クリストファー・ノーラン4年ぶりのオリジナル作品は、自身初の宇宙SF『インターステラー』

JP-photomain-rev-ISTLR.jpg
『インターステラー』(C)2014 Warner Bros. Entertainment, Inc. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.
 今週取り上げる最新映画は、VFXを駆使した宇宙の描写と人間ドラマが見事に融合したハリウッド製SF超大作と、ヘタレなロッカーがカリスマアイドルと出会って変わろうともがく姿を描いた和製ロックムービー。スケール感はまるで違うが、キャラクターや映像を通じて、スタッフの映画製作に注ぐ情熱がしっかり伝わってくる作品たちだ(いずれも11月22日公開)。  『インターステラー』は、『メメント』(2000年)や『ダークナイト』(08年)、『インセプション』(10年)のクリストファー・ノーラン監督による4年ぶりのオリジナル作品で、自身初となる宇宙SF。近未来、地球規模の環境悪化と食糧難により人類の滅亡が迫る中、NASAは太陽系外で新天地となり得る惑星を探す極秘ミッションを進めていた。経験を買われた元パイロットのクーパー(マシュー・マコノヒー)は、愛する家族に「必ず帰る」と約束し、先遣隊が送ってきたデータを頼りにブランド博士(アン・ハサウェイ)らと惑星間飛行へ旅立つ。  ノーラン監督は理論物理学者キップ・ソーンの協力を仰ぎ、時空の歪みやブラックホールなど最先端の宇宙物理学の理論を反映させつつ、親子や男女の絆と愛を織り込んで壮大な冒険物語を構築。巨匠スタンリー・キューブリックがSF作家アーサー・C・クラークと組んだSF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』(68年)に、ストーリー面でも映像面でも比肩する傑作を完成させた。  共演陣もジェシカ・チャステイン、マイケル・ケイン、ケイシー・アフレックと演技派がそろい、短い出演ながらマット・デイモンも強い印象を残す。『2001年…』のHAL9000や『エイリアン2』(86年)のアンドロイド「ビショップ」を想起させるAIロボットのTARSや、宇宙飛行士の会話に出てくる「闇の奥」(『地獄の黙示録』の原作小説の題名でもある)など、映画マニアを喜ばせる仕込みもたくさん。映像表現の現在の到達点ともいえる宇宙空間の描写とスペクタクルな惑星間飛行のシーンを体感するためにも、大スクリーンでの鑑賞を強くオススメしたい。  『日々ロック』は、榎屋克優の同名コミック(「週刊ヤングジャンプ」で連載中)を、『SR サイタマノラッパー』(09年)の入江悠監督が映画化した青春ムービー。サエない高校時代の仲間とロックバンドを組んだ日々沼は、ビッグになることを夢見て上京する。ライブハウスで住み込みで働きながら、演奏活動を続けていたある日、ステージに酔った女が乱入して「雨あがりの夜空に」を熱唱。彼女は、デジタルな演出でカリスマ的人気のアイドル・咲だった。咲から「私に曲を書いて」と依頼されたことで、日々沼のロック人生が大きく変わっていく。  映画・テレビドラマの出演が相次ぐ若手注目株・野村周平が、コミュニケーション能力に問題を抱えながらもギターを持つとパワフルに豹変する、ロックバカな主人公を熱演。絶叫系のボーカルは好き嫌いが分かれそうだが、丸裸でギターを抱える姿にロッカーとしての説得力を感じさせる点はさすが。  咲役の二階堂ふみも、大ステージでのアイドルオーラあふれるパフォーマンスから、壊れそうに弱い少女の素顔をのぞかせる場面まで、振り幅の広い好演が光る。ビジュアル系バンドとのライバル関係をはじめ、大ネタ小ネタが次々に繰り出されて笑いっぱなしだが、青春のほろ苦さと夢の切なさと友情の熱さもしっかり描かれた快作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『インターステラー』作品情報 <http://eiga.com/movie/78321/> 『日々ロック』作品情報 <http://eiga.com/movie/80063/>

死も覚悟するほどの腹痛を治した、北朝鮮“奇跡の”鍼治療「100本のぶっとい針が……」

nk3-1.jpg
ホテル内の医療施設で注射。看護師さんは美人でした。
 こんにちは。北朝鮮ライター(北朝鮮リア充研究家)の安宿緑です。  前々回(2010年11月)の訪朝で、私は病気になってしまいました。連日、立っていられないほどの激しい腹痛に見舞われ、下痢が止まらず、食事もすべて戻してしまう状態。これでは取材どころか、外出もできない。病状は日に日に悪化し、もはや日本に戻ることすら危うくなっていきました。  そのためホテル内の病院にかかり、そこで錠剤投与を5回ほど、その他栄養補給として注射、点滴など複数回の治療を受けました。海外医療保険に入らずに来てしまったため金額におびえましたが、幸い北朝鮮は無償医療のため、治療費を請求されることはありませんでした。
nk3-2.jpg
自室でまで点滴を受けるありさま。
   とはいえ、どれもこれもまったく効かず。点滴なんて、ホテルの部屋に来てもらってまで打ったんですけどね。それでも、なんとか歩けるようになるまでは回復しましたが、発作的な胃痛はどうしようもなく、痛みが再発しないように祈るしかない状態でした。  そんな中、ある一般人が住むマンションを訪問させてもらうことになりました。依然、体調は万全ではなく、トイレと居間を往復するばかりで、ついにはその場で倒れ込んでしまいました。  住人たちの「一体こいつは何をしに来たんだ?」という空気が突き刺さり、さらに内臓がキリキリ痛みました。  「このまま北朝鮮で死ぬのかな……」とボンヤリと天井を見つめていると、シャレにならない状況だということを悟ってくれたのか、住人たちは即座に医師を連れてきてくれました。  北朝鮮では基本的に、マンション1棟につき一人は医師が居住しなければならないという規則があるとのことで、運良く隣の隣に医師が住んでいたのです。 ペク医師「薬も点滴もダメだったのか? うーん……」  私を診察したペク医師は少し悩んだ後、「じゃあ、これしかないな」と言って、カバンの中から直径1ミリはあろうかと思われる、ぶっとい鍼を出してきました。もはや言葉を発する気力もなかった私は、不気味に光る針先を、もうどうにでもなれという思いで見つめました。  ペク医師は手際よく、鍼を私のヘソ周りと、胃腸のツボが集中しているといわれる膝に刺していきました。その数、およそ100本。  針山のようになった腹と膝を見ながら、私はポツリとつぶやきました。 「いま、地震が起きたらどうしよう」  すると、私を見下ろしていた面々が一斉に笑いました。 「朝鮮では地震なんてないよ」  地震の少ない朝鮮半島、少なくとも皆が生きてきた間には地震を経験したことはないそうです。きちんと調べてみないとわかりませんが、過去100年間まともな地震は起きていないとも。 「日本ではしょっちゅう地震が起きています」と私が言うと、「怖い。絶対に住みたくない」と、皆一様につぶやいていました。  まあ一説では、北朝鮮の聖山・白頭山噴火間近といわれているので、もうすぐ地震どころじゃ済まなくなるんでしょうけどね。  その晩は、そのままマンションで夜を明かしました。  そして翌日。なんと、胃腸が痛くない! 下痢もない! むしろ食欲が止まらず、出されたご飯をモリモリと食べる私。絶好調でした。何をしても取れなかった痛みが、鍼で何事もなかったように消えるとは……。  ホテルへ戻るとき、どうしてもお礼を言いたかった私はペク医師を連れてきてもらい、マンションをバックに一緒に写真を撮りたいとお願いしました。命の恩人が住むマンションですからね。日本に戻ったらその写真を手に、思い出話をするつもりでした。  私のカメラは充電が切れてしまったので、住人に撮影と現像を頼みました。  しかし後日、マンションを訪ねて写真を受け取ると……。
nk3-3.jpg
 なんだか、キラッキラまぶしいんですけど……?  見ての通り、背景がマスゲーム会場に差し替わっていたのです。「アリラン公演」をイメージしたものだそうですが、よくある観光地のプリクラのような強引さです。 私「ちょ……この背景はないでしょ! マンションをバックにしたから意味があったのに!」 住人「何言ってるの! アリラン公演をイメージした、栄えある背景なのよ。一番人気なの」  そうか、そう来たか……。そういえば、現像所に「背景タイプA」とか「背景タイプB」とか選べる欄がありました。ご丁寧にも一番人気の「背景タイプ:アリラン」を選んでくださったのですね。いや、ある意味素敵だとは思いますが、被写体が我々であるという点が問題です。  ともあれ、ペク医師のおかげで無事日本に戻ることができました。本当に感謝です。
nk1643.jpg
 ちなみに、こちらはペク医師が開発されたという注射薬「アトロクソフィリス」。いわくEUにも輸出されているそうですが、個人的にはペク医師の鍼のほうが効きそうな気もします。               ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

ダルビッシュ有の交際宣言で心配される、古閑美保の傷心とダルを狙うもう1人の存在

darubissyu.jpg
一家総出でダルに寄りかかってくるぞ

――毒舌コラムニスト・今井舞が、話題のアノ人物やアノニュースをズバッとヒトコトで斬り捨てる!

◎ダルをめぐる鼻息
 ダルビッシュ交際宣言! 本当に、ダルの趣味だけはよくわからん。紗栄子→古関美保→カトパン→山本聖子……。どう読み取ればいいのか。ダヴィンチコードか。また意味深な時期にカトパン昏倒してるしな。そして古関美保は死ぬほど未練タラタラ。

 だけどよく考えたら古関美保よ、「ダルビッシュと付き合えた」というだけで、素晴らしい人生の1ページだったじゃないか。元気出せよ。「でもッ、カトパンだったらまだあきらめつくの! だけど山本聖子て! 私と大して違わない、山本聖子てッ!! キーッ!! イヤーッ!! ■○☆×●♪□◆!!!!!!!」。……。恋愛体質の女が失恋したときって、エネルギー放出がすごいからなぁ。乗り越えても、「カワイソー」という視線は一生つきまとい、忘れた頃に心のかさぶたを剥がされる。一生グジュグジュ。

校内で起こるわいせつ犯罪、背景に横たわる歪んだ権力構造

【messyより】

211121cw.jpg
『スクールセクハラ:なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』幻冬舎

 文部科学省の調査によれば、2012年度にわいせつ行為でなんらかの処分を受けた教員の数は、186名になるという。すべての処分がニュースになったと仮定すると、視聴者はちょうど2日に1件はわいせつ教師の事件を目にしたことになる。換算してみたら、これはすごく多いんじゃないか、と思う。そうなってくるとニュースの受け手のほうも慣れっこになっていて「また変態教師か」だとか「またロリコン教師か」だとか、半分呆れながら受け流してしまうかもしれない。

 1990年度に処分されたわいせつ教員は22名。20年間でおよそ9倍の教員が処分されるようになっている。

続きを読む

吹石一恵主演『ママとパパが生きる理由。』視聴率5.6%の低発進……「重い」「つらい」目を背ける人たち

mamato1121.JPG
TBS『ママとパパが生きる理由。』
 吹石一恵が主演を務める連続ドラマ『ママとパパが生きる理由。』(TBS系/木曜21時~)が20日にスタートし、初回平均視聴率5.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、低発進だったことが分かった。  同作は、13日に最終回を迎えた西島秀俊主演『MOZU Season2~幻の翼~』の後番組。現在のところ、全5話を予定しており、初回は『日米野球』の延長により40分遅れでのスタートとなった。  原案は、幼い子どもたちを抱えながら乳がんと診断され、さらに間を置かずに夫も肺がんとなった女性によるブログを元にした、ノンフィクション書籍『私、乳がん。夫、肺がん。39歳、夫婦で余命宣告。』(大和出版)。母親役の吹石や、肺がん宣告を受ける夫役の青木崇高のほか、山崎樹範、袴田吉彦、田中哲司、風吹ジュンらが出演している。 「初回視聴率は、プライム帯で放送中の連ドラの中で、同局の『女はそれを許さない』(火曜22時~)を下回る最下位。本来なら、裏番組で全話20%超えの『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)と全面対決になるはずだったため、もし野球延長で後ろ倒しにならなかったら、さらに低かった可能性もあります」(芸能ライター)  ネット上では、視聴者から「勇気づけられるドラマ」「明日は我が身だと思って、受け止めたい」「夫婦の自然体の演技がよかった」といった賛辞が上がる一方、「心が痛くなりそうだから、ちょっと見れない」「あらすじ読んだだけで、つらい」という“見なかった理由”を挙げる人が見られ、今のところ真っ二つといった印象だ。 「長らく連ドラが苦戦中のTBSですが、テッパンの病気もので挑んでも、裏番組に太刀打ちできなかったようです。今期のTBSは、『女はそれを許さない』が4%台まで落ち込んでいるほか、『ごめんね青春!』(日曜21時~)が1ケタ続き。他局に遅れを取っています」(同)  今後、『ママとパパが生きる理由。』の起死回生はあるだろうか?

デブスな親友にイケメン外国人彼氏がいた! 私ももっとデブってあの男を横取りしてやる!

【作品名】『ブスの世界』(後編) 【作者】桐野さおり『ご近所の悪いうわさ』

【作品紹介】チョ~デブスの親友・雪絵には、イケメン外国人彼氏がいた!! ただのデブなのに「グラマー」だなんて……正気なの? 雪絵の彼を横取りするために、私も体重を増やして、前髪パッツンヘアーにイメチェン。これであの男は私のモノよ!

【サイゾーウーマンリコメンド】チョ~デブスの親友・雪絵には、イケメン外国人彼氏がいた!! ただのデブなのに「グラマー」だなんて……正気なの? 雪絵の彼を横取りするために、私も体重を増やして、前髪パッツンヘアーにイメチェン。これであの男は私のモノよ!

(前編はこちら)

西島秀俊に続き向井理「泣ける…」人気俳優の結婚ラッシュに大ダメージ!

女性向けWebサイト【messy】とって出し! 全部読む
osamu1121cz.jpg
(左:『COLORS』ワニブックス/右:『Men’s JOKER 11月号』ベストセラーズ)
 西島秀俊(43)の結婚により、ショックを受けた世の女性たちの心の傷が癒える間もなく、またもやイケメン独身俳優の結婚が発表された。  かねてから交際がささやかれていた俳優の向井理(32)と女優の国仲涼子(35)の結婚が判明したのだ。2人は、2012年1月クールで放送されたドラマ『ハングリー!』(フジテレビ系)での共演がきっかけで交際に発展。約2年半の交際を経てゴールインするという。12月下旬に婚姻届を提出する予定だそうだ。 つづきを読む

“水の怪物”マイケル・フェルプスの元恋人が、ストーカーのような売名行為を展開

<p> オリンピック史上最多となる18個の金メダルを獲得し、“水の怪物”と呼ばれていた競泳選手のマイケル・フェルプス(29)。世界中のスイマーから尊敬されている彼だが、女には苦労しないモテ男で試合にも彼女を同行していたこと、「水泳選手はみんなプールでおしっこしてる」といったトンデモ発言を放つなどの逸話を数多く残している。<br /> </p>

Sexy Zone、3周年イベントで浮き彫りになった課題 年末のテレビ露出でどう解決する?

20140101-sexyzone-01.jpg
メンバーが流動化するグループとなったSexy Zone。

【リアルサウンドより】

 Sexy Zoneが11月19日に新シングル『君にHITOMEBORE』をリリースした。また、11月16日にはCDデビュー3周年を迎えることから、同日には東京都内で記念イベントを開催した。

 前作『男 never give up』が、メンバーのマリウス葉、松島聡を除き、佐藤勝利、中島健人、菊池風磨の3人のみでリリースすることになったことに対し、ファンからは反発の声もあがっていたが、今作『君にHITOMEBORE』もまた同じ3人でのリリースとなった。いっぽう、CDデビュー3周年イベントには、メンバー全員で出演したが、ジャニーズJr.のジェシー、平野紫耀、永瀬廉、神宮寺勇太、岩橋玄樹、松倉海斗、松田元太、半澤暁、増田良といったメンバーも出演していた。

 イベントにはファン1万1000人が訪れ、アイドルグループとしての勢いを感じさせたものの、その方向性については今なおファンが疑問符を投げかけているのが現状だ。Sexy Zoneにとっての課題はどこにあるのか。ジャニーズの動向に詳しい佐藤結衣氏は、次のように語る。

続きはこちら

入江悠監督のメジャーでの所信表明『日々ロック』たった一人の聴衆に捧げる屋上ライブの愚直さ

hibi_rock01.jpg
『日々ロック』でデジタル系人気アイドル・宇多川咲を演じた二階堂ふみ。そのままデビューできちゃいそうなほど超ラブリーです♪
 勉強はできない、スポーツもできない、ファッションセンスなし、コミュニケーション能力は著しく低い。そんな“まるでだめお”な主人公が唯一輝ける瞬間がある。それはギターを手に、自作の曲を大音量でがなり立てているときだ。がなっているうちに気持ちよくなって、すぐ裸になってしまう。いや、輝いていると思っているのは自分だけで、ほとんどの人はダサくて、うるさくて、頭のおかしな露出狂としか認識していない。それでも彼は爆音でギターを弾き、そして叫び続ける。そうすることでしか、自分の体の中に渦巻いている猛烈な感情を吐き出すことができないからだ。松竹系で全国公開される『日々ロック』は、入江悠監督にとって初のメジャー公開作となる。『SRサイタマノラッパー』(09)でインディーズ映画シーンを席巻した入江監督による、メジャーでの所信表明的な作品と言えるだろう。ロックであることに、メジャーもインディーも関係ねぇ!! そんなシンプルなメッセージが作品を貫いている。  「週刊ヤングジャンプ」連載中の榎屋克優の同名コミックを原作に、超売れっ子の二階堂ふみをヒロインに配するというメジャー映画っぽいパッケージだが、中身は『SRサイタマノラッパー』三部作と同様に異様なまでに暑苦しく、鬱屈している。『SR』との違いを挙げるなら、ラップがロックに代わり、主人公たちが田舎からあっさり東京に上京してきたことぐらい。野村周平演じる主人公・日々沼拓郎は原作以上の変人で、すぐ裸になり、『少林寺木人拳』(76)のジャッキー・チェンかよと思うくらいまともな台詞がない。高校時代のイジメられっ子仲間たちと組んだバンド名は“ザ・ロックンロール・ブラザーズ”とダサダサの極み。歌詞はひとりよがりで、歌もうまくはない。はっきり言って、彼らの演奏は自分たちだけ気持ちよくなっているマスターベーションにしか過ぎない。無名な男たちの自慰行為にお金を払う奇特な客はおらず、彼らがステージに立つライブハウスはいつもガラガラだった。  ある日、童貞たちの巣窟と化していたライブハウスに、ひとりの珍客が現われる。ザ・ロックンロール・ブラザーズの演奏のド下手さに怒りを覚え、酒に酔った若い女性がステージに乱入してきた。酒乱で怖いもの知らずな、今をときめくアイドルシンガーの宇多川咲(二階堂ふみ)だった。咲はマイクを奪い、RCサクセションの名曲「雨あがりの夜空に」をブチかます。メジャーデビューを果たした売れっ子と売れないインディーズバンドとの違いを見せつけるように、咲はエネルギッシュなステージングで居合わせた観客を一気に魅了してしまう。自分たちのライブをめちゃめちゃにされた日々沼たちだが、嵐のように現われて去っていった咲に心の童貞を奪われる。彼女のキュートな凶暴さは、それこそロックだった。いつか彼女を振り向かせるような曲を書きたい、演奏したい。日々沼たちの演奏がただのマスターベーションから、リスナーを意識したものへと開かれていく。童貞臭をぷんぷんさせる日々沼にとって、咲は大切なミューズとなる。
hibi_rock02.jpg
『パズル』の野村周平、『桐島、部活やめるってよ』の前野朋哉、黒猫チェルシーのドラマー・岡本啓佑が“ザ・ロックンロール・ブラザーズ”を結成。
 入江監督とは『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(11)ですでにタッグを組んでいる二階堂ふみは、今回のアイドル役を実に楽しそうに演じている。「雨あがりの夜空に」を熱くシャウトした後は、宇多川咲としてのオリジナルナンバー「サンライズ」「ラブリーサマータイム」をポップに歌い上げる。カワイイということは、それだけで充分にメジャーたりえる価値があるようだ。園子温監督の『地獄でなぜ悪い』(13)でコミカルな魅力を、熊切和嘉監督の『私の男』(14)で妖しい美しさを披露した二階堂ふみが本作でまたまた新しい顔を見せる。酒乱で凶暴という破壊願望丸出しなアーティストとしての一面をさらす一方、ステージを降りてひとりぼっちになった彼女の素顔はとてもナイーヴで、ちょっとした衝撃でバラバラに壊れてしまいそうな弱々しい女の子でしかない。メジャーとインディーの狭間で揺れる人気アイドル・宇多川咲は、今の二階堂ふみにぴったりの役だろう。  宇多川咲は天使なのか悪魔なのか? 女性偏差値が限りなくゼロに近い日々沼にとって、宇多川咲はまるで遠い星からやってきた異星人のような存在だ。でも、そんな宇宙人、いや宇多川咲とコンタクトできる手段がある。それがロックだ。消耗品であるアイドルは寿命がとても短いことを自覚している咲は、ロックバカの日々沼に「私のために曲を書いて」と頼む。日々沼にとって初めてのオファーであり、ザ・ロックンロール・ブラザーズがメージャーシーンと接点を持つ絶好のチャンスだった。だが、そのことが原因で、バンドは解散の危機を迎える。みうらじゅん原作、田口トモロヲ監督によるロック映画の金字塔『アイデン&ティティ』(03)の中で、ヒロイン(麻生久美子)は主人公の中島(峯田和伸)に「君は私のことをマザーだと思っているでしょ? でもマザーって、君が思っているような安定型じゃなくて破滅型と隣り合わせなんだよ」と静かにすごんで見せた。宇多川咲も日々沼にとって単に美しく、創作意欲を掻き立ててくれるミューズではない。女とは、男に多大なる試練を与える邪神、魔神でもあることを『日々ロック』は描いている。  邪神、魔神、宇宙人でもかまわない。自分の曲を、自分たちの演奏を初めてちゃんと聴いてくれた宇多川咲に、今の想いをすべてブチまけた曲を捧げたい。遠い世界へ旅立とうとする彼女のためだけに、日々沼は新曲を演奏する。ギャラリーは咲以外は誰もいない。強風と豪雨が吹き荒れる悪天候での屋上ライブだ。それまでのぐだぐだ、うだうだぶりの一切合切が、この屋上ライブで一気に反転する。自分自身の才能のなさに対するコンプレックス、成功者に対する妬み、生きていくことの息苦しさ、夢を見続けることの耐えがたい重み……。そういったすべてのネガティヴな感情を全部プラスに転じて、日々沼は絶唱する。たったひとり、咲だけに届けばいいと願いを込めて。それは、絶望というとても深い暗黒の淵に架ける、小さな小さな頼りない橋だった。
hibi_rock03.jpg
日々沼(野村周平)たちは大豪雨の中で屋上ライブを決行する。リスナーはたったひとり、どこかで聴いているはずの宇多川咲だけだ。
 大型扇風機による強風と大量の雨という台風コントを思わせるベタな設定の中で、丸2日間にわたってぶっ通しで歌い続けた野村周平は、役づくりというレベルを越えて、ロックバカの日々沼そのものと化していく。自分のためだけに、純粋無垢なロックを捧げるバカものがいる。窓を開けた咲が、そして二階堂ふみが、微笑む。言葉にならない何かが通じ合った瞬間だった。  2015年1月31日(土)には、松竹よりもさらにメジャーな東宝系で入江監督が撮ったサスペンス大作『ジョーカー・ゲーム』が公開される。今後もメジャーから面白いオファーが届けば、入江監督はメジャーの仕事を受けるだろうし、インディーズで撮りたいテーマが見つかれば、またインディーズに戻って撮ることだろう。入江監督にとって、メジャーであるかインディーであるかはさほど重要な問題ではない。日々沼が愚直なまでにロックを追い求めたように、入江監督もまたロックな映画を作ることに情熱を注ぎ続けるはずだ。 (文=長野辰次)
hibi_rock04.jpg
『日々ロック』 原作/榎屋克優 脚本/吹原幸太、入江悠 監督/入江悠 出演/野村周平、二階堂ふみ、前野朋哉、落合モトキ、岡本啓佑、古舘佑太郎、喜多陽子、毬谷友子、蛭子能収、竹中直人 配給/松竹 11月22日(土)よりロードショー  (c)2014「日々ロック」製作委員会 (c)榎屋克優/集英社  http://hibirock.jp