
こんにちは。今回は「北朝鮮の人に人生相談をしたらどうなるか」という話をしたいと思います。同じ相談内容であっても、相談する人のお国柄によっては、まったく違う解釈による答えが返ってきますよね。同じ国籍ですら千差万別なのですから、当然ですね。では、それが北朝鮮の人だった場合、どうなるのか――。
【相談内容1】
「好きな人ができません」
回答
「好きな人ができないのは、情熱的に生きていないからだと思う。熱く生きていれば、いずれは現れると思う」(20代女性)
【相談内容2】
Q「お金が貯まりません」
A「なぜだ? 何に使っているのだ」
Q「いろいろと……。まず、携帯電話料金がかかります。その他保険、税金、家賃、交通費、交際費、通信費、光熱費、親への仕送りなどもろもろ」
A「よくわからんが、それで何が不満なのだ?」
Q「先ほどのは必要経費ですが、そのほかにいろいろとかかるんです。例えば月に500円払うと情報サイトの記事が読み放題だったり、ネットで漫画が読めるのでその基本料金、あと月額3,000円程度でビデオが見放題だったりするサービスがあるんです。とかいって、まあほとんど利用する機会がないんですけどね。あと突然の交際費だったり、服飾費、書籍代とか。あっ、あと“今月は○万円残ってるから、旅行申し込んだりセミナー受けちゃおっかな”とか」
A「その、基本料金なんちゃらというのがよくわからない。サービス内容もなんだかよく理解できないが、そこまで必要なのか? さらに、ほとんど使っていないのであれば無駄ではないか。交際費っていうのは、飲み代か? セミナーというのは、何を習うのか知らないが、それをしないと生活が苦しくなるのか? 本当は自分でわかっているじゃないか。金の使い方は思想の反映だ。お前には無駄な思想があるのだ。日常が、不必要な概念で埋め尽くされているのだ。本当に必要なものには、逆にめったに金を使うことはないのだ。それは金で解決できないからだ」(40代男性)
【相談内容3】
「付き合っている人がいたのですが、別れました」
回答
「もともと合っていなかったということだ。結婚までいかずに別れたということは、付き合ったうちに入らない」(50代男性)
【相談内容4】
「北朝鮮に来てから体の調子がずっと悪いです」
回答
「普段からちゃんと食わないからだ。我が国の女を見ろ。よく見たら、みんな足腰がゴツくて小太りだろ。お前は痩せすぎだ」(40代男性)
お次は、少し長くなりますが、個人的な話です。私にはどうしても行きたい国がありましたが、北朝鮮パスポートでは通常入国ができませんでした。入国には難民申請並みに大量の身元証明書類が必要で、その要件にも巧妙なトラップがかかっており、そろえるのは事実上不可能に近いというものでした。
それでも挑戦するのであれば、試算で10万円以上の費用が必要と出たのですが、反骨精神に火がついた私は、要求された通りすべての書類を気合でそろえました。ちなみに、精神を軽く病むのでオススメしません。ですが、結果は2回にわたりNO。その上「二度とビザを申請するな」とまで言われてしまったのでした……。
通常はそこで心が折れるところですが、そこまで拒絶されると、逆に泳いででも入国してやりたい気持ちが暴走し、勝利条件を「何がなんでも入国」に設定した私はうわ言のように「入国、入国、さっさと入国……」とつぶやくようになっていました。ここらへんはウソですけど。
そこで登場した選択肢が、日本国籍の取得または韓国パスポートの取得だったわけです。日本国籍取得はさておき、私の場合は本籍地が朝鮮半島の最北であり、その上、韓国側の親族とは縁がなく、当時は渡航したこともなかったので抵抗感を禁じ得ませんでした。それで長期間かけて日本人、同胞問わず、たくさんの人に相談しました。
「世界には、もっとひどい立場の難民がいる」
「そんなこと言ったら、三都主(アレサンドロ)やハーフナー・マイクはどうなる」
「サウスだろうがノースだろうが、外国から見たら区別がつかない」
「人生は短い。自己実現のために国籍を変えるのは罪ではない。ましてや、北か南かだけの差だというのに」
結局、決定打になったのは、「分断されているうちはどっちも正式な国とは言えないから、どっちでもよい」という身内の言葉でした。
とはいえ、心情的には簡単に割り切れるものでもなく、その後もゴチャゴチャと悩んでいました。ほかにも某国入国管理局とのやりとりなど、書き切れないエピソードがありますが、今回の趣旨とは無関係なので割愛します。
そこで訪朝時、バーで一緒に飲んでいた案内員に、その一部始終を話しました。北朝鮮の人は私のようなケースにどう反応するのか試してみたい気持ちと、話すことでなんらかの理解を得たいという気持ちが半々でした。すると早速、同席していた在日コリアンのテレビ局員(※生まれながらの韓国籍者)が「お前、そんなことで変えるなんて、どうかしてるな。この裏切り者!」という趣旨のことを言ってきましたが、案内員の一声で話は終了しました。
案内員「えっ、別にいいじゃん。そういうのは」
まさかの一言スルー。人生相談というより、私の単なるこだわりの吐露でしたが、北朝鮮当局の人にそう言われたおかげで心が少し軽くなったような気がしたのは確かです。韓国籍を奨励しているわけではないでしょうが、私の語りぶりが面倒くさくて早く終わらせたかったのかもしれません。
「仕事上、そうせざるを得ない人がいるのも理解してる」「気持ちが大事だから」とも言っていましたが、私が長い間、夜も眠れないほど悩んだのは一体なんだったのかと、少し拍子抜けしました……。ほかの案内員も同様のことを言っていたので、次回機会があれば、彼らの国家と国籍観について深く聞いてみたいと思います。
以上、北朝鮮版人生相談でした。もっと込み入った相談がしたいという方は、次回訪朝できた場合に聞いてみたいと思いますので、ご連絡ください。怒られない範囲で聞いてきます。人選はランダムになります。
●やす・やどろく
ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>