
撮影=尾藤能暢
団鬼六の小説を原作に映像化され続けてきた『花と蛇』シリーズ。杉本彩主演、石井隆監督による『花と蛇』から10年、シリーズはさらなる成長を遂げ、このたび公開される最新作『花と蛇ZERO』では、主演女優が3人という大胆な設定になった。『探偵はBARにいる』シリーズの橋本一監督がメガホンを取り、よりエンタテインメント性が高まった作品になっている。
主人公3人は、夫の借金のカタとして闇サイトで陵辱される遠山静子(濱田のり子)。その闇サイトを見て自ら緊縛の世界に飛び込んでいく、専業主婦の瑠璃(桜木梨奈)。そして、闇サイトの真相を暴くため、妹を助けるために陵辱されることを決意する女刑事の雨宮美咲。美咲を演じた天乃舞衣子は、初の緊縛、初のSMプレイだったとか。果たして、新たな快感を得られたのだろうか?
――雨宮美咲役はオーディションで勝ち取ったそうですね。
天乃舞衣子(以下、天乃) とても有名なシリーズということと、橋本一監督とご一緒できるということで、ぜひやりたいと思ったんです。『花と蛇』なので、ヌードになることはわかっていました。でも作品に必要なことですし、この作品だったら私も脱ぐことにも全力でトライしたいと思ったので、大丈夫でした。
――美咲は仕事一筋の刑事。そんなキャラクターだからこそ、捜査のためならなんでもやるのかもしれないと思わせるものがありました。
天乃 緊縛もSMも、捜査を機に体験しただけ。でも、一度その世界に入ったら、逃れられなくなってしまった。誰もが、気持ちの解放をしてみたいという欲望を持っているんじゃないかなって思いますね。
――美咲は捜査のためなら、トイレで自慰しろという犯人からの命令も受け入れてしまいます。『花と蛇』ならではのエロティックなシーンでしたが。
天乃 実は、撮影初日の最初のシーンだったんですよ。何も考える間もなく、とにかく懸命にやりました。いきなりあのシーンをやったことで、逆に開き直れましたね。気がついたら、裸で現場を歩くようになっちゃいましたし(笑)。
――橋本一監督の演出は、いかがでしたか?
天乃 私は映画に主演するのが初めてなので、主演としての心構えから教えていただきました。とても明るい監督で厳しい面はないのですが、ちょっとした顔の角度などを本番で間違えてしまったときは、指導されました。リハーサルだとできるんだけど、本番になると気持ちが入りすぎてしまって、この角度で止めなきゃいけないのにそれがうまくできなくて。何度も何度もやりましたね。でも橋本監督って、基本的には撮影を楽しんでいる方という印象です。監督が楽しんでいる中で、私は何百回と鞭で打たれ続けてました(笑)。

――SMや緊縛には、どんなイメージを持っていましたか?
天乃 見ることのないものだと思っていました。イメージとしては、男性のもの、エロティックなもの。まさか自分が映画でやるなんて思ってもいなくて。撮影に入る前に、体にどれぐらい傷や痕がつくかを見るために体験緊縛というものをやったんです。縛られること自体は特に痛くなかったのに、ブワーッと湿疹みたいなのが出てきてしまって。服の上から縛られていたので、脱いだときにびっくりしましたね。初めてだったから、体が驚いたのかも。でも、そうやっていくうちに体が少しずつ縄になじんでいくらしくて、傷がどんどんつかなくなるんですよ。人間って、すごい適応能力ですよね(笑)。
――裸で縛られるって、どんな感覚なんでしょう?
天乃 プロの緊縛師の方にちゃんと縛ってもらうと、ギュッと抱きしめられているような、しっかりとした安心感があるんですよ。宙吊りは床で縛ってもらってから上に吊ってもらうんですが、浮いたときは、今まで体験したことのないアトラクションのような不思議な感覚で面白かったですね。縛られるコツは、自然と受け入れることだと思います。緊縛自体はそんなに痛みはないので。でも、鞭で打たれるのは本当に痛かったですよ(笑)。鞭ってこんな叩き方をするんだって思うぐらい、いろんな叩かれ方をされましたし、みみず腫れもアザもできましたから。M役になって思ったのは、思いきり叩いてもらえることが、すごくうれしいということ。それが快感になるんでしょうね。でも私自身は、SとMどちらもある気がします。
――逆に、誰かを調教したくなったのでは?
天乃 やってみたいですね。思いっきり鞭で叩いてみたいです(笑)。
――いま、表情がすごく輝きましたよ(笑)。それほどまでに苦労しただけあり、緊縛ショーは芸術的なシーンになりましたね。
天乃 そうなんです、だから男性だけでなく女性に見てほしいという思いもあるんですよね。緊縛ショーのシーンでは私を含めた3人の女性が縛られてつなげられて、一斉に宙に吊られるのですが、私たちがつらくないようにと、一発で撮るぞという張りつめた空気になっていました。みんなで作り上げたという達成感で、撮影が終わって寂しかったほど。もう縛られることはないのかって思ってたんですけど、写真集の撮影でまた縛られたので、もっと見たい方はぜひ写真集も見てください(笑)。
――撮影期間中の精神状態は、どんな感じでしたか?
天乃 今まで生きてきた中で、一番の極限状態だったと思います。家に帰っても撮影が休みの日でも、なんにも手につかない。役に入り込んでしまっているのか、しっかり寝ることもできなくて。現場が嫌で行きたくないとかではなく、そういうことも考えられないぐらい没頭していましたね。明日のシーンのことを考えるというよりは、次なにがあるかわからないという恐怖と期待。橋本監督は何をしてくるかわからないからと、下準備もしっかりして。そんな毎日が楽しみでもありました。だから撮影中は毎日、生きることで必死(笑)。でも撮影をしていく中で、どんどん気持ちが前向きになって、スタッフさんたちもみんな「早く観たいね」って撮影中から言っていたほどなんですよ。それぐらい橋本監督を信じることができたし、作品のことも信じていたということだと思います。
――天乃さんがお芝居に興味を持ったきっかけは、なんだったんですか?
天乃 舞台に出たことですね。デビュー当時はグラビアやタレント業をやっていたんですが、初めて女優として舞台に立ったときの感動は忘れられません。周りの役者さんから受ける感情がとても新鮮で、心地よくて。もっといろんな感情に出会ってみたい、もっといろんな役に出会いたいなって、すごく思いました。

――自分の性格を表すとしたら?
天乃 真面目だねって、よく言われますね。あと、急に何かをしだす。『花と蛇ZERO』も、ほとんど誰にも相談せず、ひとりで決めたような話でしたし。自分で嫌な部分は、いっぱいあります。普段はすごくぐうたらで、家からそんなに出ないんです。なんでも、「やらなきゃ」という感じで自分を動かすタイプ。舞台を観るのが好きなので、お休みの時は舞台を観に行くことが一番楽しいですね。でも、仕事をしているときが一番楽しいかもしれない。それ以上の趣味ってあまりなくて……。
――本当に真面目ですねぇ。なんでもお仕事や自分磨きにつなげたりとか。
天乃 これをすることで、どれぐらい自分の身になるか、ということが面白いんだと思います。今回の役みたいに、お仕事では未知の世界に惹かれてしまうんですよね。だから普段ノーマルなのかな。お酒も弱いので普段あまり飲まないんですが、舞台の打ち上げで飲んだときはすごく泣いてましたね。共演者の人が間違えて言った「また明日ね」という言葉に、「もう明日はないんだってば!」って大泣きしてました(笑)。周りの人は、めんどくさかっただろうなぁ。
――かわいいじゃないですか。もっと酔わせてみたいです。さまざまな苦労を重ねた映画『花と蛇ZERO』がいよいよ公開ですが、今の率直な気持ちは?
天乃 『花と蛇』シリーズを初めて観る方でも楽しんでいただける、官能エンタテインメントです。エロスだけじゃなく、サスペンス、アクションといった要素もありますし、今回は橋本監督ならではの笑いも入っています。早く観てほしいという気持ちでいっぱいですね。
――女優としても、これからさらに飛躍していけそうですね。
天乃 これだけのことを経験したというのが、すごく自分の糧になっていると思います。精神的にかなり強くなったので、どんな役が来てもやり遂げたいですね。
(取材・文=大曲智子)
●あまの・まいこ
1985年生まれ。09年、TBS系『関口宏の東京フレンドパーク2』のレギュラーアシスタントで芸能界デビュー。大学時代はグラビアアイドルとして活躍。卒業後は女優に。12年『笑う警官』、12年『第三世代』など舞台を中心に活躍。13年、R-15指定の舞台『問わず語り』では激しい濡れ場に体当たりで熱演、大ヒットを記録する。出演映画『奴隷区・僕と23人の奴隷』が6月28日より公開。初の写真集『天乃舞衣子写真集 ZERO』(ワニブックス)が発売中。
●『花と蛇ZERO』
原作/団 鬼六『花と蛇』(幻冬舎アウトロー文庫刊) 監督/橋本一 脚本/港岳彦
出演/天乃舞衣子 濱田のり子 桜木梨奈 津田寛治 川野直樹 榊英雄 辻本祐樹 菅原大吉 木村祐一
5月17日より全国ロードショー
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