江戸時代の風俗と人情を描いた2作『駆込み女と駆出し男』『百日紅 Miss HOKUSAI』

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(C)2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会
 今週取り上げる最新映画は、江戸時代の風俗と人情を、豊かな季節感とともに描き出す2作品。実写とアニメという表現手法の違いこそあれど、時代を超える普遍的な価値と「思い」を現代に伝えようという気概が伝わる意欲作たちだ。  『駆込み女と駆出し男』(5月16日公開)は、井上ひさしの時代小説『東慶寺花だより』を原案に、『わが母の記』(2012年)の原田眞人監督が初めて手がけた時代劇。鎌倉の東慶寺は江戸時代、幕府公認の駆け込み寺として、離縁を求める多くの女たちを受け入れた。駆け込みの前に聞き取り調査を行う御用宿・柏屋で、主の源兵衛とともに、駆出しの医者で戯作者にも憧れる信次郎(大泉洋)は、鉄練りのじょご(戸田恵梨香)や豪商の愛人お吟(満島ひかり)の再出発を助けることになる。  芯の強さと向上心を秘めたじょご、繊細で愛情深いお吟、2人の対照的なヒロインを戸田と満島が熱演。大泉の軽妙なセリフ回しも作品世界にぴったりはまった。脇を固める樹木希林、堤真一、武田真治、山崎努らの演技も味わい深い。ロケ地となった姫路市の書写山円教寺は、原田監督が12年前に『ラスト サムライ』(03年)のロケで出会い、「いつかここで時代劇を」と誓った場所。歴史が刻まれた境内の建築や周囲の景観が映像に風格を添え、見応えある人情絵巻に仕上がった。  『百日紅 Miss HOKUSAI』(5月9日公開)は、漫画家で江戸風俗研究家でもあった杉浦日向子が昭和後期に発表した代表作『百日紅』を、『カラフル』(10)の原恵一監督がアニメ映画化した作品。江戸の町に暮らす葛飾北斎の三女・お栄は、父親と同じ浮世絵師として、美人画などで才能を発揮していた。そんなお栄の視点から、北斎の創作をめぐる逸話や、オンボロ長屋での風変わりな共同生活、自身の絵師としての試練と不器用な恋が語られる。  アニメーション制作は、原監督作では初となるProduction I.Gが担当。原作漫画と浮世絵の豊穣な世界を2Dアニメで再現しつつ、街並みや建物などにはパースペクティブを強調した3D描画を織り込んだ。穏やかな川面がにわかに荒れて、有名な北斎画『神奈川沖浪裏』の逆巻く波になるなど、アニメならではのダイナミックな表現が楽しい。主な登場人物の声は、杏、松重豊、濱田岳、高良健吾ら豪華俳優陣が担当している。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『駆込み女と駆出し男』作品情報 http://eiga.com/movie/80976/ 『百日紅 Miss HOKUSAI』作品情報 http://eiga.com/movie/80339/

既婚、子持ち、独身、仕事アリ――「Gina」の無邪気に残酷なオシャレ女子のヒエラルキー

<p> 「Gina」(ぶんか社)5月号。犬山紙子さんの「悲しき負け美女の口癖」が、先月号でついに30回を迎えたということで、今号は、スペシャル対談「犬山とあらさー独身女子(一部のぞく)の くだまく夜」へと拡大です。毎回楽しく読ませていただき、内容も同意することが多いこの連載。しかーし、1つまったくわからないのが、「負け美女」という単語。そもそもの所で引っかかっちゃうんですよ。今回、「あなたも負け美女?」という10項目にわたるチェックリストがついていました。早速やってみたところ、筆者、なんと7つ該当。ただ、1つめが「年齢が28歳以上である」から始まり、他項目でも美女度はほとんど測ってない模様……。負け女度が重視されているのでしょう。うーん、ますます「負け美女」の言葉が飲み込めません。<br /> </p>

被害総額4,400万円! 自称「少女時代の専属スタイリスト」が業界慣例を悪用してボロ儲け

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『THE BEST (通常盤)』(EMI Records)
 昨年9月のジェシカ脱退以降、8人で活動を続けるK-POP界のスーパーガールズグループ少女時代。ユナが俳優イ・スンギと、スヨンが俳優チョン・ギョンホと、ティファニーが2PMのニックンと、テヨンがEXOのベクヒョンとの熱愛が発覚したことから、最近は韓国メディアから“熱愛時代”とも皮肉られている。さらに5月にはユリが阪神タイガースの抑えの切り札、オ・スンファンとの熱愛を認め、ますます“熱愛モード”まっしぐらだが、その人気は衰えることを知らない。日本では4月22日にはニューシングル「Catch Me If You Can」の日本語バージョンがリリースされ、26日にはさいたまスーパーアリーナで日本初のファンクラブイベントが開かれるなど、相変わらずの人気ぶりだ。  ところが最近、そんな少女時代の人気を利用して悪事を働いていた人物がいたことが明らかになった。ソウルの水西(スソ)警察署によると、かつて少女時代の専属スタイリストのアシスタントを務めていたA氏(26歳・女性)が、自分は少女時代の専属スタイリストであると名乗り、知人たちから高額の金を騙し取っていたというのだ。  その手口は手が込んでいる。A氏はまず、友人や知人たちに、自分が少女時代のスタイリストであることをアピール。名刺には大手芸能プロダクションのロゴが入り、自身のSNSには少女時代のメンバーたちと撮った記念写真などを多数アップし、「少女時代のメンバーたちが番組出演やライブで着た衣装、バッグ類、アクセサリー類などを定価よりも安い価格で購入してあげる」と持ち掛けたという。A氏が着目したのは、「協賛を受けた衣装を紛失した場合、定価の一部を賠償すればいい」という韓国のスタリスト業界の慣例。つまり、その業界慣例を悪用して、衣装を返却せずに紛失扱いにして、それを友人や知人たちに転売していたわけだ。しかも、昨年7月には、芸能人に衣装などを仲介する会社も設立。ここを拠点に協賛メーカーから衣装やアクセサリーを仕入れ、友人や知人に販売していたというのだ。しかも、衣類やアクセサリー類だけではなく、自分を介すれば自動車やアパートまで定価よりも安く購入できるとうそぶいていたらしく、その手法で2013年から最近までで12人の友人・知人たちを騙し、総額4億ウォン(約4,400万円)を騙し取ったというのだ。  騙された被害者たちの訴えでA氏は5月3日に立件されたが、警察によるとA氏と被害者側の主張が異なっているため調査が必要とのこと。一介のアシスタントにすぎない女性からその名を悪用されてしまうのだから、少女時代のメンバーたちからすれば寝耳に水だろう。  だが、少女時代の名が詐欺に悪用されるのは、実は今回が初めてではない。昨年6月にも、少女時代の名を使って詐欺行為を働いた50代男性が警察当局に拘束されている。この50代男性は13年5月に、知人3人に「少女時代がマレーシアでコンサートをする予定なので、投資をすれば収益の半分を渡す」と持ち掛け、計6億ウォン(約6,600万円)を騙し取った。当時は少女時代がマレーシアでコンサートする予定はなく、ウソだったことが判明。被害者が告訴し、この男性は詐欺容疑で立件されている。  その名を利用されるのは人気がある証拠ともいえるが、犯罪にまで悪用されてしまうのだから、少女時代にとっては迷惑極まりない話だろう。少女時代、受難の時代はまだまだ続く!?

『スッキリ!!』出演陣にそっぽを向かれた上重聡アナの屈強なメンタリティの由来

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『スッキリ!!』(日本テレビ系)公式サイトより

――毒舌コラムニスト・今井舞が、話題のアノ人物やアノニュースをズバッとヒトコトで斬り捨てる!

◎先達発見
 アナウンサーが、生番組内でギネス記録達成! 本来ならば、もっとキャッキャキャッキャ身内で盛り上がれたネタだろうに。上重聡が『スッキリ!!』(日本テレビ系)内で達成って話だからなぁ。「2人組になって、30秒間背中合わせでボールの受け渡しをする」という、名前もつけらんないような競技だし。挙げ句、翌日に中学生と芸人がタイ記録を樹立。一緒に記録を作った相手の青木源太アナに、「もう一度挑戦しようと誘ったら、もういいって言われました」と自嘲する上重。流れで隣の加藤浩次に持ちかけるも「勘弁してください」。ガラガラガッシャーン!

GACKT、メイウェザー対パッキャオ戦に“招待”は嘘!? 「高額チケット買ったはず」と関係者談

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強がりなんだから~!

 VIP扱いは本当か――。ミュージシャンのGACKTが、今月2日に米ネバダ州ラスベガスで行われたWBC、WBA、WBO世界ウエルター級の統一戦、フロイド・メイウェザー対マニー・パッキャオ戦のリングサイド席に招待され、観戦したという。

 GACKTはアメリカ行きの機内で、ブログマガジンの記事をアップし、「ベガスに行くんだよ。ラスベガス。招待されたんだよ。パッキャオとメイウェザーの試合に」と告白。テコンドーの有段資格を持つなど、格闘技全般に造詣が深いGACKTは、両者の“凄さ”を説明した上で、「ボクも小さい頃、ボクシングをやらされてたから 試合を見ると、『コイツのテクニックは半端ないなぁ…。ヤバいなぁ…踏み込みのタイミングが…』とかって玄人目線になってしまうんだよ」とつづった。

男性が語るセックスはなぜこんなにもつまらないんだろう?

【messyより】

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『GQ JAPAN 2015年 06 月号』コンデナスト・ジャパン

 男性ファッション誌『GQ』2015年6月号(コンデナスト・ジャパン)が「日本人1000人のセックスライフ」という特集を組んでいます。セックス特集といえば『an・an』(マガジンハウス)のものが有名。男性誌でセックス特集というのは写真週刊誌やゲーセワ実話雑誌以外では珍しい気がして手に取ったんですが、これがガッカリするぐらいつまらなかった。『an・an』も大概ですが、これは一般男性のセックスに対する想像力の貧困を示しているのではないか、と思わされる内容でしたね。

 今回の号に限らず高級腕時計に、高級車、高級海外ブランド、最新電子ガジェット……と男性が好きそうなものの紹介で固めた『GQ』に男性的価値観が支配的なのは当然なのかもしれませんが「多くの男性がセックスに興味津々なのは、紛れもない事実」と定義してしまっているところがまず問題です。特集で紹介される、54の質問に対する男性1000人の回答結果も、すべて「男ならセックス好きなの当たり前でしょうが!」というステレオタイプばりばり。だから、セックスへの関心が低くなっていると示唆されるデータ(いわゆる草食化現象)が出てくると「これは大変!」、「男なのにセックス嫌いなんてどうなっちゃってるの?」と論じる方向に進む。すべて計算どおりです。

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“最後の砦”佐藤健ドラマ『天皇の料理番』が、まさかの急落……TBSはドラマ枠をさらに削減へ!?

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 TBSの連続ドラマが、またもや窮地に追い込まれている。  初回平均視聴率11.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)でスタートした同局の山下智久主演『アルジャーノンに花束を』は、第2話で7.9%に落ち込んでからというもの、最新話まで1ケタ続き。さらに、木村文乃主演『マザー・ゲーム ~彼女たちの階級~』が全話1ケタであるほか、元AKB48・大島優子主演『ヤメゴク ~ヤクザやめて頂きます~』にいたっては、有名監督の堤幸彦氏が演出を手掛けるも6.0%にまで落ち込んでいる。  TBSの連ドラがことごとくコケる中、先月26日にほかの連ドラより一足遅くスタートした佐藤健主演『天皇の料理番』は、「TBSテレビ60周年特別企画」を冠に、異例ともいえる6カ月の長期撮影を行った意欲作。主役級の豪華キャストを揃え、海外ロケを行うなど制作費もそれなりの大作だ。  結果、初回スペシャルは15.1%と高視聴率を記録。しかし、第2話で11.4%にまで急落し、最新話の比較では堺雅人主演『Dr.倫太郎』(日本テレビ系)や、SMAP・木村拓哉主演『アイムホーム』(テレビ朝日系)を下回っている。  TBSといえば、全話平均視聴率において、昨年4月期に14.5%を記録した唐沢寿明主演『ルーズヴェルト・ゲーム』を最後に、2期連続で“全ドラマ1ケタ”という残念な結果に。前期は、生田斗真&小栗旬主演『ウロボロス~この愛こそ、正義。』、西島秀俊主演『流星ワゴン』が10%台と若干の回復を見せたが、同局についた「連ドラ不調」のイメージは拭えないままだ。 「TBSにとって、『天皇の料理番』が今期の“最後の砦”だった。昨年の韓流ドラマ枠『韓流セレクト』の終了に続き、今年3月には月曜夜8時台の連ドラ枠を廃止したTBSですが、すでに局内には『ドラマでは数字が取れない』という空気が充満。さらなる連ドラ枠の削減が検討されるでしょう。おととし、『半沢直樹』というモンスター級のヒット作を生んだTBSですが、一部スポンサーからは『あそこから何か学べなかったのか?』と溜め息が漏れているとか」(テレビ誌記者)  全体的に低迷気味の今期の連ドラにおいて、特に不調が目立つTBS。またもやヒットを生みだせないまま、今期が終わってしまうのだろうか?

「自分がどう見えるか」彼と街の視線を気にする「美人百花」の重すぎるファッション観

<p> レビューを始めて今回で4回目。徐々に「美人百花」(角川春樹事務所)という女性誌がなんたるかが掴めてきたのですが、やっぱり「美人百花」はどこまで行っても、「自分がどう見えるか」が一番重要なのだと感じさせられます。例えば、「大好きな彼とお出かけしよう♪」というページには、「シャレ感と可愛さを両立するパンツルックで彼と街の視線を独占!」「絶景にテンションUP!はしゃいでも美人に見えるシャツが心強い味方」といった言葉が踊っています。やはり彼や街の人から、自分がどう見えるかが大事なようです。<br /> </p>

クリス・ブラウン、帰宅後に全裸の女性ファンと鉢合わせ!

<p> 2005年にデビューし、米ヒップホップ・R&B界の新鋭歌手として瞬く間にスターの座に上り詰めたクリス・ブラウン。しかし、09年に当時熱愛していた歌姫リアーナに暴行した容疑で逮捕され、有罪判決を受けてからイメージはガタ落ち。保護観察中の13年10月にも写真を撮ろうとした一般男性を殴り、またお縄に。14年6月に出所した後は、精神的に支えてくれたモデルのカルーシェ・トランとのゴールインも近いとウワサされるようになったが、今年3月に隠し子がいたことがバレてしまい、破局。DNA検査で100%自分の子だと判明した娘への愛着はすさまじいもので、SNSに娘の写真を投稿しまくるなど親バカを炸裂。最近になり、着信拒否されていたカルーシェとも無事復縁したと伝えられるなど、相変わらずのお気楽人生を歩んでいる。</p>

横浜名物“帽子おじさん”のヤバすぎる過去にギョーテン!

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珍奇なものをこよなく愛するライター・北村ヂンが、気になったことや場所にNGナシで体当たり取材していく【突撃取材野郎!】。第22回は、横浜名物の帽子おじさんに会ってきました。  横浜近辺のイベントなどによく行く人だったら、一度は目撃したことがあるんじゃないかという名物「帽子おじさん」。  お手製の派手すぎる帽子をかぶって街中を練り歩いているんですが、インパクトありすぎなビジュアルだけに、遭遇してもちょっと話しかけづらい……。  そんなおじさんが、生誕80年を記念して個展『頭上ビックバン!帽子おじさん宮間英次郎 80歳記念大展覧会』を恵比寿のNADiff Galleryで開催中(現在は終了)ということで、ボクが代わりに帽子おじさんこと宮間英次郎さんに直撃取材してきました! あの愉快な帽子誕生の裏には、意外な事件があった!? ■内向的な子どもだったね ――「横浜の帽子おじさん」としておなじみですけど、生まれは三重県なんですよね。 「うん、伊勢のほうね。あの辺は旅館が多かったから、ウチの親父は戦前、女中さんたち相手に小間物屋というか、今でいう化粧品屋みたいなことやってたんだよ。でも、戦争で呉の海軍に徴兵されちゃって。広島に原爆が落ちた時には、たまたま鳥取だか島根だかに軍の物資を取りに行ってて助かったんだけど、ほかの人たちはほとんど死んじゃったらしいよ」 ――いきなり意外すぎる話からスタートしましたね。おじさんは、どんな子どもだったんですか? 「終戦して親父が帰ってきても、もう小間物屋なんて商売にならないから、夏はアイスキャンデーを売ったり、冬は水飴を売ったり、なんでもやってたんだよね。親がそういうことをやってるのって、子どもたちからすると、からかいの対象になっちゃうでしょ? おじさん、子どもの頃は体も小さかったから、いじめに遭ってたんだよ。もう学校もイヤになっちゃって、いつも下を向いているような内向的な子どもだったね」 ――内向的!? 今はこんな格好してるのに! 「いじめるほうは面白いだろうけど、いじめられるほうとしては本当にツラかった。だから、早く大人になって仕事をしたいと思ってたね。勉強もできなかったし、社会に出て自由になりたかったんだよ。それで中学を出たんだけど、まだ15歳だから何をしたらいいかわからなくて、最初はイヤイヤ親父がやっていた行商の仕事を手伝ってたんだけどね。それから17~8の頃、名古屋に出て行って……やっぱり若い頃ってバーテンとかが格好いいと思うでしょ? それでバーで働くことになったんだけど、なぜかボーイをやらされて」 ――バーテンじゃないじゃないですか。 「最初っからボーイをやらせるつもりだったのかなあ~? まあ当時は水商売やってる連中なんて、まともな人はいないわけよ。住み込みだったんだけど、布団がカビてるようなひどい部屋で……。すぐ辞めて『人生は、なんて厳しいんだ!』って思ったね」 ――いきなり挫折しましたね! 「それで、今度は自衛隊でも入ろうかって、京都の宇治駐屯地に入って訓練を受けたんだよ。体は細かったけど、それなりに体力はあったから、鉄砲の撃ち方とか、ほふく前進とかはついていけたんだけど、勉強が苦手でね……。ヤードやらフィートやら山の中で自分の居場所が確認できるかとか……いくら訓練を頑張っても、試験に受からないといつまでたっても二等兵なんだよ。それでイヤになって辞めちゃって」 ――挫折しますねぇ~。……それからどうしたんですか? 「実家に帰って、しばらくブラブラしていたんだけど“やっぱり仕事ないしなー”って、また自衛隊に入ろうかって思ったんだけど、入隊試験に学科があるから自信がなくて……」 ――えっ、一回受けた試験なんですよね? 「それでも自信なかったからさぁ~。弟を隣に座らせてカンニングしながら受験して、なんとか合格したんだけど、25歳の年齢制限に引っかかって入れなかったんだよね」 ――それ、受ける段階でわからなかったんですかね? 「数字弱いのに、わかるはずがないよ! それから大阪の西成に行って、日雇い仕事をやってブラブラしてたんだよね。当時は景気もよかったから、仕事がいっぱいあったんだ。一日働いたら疲れちゃうんだけど、日雇いだから次の日休んでも構わないし。あの頃、一日働けば8,000円くらいもらえて、西成のドヤは1泊550円とかだったから、たまに働くだけで全然生活できるんだよ。そんな自堕落な生活をしているうちに、競艇を覚えて……。西成から住之江に行ったり、尼崎に行ったり、琵琶湖に行ったり、グルグル回ってたね」
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3月21日~ 4月24日まで恵比寿のNADiff Galleryで行われた「頭上ビックバン!帽子おじさん宮間英次郎 80歳記念大展覧会」。どうにもこうにも目がチカチカします……
■痴漢をやめて帽子の世界へ ――それがいくつくらいの頃なんですか? 「30歳くらいかな? そんなことをやっているうちに、ちょっと道を踏み外しちゃってね。おじさん、子どもの頃から奥手だったから、ずーっと友達がいなかったんだよ。友達がいれば、道を外れそうになっても『そんなこと、やめたほうがいいよ』とかいさめてくれるじゃん。でも、友達いなかったら関係ないからね」 ――で、どんな道を外れたことをやってたんですか? 「要するに……痴漢だね」 ――痴漢! 「こう見えて昔は、結構いい男でモテたわけよ。中村錦之助とかそういう、のっぺりした顔が美形ってことになってたんでね。だから、映画俳優にでもなれるんじゃないかと思ってたの。でも蓄膿症の手術したら、顔の形が変わっちゃって……。映画俳優になっていじめていた奴を見返してやろうと思っていたのに、これから青春だっていう時期に、醜い顔になっちゃったんだよね。女だったら自殺しているよ。元の顔に戻らないとわかった時点で、自暴自棄になっちゃったんだ」 ――だから、痴漢しちゃったってことですか? 「まあそうだね。心が弱かったから仕方ないやな。この頃から、人生あきらめていたと思う。ギャンブルやって負けたら、次の日働かなきゃいけないでしょ? 心がカサカサしちゃうのね。あと、若い頃の性欲の勢いに負けてしまったんだろうね」 ――……。 「それから、東京の山谷、大阪の西成、名古屋の笹島、横浜の寿町……ってドヤ街を転々としながら日雇いをやって、痴漢もやって。旅の恥はかき捨てっていうじゃん。そういう感覚だったね」 ――痴漢で捕まったりはしなかったんですか? 「捕まった! うすうす警察にマークされていそうな感じはしていたけど、警戒心が足りなかった。目白だか高田馬場だかの駅で捕まって。“もうこんなことしてちゃダメだ”って、60歳手前くらいでキッパリ足を洗ったから」 ――随分長いこと痴漢してましたねぇ! 「捕まった後は本当に死ぬほど悩んで後悔して、一生後ろ指さされ、さらし者になって生きるよりも死んだほうがましだと思ったけど、なかなか自分の命を絶つことはできない……。ただ、悪いことは悪いことだけど、人を殺したわけじゃないからね。女の人から忌み嫌われるのはわかるけど……男の人なら少しはわかるでしょう?」 ――ま……まあ~。 「まあ、そういうことで痴漢からはキッパリ足を洗って、それから、こういう格好をするようになったんだよ」 ――!? 唐突すぎて意味がわかりませんけど、痴漢の代わりに帽子をかぶりだしたと? 「死ぬ度胸がなければ、いっそ開き直って? それまでは悪いことしてたけど、いまは更生している。これからは真面目にやろうという意思表示だよね。まあ、逆効果かもしれないけど」 ――は? 真面目にやろうという意思表示!? 「帽子おじさんをやりだしてから、初めのうちは『ちんどん屋』なんて呼ばれていたけど、だんだんと帽子が複雑になっていってからは、芸術的になったってわけじゃないんだろうけど、ちょっと上品な感じになってきたのか、悪口は少なくなってきたね」
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せっかくなので、記念撮影
■帽子は土日祭日、イベント時限定 ――最初の頃は、どんな帽子だったんですか? 「最初はもう簡単に、拾ったカップラーメンとかヤキソバの丼をかぶってみたりさ。それから、造花とか刺してみたり、もうちょっと派手にするなら土台が必要だなと思って、蛍光灯のかさとかを使うようになって……。アレだったらいっぱい載せられるでしょ? さらに金魚鉢をくっつけてみたり、いろんなことをやったね」 ――横浜近辺でよく見かけますけど、普段からこの格好をして出歩いているんですか? 「普段はしてないですよ。土日祭日とか 野毛の大道芸とか、隅田川の花火とか、そういうイベントの時にならするけど」 ――あ、そういうもんなんですね。最近、横浜にもうひとりの帽子おじさんが出没しているって知ってますか?
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おじさんの帽子コレクション
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「あー、知ってる知ってる。アレは私より10歳くらい若いヤツでしょ? アレはホント、パフォーマンス、目立ちたがりだな。自分の自慢しか言わないの。帽子も、ちんどん屋みたいに派手で、着物なんか着て自転車に乗っているよ」 ――やっぱり、真似されたなっていう意識はあるんですか? 「それはあるわな。なにしろ、目立ちたがりだもん。おじさんは、写真を撮りたければ別にいいですよっていう感じだけど、アレの場合は自分から積極的に写真撮られに行ってるから!」 ――おじさんの場合は、目立ちたいということでやっているわけではない? 「目立ちたいのも半分くらいあるけど、みんなに楽しんでもらいたいとか、まあいろいろと複雑な感情があるわな。でも、アレほど目立ちたがりじゃないですよ」 ――ちなみに、帽子の数はいくつくらいあるんですか? 「十何個とかかなぁ~? 今まで30くらいは作ってるけど、作っては壊しってしてるから残ってないんだよな」 ――この帽子が、海外とかではアートとして見られているということに関しては、どう思いますか? 「アートっていうのは申し訳ないね。そもそも、アートが何なのかわらないからね。周りの人たちがアートだって言ってくれるけど、コレが『アット』驚くような面白いもんかなー? ……って。まあ、自分からアートだって大声で言わけじゃないけど、周りが言ってくれる分には構わないよね」 ――それじゃ最後に、これから作ってみたい帽子は? 「いや、もうネタ切れだな。もう限界でしょ、これくらいで。これ以上いろいろと載っけたら、重くなりすぎちゃってかぶっていられないもん。まあ、あくまでも材料がそろったら作るっていう感じだね。できたら作るし、できなければ自然消滅ですね。そんなことより、競艇で金儲けて、世界一周とまでは言わないけど、アジア旅行くらい行きたいね!」 ***  痴漢をやめたから帽子を作りだした……という理屈はまったくわからないけれど、それが海外でアートとして認められちゃうというのはスゴイ。「天然」な人のすごみを感じますな。 「キンキンも石原裕次郎も同級生だけど、みんな死んじゃった」という帽子おじさんですが、まだまだお元気そう。競艇もいいけど、帽子の新作もドンドン作ってもらいたいところです!
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(取材・文・イラスト=北村ヂン)