
2015年にデビューから30周年を迎え、記念すべき最新アルバム『俺の空は此処にある』を3月4日にリリースするSION。デビュー当時から、今も唯一無二の存在感を放つ彼は今も幅広い年代のファンだけでなくミュージシャンからも高い支持を受けている。
ロックバンド・ブームの最中1985年に自主制作盤『新宿の片隅で』で“世の中に姿を現した”。まだネットもスマホも無い時代、雑誌で偶然見かけたSIONの姿は失礼ながらまるで新宿に住むホームレスのようで、その存在感は個性的なロックアーティストが台頭していた中でも一際異彩を放っていた。
初めて動いているSIONを見たのと歌声を聴いたのは同時だった。1987年に開催された広島平和記念コンサートのテレビ中継でのことだ。椅子に腰かけ、首からハーモニカホルダーを下げて身をよじりながら歌う「コンクリートリバー」(1986年『SION』収録)。“生まれたその時から もう死に向かって走りつづけてるのかい”と絞り出すかすれ声は、お茶の間で見られる歌番組からは聴こえてこない歌声であり、昆虫のようなサングラスの下から観客を覗く目つきには何かいけないものを見た気さえしたものだ。
特徴的な歌声と誰にも似ていない独特のボキャブラリーを感じさせる歌詞の世界は多くのミュージシャンからも支持されている。特に有名なのが福山雅治との交流だろう。「SORRY BABY」「ノスタルジア」を福山がカバーしているのをはじめ、SIONのデビュー20周年記念シングル「たまには自分を褒めてやろう」「曇り空、ふたりで」ではそれぞれボーカルとギターで福山が参加、編曲も手掛けている。福山の主演によるNHK大河ドラマ『龍馬伝』に俳優としてSIONが出演したことも話題となった。
またデビュー当時からルースターズの花田裕之や池畑潤二がアルバムに参加したり「春夏秋冬」をカバーして泉谷しげるとも早くから交流が生まれていたが、自分の世界を確立していたSIONだからこそ彼らとも対等に渡り合えたのではないだろうか。1990年に発表した5枚目のアルバム『夜しか泳げない』ではさらに仲井戸麗市や下山淳、KYONといった辣腕ミュージシャンも参加。1994年の「sion 10+1」では10人のギタリストを迎えてレコーディングされるなど、それぞれがSIONの世界に足を踏み入れながら、曲に寄り添うようなプレイを聴かせている。
その呟くような歌い方にはやはり過剰な音圧の無いアコースティックなものが良く似合う。ニューヨーク、東京で録音された2つのサイドで構成され、マーク・リボーらが参加した意欲作『Strange But True』(1989年)の“Strange Side”で聴けるオルガンやアコーディオン、ヴァイオリンはSIONのボーカルの魅力をより際立たせており、初期における彼の音楽の一つの完成形といえるだろう。
1990年代後半以降、何度かのレコード会社の移籍を経つつも、立ち止まることなく歌い続けてきたSION。2008年からは宅録アルバム『Naked Tracks』シリーズを毎年欠かさず発表、日比谷野音ライブも恒例となる等、充実した活動を続けて今年ついに30周年を迎えた。
ますます渋さを増したしゃがれた歌声と近年の彼を支えるミュージシャンにより作られた新作『俺の空は此処にある』は、ディストーションを効かせたギターのが力強く飛び出してくる「ONBORO」から、ブズーキの音色がゆったりとした情景を描き出す「jabujabu」、続く軽快なカントリー「けちってる陽だまり」、アコーディオンとアコースティック・ギターに乗せてワーカホリックな自分を嗤う「休みたい」など、深夜に独り自問自答しているような前作『不揃いのステップ』とは対照的に太陽に照らされてリラックスしたSIONの姿が浮かぶ。
こうした曲たちを聴くと、今も新宿の片隅から聴こえてきそうな彼の歌声になぜかホッとさせられる。変わりゆく時代に翻弄される音楽シーンの中で、一見飄々とマイペースにかつシリアスに己の魂を音楽に捧げ続けてきたSION。かつて「歌いたいことがない」という若いミュージシャンに対して「俺だったら、“歌いたいことがない”と歌う」と答えたというスピリットが今も彼を支えているのかもしれない。
(文=岡本貴之)

SION『俺の空は此処にある』
■リリース情報
『俺の空は此処にある』
発売:2015年3月4日(水)
価格:初回限定盤(CD+DVD) ¥4,630(税別)
通常盤(CD) ¥2,778(税別)※CDの収録内容は共通
<CD収録内容>
01 ONBORO
02 唄えよ讃えよ
03 jabujabu
04 けちってる陽だまり
05 水色のクレヨン
06 いつでもどこでも会いたい
07 休みたい
08 人様
09 俺の空は此処にある
10 諦めを覚える前の子供みたいに
<DVD収録内容>
2014年8月16日に行われた日比谷野外大音楽堂ライブより8曲収録。
01.バラックな日々
02.休みたい
03.ウイスキーを1杯
04.通報されるくらいに
05.どけ、終わりの足音なら
06.新宿の片隅から
07.長い間
08.月が一番近づいた夜
(撮影監督:宮本敬文 / 編集監督:藤森圭太郎)
■ライブ情報
『SION-YAON 2015 with THE MOGAMI』
出演者:SION with THE MOGAMI (池畑 潤二 / 井上 富雄 / 細海 魚 / 藤井 一彦)
公演日:2015年6月14日(日)
会場:日比谷野外大音楽堂
開演:17:00 開場:18:00
チケット:前売 6,480円(税込)/当日 7.020円(税込)
※学割:高校生までは当日学生証提出で1,500円返金
プレイガイド
先行発売 2015年2月27日~3月6日
一般発売 2015年3月21日
チケットぴあ 0570-02-9999
ローソンチケット 0570-084-003
e+ http://eplus.jp/sys/main.jsp