【リアルサウンドより】
ポップなメロディと、聴く者の気持ちをポジティヴに後押ししてくれる歌が魅力の曲である。昨年秋、愛情に対しての奥深い感情を綴ったバラードの
『愛が叫んでる』で鮮烈なデビューを飾ったななみの2枚目のシングル
『I’ll wake up』。今回は一転してロックなアレンジをまとったアップテンポのナンバーで、ギタリストのakkin(ONE OK ROCK、阿部真央といったアーティストのアレンジャーとしても活躍)によるサウンド・プロデュースが大きな効果を上げている。その音に乗って、ななみは、迷いや不安を吹っ切るように唄っているのだ。
今回は彼女の現在形に迫るために、この新曲のことに加え、メジャーデビューから数ヵ月が経過した今の状況をどう捉えているかを中心に話を聞いた。ななみは物腰の柔らかい女の子で、こちらが投げかける質問に対してもニュートラルに、自然体で応えてくれる。ただ、その内面ではさまざまな思いやパッションがつねに渦を巻いているようで、言葉のひとつひとつにも強い意志や決して浅くない思考が潜んでいる。「I’ll wake up」も、単なる応援ソングなんかではなく、苦悩や挫折といったギリギリの淵からの叫びなのだ。
「ひとりで世界を変えるんじゃないんだな」
――去年の10月にデビューして、それまでに思ってたことと、実際にデビューしてみて感じたことを比較してみてもらいたいんですけど。いかがですか?
ななみ:いやぁ~……この話、マイナスになるかもしれないんですけど、私、デビューしたら世界が変わると思ってたんですよ。ほんとに「デビューしたら世界を変えてやる!」と思ってたんです。自分的には「メジャーデビューすればいろんなことができる」と思ってたので……。でも実際にデビューしたあとも、何も変わらないというか。もちろん取り巻く環境とかは変わりますけど、でも音楽をするっていうことは、14歳で始めた時と何ひとつ変わらないんだなということに気付いたんです。
――そういう実感を得たんですね。補足しておくと、ななみさんの言う「世界を変える」は、自分の歌によって、聴いてくれる人たちそれぞれの生きている世界の見え方や生き方を変えていく、ということなんですよね。
ななみ:そうですね。それは形じゃないんだ、って思いました。でもデビュー前と何かひとつ違うことがあると言ったら、ひとりじゃないっていうことですね。それは自分にとって今、すごく強いものですね。
――その、ひとりじゃないと感じるのは、どんなことでですか?
ななみ:ファンだったり、あとはスタッフの方々だったり、やっぱり普通のななみちゃんとして生きていってたら絶対出会えなかった人たちに音楽を通して出会えているので。だから(そういう人たちとの関係は)もうホームのような感じがしたりするし(笑)。それほど音楽での家族がどんどん増えていってるような気がします。それが14歳の頃とは大きく違うなと思って。ひとりで世界を変えるんじゃないんだな、ということに気づきました。
――そうですか。ただ、10月の東京でのワンマンライヴでは感極まってましたよね? 「デビューにあたって不安な気持ちもあった」と言って。
ななみ:それは……ただ単に不安だったんですね。べつに何が不安とかいうわけでもなくて、たぶん、全然乗り越えられるような不安だと思いますし、だからたぶん、ああやって言ったんだと思います。ただ単に、目に見えないものが押し寄せてくる不安だったりとか……。
――将来的なものとか?
ななみ:そうですね。でも「音楽をやっていけるか」とか、そんな不安はまったくなくて。別にデビューしなくても、音楽は絶対に一生やっていこうと思っていたので、それは変わらないんですけど。ただ、「自分を忘れないか」とか、世に言う「大人に揉まれて」とか「世の中に揉まれて」「大人の事情で」とか、そういうことに自分が負けないか、不安でしたね。
――そういう不安感なんですね。でも今はひとりじゃないと思えていると?
ななみ:うん。いま思うと「全然、不安に思うようなことじゃないよ」っていう感じなんですけど。今でもやっぱり、どんどん進めば進むほど次の悩みが出てくるけど、あの頃の自分が思ってた悩みは、今思うと、すごくかわいいもんだったなと思う。
――ファンや聴いてくれた人の反応で、とくに心に残ってるものはどんなものがありますか?
ななみ:ツイッターのダイレクトメッセージを飛ばしてくれた子がいたんですよ。あたかも、そのメッセージを送るためにアカウントを作ってくれたのがわかるぐらいの。で、すごいストレートに「ななみさんの歌のおかげで不登校を抜け出せました。ありがとうございました」って来たんです。それって自分がやりたかったことの、すごく目に見える結果じゃないですか? だから「ああ、うれしいな」と思って。「私の歌で悩んでる気持ちにちょっと寄り添えたらな」とか「その子の心のクッションになれたらいいな」と思ってたものの、その子がそこをほんとに抜け出せるようなきっかけになって、そんな力を与えられたのが、うれしくて……。それが一番残ってますね、私は。
――それは心に残りますね、たしかに。
ななみ:で、その子、メッセージを送ってきたら、もうそのアカウント消しちゃったんですよ。それがただ伝えたかったんだろうなと思って、うれしかったです。全部(の反響が)うれしいですけど、一番うれしかった。昔の自分みたいで。私は不登校を抜け出せなかったけど(笑)。あの頃自分が抜け出せられなかったことが、今こうして音楽をしてることによって、同じキズを抱えた人が前に進めたのは、世界を変えれてる気がして、うれしいですね。
「今度は誰かに(愛を)あげれるようになった自分の成長を見てほしかった」
――では曲について訊きます。「I’ll wake up」は一昨年、ヤマハの全国大会でグランプリを獲ったあとの曲作り中にできたそうですが、その頃はどんな気持ちで曲を作っていたんですか?
ななみ:その頃はグランプリを獲って、地元の大分でも「わー、すごーい!」「もうデビューまっしぐらやー!」って持ち上げられてたんですよ。でも1ヵ月2ヵ月すると、シーン……もう時代は去った、みたいな感じになって。音楽で結果を残したのもワーッてお祝いされるのも人生で初めてだったので、人が去っていくのも初めて見ちゃったんですよ。でも「いやいや、絶対音楽をしていきたいし!」という気持ちはずーっと昔からあったので、1ヵ月に何10曲もバーッと録って……今の事務所にがむしゃらに、とにかく曲を作っている、イコール、やる気がある、っていうのを伝えたくて、もう、ひたすら送ってました。「良くない」と言われて、泣いたりもしてたんですけど。
――その頃どんなふうに曲を作ってました? たとえば「バラードを作ってみよう」とか「ポップなものを」とか考えながらでした?
ななみ:いや、テーマはないです。「できた曲がポップだったら歌詞もポップにしようか」とか、音を主役に、そこから見える言葉に色を着けていくので。メロディが自分の中で一番大切ですね。たとえば悲しかったり、恋してルンルンだったり、そういう時にできると思うんですけど。この「I’ll wake up」の時は、ほんとにそのまま、もう前に進みたいっていう気持ちがすごくあったんだろうなと思います。もう「しゅらしんけん」というか……あ、大分弁で「一生懸命」ってことなんですけど(笑)、一生懸命やってたんです。
――この曲は書いた当時と変わってます?
ななみ:歌詞は何回か作り変えてますね。最初、サビの頭とかは<I’ll wake now>っていう歌詞だったんですよ。でもやっぱり「もうちょっと前に進むような言葉にしようか」と思って。「リズムがある曲なので、意味も含めて、できるだけ耳に残る歌詞にしよう」というのはありましたね。
――たしかに、前に進みたいという心境がすごく表れてますね。
ななみ:うん、そうですね。自分、すごい不器用なんですよ。不器用だから、「愛が叫んでる」の時は、もうただ単に<愛が欲しい>って自分が求めてる状態だった。だけど今度は誰かにあげれるようになった自分の成長を見てほしかった。それに「愛が叫んでる」で私が救うことができた人がいるのなら、その人たちがまた誰かに何かを返していくようになってほしいというか。そのストーリーを、聴く人にも、唄う私も付けたかったんですね。なのでこの曲は、すごい不器用だけど、とりあえず力加減なしで背中をドン!と押したいな、と思って作りました。
――それだからこそだと思うんですが、この曲では弱い自分もさらけ出してますね。現実から逃げてしまう姿や、夢を失いそうになる描写がされていて。
ななみ:うん、そうですね。やっぱり過去があって今がある、みたいな感じの曲が私には多いので。イヤな部分も……白と黒をしっかり出すというのは意識しています。「愛が叫んでる」もそうですけど。
――このあたりの表現は、いつ頃の自分を指してるんですか?
ななみ:いや、常にじゃないですかね。今はもちろんみなさんが応援してくれてるかぎり、逃げることも隠れることもしないんですけど。でもやっぱり人間だから、迷うことはあるので。それは常に、ですね。逆に、悩みがなくなったら、たぶん前に進めなくなっちゃうので、これからも積極的に悩みたいなと思います(笑)。
――なるほどね。ただ、2年前に書いた時には、先ほどの話だと、自分を高めていかないといけないという焦りがあったようですね。
ななみ:そうですね。私、14歳の頃からオーディションで「14歳のななみです、よろしくお願いします」と挨拶してたんですよ。それが「15歳です」「16歳です」とずっと言い続けてたので、だんだん自分が歳をとっていくのが、すごくイヤで。「わっ、14歳!?」だったのが、「ああ、18? それぐらいね」みたいな感じに言われるようになっちゃったりしたので、それに負けない自分を見つけることに焦ってたのはありましたね。でも音楽は絶対にやめれないというか……私自身が音楽!みたいな人間なので、やめるとしたら死ぬ時ぐらいだな、とは思ってました。焦るというよりは、音楽でご飯が食べれるか食べれないか、それだけでしたね。ただ、もうハタチになる、仕事に就くか?とかいう時期で、そのMusic Revolutionがもう最後と思って受けたオーディションだったので、やっとグランプリ獲れたから、これはちゃんとやっていかないとな、って思ってましたね。
「ギター女子にはなりたくないですね(笑)」
――ななみさんの音楽の下地は中学時代の引きこもり期間中にYouTube検索で養われたそうですね。その時期、それだけのめり込んで音楽関係の動画を観てたんですか?
ななみ:そうですね、やることがなかったので、一日一日が(笑)。ほんとネットの中で友達を見つけたり、Youtubeでいろいろ見たり。学校に行ってるより、断然楽しかったです。ひとりでも。
――オフィシャルの動画番組の「きつねとななみ」ではカバー曲を唄ってますが、選曲が面白いですよね。ああいう音楽もさっきの時期に接したものなのかな?と思ったんですけど。
ななみ:ああー、そうですね。「天城越え」(石川さゆり)とか、あんまりこの世代では、ね? でも演歌だからとか関係なく、「いい曲だな」っていうのがあったので。「勝手にしやがれ」(沢田研二)とか、ほんといい曲だなと思うし、「そういう時代はどんな作り方してるんだろう?」とか、今でも勉強のために振り返る時はあるし。「きつねとななみ」ではほんとに好きなものをやってるっていう感じですね。「ラブ・イズ・オーヴァー」(欧陽菲菲)とか。
――ほかに「残酷な天使のテーゼ」や「となりのトトロ」などのアニソンや、初音ミクの「ワールドイズマイン」も唄ってますけど、さっきのような70~80年代のヒット曲が多いのが興味深く感じたんですよ。
ななみ:へえー! 昔の曲のほうがいい曲ですから(笑)。今って、歴史に残るような曲って、そんなにないじゃないですか? あったにしても、たぶん昔の曲たちに勝てないと思うんですよ。私たちの世代は次から次へと新しいものが流行るから、どんなにいい曲でも、次から次へとポイしちゃうんですよね。でも私たちのお母さんお父さんの世代は1曲に対してすごい愛を持ってたと思うから、CDをちゃんと買ってたと思う。だからこんなに受け継がれてるんだろうなと思いますよね。
――そうですね、今のあなたぐらいの年齢はダウンロードが当たり前になってた世代だから、容量がいっぱいになるとその曲を消しちゃってたわけですよね。
ななみ:そうですね。ただ、私たちはそれが当たり前だから、それを非常識と言われても、わからない。だけど「自分はそのどちらにもちゃんと折り合いをつけて曲を作らないとな」というのもあります。CDを買うのは、心構えが全然違うと思うんですよね。真剣に音楽と向き合うことになるというか。私もほんとに自分がファンの方のCDは買ってましたけど、それが店頭に並ぶことはこんなにうれしいことなんだと、大切な宝物なんだなと思いました。
――そうですか。では違う観点からの質問ですけど、デビューしてから「期待の新人」とか「ギター女子」という言われ方をされることはどう感じてます?
ななみ:いや~、ギター女子にはなりたくないですね(笑)。私はたまたまギターで曲を作ってるだけだし、たまたま弾き語りでひとりで全国廻ったりしてたからで……今でも大っ嫌いです、ギター。歌に集中したい気持ちがあるし。でも大っ嫌いすぎて、もうすごい相棒になってる。ギターから教えてもらったことはすごくいっぱいあったし、何やかんや、こいつがないと曲作れないんですね。それに「ギター女子」っていう、その時代になっちゃったら、もう歴史になっちゃうじゃないですか。古くもなるし、新しくもなる。でも自分はそうなりたくないので、一緒にしないでほしいというのはありますね。だけど出会う方みんな「ギター女子じゃないよね」「あなたは違うよね」って言ってくれるから、うれしいですね。
――そうですね。ななみさんは、さっきのオーディション後にギターで弾き語りをするようになった人だから、もともとを思うと、ちょっと違うんですよね。
ななみ:そうですね。でも「私の人生、他人とかぶることはないだろうな」と思ってるので……経験してきたことが違うから。そこは人間ひとりひとり違うので、自信持ってますけどね。
――じゃあ最後に「こんなアーティストでありたい」「こんな曲を作っていきたい」とかは、何かありますか?
ななみ:うーん……「愛が叫んでる」が出た時に<バラード系女子なのかな>みたいに言われたことがあったんですよ。でも今回の2ndシングルは全然違うアップテンポの曲なので、<ななみってこういう歌を唄うんだ?>とツイートで書きこまれたりしたんです。自分はどんな曲でも、何でも書きたいんですよ。アイドルじゃないけどアイドルっぽい曲も書きたいし、アニソンも書きたいし、演歌だって書きたいし……やりたいことがいっぱいあるので「こういう系」って思われたくないです。だから<これはこうだから>ということにあまりとらわれず、その時(自分から)出たことをやっていきたいと思うし。でも誰かのきっかけになれたらいいなとも思うし、「世界を変えたい」という夢もあるので、そこはブレずにやっていきたいですね。ウソつかず、自分らしく、自分のままで唄っていこうと思ってます。
(取材・文=青木 優)

ななみ『I’ll wake up』(e-stretch RECORDS/日本クラウン)
■リリース情報
『I’ll wake up』
発売:2月4日(水)
価格:¥1,111(税抜)
CRCP-10340 (e-stretch RECORDS/日本クラウン)
M-1:I’ll wake up
M-2:恋桜
M-3:偽愛
M-4:I’ll wake up ~instrumental ver.~
■ライブ情報
2月11日(水) 大阪:南堀江knave
2月13日(金) 京都:ROOTER×2
■インストアライブ情報
2月7日(土) 東京:タワーレコード池袋店 6Fイベントスペース 14:00~
2月7日(土) 東京:タワ-レコ-ド渋谷店 3F店内イベントスペース 17:00~
2月7日(土) 愛知:タワーレコード名古屋パルコ店 店内イベントスペース 13:00~
2月14日(土) 愛知:タワーレコード名古屋近鉄パッセ店 店内イベントスペース 17:00~
2月21日(土) 京都:タワ-レコ-ド京都店 イベントスペース 17:00~
2月28日(土) 埼玉:イオンモール北戸田1Fセントラルコート 13:00~、15:00~
3月7日(土) 福岡:キャナルシティ博多B1サンプラザステージ 12:00~
3月7日(土) 福岡:リバーウォーク北九州ミスティックコート 16:00~
3月8日(日) 大分:タワーレコード大分店 FORUS入口前 特設会場 15:00~
3月8日(日) 大分:パークプレイス大分 センターステージ 18:00~
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■オフィシャルHP
http://73music.jp/