
人気コミックの実写化『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』。高校生の美月(橋本甜歌)の股間に貞操帯(T・S・T)が妖しく食い込む。
最近、角川映画のようすがちょっと気になるのだが。角川書店と合併してKADOKAWAに社名変更し、現在はブランド名としてのみ残る角川映画だが、壇蜜の初主演作『私の奴隷になりなさい』(12)がロングランヒットを記録して以降、かなりの独自路線を突き進んでいる。『私の奴隷』は壇蜜の写真集やメイキングDVDも同時期にリリースするという角川映画の伝統芸・メディアミックス効果もあり、“壇蜜”という一種の社会現象を生み出した。続いて佐々木心音主演の官能ファンタジー『フィギュアなあなた』(13)、さらに過激さを増した壇蜜主演のSM映画第2弾『甘い鞭』(13)、桜庭一樹原作のライトノベルを芳賀優里亜主演で映画化した『赤×ピンク』(6月18日DVDレンタル開始)とR指定の異色作を次々と公開。どれも主演女優が大胆なフルヌードを披露していることで共通している。5月17日(土)より劇場公開される恋愛コメディ『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』は、『天才てれびくんMAX』(NHK教育)などで活躍した元ジュニアアイドルの橋本甜歌を主演に抜擢。テレビアニメ版ではヒロインの自慰シーンなどがBPO(放送倫理・番組向上機構)で審議された問題作に、橋本甜歌はまさに裸で勝負している。
『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』、略称『妹ちょ。』は、高校生の美月(橋本甜歌)と同じ高校に通う夕哉(小林ユウキチ)が親同士の再婚によって同じ屋根の下で暮らし始めるというベタすぎるくらいベタな“義妹萌え”の世界だ。家族が増えたことを素直に喜ぶ夕哉に対し、人づきあいが苦手な美月はよそよそしい態度しかとれない。両親が別れれば、また孤独な生活に戻ることになる。それなら最初から仲良くしないほうがいいと。そんな美月に、交通事故に遭ったものの成仏できないという自称幽霊の寿日和(繭)が取り憑いてしまう。内向的な美月に比べ、日和は幽霊と思えないほどポジティブな性格。優しい夕哉に恋心を抱いており、この想いが叶えられれば成仏できるとのこと。日和が憑依した美月は、素っ裸で夕哉の寝床に潜り込むなど“危ない妹”に大変身。しかも、股間には日和が成仏しないと外れないという貞操帯(T・S・T)が装着されている。ビザール調の貞操帯が、美月の股間で妖しい黒光りを放つのだった。
実写化するには、あまりにもベタすぎる『妹ちょ。』の世界。この企画を成立させるために呼ばれたのが、人気カメラマンの青山裕企氏だった。『スクールガール・コンプレックス』『絶対領域』『パイスラッシュ −現代フェティシズム分析−』などフェティッシュな写真集で知られる青山氏を監督に起用したことで、『妹ちょ。』は下世話なエロ映画になるギリギリのところでポップさと思春期の危うさを漂わせる作品に踏み止まった。共同監督を務めたのは伊基公袁(IGGY COEN)氏。日大芸術学部監督コース卒業、TVディレクターを経て、AV監督になったというプロフィールの持ち主。エロティックさとコメディを両立させる演出力が評価され、青山氏と共に監督デビューを果たすことになった。

両親が仕事で家を空け、美月は義兄の夕哉(小林ユウキチ)と2人っきりで暮らすことに。血は繋がっていないから近親相姦にはならない?
青山監督のフェティッシュな世界観と伊基監督のコメディタッチの演出との相乗効果によって、橋本甜歌が演じるヒロイン・美月が3D映像のように二次元の世界から飛び出してきた。内向的な性格の美月と日和が憑依したことで萌えキャラに突然変異する、橋本甜歌の一人二役ぶりがとても自然に感じられる。陰と陽の二面性を持つキャラクター像は、いかにも10代の女の子らしい。また決して芝居がうまいわけではないが、橋本甜歌というタレントにとっても二面性を演じ分けることは自然なことのように映る。『天才てれびくんMAX』にレギュラー出演していた時期は“いい子”として愛され、その後はギャルブロガー“てんちむ”としてぶっちゃけキャラへと変貌を遂げた。多分、どちらも彼女のリアルな一面なのだろう。日和を演じたグラビアアイドル・繭の女性らしい成熟したボディに比べると、20歳そこそこの橋本甜歌の裸体はさほどエロスを感じさせるものではない。だが、ラストシーンで見せるヘアヌードには、思わずときめいてしまった。ヘアでこんなにも胸が高鳴ったのは、宮沢りえの写真集『サンタフェ』以来ではないか。
『妹ちょ。』や一連のR指定作品を手掛けているKADOKAWAの大森氏勝プロデューサーは、橋本甜歌を主演にキャスティングした経緯を以下のように語る。
「ヌード、しかもフルヌードになって、そこそこの製作費を回収できる女優さんを探さなくてはいけないのがこの手の企画の難しいところです。演技が巧くても無名では難しく、かといって有名な女優さんは無理。初脱ぎで、かつキャラクターがたっていて、知名度もある……ということをいつも念頭において探しています。『妹ちょ。』の場合は、妹っぽい属性をもった子でなくてはいけないので、タレント性がないと難しいのではないかと思っていました。そんな時、コンビニの成人誌のコーナーで、橋本さんのグラビアが掲載されている雑誌を見たんです。確か、赤いビキニを着て、まだ少女のような幼さの残る顔と胸、そしていまどきの長い足。とてもナチュラルなグラビアで、これまで見たことのないタレント性を感じました。主役の格がある、と一瞬で思ったんです。調べたら、子役で人気を博し、少女時代を綴った『中学生失格』がベストセラーになったてんちむ=橋本甜歌さんだと分かった。すぐスマホで調べて所属事務所に電話して、原作と企画書をもって伺ったところ、子役で有名だった彼女がギャルタレントから大人のナチュラルなイメージへ転身するのに、大きなきっかけを求めているタイミングだったんです。青山監督も伊基監督も彼女に会って、ぴったりだと印象をもった。そしてなにより、橋本さんが原作のファンで、ご本人が『やりたい!』という意思が明確だったのが、いちばんの決め手だったと思います」

自称幽霊の日和(繭)に取り憑かれた美月。原作やテレビアニメ版とは異なる映画版としてオリジナルの結末が用意されている。
脱いでくれる女優なら「誰でもOK!」なわけではなく、企画の特性とイメージチェンジを図る女優側とのタイミングがうまくハマらないと映画として成立しないとのことだ。それにしても、メジャー系とは一線を画する角川映画のこの独自路線はどこまで続くのだろうか。7月19日(土)には、お菓子系アイドルとして人気を博した木嶋のりこ主演作『ちょっとかわいいアイアンメイデン』の公開が控えている。名門女子高の拷問部を舞台にしたR15作品で、YouTubeに予告編がアップされてすぐに削除されたというかなりの過激さが売りだ。エロくて、ポップでフェティッシュという新分野は果たして確立できるのか。ライトノベルというジャンルから直木賞作家・桜庭一樹ら本格派の作家たちが育ったように、表現の自由度が高いR指定路線から新しい才能が飛び出していけば面白い。サブカルシーンからメジャーへのジャンピングボードとしての機能を果たす新しい角川映画に期待しよう。
(文=長野辰次)
『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』
原作/松沢まり 監督/青山裕企、伊基公袁 脚本/伊基公袁、港岳彦 音楽/ハジメンタル 主題歌/神前美月「HOW’S IT GOING?」 出演/橋本甜歌、小林ユウキチ、繭、矢野未夏、葉山レイコほか 配給/KADOKAWA R-15 5月17日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国公開
(c)2014「最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。」製作委員会
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