
交通量が多い平壌市内
ドイツ・フォルクスワーゲンの排ガス規制逃れが、大問題となっている。閉鎖的な国家体制のため、世界的な影響を受けにくい北朝鮮でも一応、同社車両は輸入され、都市部の富裕層が乗り回している。だが、ディーゼル車は少なく、さらに当局は排ガスを意識しないため、大した影響はないそうだ。そもそも各国の厳しい環境基準が招いた同社の不正だが、北朝鮮にはガソリンや軽油はおろか、電気自動車をもしのぐ究極の“エコカー”が活躍しているらしい。驚きの現状を、中国と北朝鮮の国境からのぞいてみた。
今も昔も北朝鮮では、党幹部や軍幹部といった、コネと力の強い階層しか車に乗ることが許されない。一頃は日本車がステータスだった北朝鮮のカーライフだが、5年前に故・金正日総書記から「日本車を使うな」という鶴の一声があり、トラックやバスといった業務用車両以外は、欧州車や韓国との合弁で平壌郊外に工場がある「平和自動車」という国産車に代わった。

今にも切符を切りそうな女性警察官
「このところ、中国との商売で儲けた富裕層によるマイカー所有が増えた。結果、平壌市内の交通量は飛躍的に増えた。昔は女性警察官による手信号が平壌の名物だったが、今はすべてLEDの信号になっている」と証言するのは、親戚訪問で毎年訪朝しているという在日朝鮮人の男性だ。
数年前、金正恩第1書記が交通事故に巻き込まれそうになったこともあり、今度は正恩第1書記の鶴の一声で取り締まりが強化され、いま平壌市内では、手信号廃止による余剰人員の交通警察官により、違反キップが切られまくっているそうだ。
「特に道路脇への停車禁止違反が厳しい」(同)といい、好き勝手な場所で車の乗り降りはできない。
こうした交通量の増加は、あくまで平壌だけの話。地方では“元祖”エコカーが今も現役だ。
田舎に行くと「木炭トラックが走っている。煙がひどく、故障率が高い」(同)。荷台に木炭をくべる内燃機関を搭載し、木炭が燃えることで一酸化炭素と水素ガスを燃料にするもので、「木炭車とすれ違う際には、窓ガラスを閉めないときつい」(同)というが、燃料は木ゆえ、ちゃんと植林をすれば有効な再生可能エネルギーといえるかも?

道路のど真ん中を突っ切る牛車
さらに上をいくのが「牛車」だ。日本では平安時代ぐらいにメジャーな乗り物だったが、北朝鮮の地方部では今でも牛車が列をなすほどになっている。
「農機具や工事に使う重い物の輸送に使われている。現在、配給はロクにないので、北朝鮮の人々は生きていくのに必死。だから、物々交換や商売で活発な物流がある。そこに牛車が使われている」(同)

確かに、中朝国境付近で撮られた写真には、牛車による渋滞が写っている……。燃料は草と水、排出ガスはゲップとフンぐらい。ただ「法律で人が牛車に乗るのは禁止」(脱北者)なんだとか。牛車にも交通ルールとは、なんだか大変そうだ。