『私たちのハァハァ』が“ファン向け映画”を超えた理由 プロデューサーが制作の裏側明かす

【リアルサウンドより】  福岡県北九州市に住む、ロックバンド・クリープハイプの熱烈なファンの女子高生4人が、自転車で東京のライブに向かう青春映画『私たちのハァハァ』が、9月12日より公開された。同作は、スペースシャワーTV開局25周年記念映画として製作されたもので、これまでクリープハイプのMVを手がけたほか、映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』でも同バンドとタッグを組んだ松居大悟監督がメガホンを取っている。プロデューサーを務めたのは、スペースシャワーネットワークに勤務し、『フラッシュバックメモリーズ3D』や『劇場版BiSキャノンボール2014』といった話題作にも携わってきた高根順次氏。音楽ファンの青春をリアルに捉えた映画として、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭などでも高く評価された同作は、どのようにして作られたのか。高根氏に、アイデアの発端から映画制作のプロセス、さらにはインディー映画でヒット作を生み出す意義についてまで、話を聞いた。

「この映画を単なるファン映画にはしたくなかった」

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ーーこれまで数多くの音楽映画が作られてきた中で、あるアーティストのファンの女の子たちの青春をリアルに描いているという点で、とても新鮮な印象を受けました。こうした作品を作ることになったきっかけから教えて下さい。 高根:松居(大悟監督)さんが音楽ファンを主人公にした映画を作りたがっていることを、スポッテッド・プロダクションズの直井(卓俊)さんが教えてくれて、興味を抱いたのがきっかけです。昨今は音楽映画が増えていますが、その多くはアーティストのドキュメンタリー的なもので、ファンに向けた作品になりがちです。でも、せっかく映画を作るのであれば、広く誰にでも楽しんでもらえる作品にしたいですし、アーティスト自身もそう考えているはずだと思い、松居さんらと映画化に向けて動き出しました。また、クリープハイプの尾崎(世界観)さんがこの映画のコンセプトを気に入ってくれたのも大きかったです。松居さんとクリープハイプは、映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』でもタッグを組んでいて絆も深いですし、彼らのファンが持っている熱気は、今作で表現したいことにもピッタリでした。 ーー主演の4人は良い意味で素人感があって、リアリティがありましたね。 高根:そこに関しては、もっと著名な役者さんでやったほうがいいんじゃないかという声もありました。でも松居さんは、三浦透子さんを軸にして、あとはほとんど未経験の役者さんでやりたい、と。それで彼は、スマホの6秒動画アプリ『Vine』で人気のある大関れいかさんを見つけてきて、自ら出演オファーをかけて口説いてきた。彼女は当初、女優をやる気も興味もなかったそうですが、松居さんが実際に彼女と話して、映画に出ることを決心したそうです。真山朔さんは、オーディションの中ではある意味一番、役者っぽくなくて、押しも弱かったのですが、映画の中では主体性のない役柄の子でもありましたので、満場一致で選ばせていただきました。井上苑子さんは、もともと別のミュージシャンを起用する予定だったところ、なんとクランクイン2週間前に出演がNGになっちゃって、制作プロデューサーの林武志さんという方が、「この井上苑子さんって良いと思うんですけど……」という感じで、ウェブで探して見つけてくれました。その時点で彼女は、メジャーデビューが決まったタイミングだったらしいのですが、実は僕らはそういう情報を一切知らずにオファーしたんです。いま、彼女はちょうど音楽ファンの間でブレイクし始めていて、まるでタイミングを狙ったように見えるかもしれませんが、実はまったくの偶然なんですよね。 ーーなるほど。ドキュメンタリー的な撮り方の作品となったことについては? 高根:それに関しては当初からの狙い通りでして、僕もこれまでドキュメンタリーしか作っていませんし、松居さん自身も「全部手持ちカメラでやりたい」と言っていたくらいです。ただ、松居さんと尾崎さんが話し合う中で、全編手持ちは厳しいだろうということになり、客観的なカメラと主観の手持ちを混ぜようか、という結論になったんです。ただ、主観と客観が入り混じってしまうと、観る人に違和感を与えてしまうのではないかという心配もありました。でも、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映して、皆さんの感想を聞いたところ、そこはあまり気にならないということでした。
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ーーでは、ほかにどんな指摘がありましたか? 高根:面白いなと思ったのは、とある外国人の審査員の「この主人公の4人は最後まで何も成長していないですね」という指摘ですね。彼女たちが旅を終えて、始まりと同じ状態で元に戻って行くのは、よくわからないというんです。僕は、松居さんが表現するそういうリアリティがすごく好きなんですが、ひとによっては成長物語を求めてしまうのだな、と感じました。ひとは簡単に成長するものではないし、むしろ退化することもあるわけで、僕はそれでも別に構わないと思うんですけどね。そういうところがむしろ、刹那的でキラキラしているし、それだけでも充分、彼女たちは魅力的なんじゃないかな。 ーーそこは同感ですね、いつの時代にもあった普遍的なファン心理を描いていて、クリープハイプのファンではない人が観ても楽しめる作品に仕上がっています。 高根:この映画を単なるファン映画にはしたくない、ということは、宣伝の段階からかなり気をつけていましたね。普通だったらクリープハイプをもっと前面に押し出したかもしれないけれども、あくまで映画として、だれが見ても面白い青春映画だということをきちんと伝えようと、キャッチコピーからビジュアルの作り方までかなりこだわりました。もちろん、クリープハイプのファンにも観てもらいたいですが、場合によっては「何だ、この映画は」と思うところもあるかもしれない。ただ、お客さんの賛否があって映画は育つものだと思うので、どんな反応が来るのか楽しみです。

「継続可能なやり方で面白い作品を生み出す成功例を作りたかった」

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プロデューサーの高根順次氏。

ーー高根さん自身が映画に携わるのは、ディジュリドゥ奏者のGOMAさんの半生を松江哲明監督が描いた『フラッシュバックメモリーズ 3D』、アイドルグループのBiSとカンパニー松尾らAV監督のぶつかり合いを捉えた『劇場版BiSキャノンボール2014』に続き、3本目ですね。どちらもかなり話題となった作品ですが、いまは映画の仕事がメインとなっているのですか。 高根:そうですね……映画の世界では、劇場公開の作品を10本作ったとして、利益を出せるのはその中の1本か2本だけと言われていて、その少ないアタリ作品の利益でほかの映画を作っているんですね。先の2作品は低予算で作ったこともあり、ちゃんと収益化できたので、ここ最近は映画がメインといっても良いかもしれません。僕の場合、映画会社の人間でもないし、映画を作ろうとしていまの会社に入ったわけではないのですが、結果的にそうなっている状況ですね。僕はこれまでテレビの世界でやってきたけれど、それとはまったく違う種類のプレッシャーを感じています。テレビの場合、放送が終わった後にソフト化されるのはほんの一部だし、感想もツイッターなどでつぶやかれるくらいで、そのまま終わっていくけれど、映画の場合は一生残るもので、いたるところに評論家がいて、厳しい目で評価されます。だからこそ総合芸術として素晴らしいものだとも思うけれど、成功と失敗がはっきりしてる世界ですし、ちゃんと結果を出さなければ継続出来ません。今回の映画は前の2作に比べて、使う予算も桁外れに違うので、ちゃんとヒットさせなければいけないから、挑戦するのに躊躇はありました。 ーーなるほど。リスクヘッジの面でも、予算規模が大きいだけに難しい面があるのでは。 高根:そうですね。映画会社の場合、リスクヘッジに関してはスキームが確立されていて、豊富なノウハウがありますが、スペースシャワーは映画会社ではないので、新しいやり方を考える必要がありました。正直、『私たちのハァハァ』が黒字になるかどうかは、今の段階では分かりません。映画作りの素人が、そのリスクの大きさにたじろいでいるというのが、いまの状況ですね(笑)。でも、素人としてやってきたからこそ、できたこともたくさんあって、たとえば『フラッシュバックメモリーズ3D』みたいな作品は、映画会社にいたらおそらく作れなかった。 ーーそれは、どういった面で? 高根:『フラッシュバックメモリーズ3D』は、GOMAさんが交通事故にあって記憶を失う前と、現在の状況を3Dのレイヤー構造で表現した作品なのですが、普通に制作しようとすると編集だけで数千万円かかってしまうんです。それで、グーグルで3D編集について調べたら、格安で請け負ってくれる個人がいたので、頼むことにしました。でも、その人は技術的には編集ができるけれども、70分もの映像の編集はやったことがなく、マシンのパワー不足もあって作業が進まないんです。東京国際映画祭のコンペに出品するのにあわせて締め切りを決めたんですが、出来上がったのは映画祭の3日前の深夜でした。もし、その編集が間に合わなければ、GOMAさんや松江監督のこれからの人生に対するマイナスが大きすぎて、僕が土下座して済む問題ではなくなっていたでしょう。企画そのものが、まともな映画会社だったら通っていなかったと思います。 ーー聞いているだけで胃が痛くなりそうです(笑)。 高根:でも、結果的に非常に安い価格で3D映画を作ることができました。ほかにも大幅にコストカットをできたところがあります。映画は通常、DCPと呼ばれる上映用のデジタルデータを作らなくてはいけないのですが、映画以外にはまったく汎用性のないデータなので、2011年当時は業者に頼むとデータの変換だけで100万円もかかると言われました。結局、それなりの大手の会社と交渉して、なんとか安く仕上げてもらいました。そして、そのデータのコピーに関しては、ウェブでいろいろ調べた結果、どうやらLinuxのOSを使えばできるらしいということで、自分のパソコンにLinuxを入れてコピーしてみたんです。そうしたら、ちゃんとコピーデータができて、本来ならコピー1本15万円かかるところ、ほぼコストゼロで済みました。今ではアドビの編集ソフトにも「DCP書き出し」という機能がついてますし、数年間に100万円かかったものが、やり方次第で無料にもなってしまうのがこの世界で、たとえば宣伝や広告費にも、ドンブリ勘定な部分がたくさんあります。 ーーなるほど。では、そういう費用を抑えるやり方もあると。 高根:そうですね、配給宣伝費なども数千万かかるといいますが、内訳を詳しく見ていくと、先ほどのDCPのように、実はそんなに費用がかからないところがたくさんある。そうして無駄に大金をはたいて、しかも映画が転けたりしたら、企業も出資しようと思わなくなりますよね。だから『私たちのハァハァ』は、新しいタイプの製作委員会を作って、各社の利益構造も透明性が高いものにしました。参画しているのはスポッテッド・プロダクションズさんと、ユニバーサルミュージックさんと、もう一つ、エイベックス・ピクチャーズさんですが、それぞれの会社の権利関係を明確かつメリットがあるようにして、誠実な予算表を作ってやっています。もちろん、幹事であるスペースシャワーは一番お金を出資していて、リスクも一番高いのですが(笑)。従来の製作委員会のように、幹事会社がグレイ・ゾーンを作ってリスクヘッジしていくということも、ビジネスのやり方としては正しいとは思いますが、僕としては出資してくれた会社がかなりの確率でリクープし、継続可能なやり方で面白い作品を生み出す成功例を作りたかったので。
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ーー具体的には、今作にどれくらいの予算をかけているのですか? 高根:制作費や配給宣伝費など全部込みで2000万円ほどでやっています。その2000万円をペイしようと思うと、映画の上映だけで考えたら、おそらく3万人くらいの観客が必要でしょう。インディー映画でその数字を出すのは、かなり難しいところですが、レンタルやグッズの販売、さらにテレビの放映権などトータルで考えたら、なんとかできるのではないかと思います。予算の面では、文化庁が出してくれる補助金を狙う方法もありますが、あいにく低予算映画には使いにくい仕組みなのです。あれも不思議な制度で、インディペンデントなことや実験的なことをする映画を応援するために付くというなら理解できるのですが、“超”大手の会社のエンタテインメント大作にお金が出ることも多くて。しかも、本当はリクープしたら補助金は返さなければいけないのですが、ほぼ誰も返していない件が数年前にニュースになってました。補助金の元は税金ですから。映画というものは総合芸術だと思うけれども、その芸術の名のもとに甘えすぎているんじゃないか。そういう現状を変えようと努力している映画関係者もいますし、僕らも僕らのやり方で、メジャー作品では作れない企画で、さらに結果を出していく必要性を感じています。そうしないと、十何億円もかかるメジャー映画と数百万で製作されたインディー映画という二極化になってしまい、僕らが学生時代に見ていた、いわば“とんがった”イメージのある映画は、日本国内では適切な予算ではもうできないということにもなりかねません。 ーー日本映画のこれからを考えるうえでも、気概を持って良質なインディー作品を生み出していくのは大切なんですね。 高根:たとえば、スポッテッド・プロダクションズの直井さんや、松竹ブロードキャスティングのオリジナル映画製作プロジェクト(『滝を見にいく』(沖田修一監督)、『恋人たち』(橋口亮輔監督))は、そうしたことに意識的だと思います。特に後者は大手映画会社である松竹さんの中で、よくある大作映画のように原作や主役を先に決めて、監督はそのあとに決めるようなやり方ではなく、少ない予算でも監督主導の映画を作ろうというプロジェクトをやっているんです。そのうえで、やはり大事なのは、きちんと結果を出してビジネスとして継続していくことですよね。僕自身は、映画界全体を変えようなんていうつもりはまったくないけれど、少なくとも自分が関わる映画については、面白い作品を作ったうえで、ビジネス的にもきちんと結果を出していきたい。そもそも映画は監督ありきのものですし、素晴らしい才能だと思える監督の出す企画は、十中八九の確率で素晴らしいものなんです。でも、大きな会社の場合だと、莫大な利益を出さなければいけないため、通らない企画も多い。だからこそ、我々のような野武士軍団が、面白い作品を生み出せる監督との話し合いの中で出てきた企画を、できるだけスポイルせずに実現するということが、大きな意味を持ってくると思います。そのためにもプロデューサーとして「面白い映画だったけれども、お客さんは入らなかったね」ではなくて、次回作へつなげられる結果を出していきたいですね。 (取材・文=編集部) ■公開情報 『私たちのハァハァ』 9月12日、テアトル新宿ほか全国公開 監督:松居大悟 出演:井上苑子 大関れいか 真山朔 三浦透子 クリープハイプ / 武田杏香 中村映里子 池松壮亮 satellite blue metro 佐藤太一郎 茜チーフ 池浦さだ夢(男肉 du Soleil) 土佐和成(ヨーロッパ企画) 中村まこと 音楽・主題歌『わすれもの』:クリープハイプ (C)2015『私たちのハァハァ』製作委員会 公式サイト:haa-haa.jp

タモリのすべてがここにあった……マニア度高めの深夜番組『ヨルタモリ』が遺したもの

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フジテレビ『ヨルタモリ』公式サイトより
『ヨルタモリ』(フジテレビ系)が、9月20日の放送をもって終了する。30年以上にわたってお昼の顔として続いた『笑っていいとも!』(同)を2014年3月に終了させたタモリが、半年後に満を持して、夜の顔としてカムバックした番組だ。  舞台は、東京・湯島あたりにあるバー。宮沢りえがママを務める店に、タモリ扮する常連客が飲みに現れるという設定のトークバラエティだ。りえママと、タモリにまざって“ご近所さん”のゲストが入れ替わり立ち代わりやってくる。  ゲストの人選も、普通のタレントにとどまらない。高橋幸宏、U-zhaan、大友良英など、ミュージシャンも多い。大友は『あまちゃん』(NHK総合)の音楽を手がけたことでも知られるが、実はおよそ40年前に放送されていた『タモリのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)のハガキ職人でもあり、筋金入りのタモリファンだ。  マニア度の高さで知られる同番組には、東北弁を操る“吉原さん”というキャラクターがたびたび登場した。なんの説明もなく登場したものの、彼にはしっかりとモデルが存在する。 「岩手県一関市でジャズ喫茶『ベイシー』を経営する、菅原正二氏がモデルですね。タモリさんも所属した早稲田大学のモダンジャズ研究会の先輩にあたる人物です。ベイシーは蔵を改造した建物で、音響にこだわったお店です。タモリさんもよく訪れています」(週刊誌記者)  タモリとジャズのつながりは深い。芸名のタモリは、本名の森田(モリタ)を読み替えたものである。これは、銀座をザギン、寿司とシースーと呼ぶ、ジャズ業界の逆さ言葉から来ている。  番組内に挟まれる、ショートコントも、タモリの“密室芸”の世界が全開だ。 「タモリさんが、“四カ国語麻雀”をはじめとするインチキ語学ネタを作り上げたきっかけは、福岡時代に深夜にラジオをつけると、海の向こうから中国語や韓国語のラジオが聴こえてきたことによるものです。懐かしのネタを披露するのではなく、新ネタに挑戦しているのが、凄みを感じます」(同)  いわば『ヨルタモリ』は原点回帰であるとともに、齢70歳を迎えるタモリの新たなチャレンジの場でもあったわけだ。当初の契約通り1年での終了となってしまったのは残念でならない。復活の日を待ちたい。 (文=平田宏利)

『リスクの神様』3.7%、『恋仲』月9最低、『探偵の探偵』1ケタ連発! 大爆死のフジドラマ

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『リスクの神様』(フジテレビ系)公式サイトより

“今世紀ドラマ最低視聴率”(テレビ東京を除いたプライムタイムに放送された連続ドラマ)を更新してしまったEXILE・AKIRA主演の『HEAT』(フジテレビ系)。第6話で2.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)という驚異的な低視聴率を記録し、放送話数も短縮され9話で打ち切りとなってしまったが、現在フジテレビ系で放送中の別の連ドラ作品にも、暗雲が立ち込めているようだ。堤真一主演作『リスクの神様』は、最新の第9話が3.7%と、ワースト記録を更新してしまった。

 安定して2ケタを記録しているのが、いまや杏主演『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)のみという状況で、民放全局が“夏枯れ”と言われている今年の7月期ドラマ。そんな中、堤が16年ぶりに連ドラ主演を飾ることとなった『リスクの神様』は、初回から7.0%と散々な視聴率が続いている。