
『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』
【リアルサウンドより】
嵐が日本一の男性アイドルグループとなった理由を、音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンスという4つの視点から読み解いた書籍
『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』が、4月16日から17日にかけて、全国書店やネット書店で発売される。同書はリアルサウンド編集部が制作を手がけ、青井サンマ氏、柴 那典氏、関修氏、田幸和歌子氏、成馬零一氏、矢野利裕氏など、嵐に詳しい気鋭の評論家・ライターが寄稿。嵐の魅力を多彩な角度から解き明かしている。
書籍の発売に先がけ、先日公開した
【嵐が次にめざす方向性とは? “日本一のエンタメ集団”を徹底分析する書籍登場】【嵐の楽曲はどう“面白い”のか? 柴 那典×矢野利裕がその魅力を語り合う】【嵐がジャニーズの後輩に与えた影響 各メンバーの姿勢はどう引き継がれていったか(前篇)】に続き、嵐の各メンバーがジャニーズの後輩たちに与えた影響を、人気ライターの佐藤結衣氏が読み解いたコラムの後篇をお届けする。(編集部)
一生懸命さが実を結んだ相葉雅紀
いつでも体当たりで天真爛漫。狙っていないのに周囲に笑顔を呼び起こす、純朴で素直な人。相葉を象徴するのは、そうした言葉ではないだろうか。肩肘をはることなく、目の前にあることに対して常にポジティブに取り組むのが相葉という人間だ。例年、京セラドーム公演のさい、共演するバンドメンバーやスタッフや後輩のJr.たちに、たこ焼きを焼いて振る舞っていたなどというエピソードが多いのも、相葉らしいところ。何歳になっても少年の心を忘れない相葉の行動は、芸能界だけではなく社会のなかでも珍しいだろう。
だが、その無邪気な姿は、アイドルというきらびやかな世界の中で、いつも素を見ているような安心感を与える貴重な存在だ。バラエティ番組『天才!志村動物園』でも、当初パネラーとしての出演のみだったにも関わらず、体当たりロケが好評で司会に抜擢された。動物と触れ合うための道具や小学生の自由研究のような実験を、いつでも前向きにトライしている姿は、バラエティ出演のよい例として後輩たちに映ったはずだ。
そして、現在『ヒルナンデス!』にレギュラー出演している有岡大貴(Hey!Say!JUMP)は、まるで相葉の若きころを見ているかのような感覚になる。ロケ先で店舗の撮影交渉に挑んだり、ほとんど経験のない食レポに勢いでチャレンジしたり。懸命にミッションをクリアしようと挑む姿が、好感を呼んでいる。
そして、誰よりも自分自身が楽しんでしまっているというのが、彼らの強み。どんなムチャぶりでも、誰かが喜んでくれるのならと一生懸命なのだ。
相葉ががんばればがんばるほど、そして徐々に成長して報われるところが見えると、視聴者もなぜか救われた気持ちになるのだ。それは、一見「ふだんの生活で見つけたイケメン」という身近な存在に思われがちなところに要因があるのではないか。「私の知っている人」、「私が見守ってあげなければ」という気持ちが芽生えるような気がする。
しかし、誰からも愛されるキャラクターのなかには、たしかにひとりの男性としての実力を持ち備えているのが、相葉のにくいところ。歌えば、技術ではないエネルギーや色気を感じるし、芝居をすれば「こういう人いる」と思わせるほど、自然と世界観に溶け込む。ストーリーにすんなりと入れる魅力的な演技をするのだ。
いつもまわりを笑顔にしたいという姿勢が、メンバーを、共演者を、そして見ているすべての人を巻き込んでいく力に変わる。相葉のアイドルという仕事に対する姿勢が、何歳になっても、そしてどんな状況であってもブレないのはそういう理由だろう。相葉の姿を見ていると、アイドルの基本とも言えるそのスタンスこそが最大の武器だといえる。おそらく相葉自身の成功は、純粋にトップアイドルを目指す後輩たちにとっても希望の光になっているに違いない。
独自の視点で世界のトビラを開けた二宮和也
二宮は、その演技力でハリウッドのクリント・イーストウッド監督に「類まれなる才能」と評された実力者。映画「硫黄島からの手紙」で、ジャニーズ初の日本アカデミー賞候補に選ばれるなど、華々しい経歴を持つ。さらに、これまで数々の映画やドラマ、舞台に出演し、そのたびに監督やプロデューサーから絶賛されている。ところが、二宮自身は芝居に特化するつもりはないという。その理由を、監督や共演者とのパワーバランスを考えてのことだとか。アイドルでいることこそが、自分が芝居をしていく上でとても大切なのだというのを俯瞰しているのだ。このバランス感覚こそが二宮の大きな魅力だ。
二宮は、つねに独特な感性で人との距離感を正確に把握しているように思える。ゲストを迎えるトーク番組では空気を敏感に察知してツッコミを入れたり、ときには大御所のゲストにタメ口をきいたりする。一見、自由気ままに振舞っているようだが、それは相手の微妙な変化に気がつけるからこそできること。気づけば彼の作り出す空気に周りが寄っていくというスタンスは、どこか玉森裕太(Kis-My-Ft2)や橋本良亮(A.B.C-Z)につながっているように思える。
また、二宮はリーダーの大野との親密な関係が「大宮」コンビとしてよく話題になる。コンサートでは二宮が大野のおしりを触ったり、キスをしたりと、とにかく仲の良さを感じさせる行動が満載なのだ。雑誌のインタビューでもお互いを思い合うようなコメントも多くあり、コンビとしての相思相愛感がファンにはたまらない。そんなふたりがくっつくたびに、ファンからは大きな歓声がわくことから、メンバー同士のボディタッチはファンに喜ばれるという文化がジャニーズの中に根づいたように思える。そこからHey!Say!JUMPの「SUPER DELICATE」での山田涼介と中島裕翔、Sexy Zoneの「King&Queen&Joker」での佐藤勝利と中島健人が濃厚にに絡み合う振りつけが導入されたのも、少なからず彼らの影響があるのではないだろうか。
そんなファンが心躍らせるような絡みを見せる一方で、趣味のゲームに没頭して休日が1日つぶれるなど、私生活がアイドルらしからぬ点を披露するのも、バランス感覚に優れた二宮ならでは。一説には、ゲームに集中していると思いきや、周りの会話はしっかりと聞けているという驚異的な能力も持っているとか。そんな器用な二宮はバック転や手品など特技をいくつも持っているのだ。多彩な趣味があるという意味では、中島裕翔(Hey!Say!JUMP)のドラムや中島健人(Sexy Zone)のピアノにも同じことが言える。コツコツと自分の興味を持った世界を追求し、気づけばプロ並みの腕前を習得。そして自己表現の一つとして活かしていくというスタイルだ。
二宮も、実に多くの楽器を弾きこなし、作詞作曲にも精力的に取り組んでいる。自分では、あまり後輩との関わりはないというが、薮宏太(Hey!Say!JUMP)や、ドラマ「流星の絆」で共演した錦戸亮(関ジャニ∞)とは個人的にご飯に行く仲だそうだ。彼らに共通するのも自ら歌を作れるということだ。自分たちが表現したいものを、イチから作っていくという感覚を、後輩グループたちに示した貴重な存在だといえるだろう。
王子と裏方の2つの顔を両立させた松本潤
すっと通った鼻筋、長いまつげ、凛々しいマユ毛、嵐の中で最も美しいと評されるのは松本だ。その浮世離れした甘いルックスから『金田一少年の事件簿』や『ごくせん』、『バンビーノ!』など、マンガが原作となったドラマで大活躍。とくに、『花より男子』ではドラマアカデミー賞主演男優賞を受賞するなど、まさに当たり役だった。女子なら誰もが夢見る王子様のようなキャラクターを演じることは、ジャニーズとして活躍するすべての後輩の憧れ。しかも、自分らしく個性豊かに演じる松本に、少しでも近づきたいと願う後輩も少なくない。松本と同じく『金田一〜』を主演した山田涼介(Hey!Say!JUMP)もそのひとりだ。
だが、松本の魅力は端正な顔立ちや抜群のスタイルをだけではない。その外見の美しさを持ちながらも、裏方に徹することができるのだ。嵐としてデビューした次の年からすでにコンサートの構成をプロデュース。全体を俯瞰で見られる能力がずば抜けているのだ。受け身ではなく、自ら発信していくスタイルは後輩たちにも大きな刺激になったはずだ。なかでも、佐藤勝利(Sexy Zone)に近い姿勢を感じる。佐藤も構成や演出を考えることが好きで、これまでもソロコーナーを中心に手がけてきた。グループの中では年下でありながらも、自分の見せたいものに対するこだわりや広い視野でのモノの考え方、先輩たちのステージから多くのアイデアを吸収するスタイルが松本と似ている。
また、日ごろから嵐としての立ち位置を一歩引いて見ることができるからこそ、相手に応じてギャップのある態度を見せることもできる。気の許せる仲間といるときはアゴが外れるほど大きな口を開けて笑うし、旧知の仲である生田斗真いわく「さみしがりやで、なかなか(飲みの場から)帰りたがらない」という話もテレビで暴露されてしまうのもいい例だ。
さらに、メンバーといるときは末っ子らしい甘えんぼうな一面も持ち合わせており、真面目で気を使いすぎた結果、少し天然なところもある。そんな完璧を想像させる外見とは裏腹に、甘えんぼうで人間味あふれる一面があるのが、ファンには嬉しいうれしいギャップなのだ。山田も松本同様、容姿端麗の美青年だが、メンバーから「カッコつけすぎ」、「やることが普通」などツッコまれるところがある。また休日にもメンバーと遊びに行くことも多く、さみしがりやなパーソナルな部分も通じるものがあり松本を目指しているというのもうなずけるところ。
ヒーロー役をこなす王道のイケメンでありながらも、裏方の仕事に徹したり、人間らしい部分を見せているところは、グループを背負って立つポジションの後輩たちにとって目標となっているのだ。
グループ愛という魅力を確立させた嵐
嵐の5人はデビューからメンバーがひとりも脱退することなく、ともに成長してきたグループ。しかも、メディアへ露出する頻度や歌うパートなど仕事量に対する格差もない。全員が対等な立場で意見を言い合える自然な付き合いがジャニーズでは珍しい特徴だ。たとえば、5人の中からランダムに2人ずつの組み合わせをしても、それぞれの関係性が成立している。いざこざや不仲とは無縁だ。「ツアー先で一緒にお風呂に入ることも珍しくない」など、舞台裏でもメンバー間の仲睦まじさを感じさせるエピソードが豊富。さらに、どの時代を切り取ってもその絆が壊れたことがないので、ファンとともにその歴史を笑顔で振り返れるのだ。
嵐は、現在のような人気が出るまでデビューのあと少し時間がかかった。コンサート会場のセットが、後輩のNEWSやKAT-TUNに比べて、お金がかかってないと嘲笑された時期もあったのだ。そんな苦労した時代をメンバーで支え合いながらじっと耐え、コツコツと仕事に向き合ってきた。その姿勢は、関ジャニ∞の今の成功に通じるものがある。共通していえるのは、目の前の増えていくファンを大事に思い、それぞれの個性は活かしつつメンバー愛を持ってグループ活動を続けてきたことだ。
若くてフレッシュな少年の輝きが最善とされてきた芸能界に、メンバーとファンが愛情を積み重ね大器晩成型アイドルとして売れたのが嵐という革命だ。ジャニーズを応援するファンにとって、グループに注ぐ愛は自分自身もその中にいるような感覚に近い。コンサートで過ごした時間、雑誌やラジオで日々存在を感じながら季節が巡っていく。だからこそ、グループの雰囲気が良ければ、そのメンバーと過ごす楽しい時間がファンにとっても倍増するのだ。メンバー同士の仲が良いこと、グループとしての結束力が強いこと。それは、ファンにとっても繋がりを深く感じられる大切なバロメーターになる。そんなグループのあり方を後輩に示したのではないだろうか。
メンバーの成長、さらに深まるグループ愛という末永く見守っていく楽しみがあるからこそ、嵐は老若男女問わず多くのファンに、そして多くの後輩たちにも愛されているのだ。
(文=佐藤結衣)

リアルサウンド編集部『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』
■書籍情報
『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』
リアルサウンド編集部・篇
価格:¥ 1,500(+税)
予約はこちらから
内容紹介:ごく普通の青年たちがエンタメ界のトップに君臨したのはなぜか? 音楽性、演技・バラエティ、キャラクター、パフォーマンス…… 時代が嵐を求めた理由を、4つの視点から読み解いた最強の嵐本! 嵐の音楽はポップ・ミュージックとしてどんな可能性を持っている? 現代思想で読み解く各メンバーのキャラクターとは? 嵐ドラマは00年代の情景をどう描いてきた? 青井サンマ、柴那典、関修、田幸和歌子、成馬零一、矢野利裕など、気鋭の評論家・ライターが“エンターテイナーとしての嵐”を語り尽くす。総合音楽情報サイト『リアルサウンド』から生まれた、まったく新しい嵐エンタメ読本。