおうと思ってたんですよ。
――婚活パーティーでチケットを売る!?
横澤 新手の詐欺みたいでしょ? アハハハ~!
――ヨシモト∞ホールでの定期ライブ「横澤夏子の売れ活パーティー」は、今回ゲストにフリーアナの福澤朗さんがいらっしゃるんですね。
横澤 私、婚活パーティーにばっかり行っていて、年に40回行った時もあるくらい。婚活パーティーのはしごとかしてたんですよ。そんなことばっかりやってないで、売れるための活動“売れ活”もしろよ、ということで始めたライブです。売れてる先輩を呼んで「どうしたら売れますか~」って、おこがましく聞くという。新ネタをやったり、トークで人生相談したり、今回は福澤さんなので「どうしたら女子アナになれますか?」って聞いちゃおうっかなって思ってます。
――インタビュー開始3分で、気になるキーワードがたくさん出てきているんですけど……。以前おかずクラブさんを取材したとき(
参照記事)に「横澤夏子、キテるんですよ」ってお話しされてたんですよね。
横澤 ホントですか? 私の名前を出す余裕があるんだぁ(笑)。東京NSC 15期は、デニスとかマテンロウとか、ハーフに引っ張ってもらっている期なので、日本人も頑張ろうと。やっとおかず出てきてくれて。
――横澤さんは実際お会いするとお肌もキレイで、間違いなく20代……という感じなんですが、正直テレビのネタを見る限り、確実に30代後半だろうなと思ってました。
横澤 それ、よく言われるんですよ。苦労顔なんですぅ。「お子さんいらっしゃるんですよね?」もよく言われますが、ベビーシッターの資格を持ってて、そういう仕事もしていたからですかね。いつ年齢が顔に追いつくんだろうって思ってます。
――ネタのチョイスに、エグみがあるんですよね。お母さんが子どもをママチャリに乗せてるネタとか、育児経験がないとわからないような部分を攻めてくるので。
横澤 私、ああいうお母さんになりたいっていう憧れが強いんですよ。バスに乗ってる時に、自転車の後ろと前に子ども乗せて、一人は背負って犬も連れて、デイサービスに通っているお母さんを見たんです。あの状態でデイサービスへ……。ダンナのお母さんだろうな、子どもを会わせに行くんだろうな……と。たくましすぎる! うらやましい! そんな気持ちで作ったネタです。

■イラつくな~って思う人がいると、ネタにして昇華
――普段は、どんなところでネタづくりをしているんですか?
横澤 普通に友達とカフェでお茶してて、「バイト先に、こういう人がいてさ」と話すと「うちの会社にもいる!」ってなって、どんどん要素が加わって、ネタが完成されますね。だから、友達と一緒に作っている感じです。「その人って、こういうこと言いそうだよね」「やめて~!!」とか(笑)。私、ネイリストの同居人と5年間ルームシェアしてたんですけど、ネイリストはホント、“歩くネタ帳”ですよ(笑)。女社会でもがいてるので。
――横澤さん、OL経験はあるんですか?
横澤 ないんです。大学にも行ってなくて、でも大学生活って、人生の夏休みって言われてるくらいじゃないですか。大学に行ってる友達がうらやましくて、“よし、私はバイトでたくさん人生経験しよう”と。バイトは20~30個やってましたね。はとバスの添乗員、ブライダル、ベビーシッター、テレアポ……そこで新しい人種に会って、イラつくな~って思う人がいると、1本のネタにしてライブでやるんです。その人も呼んで。
――呼んじゃう(笑)。
横澤 しれっと「あのネタどうでした?」って聞くと、「面白かった~」って言うんですよ。アンタのことだよ!!(笑)
――性格悪っ!! 最高ですね。
横澤 それが友達バージョンの時もあって「夏子、この人を消滅させてください」って依頼を受けまして、そのターゲットでネタを作るんです。依頼主から「ありがと~、もうあの人は私の中で成仏しました~」って手を合わせられると、あぁやりがい感じるなって。
――殺し屋じゃないですか(笑)。
横澤 だんだん友達が消えていってます。アハハハ~! 高卒で田舎から出てきて、マナーも何もわからないし、よしもとの規律しか知らなかったんですよ。東京という街を知るためにもこれは外に出ないと、と。習い事もたくさんやりましたね。
――習い事も?
横澤 「ケイコとマナブ」に、無料のお試しレッスンが載ってるじゃないですか。これを月2で行くという目標を立てて、ハープとかフランス語とか、フランス行く予定もないのに(笑)。結局、残ったのがABCクッキングです。あと、クラシックバレエも始めました。
――行動派ですね!
横澤 地元に「充実してるよ」「私リア充だよ」ということを見せつけるための材料です。
――リア充への恨みつらみをモチベーションにするのではなく、見せつける。
横澤 そうです。それを上回っちゃえば、こっちのもんなんじゃないかと。でもね、どんどんハリボテみたいになっていくんですよ。ちっちゃい私を、すごく大きく見せてるから(笑)。

■とにかく目立ちたくて、ミスコンにも応募
――ご両親は、中学の先生とスクールカウンセラーだとお伺いしました。
横澤 堅いんですよぉ。しかも、私も小中高校ずっと生徒会長やっていて、超マジメ。中学生くらいの時にタカアンドトシさんを見て、お笑いというものを初めて知りました。こんな大勢の人を笑わせて、しかも有名になるなんて、すごい! って。私、有名になりたい、ただの目立ちたがり屋なんですぅ。生徒会長をやってたのも、先生に覚えてもらいたいから。同窓会で「えっと……名前が出てこないな」っていう子にだけは、絶対になりたくないと思っていたんです。それでいちいち先生に媚び売ったり、バレンタイン渡したり、ホントに男子に嫌われる女子ですよね。アハハハ~。
――「面白い」と言われたいではなく?
横澤 ただ担任の先生に「教え子で~」って自慢されたい。何があったんでしょうね、私、学生時代に(笑)。地元での有名欲が高じて、ミスコンにも応募したんですよ。しかも去年、今年と。
――結構最近じゃないですか!
横澤 市長さんにも直々に会いに行って、親戚にも根回ししたのに書類で落とされて。ウソでしょ? って。
――貪欲ですねぇ……。
横澤 「ミスコン出身の嫁」っていうのもいいでしょ?
――「VERY」(光文社)にいそう。「私は全然応募する気なかったんですけど……」って言いながら。
横澤 「まさかグランプリだなんてぇ」って、ちょっと片足上げながらコート羽織るみたいな(笑)。
――横澤さんにとって、婚活は本気なんですね……。
横澤 私、21歳のころから婚活パーティーに行ってたんですけど、その年だとあまり相手にされないんですよ。「何? マルチ?」とか言われて。で、こっちもたくさん行っているとだんだん理想が高くなってきて、男性のダメなところばっかりに目が行くようになるんです。料理取り分ける時に「よいしょ」って言う男の人に、「いやいや、重くないのに」とか(笑)。「LINEの写真、EXILEっぽいですね」って言ったら「俺、EXILEの最終の前の前の前までいったんだよ」とか。その人は「●●(苗字)ザイル」でLINE登録してますけど。
――芸人だということは、明かしているんですか?
横澤 一応「保育関係の仕事」で申請して、後々「もうひとつお仕事やってまして」「え、何?」「芸人を……」これで相手がドン引きする。でも、それにめげず、しずしずと∞ホールのチケットを出して売るんです。
――怪しまれて当然かと(笑)。
横澤 婚活パーティーで出会い、それからチケットを買ってくれるようになった男性たちもようやく140名を超えまして、その方たちだけでライブを開けるくらいになりました。
――でも、今は仕事が忙しくて、婚活パーティーに行く時間もないのでは?
横澤 今年は絶対行かないぞ、逆に追われる恋をしてみようという目標を立てたんですけど、1月2日に行っちゃって(笑)。お餅つき婚活パーティーに。今回こそは、何かあるんじゃないかって思っちゃうんですね。「この時の出会いが……」っていう結婚式のプロフィールムービーが、頭の中で完成されちゃってるから。
――「あまり乗り気ではなかったが、なぜかこの時は参加してみようと思った」的な。
横澤 そうそう、「●●さんとは婚活パーティーで出会い……」。いや、婚活パーティーは言いたくないな、“異業種交流会”にしときます!
――横澤さんが老成されてるのは、頭の中で多種多様な人生を生きてしまっているからなのですね……。100万回生きたねこですね。
横澤 いい表現~(笑)。

■最終目標は、朝ドラヒロイン!?
――そんな横澤さんのネタは、女としては大爆笑なんですけど、男性にはどう映るんでしょうか?
横澤 それ、私も思うんです。私の単独ライブに来てくれる男の人を見ていると、よくこれで笑えるね、本当に性格悪いね、と。たぶん、結婚できない男たちなんだろうな~(笑)。やっぱり、若手の劇場に来るお客さんは男性芸人ファンが圧倒的に多いので、女芸人はいろいろ大変です。でも、私がこういう芸風だからか、出待ちの女の子に「あの……●●さん(若手芸人)って彼女いるんですか?」とか聞かれやすいんですよ。「いやぁ、いないと思うけど……頑張ってね!」と、決して取り次ぎはしないけど、保健室の先生みたいな動きをしていると、その子がお客さんになってくれたり。
――これで、また1枚チケットがさばけると。
横澤 やっぱり若手にとって、チケット売りは生命線ですから。
――横澤さんの系譜ですと、よしもとには友近さんがいらっしゃいますよね。
横澤 友近さんは大好きな人で、それこそ中学の時から見てました。だから、友近さんのお名前を出されると、恐れ多いですぅ。今、朝ドラ出てらっしゃるじゃないですか。私、物心ついたころから、朝ドラ1話も欠かさず見ているくらいの朝ドラファンなので、友近さんに初めてお会いした時も「うめさん~!」(編註:『あさが来た』での、友近の役名)って。
――何かアドバイスはもらいましたか?
横澤 もうその背中だけで「女芸人は堂々と生きていかねばならない」と教えてもらっています。
――横澤さんは、どんな芸人を目指していますか?
横澤 最終目標は、朝ドラのヒロインです! 朝ドラのヒロインになったら芸人辞めると、マネジャーさんにも話してます。本当に、朝ドラのヒロインのような人生を歩みたいんですよ。何かショックなことがあったとして、朝ドラって、だいたい木曜日にヒロインも落ち込むこと多いじゃないですか。だから「今日は木曜日の日だ。土曜日になったら、いいことが起きる」って思える。人生の指針なんです。何もない日は何もない日で「あぁ、今日は火曜日の日ね」と。自分が決して経験することのない人生を見せてくれるので、「もうひとつ人生増えた」っていうくらい感情移入しちゃうんですよ。「あれ、私いま銀行作ろうとして……ないよね……」って、錯覚しちゃう。今日行くのは炭鉱? それとも∞ホール?
――(笑)。
横澤 あとは、よく朝の番組で、視聴者からのお悩みに答える企画あるじゃないですか。あれに出てみたいです。人の家庭内のモメ事に首つっこみたい。そして、余計にややこしくさせたい。
――横澤さんは、本当に人間が好きなんですね。生きてる人間が(笑)。
横澤 大好き。ネタの宝庫。友達の愚痴とか聞くのも大好きなんですよ。くだらなすぎる! まだ言ってる! って。
――もう『あさイチ』(NHK)出るしかないですね。
横澤 朝ドラ出てからの『あさイチ』で。「来週は、結構進展ありますよ」とか言っちゃって。
――「R-1」で優勝したいとか、そういう芸人的な目標は……
横澤 もちろんあります! 今年こそ「R-1」で優勝したい。そして、地元に自慢したい。地元の友達で、化粧品店の副店長になった子がいるんですけど、その子に勝ちたいんです。肩書が欲しいんです!
(取材・文=西澤千央)
<<『横澤夏子の売れ活パーティー』公演概要>>
【開催日時】1月27日(水)開場18:45/開演19:00
【開催会場】ヨシモト∞ホール(渋谷)
【出演者】横澤夏子/ゲスト:福澤朗(ノースプロダクション)
【料金】前売1,500円/当日1,800円
【チケット】チケットよしもと Yコード:999-060
TEL:0570-550-100(お問い合わせ10:00~19:00)
WEB:<http://yoshimoto.funity.jp/>
※ラスト公演:2月24日(水)開場21:15/開演21:30
<<ルミネtheよしもと初単独ライブ『ダントツガール』公演概要>>
【開催日時】3月5日(土)開場19:00/開演19:30
【開催会場】ルミネtheよしもと(新宿)
【料金】当日2,500円 ※前売完売