
撮影=河野英喜
『新宿スワン』『ラブ&ピース』と監督作が次々と公開され、いよいよ『リアル鬼ごっこ』が公開される。今年は“園子温イヤー”と言っても過言ではないほどだ。そもそも『リアル鬼ごっこ』といえば、2008年に初めて映画化されたのを皮切りに、5作目まで作られた定番のシリーズ。この人気タイトルを、園子温が完全なる我流で作り直してしまったのが、このたび公開される『リアル鬼ごっこ』なのである。原作や、これまでの劇場版とは別物と思ってもらって問題ない。
原作では「全国の佐藤さん」が鬼に追いかけられ殺されるが、園監督版『リアル鬼ごっこ』は、「全国のJK=女子高生」が正体不明の何者かに襲われ続ける。女性しかいない世界で、鬼から襲われ、逃げ、時に勇敢に戦うのがミツコ、ケイコ、いづみの3人の女子高生。作中で終始走り続けるミツコを演じたのが、園組初参加のトリンドル玲奈。女優としての活動の場が増えている彼女に、園監督の現場の様子や女優業への思い、趣味である歌舞伎鑑賞についてなど、率直な気持ちを語ってもらった。
――まさか、トリンドル玲奈さんが園子温監督の映画に主演するとは……。
トリンドル玲奈(以下、トリンドル) やっぱり日本を代表するすごい監督なので、私も驚きました。満島ひかりさんがすごく好きだったこともあって、園監督の『愛のむきだし』を見ていたんです。そのときは、まさか自分が園監督の映画に出演するとは思ってもいなかったですけど、「いつか出たいな」っていう思いは心のどこかにあった気がしますね。
――トリンドルさん演じるミツコは、正体不明の鬼から逃げるため、ずっとおびえながら走り続けていますね。
トリンドル 撮影前から、とにかく走るシーンが多いということは聞いていました。走る場所も、平坦な場所ばかりじゃなく山道もあるって。私はあまり運動が得意なほうではないし、アクション監督さんから「ケガをしないためにも、ちゃんとトレーニングをしたほうがいい」とアドバイスがあり、撮影が始まる1カ月ぐらい前から、走ったり、体幹を鍛えるようなトレーニングを教えていただいたりと、体力作りをしていました。トレーニングを始める前は全然走れなかったので、そのときに比べたら成長できたなって思います。

(c)2015「リアル鬼ごっこ」学級委員会
――ミツコの内面は、役作りが難しそうですよね。
トリンドル こういうふうに演じようとか考えなかったというか、とにかく想像がつかなくて(笑)。でも現場でミツコの衣装を着て、ミツコの顔で入ると、現場の雰囲気も手伝ってスッと役に引き込まれていきましたね。ミツコについては、園監督からの指示もあまりなかったんです。現場に入ってスタートがかかる直前に、「今はこういう状況だから」と説明してくださることが多かったですね。そもそも想像ができない作品だし、園監督ならではの世界観なので、直前に一言二言わかりやすい言葉で言ってくださるというのは、すごくありがたいなって思いました。
――画面のインパクトもすごいんですが、特徴的なセリフが多い作品だなと感じました。
トリンドル 「運命を変えるためには、自分が普段絶対やらないことを、自分が気づく前にやること」というセリフがあるんですが、私はそれが一番印象的ですね。それって、どういうことなんだろうって。私はどちらかというと、運命は自分で決められないものだと思っているんです。自分で決められないから、運命って言うんだろうなって。“普段絶対やらないことを、自分が気づく前にやってみよう”って、何度か実践したんですけど、そう考えている時点で気づいちゃってるんですよね(笑)。もう何年か自分の中で模索してみて、答えが出なかったら園監督に聞こうって思っています。
――トリンドルさんは、運命を感じたことってありますか?
トリンドル 私は本当にいろんなことに運命を感じますね。このお仕事をいただいて、今こうやってインタビューしていただいていることもそう。全部、運命なんだろうなって思います。もちろん、自分が「こういうお仕事をしたい」と思っていたから今があるけど、自分だけでは絶対にできなかったと思うので。人と出会ったり友達になったりすることは、全部運命なんだろうなって思っています。
――プライベートでは歌舞伎がお好きだそうで、意外な趣味というか。Instagramにも歌舞伎へ行ったときの写真をアップされてましたね。
トリンドル 歌舞伎のような芸能でも、食べ物でも、日本の文化って知れば知るほど好きになるし、興味が出るんですよね。福岡に住んでいるおじいちゃんとおばあちゃんの家に行くと、いつも朝から和食を作ってくれて、それがすごく好きだったんです。でも食以外に和のものに触れることってあまりなかったんですが、去年お母さんのお友達が初めて歌舞伎に誘ってくれて。行ってみたら、何もかもが素敵だなって思ったんです。目に入ってくるもの、聞こえてくるもの、全部に感動しちゃいました。

――初めての歌舞伎鑑賞、難しくなかったですか?
トリンドル いえ、難しかったです。学校では日本史じゃなく世界史を取っていたので、歴史にも詳しくなかったですし。内容は難しいし、何を言っているかわからないし。でも、誘ってくれた方の説明がよかったんですよ。確かに難しい演目もあるんですけど、ワイドショーに出てくるような俗な内容のものもあったりして。今でもありそうな人間関係の話だったりするんですよ。そういう人間くさいところが意外と多くて。そういうお話も歌舞伎になると、お上品に見える。そういうところにすごく惹かれました。今はもう、ひとりで歌舞伎を見に行くこともあるんですよ。
――好きな歌舞伎役者さんはいらっしゃいますか?
トリンドル 尾上菊之助さんなど、女形さんが好きですね。あの上品さに憧れます。
――ちなみに最近の歌舞伎界って、どう思われますか?
トリンドル 市川海老蔵さんのように、歌舞伎以外の舞台など新しいことに挑戦されている方がすごく多いですよね。自主公演をされていたり、全国を回ったり。きっと、もっともっとたくさんの方に見ていただけるようにって、役者さんたちもいろいろ挑戦なさってるんだろうなってすごく感じます。
――ドラマや映画に出演される歌舞伎役者さんは多いですから、これから共演する機会が増えるかも?
トリンドル 最近、NHK BSプレミアムの『ある日、アヒルバス』というドラマで片岡愛之助さんとご一緒しました。私、愛之助さんの歌舞伎を歌舞伎座で見たこともあるんですけど、今回のドラマでは全然違う雰囲気で演じられていて……びっくりしましたね。近くで見られてうれしかったです。
――園監督の現場を経験した女優・トリンドル玲奈のさらなる活躍、期待できそうですね。
トリンドル 女優のお仕事では、まだ目標を持てるような段階ではなくて……。こうやって役をいただいて、その役を演じて、監督からOKが出ることに、とにかく安心しています。それが私にとって一番うれしい、達成感を感じる瞬間ですね。

(取材・文=大曲智子)
●とりんどる・れいな
1992年、オーストリア生まれ。2009年、モデルとして芸能界デビュー。ソフトバンクモバイルのCMで注目を集める。現在、雑誌「ViVi」(講談社)モデルとして活動するほか、CMやドラマ、映画に幅広く出演中。主な出演作に、14年『呪怨 -終わりの始まり-』、ドラマ『ごめんね青春!』(TBS系)、15年『不便な便利屋』(テレビ東京系)などがある。現在、NHK BSプレミアムにてドラマ『ある日、アヒルバス』、TBSにてドラマ『37.5℃の涙』が放映中。

●『リアル鬼ごっこ』
監督・脚本/園子温
原作/山田悠介『リアル鬼ごっこ』(幻冬舎文庫・文芸社刊)
出演/トリンドル玲奈 篠田麻里子 真野恵里菜
桜井ユキ 高橋メアリージュン 磯山さやか
7月11日より全国ロードショー
<http://realonigokko.com>
(C) 2015「リアル鬼ごっこ」学級委員会