
画像は塹壕。「YouTube」より引用
私は、ルドルフ・グライナーです。日本と世界を研究するドイツ人です。
先日ヨルダン・トルコを回ってきました。ちょうどクリスマス休暇だったので、休暇と次の仕事を兼ねての訪問となりました。
イスタンブールなどもテロ対策の警備が敷かれていましたが、シリアの状況とはまったく異なり、いたって普通の街で、「イラク・シリア・
イスラム国(ISIS)」の恐怖も感じませんでした。もちろん、国境の方に行けば危険でしょうけれども。
さて、今観光でトルコやヨルダンに行く人は非常に少ないでしょう。それだけに、貴重な体験もできますし、話し好きな店主とゆっくり語り合うことができます。
そのなかで話題になったのが、
ISISが行った「女性を犯すための塹壕」です。
■ISISによるヤジディ教への迫害
ISISは
ヤズディ教が「悪魔崇拝」であると言って迫害しています。そして、ヤジディ教徒の男性は殺害、女性は拘束しています。
2014年8月、ISISはヤジディ教徒の居住区であるシンジャー地区を襲撃しました。地区の住民全員を拘束し、男性や子どもはすべて殺害、
若い女性は捕虜にしたのです。
このとき、捕虜となった女性がその後どうなったのかは、まったくわかっていませんでした。しかし、その約2カ月後となる10月15日に、ISISは「
奴隷制の復活」を宣言し、その第1弾として
ヤジディ教の女性たちを奴隷とすることを宣言したのです。そこには4~5歳ほどの少女も含まれているといいます。
それがなぜ今トルコで話題になっていたのかというと、ちょうどその折、クルド人が奪還したISISの元支配地域で、性奴隷となった女性たちをどのように陵辱していたかを示す地下牢が発見されたためでした。

画像は、ISISに連行される女性たち「ibtimes」より
■女性を閉じ込めた地下牢
砂漠の真ん中に小さな四角い穴がいくつも掘られ、そこにマンホールのふたのような鉄の板を閉めるのです。
中は全く光が入らず、真っ暗闇になるといいます。戦闘中の暇なときに掘ったのか、地下牢はそんなに大きなスペースではなく、横になるのがやっとの広さで、中には砂が吹き込んだり銃弾が貫通したような跡もあるのです。
ひとつの部隊の中に、このような穴が3つ~5つ空いており、その中に捕虜とした女性を閉じ込めていたと思われます。そして、気が向いたときに性奴隷として奉仕させていたようです。たった6~7歳ほどの少女が複数の男にレイプされて亡くなってしまったこともあるようです。
■暗闇の中で砂まみれでいるか、輪姦されるか

画像は、Twitterで拡散された、レイプされる女性たちの様子 Assyrian Genocide
女性は奴隷であるので拒むことはできません。またヤジディ教の戒律から、異教徒であるイスラム教徒とセックスしたり、子どもができたりしてしまっては彼女たちに待っているのは「
死」しかありません。ヤジディ教では他の宗教に改宗してしまった場合は「
名誉殺人」として、その者を殺して信仰を守る習慣があるからです。
信仰の自由も何もない状況で、穴の中には大きな家の絵が描かれていたり、昔の生活を懐かしむ言葉や神への許しを請う言葉が掘られ、残されたりしていたといいます。なかには、毎日男性の相手をさせられている内容が詳細に書かれているものもあったそうです。
穴から出されれば
服を脱がされ、しばらく恥ずかしい踊りをさせられ、そのうえで、複数の男性に犯されるというのです。
報道によれば、奴隷であるので手錠などはそのままで、抵抗もできず、毎日毎日男性に穢されると書いてあったようです。
真っ暗で砂が吹き込んでくる穴の中か、光を浴びるときは輪姦される。まさに地獄なのでしょう。
■次々と殺された女性たち

画像は、weaselzippersより。ヤジディ族の少女のイメージ写真
クルド人の部隊が攻めた後、その周辺の穴の中に、妊娠した女性の遺体が複数見つかっています。また、40代くらいの女性の遺体と思われるものもありました。妊娠してしまったり、移動の足手纏いとなる年齢になっていたりすれば、容赦なく殺して穴に捨ててしまうのです。
ISISの戦闘員に関する記事によると、ヤジディ教の女性たちへの非道な取り扱いは、「
奴隷なんだから当たり前」というような感覚なのだそうです。また、「
男性たちに受け入れられない女性は、容赦なく殺す。邪魔だから。もともと悪魔を崇拝しているので、利用できないならば殺さなければならない」とも言っていたそうです。そのうえ「われわれが犯すことによって、体内の悪魔を追い出しているのだから彼女たちは感謝しているはずだ」と話します。そんなはずはないと思うのですが。
■なぜヤジディ教が迫害されるのか

穴に描かれた家の絵、画像は「YouTube」より引用
そもそもヤジディ教(ヤズィーディーYazidi)は、現在クルド人の一部が信仰している宗教です。古代ペルシャから続く宗教でイラン神話に出てくるミスラ信仰やイスラム教の太陽神信仰などが混ざり合った宗教です。
さまざまな戒律があり、
信者への改宗を禁じるのと同時に、ヤジディ教徒から生まれた者しかヤジディ教徒になれないという考えがあるため、他宗教の信者がヤジディ教徒に入信することも拒むといわれています。周辺のイスラム教徒やキリスト教徒と結婚することも禁じられているそうです。
そのため、ヤジディ教の街はヤジディ教だけで集団を作ります。ヤジディ教の人がホテルに来るとそのホテルは大変です。情報の少ない宗教のうえ、戒律や儀式が独特なため、客の要望を聞くことが非常に難しいといわれています。また、ほかの宗教、特にイスラム教徒と争いを起こすので、注意しなければならないのです。
ヤジディ教がイスラムから嫌われるのは、結婚を禁じるからだけではありません。彼らが崇拝する天使「
マラク・ターウース」の伝承は、ムスリムからすると悪魔「
シャイターン」にと似ている部分も多いので、イスラム教からは邪教扱いや悪魔信仰として忌み嫌われます。
特にイスラム原理主義の人々は、自分たちがうまく神から恩恵を受けないのは、ヤジディ教徒が悪魔を崇拝しているからであると憎悪の感情を持って見ています。
ISISの近年のヤジディ教徒に対する迫害や弾圧も、すべて、この宗教的な感覚からきているものなのです。実際にヤジディ教に何らかの思いがあるわけではありませんが、この宗教はISISによって絶滅の危機に瀕しているといえるでしょう。
(文=ルドルフ・グライナー)