
「FUN FUN FUN NITES」での筆者のバンド・FORWARDのライブの様子
【リアルサウンドより】
ハードコア・パンクバンド、FORWARDのボーカリストを務めるISHIYA氏が、自身の海外ツアー体験をもとに、その音楽シーンの違いや海外ならではの風習をレポートする本連載。第1回
【一般家庭のリビングでライブも……現役パンクロッカーが米国ツアー最新事情を報告】では、アメリカと日本のパンクシーンの基本的な違いを、第2回
【東海岸には禁欲的な“ストレートエッジ”のパンクスも 現役パンクロッカーが米国各地のシーンを紹介】では、アメリカのパンクシーンの音楽性を、第3回
【菜食主義、シェアハウス、パーティ……現役パンクロッカーが見た、アメリカ・パンクスの生活】では、アメリカのパンクスのリアルな生活を紹介してきた。(編集部)
アメリカ体験談最終回となる今回は、アメリカのロックフェスティバルについて紹介していこうと思う。日本のロックフェスティバルと言うと、有名なのはフジロックやサマーソニック、エアジャム、ラウドパークなどがあるが、アメリカで筆者のバンドが出演したり体験したフェスは、日本のものとは違いがある。どのような違いなのか解説していきたい。
筆者は日本のフジロックやサマーソニックには行ったことがないのだが、エアジャムやヘヴィメタル系のフェス、幕張メッセやさいたまスーパーアリーナなどで単発に行われるようなフェスや、90年代の日比谷野音などのフェスには行ったことがある。筆者が行った近年の日本のロックフェスは、概ね大きな会場にいくつかのステージがあり、物販コーナーや食事が出来る場所などがあり、その他にも催しがあったりして、その場所で何時間も過ごせるようになっていた。フジロックになると、キャンプサイトがあったり、カジノやバー、クラブなどもあると聞く。
筆者が出演し体験したアメリカのフェスは、フジロックほど大規模なものではないが、今回出演したテキサス州オースティンで行われた「FUN FUN FUN FEST」は、今まで体験したアメリカのフェスの中でも一番大きなものだったので紹介したいと思う。
「FUN FUN FUN FEST」

「FUN FUN FUN FEST」メイン会場では、ステージにこれぐらいの観客が集まる

会場内にこのようなスケボーランプがあり、スケボーやBMXのプロがデモンストレーションを行ったりする。
今回初めて体験した「FUN FUN FUN FEST」のメイン会場は、大きな公園のようなところで、Judas Priest、King Diamond、Jello Biafra(ex.DEAD KENNEDYS)、Dinosaur Jr.、Sick Of It All、Rocket From The Cryptのほかにも、3日間に渡り100バンド以上が出演していたフェスだ。4つのステージとフードコーナーや物販ブースがあり、昼間明るい間にはスケートボードのランプでスケボーやBMXが行われ、会場内の他にはプロレスのリングもあり、そこでは本物のプロレスが行われていた。
昼から始まるフェスはたくさんの観客で埋め尽くされ、各ステージで盛り上がるといった様子は、日本のフェスとそう大差はない。日本のフェスとの決定的な違いは、街全体がフェスになっているところだ。メイン会場は夜の10時頃に終了するが、その後「FUN FUN FUN NITES」というナイトショーが、前日からの4日間に渡ってオースティンの中心街13カ所のライブハウスで行われた。

会場内にプロレスリングがあり、試合が行われる
アメリカで体験したどのフェスでもだいたいそうなのだが、料金を払うとリストバンドが渡され、それをつけて各会場をまわるという方式だ。「FUN FUN FUN FEST」では布製のリストバンドで、一度装着すると切らないと取れないようになっている。それをつけているとメイン会場からナイトショーまで、「FUN FUN FUN FEST」のどのイベントにも行けて楽しめる。
メイン会場ではない「NITES」のイベントの会場でも、Sick Of It All、Rocket From The Cryptなどのメイン会場でやったバンドもライブをやり、「NITES」のみ出演するバンドでも、7 Seconds、Gorilla Biscuits、Negative Approach、PowerTrip、World Burns to Deathなどの錚々たるバンドが名を連ね、ほかにも約150バンドが4日間に渡り各ライブハウスでライブを行った。

筆者のバンドFORWARDがやった「FUN FUN FUN NITES」の会場外の観客達。喫煙スペースがごった返している。
筆者のバンドが出演したのも「NITES」で、400〜500人ぐらいは入る会場だった。ほかの「NITES」の会場も、100人規模のところから2つステージがあるところ、観客席が野外で三階まである会場など様々なライブハウスで行われる。
そんな中で、お気に入りのライブハウスや飲みやすいバー、美味いものがある店などが見つかったりすることもあるだろう。地元の人間と一緒に行けば、地元の人間しか知らないような店にも連れて行ってもらえたりするので、そういったこともアメリカのフェスでの楽しみのひとつだ。
こういった感じで4日間に渡り街中がフェス一色となる。街中のピザ屋やバー、地元の新聞などのいたるところでフェスの告知がされていて、フェスの期間中はそういった店や街角の屋台のような店も、フェスの客がたくさんいる。そんな店で友人やフェスの客と会ったりするのは日常茶飯事だ。そういった集客効果で街が潤うのかどうかわからないが、街全体でフェスを盛り上げていることが容易にわかる。基本的にアメリカのフェスはこういった感じが多いので、ほかに体験したフェスも紹介しよう。
「CHAOS IN TEJAS」

CHAOS IN TEJAS最後のフライヤー。日本のハードコアパンクバンドFRAMTIDがメイン級の扱いのフェスだった
2005年〜2013年まで同じくテキサス州オースティンで開催されていた「CHAOS IN TEJAS」というパンクのビッグフェスがあり、筆者のバンドもそのイベントに2回出演し、一度友人のバンドについて行っている。
このイベントもオースティンの街中に3〜4日間パンクスが溢れるというとんでもないフェスで、「FUN FUN FUN NITES」と同じような感じだが、出演バンドはほぼ全てパンクバンドであるところが特筆すべきフェスだ。日本からも筆者のバンドのほかにBASTARD、JUDGEMENT、WARHEAD、CRUDE、FRAMTID、SLANG、CROW、Origin of M、惡意、THE SLOWMOTIONS、SKIZOPHRENIA、REALITY CRISISなどの他にも多数のバンドが出演している。

FUN FUN FUN NITESで一番大きい会場MOHAWKは観客席が野外で三階まである。「CHAOS IN TEJAS」ではメイン会場となっていたりする。MOHAWK観客席三階から見たステージ
世界中から有名パンク・バンドが集まるフェスはイギリスで行われていた「HOLIDAY IN THE SUN」があったが、日本から出演したバンドは鉄アレイぐらいしかなく、その点を見ても「CHAOS IN TEJAS」は日本のバンドを必ず出演させ、中国からもBRAIN FAILUREが出演したことのある、真の意味でのワールドワイドなパンクフェスだった。
イギリスからもThe Damned、Cock Sparrer、BUSINESS、Cockney Rejects、Hard Skinといったパンクロックやスキンヘッズのバンドも出演し、Amebix、Subhumans、DOOM、Antisect、The Mob、FUKなどのハードコアバンドや、アメリカからPoison Idea、TRAGEDY、Los Crudosなどのほかにも多数のバンドが出演し、カナダ・ヨ−ロッパ・オーストラリアからも有名パンクバンドが毎年多数出演していた。
オースティン中心街にあるバーやレストラン、ピザ屋からホテルにいたるまで全てがパンクスで溢れかえり、一つのモーテルがほとんどフェスの観客のパンクスで埋め尽くされ、ホテルの各部屋でもパーティーが毎夜行われているような狂気のフェスであったが、惜しくも2013年で終わってしまった。

CHAOS IN TEJASのアフターショーで行われた橋の上でのライブの様子
「CHAOS IN TEJAS」では、メイン会場やほかの会場共に夜のショーのため、終わってからアフターショーと呼ばれるライブが夜中2時あたりから色々なところで行われる。橋の上だったり、ライブハウスであったりハウスショーであったりするが、終わるのは朝方4時〜5時と遅くなるため泥酔者も多数になり、メチャクチャな様相だった。その上朝9時ごろから湖のボートでライブが行なわれたりもするので、「CHAOS IN TEJAS」では休める暇がほとんど無かった。
筆者は実際「CHAOS IN TEJAS」に出演した2012年に、夜のメインステージ〜夜中のアフターショー〜朝のボートショーと17時間ほどの間で3回のライブを行ったこともある。

「CHAOS IN TEJAS」ボートショーの様子
ボートショーでは朝から50〜60人程が集まって来て、湖で二階建ての大きなボートに全員乗り込み、飲んだり泳いだりしているところで、水着姿の観客の前でパンクバンドのライブをやる。ステージが終わった後にそのまま飛び込む人間などもいて、非常に面白いライブだった。

「CHAOS IN TEJAS2012」に筆者のバンドFORWARDが出演した時の様子
他にもブレックファーストショーという、朝からやるライブなどもあり、フェスの間中オースティンはパンクのライブだらけになる。こういった色々なイベントがあり、3〜4日間パンクのお祭りとなる「CHAOS IN TEJAS」を毎年楽しみにしている人間は世界中にいたので、終わってしまったのが寂しい限りだ。
カナダ・トロント「NOT DEAD YET FES」

カナダ・トロントの「NOT DEAD YET FES」のフライヤー。筆者のバンドFORWARDがメインアクトをつとめた
今回初めて訪れたカナダで出演した「NOT DEAD YET FES」では、トロントの300人規模ぐらいのライブハウスをメイン会場として4日間で約70バンドが出演し、筆者のバンドがメインアクトをつとめさせてもらった。規模としてはそれほど大きなものではなく、アフターショーも街中全体でやるほどのものではなかった。しかし、メイン会場、アフターショーともにたくさんの観客が来ていて、初めてのカナダのパンクシーンを堪能した。
11月下旬のトロントは、夜になると気温-8℃を下回るぐらいになるためか、街中にフェスの客が溢れる程ではないが、街中を歩いているとカナダのバンドの友人にバッタリ出会ったりするぐらいではあった。
アメリカでもカナダでもそうだが、フェスや大きなライブが行われた後には必ずと言っていいほどアフターショーが行われる。メインで盛り上がった観客達が、帰るのが惜しくなるためにほかの会場でライブが行われるのだが、このライブがかなり盛り上がったりするので、もしアメリカのフェスに行く機会があれば、アフターショーは是非経験してもらいたい。
アメリカと日本のフェスにはこうした違いはあるが、日本の自治体や地域住民の音楽に対する理解をより深めて行けば、街ぐるみのフェスも可能になるかもしれない。音楽フェスティバルがより進化すれば、色々なバンドを知る良いきっかけにもなる。素晴らしいライブや音楽をやっていても無名なバンドなどは、こういったフェスがあればチャンスもひろがる。将来、日本でも街全体がフェスになるようなことを願っているが、この記事がそのために少しぐらいは貢献出来れば良いなと思う。
日本とアメリカの違いを、合計4回に渡りパンクシーンを中心に書いて来た本連載だが、世界はまだまだ広く、驚くことや素晴らしいことがたくさんある。今後はアメリカだけでなく、ヨーロッパやアジアにも行き、色々なものを吸収し、また紹介できたら幸いだ。乱筆・乱文を最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。
■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。
FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST