
左から、吉田ヨウヘイ、マツザカタクミ、須藤寿。
「バンド組んだ時に日本語をメインにすると決めていた」(マツザカ)
――前編の最後には須藤さんによる歌詞への言及がありました。マツザカさんと吉田さんも、それぞれバンド内で歌詞を担当していますが、お二人の作り方はどのようなものでしょうか。 マツザカ:僕は、ボーカル兼ギターのatagiがメロディとコードで作った曲に対して、語感の良い言葉を嵌めていきます。彼の作るメロディは洋楽的な譜割りなので、そこを崩さないけど、日本語で書くようにしていると、自然に発語して気持ち良いものを選んでいる。ただ、一人でやっていると、須藤さんみたいにジメジメしてくるので、メンバーの横で「今こんな感じなんだよね」と言ってみて、会話している中で閃いたものも採用しています。あとは、ボーカルが二人いるので、PORINが歌う場合は「あの子が言ってたら良いよね」という言葉を考えます。 吉田:本当は難しい単語とかを組み合わせて作りたいんですけど、頑張っても全然できるようにならなかったので……。今は簡単なストーリーを作って、それに肉付けするような形で歌詞を書いています。気を付けているのは、「この話、自分にしか当て嵌まってなさそう」という人がいっぱいいるような話にしようと。たとえば「ブールヴァード」という曲は知り合った女の子が、好きかどうかもわからない人から夜中に呼び出されて、自分の感情がわからないまま車で行っちゃう、という話をしてて。僕はそういう体験をしたことはないですが、実際に体験した人の話を軸にして、ディティールとして車の中で見える風景や小物を足していくと、面白くなっていきますね。 マツザカタクミ:須藤さんって、歌詞の中で結構固有名詞を出してますけど、パッと思いついたものなんですか? それともストックしてあるやつですか。 須藤:ずっとストックはしてあるんだけど無くしちゃうね。あと、そのやり方で一番初めに僕が影響を受けたのはビートルズの「Come Together」で、コカコーラとか、曲のなかに出てくる単語がとにかく面白い。当時は翻訳がないと意味がわからなかったんですけど、自分がもってかれちゃうような感じがあった。あとは一番初めだと、J・D・サリンジャーとか太宰治とか。サリンジャーも『バナナフィッシュにうってつけの日』みたいな、よくわからないけど言葉に魔法がかかっているようなものが好きかな。あとは、プロットの中から作っていくっていうのは、俺もぜひやってみたいんだけど、なぜかその才能に恵まれていなくて……。海外の人たちの音楽を聴いていると「俺、振られちまったぜ」とか「ちくしょう、夜通し泣いていたんだ」みたいな良い曲が多いじゃないですか。でも、日本語って語感がすごく固いから、どうしてもそこに妨げられちゃうことがあるんだよね。「~でした」とは言えないからさ。 吉田:本当に語尾だけで変わっちゃうし、「Like a Rolling Stone」(ボブ・ディラン)みたいなのを書いても、語尾だけで格好よくなるかどうかが決まる。言い切ると強すぎるし……(笑)。狙ってもはっきり言いすぎると強くなるから、落ち着きが良いやつを選ぶんですよね。 須藤:逃げ方がかっこいいのが重要だよね。「〜だったんだよな、〜を」みたいな倒置法が上手くいくと「キタぜ!」って思う(笑)。
マツザカタクミ(Awesome City Club)。

吉田ヨウヘイ(吉田ヨウヘイgroup)。
「適度に不安がないと嫌になっちゃう」(吉田)
――ここまで二人から須藤さんへの質問が続いていますが、須藤さんから二人に聴きたいことはありますか。 須藤:セットリストについてなんだけど、二人は決まってきちゃうタイプ? 例えば、30分を構成する7曲が「いつみてもその7曲」となるバンドなのか、「1曲目から新曲やれちゃうよ、ここであえて育てるよ」と言えるバンドなのか。 マツザカ:僕は波を作ってお客さんをコントロールしたいという欲求と、やりたい楽曲を出してあげたいという感情がケンカします(笑)。30分セットだと、どれをはずしたら良いかわからなくて、一緒になってしまう。ただ、今回の企画では、もう少し日の目を見ない曲をやりたいですね。 吉田:僕は結構、適度に不安がないと嫌になっちゃうんですよね。 須藤:あぁ、リスクを負いながらやる方ね(笑)。 吉田:新しい曲も、しばらくするとできるようになってくるじゃないですか。同じことは嫌じゃないんですけど、演奏に怖さがなくなると、流してプレイしてしまうような気もしてくるので、完成度に不安があったとしても新曲を入れてしまう。 須藤:でもお客さんは喜ぶよね。この間テレビで見たんだけど、Mr.Childrenって、ギターソロまで絶対音源通りにするらしいよ。「チョーキングまで一緒にしないと、あれだけの人を喜ばせられない」っていうのを聞いて、ああいうモンスターバンドが背負った宿命なんだと思ったし、かっこいいなとも感じたね。 マツザカ:でも、キャリアを積み重ねていって、代表曲みたいなものが出来たら、それをずっと続けなきゃいけないわけですよね。そこに曲の強度がついていかなかったらどうしようとも思います。 吉田:自分の中の曲の完成度より、お客さんの反応の方を気にするんですか? マツザカ:今日、ライブをやっていて思ったんですけど、自分って、どうやらフィジカルな反応をお客さんに求めているみたいで。だからといって直接的に踊らせる曲はやりたくないんですけどね。 ――クールにやるけど、熱狂してほしいと。 マツザカ:全員が同じ振付をしてくれ! みたいなのは無いんですけど、アッパーな感じとかビート感の強い曲をやっていたりするので、そこらへんには反応してほしい。一方で、盛り上がらないことも尊いような気がして。すごいアッパーであがってくれると嬉しいんですけど、「これは本当じゃない」みたいな。両方の自分たちを大事にしたいなと思ってます。 吉田:映像でみると、結構盛り上がっているライブだったのに、ステージにいる時は「盛り上がりが足りない」と感じている自分もいたりしますね。 須藤:ハードコアとかメロコアの人たちはわーってダイブとかしているけど、あれはひとつの様式美みたいなもので、普通は揺れながら心で泣いたりさ、気づいたら両腕に力が入っていたりするわけじゃない。でも、ライブに出る側の自分たちとしては「その盛り上がり方はやめてよ」と思ったりもする(笑)。
須藤寿(髭)。
「お客さんも合わせてヒップな夜になればいい」(須藤)
――最近のライブでなにか感じたことはありますか? マツザカ:土地土地で反応が違うなと感じました。東京だと「自由に」っていったら、自由に楽しんでくれている気がしているんですが、地方に行って、僕らを知らないような人たちに初めて見てもらったときに、延々とハンドクラップをしてくれたところがあって。ノリ方の違いがあると実感させられました。 須藤:恋愛みたいな感じだよね。場所によってシャイなところと、シャイじゃないところがあったり。僕らはシャイだから、シャイなお客さんが来たら、最後に乗せるために駆け引きをしようと思うし、すごい着火点が早いところだと、それはそれで僕たちも嬉しい。一番良くないのが、1〜2曲目がすごい熱くて、あとで取り返せないというやつ。ああいうときはドキドキしますよね。ここのタイミングでこのくらいテンポを落としたほうがいいけど、その後に速い曲をやったときにお客さんのテンションが戻ってこないみたいな(笑)。セットリストもその感覚で作るよね。途中BPMをこのくらいに落として、ここ2曲くらいで戻るか、3〜4曲突っ込んじゃうか。BPM80くらいのところで、ホットな感じにするわけですよ。そこで、どう120に戻していくとか。120に戻した時に思っていた反応が得られなかったら「俺、間違えたかな~」って思ったり。 吉田:自分のせいだと思ってしまうんですね。 須藤:自分がセットリスト作ったりするからね……。なんとなく、バンドの中でも「須藤が作るだろう」みたいな共通認識があるし。最終的にバンドのヒエラルキーは自分を頂点としてあるから、だったら、初めから作ってきなよっていうね。最近はBPM70くらいまで落として始めるのが好きなんですよ。 マツザカ:Awecome City Clubは、始まってからある程度の期間まで、それくらいのBPMからスタートしていました。前のバンドが盛り上がれば盛り上がるほどいいですよね! 須藤:そう、スリリングなのよ(笑)。「こいつら違うな」って思わせられるし。 吉田:ウチは勝手に決まっていることが多いですけど、僕のアルトサックスとギターの持ち替えがあるので、ある程度の制限はありますね。

