
ブレイクが確実視される土屋太鳳、19歳。主演作『人狼ゲーム ビーストサイド』では今まで経験したことのない難役にチャレンジしてみせた。
大ヒット上映中の『るろうに剣心 京都大火編』ではアクションマニアを唸らせる難易度の高い殺陣を見せ、絶賛放映中のNHK連続テレビ小説『花子とアン』では花子の妹・もも役を熱演中。体育大学に通う現役女子大生・土屋太鳳(つちや・たお)は、身体能力の高さに加え、ひたむきな演技力で観客の心を魅了するハイスペックな若手女優なのだ。来年のテレビ小説『まれ』のヒロインの座をオーディションで勝ち取ったガッツの持ち主でもある。インタビュー記事に目を通していただければ、性格のピュアさも伝わるだろう。
ブレイク間違いなしの逸材・土屋太鳳にとっても、またファンにとっても「えっ!?」と驚いてしまうのが主演映画『人狼ゲーム ビーストサイド』。正体不明の何者かによってセミナーハウス風の建物内に監禁された10人の高校生たちが、生死を賭けた「人狼ゲーム」に挑むというもの。主演の土屋は、「村人」を襲う「人狼」のカードを引いてしまった樺山美佳という難役中の難役に挑んでいる。『バトル・ロワイアル』(00)出演時の柴咲コウを彷彿させるタフなキャラクターだ。ブレイク前の試練ともいえる人狼役に、彼女はどのように挑んだのだろうか?
──巻町操役で華麗なアクションを披露した『るろうに剣心 京都大火編』が大ヒット上映中。香港のアクション俳優ドニー・イェンばりの開脚キック(ドニーキック)を見事に決めましたね!
土屋 ありがとうございます(笑)。あの開脚キックのシーンは大変でした。どうしても体を捻りすぎて、顔が後ろに向いてしまうんです。頑張って、何テイクも撮ったんです。
──『るろ剣』シリーズのアクション監督・谷垣健治さんが、「あのシーンはノーワイヤーなのに、『ワイヤー感ありすぎ』と言われてしまう」とこぼしてました。
土屋 えっ、ひどい! あのシーンはワイヤーは使ってませんよ。左足が痛くなるまで何度もテイクを繰り返したんです。どうしても軸足になる左足に負担が掛かって、繰り返しているうちに痛くなってくるんです。頑張って15時間掛けて撮影したんです。「ワイヤーで吊ってる」なんて、ひどいですよ~。

由佳(土屋太鳳)たち10人の高校生は生死を賭けた人狼ゲームを行なうことに。村人役は10人の中に潜んでいる2人の人狼役を見つけて処刑しなくてはならない。
──怒った土屋さんの表情も素敵です(笑)。でも、10代の女の子で香港アクション映画好きで、ドニー・イェンをリスペクトしてるのも珍しいですよね。
土屋 アクションものが全般に好きで、家族みんなでよく観てました。弟がとくに香港アクション映画が好きなんです。私もジャッキー・チェンさん主演の『ラッシュアワー』(98)は何度も繰り返し観ましたね。アクション映画を観ているうちに、どうしても香港アクションもの、そしてドニー・イェンさん出演作にハマってしまうんです(笑)。ドニーさんって、技の切れ味が鋭いんです。『るろ剣』に出演が決まって、谷垣さんからいろいろアクション映画を見せていただいたんですが、「この人、観たことあるなぁ」と思っていたら、ドニーさんでした。後から気づいたんです(笑)。
──谷垣さんはドニー・イェン率いるスタントチームの重鎮ですからね。えっと、あまりドニー・イェン話をしていると宣伝担当者の視線が気になるので、そろそろ主演映画『人狼ゲーム ビーストサイド』の話題を。「人狼ゲーム」のルールに従って、高校生たちが実際に殺し合うという驚愕の密室サスペンス。かなり過酷な体験だったのでは?
土屋 はい、私も今回の出演オファーをいただいたときはビックリしました。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』や『花子とアン』などはオーディションを受けていただいた役でしたが、今回の『人狼ゲーム ビーストサイド』は「次の主演映画が決まったよ」とマネージャーさんに言われて、「あっ、はい。やります!」という感じで脚本を読んだんですね。これまでに出演した作品には明快なテーマがあって、「よし、自分の役を演じることで、作品のテーマを観る人に届けよう」と思えたんです。でも、今回の作品は脚本を読んでも「何を伝えたいんだろう?」とすごく悩みました。人狼ゲームが進んでいく中で、参加者たちを次々と追い詰めなくちゃいけない役。難しかったですし、戸惑いました。
──これまでは『鈴木先生』(テレビ東京系)の小川蘇美みたいな優等生役を演じることが多かっただけに、余計難しかったでしょうね。
土屋 はい。私は演技を基礎から学んだわけでもないですし、その役として生きることが役づくりだと考えているんです。作品の社会的背景やテーマ性について自分なりに考えることで、これまで役づくりをしていたんですが、今回の樺山由佳役はそういった役づくりができませんでした。
──今まで自分なりに培ってきた役づくりのノウハウが役に立たなかったと。
土屋 そうなんです。でも、高校生同士が殺人ゲームを行なうってセンセーショナルさだけのエンターテイメント作品にはしたくなかったんです。リハーサルが3日間あったんですが、悩んだだけで何もつかめませんでした。どうしようかと考えているうちに、クランクインの朝が来て、家を出るときに姉が写真を撮ってくれたんですね。太陽が薄い雲に覆われていて、私の顔が映っている画像なんですが、その様子がまるで人間がオオカミに変身してく姿に思えたんです。今にも「ワォーン!」って吠え出しそうな感じ(笑)。姉が撮った画像を見て、思ったんです。今回の作品は人を殺したり殺されたりする物語なだけでなく、人が人でなくなっていく過程を描いたものじゃないかなって。そう思いついた瞬間、モヤモヤが収まりましたね。自分なりのテーマをつかむことで、撮影に挑むことができたんです。それでも、大変でしたけど(苦笑)。

深夜ドラマ『リミット』で共演した桜庭ななみ主演『人狼ゲーム』(13)と同シリーズ。「ななみちゃんと同じ作品に出演する喜びもありましたが、撮影は大変でした」と語る。
──前作『人狼ゲーム』(13)に続いてメガホンを取った熊坂出監督から、ヒントは提示された?
土屋 さらけ出す、むき出す、自由、という3つの言葉をヒントとしてもらったんです。でも、本当の意味での自由って何だろうって余計に悩みました(笑)。本当の自分をさらけ出すって、魂を削ってまで自分を追い込んでいかないとできないことなんだなって今回やってみて実感しましたね。
──殺人ゲームに従うかどうかは別にして、生きること死ぬことを自分自身に置き換えて考えさせる内容ですね。
土屋 日常生活をものすごく、ギューッと凝縮した世界なんじゃないかと思うんです。由佳たちのいる空間は一見すると極端な世界に見えますが、私たちのいる学校や会社にも通じるものがあると思うんです。由佳たちは何もわからないまま突然セミナーハウスみたいな場所に集められてゲームを強要させられ、ゲーム内容を理解できようが理解できまいが一方的にゲームが進行してしまう。ゲームが進む中で、自分自身を失ってしまう……。あって欲しくないんですけど、学校や会社といった環境が自分の性格に合わずに人間性が壊れてしまうことってあると思うんです。私、うまく言葉で説明できないんですが、この作品を観た方たちが何かを考えるきっかけになればいいなって。
──俳優はよく「自分の中にある引き出しを開ける」っていいますけど、自分の中にある人狼の引き出しを開けるのは怖くありませんでしたか?
土屋 う~ん、実は撮影中のことはよく覚えていないんです。OKの声が掛かって、「あれ、終わったんだ」みたいな感じだったんです。もちろん演じるという意識はあるんです。「よ~いスタート」が掛かった瞬間に目を閉じて、目を開けたらもう自分は由佳なんだと思い込むようにしていました。心をなるべくフラットにするように心掛けて。目を一度閉じて、こうやってキッと睨むとキツそうな顔に見えるんですよね(笑)。後は普段の自分とはなるべく異なるようにしようと思い、ビンボー揺すりをずっとしていました。普段、私はビンボー揺すりしないので、他のキャストの様子を観察していたんですが、男子ってみんなすごくビンボー揺すりするんですね。今まで気がつかなかった(笑)。役づくりしていると、普段は気がつかないことがいろいろと見えてきますね。
──なるほど、普段の自分とは違うキャラクターになるように努めたと。
土屋 はい。でもその分、なるべく普段の自分を大切にしようとも思いました。撮影の本番じゃないときは、他のキャストのみんなと一緒に仲良くご飯を食べたり、お話するように心掛けました。シリアスな内容だったので、キャスト同士での連帯感も強まりましたし、スタッフが美味しいご飯を用意してくれたり、明るい言葉を掛けながらメイクしてくれるのも有り難いなって思いました。あっ、でも撮影中は家族には電話できませんでしたね。電話したら「もう、嫌だ~」って泣き出してしまいそうで(笑)。撮休が1日だけあったので、自宅に一度戻ったんですね。姉に久しぶりに会ったら、やっぱり泣いてしまいました。
──合宿スタイルでの5日間の撮影だったそうですが、過酷な体験だったようですね。村人役の美海(森川葵)と対峙するクライマックスは、本気で涙を流しているように思えました。
土屋 あのシーンは本当に辛かった……。私は人狼役だから絶対に泣いちゃダメだと自分に言い聞かせて臨んだシーンだったんです。でも、必死で泣くのを抑えようとしても、あのシーンは堪え切れませんでしたね。「泣くのは由佳らしくないな」と思って、熊坂監督にお願いして、もう一度撮り直していただいたんです。先日、みんなで初号試写を観たんですが、泣いている最初のテイクが使われていました。それを観て、「あっ、泣いている由佳も本当の由佳なんだな」って理解できたんです。「ひとりで生きていける」と強がっている由佳だけど、本当は人が好きで、友達を欲しがっている女の子なんだなって。自分ひとりで考えているときにはわからなかったことが、作品を通して観ることで理解できたように思います。
──フィクションであるはずの由佳と素の土屋さんが融合した不思議なシーンに仕上がっていましたね。由佳役になることに苦闘している土屋さんが由佳役と一体化するまでのドキュメンタリーを観ているかのような気分でした。
土屋 多分、キャストのみんなそれぞれが大変だった作品だと思うんです。久々にみんなで集まって初号試写を観たときに、「このキャストとスタッフだから、最後まで頑張れたんだな」と思えましたね。今までにやったことのない役で悩みましたけど、自分にとって大事な体験になったように思うんです。自分らしさって何だろう? 本当に生きている実感ってどこにあるんだろう? そんなことをご覧になっていただいた方に感じてもらえればいいなって思っているんです。

宗教や民族が違うだけで殺し合う人間社会の写し鏡でもある『人狼ゲーム』の世界。土屋太鳳はこれまでにないハードなキャラクターに挑んでみせた。
──では、最後は素の土屋さんへの質問。日記帳代わりにネタ帳を持ち歩いているそうですね。どんなことを書いているんでしょうか?
土屋 気になった言葉などをノートに書き記すようにしているんです。例えば、「将を射んとすれば馬を射よ」とか「ご飯はよく噛め」とか。福山雅治さんの言葉ですけど、「料理上手は芝居上手」とか(笑)。
──どういう基準で土屋さんのアンテナに引っ掛かったのか非常に謎です(笑)。
土屋 最近だと、『花子とアン』で共演させていただいている鈴木亮平さんから教わった言葉もあるんですよ。この間、収録の合間に「太鳳ちゃん、ちょっと聞いてくれる? 弱点って、内に秘めればコンプレックスだけど、外へ出せば個性なんだよ。だから、太鳳ちゃん、大丈夫だよ!」って。そのときは思わず「えっ、それはどういう意味ですか?」って返してしまいましたけど、いい言葉ですよね(笑)。
──村岡印刷さんに言われると、なんだかそんな気になりますね。『花子とアン』に続いて、来年3月から始まる連続テレビ小説『まれ』の主演も決まって、これからますます多忙になりそう。
土屋 そうなんです! 『花子とアン』の収録がようやく終わったばかりで、秋からは『まれ』の撮影が始まるし、いろいろとスケジュールが入ってくるので大変なことになりそう(笑)。でも、ひとつひとつのお仕事を、手を抜かずにしっかりやりたいです。『人狼ゲーム ビーストサイド』を撮り終わったときに感じたことなんですが、同時代を生きているみなさんと一緒に踏ん張って生きていきたいなって。これからもよろしくお願いします!
(取材・文=長野辰次/撮影=尾藤能暢)
『人狼ゲーム ビーストサイド』
原作/川上亮 脚本/山咲藍 監督/熊坂出 出演/土屋太鳳、森川葵、藤原季節、小野花梨、育乃介、桜田通、青山美郷、佐久間由衣、加藤諒、國島直希 企画・配給/AMGエンタテイメント 8月30日(土)より新宿武蔵野館ほか全国公開
(c)2014「人狼ゲーム BEAST SIDE」製作委員会
http://jinro-game.net
●つちや・たお
1995年東京都出身。黒沢清監督の『トウキョウソナタ』(08)で映画デビュー。『釣りキチ三平』(09)や『日輪の遺産』(11)でも印象的なキャラクターを演じた。NHK大河ドラマ『龍馬伝』では坂本乙女の少女期、『鈴木先生』(テレビ東京系)では小川蘇美役で注目を集める。犯罪サスペンス『アルカナ』(13)、異色ファンタジー『赤々煉恋』(13)ではヒロイン役に。現在はNHK連続テレビ小説『花子とアン』に村岡花子の妹・もも役で出演中。大ヒット上映中の『るろうに剣心 京都大火編』に続いて『るろうに剣心 伝説の最期編』が9月13日(土)より公開される。2015年3月スタートのNHK連続テレビ小説『まれ』のヒロインにも決定。