
足を踏み入れた者は全員発狂すると噂されるタタリ村でのロケから帰ってきた小明嬢。一体、劇場版『コワすぎ!』の現場で何が……!?
2012年のリリース以降、全国のレンタルビデオ店で密かに話題を呼んでいるのが白石晃士監督のフェイクドキュメンタリー『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズだ。4月14日~19日に「ニコニコ生動画」でシリーズ全5作を連日放映したところ、最終日だけで10万人、6日間で延べ30万人以上が視聴するなど、低予算ホラー作品としては近年稀に見るヒットシリーズとなっている。そして、いよいよ『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』が5月3日(土)より劇場公開されることになった。
『劇場版・序章 【真説・四谷怪談 お岩の呪い】』で工藤ディレクターが「劇場版はアイドル呼んでやっから!」と高らかに宣言していたが、そのアイドルとは日刊サイゾーでおなじみ小明嬢であることが判明した。公開よりひと足早く『史上最恐の劇場版』を観たところ、小明嬢はとても演技しているようには思えない自然な演技を披露し、『コワすぎ!』ワールドを大いに盛り上げているではないか。“映画女優・小明”に、フェイクドキュメンタリーならではの撮影現場の面白さを存分に語ってもらった。
『コワすぎ!』シリーズの概略はざっとこんな感じ。低予算ビデオ作品として心霊現象の検証番組を製作している工藤ディレクター(大迫茂生)、アシスタントの市川(久保山智夏)、カメラマンの田代(白石晃士)の3人がレギュラーメンバー。口裂け女、廃墟に現われる幽霊、人喰い河童、トイレの花子さんなど様々な都市伝説を取材してきた。『劇場版・序章』で工藤ディレクターが突き止めたのは、「東海道四谷怪談」の作者・鶴屋南北は呪術者集団の拠点だった“タタリ村”の出身だということ。これまで撮影クルーが遭遇してきた怪奇現象もすべてタタリ村が関係しているらしい。そこで今回は劇場版ということで、サブカル界の人気アイドル・小明(小明)、浄霊師の宇龍院(宇賀神明広)、物理学者の斎藤(金子二郎)を連れて今までになく大々的にロケに向かう。ところがタタリ村は『コワすぎ!』シリーズのファンでさえ予測不能な悶絶級の怪奇現象が次々と起こるのだった。果たして小明ら撮影クルーは無事で済むのか?

『コワすぎ!』撮影クルーと共に廃村取材に向かう小明。いつもより高いギャラを提示され、まだこの時点ではやる気満々だった。
──劇場版『コワすぎ!』、面白すぎますよ! 低予算ホラーかと思いきや、宮崎駿監督の『もののけ姫』(97)や庵野秀明監督の『新世紀エヴァンゲリオン』(95年~96年、テレビ東京系)を実写化したような壮大なスケール感のあるSF作品に仕上がっている。しかも映画的な面白さに溢れている。これはもうホラーの枠を越えた大傑作ですよ!
小明 そうなんです、スケール感あるんですよね。低予算映画だと舐めて掛かると、舐め返されちゃう(笑)。でも、そこまで絶賛していただけるとは……。
──劇場版『コワすぎ!』も傑作ですが、ゲストヒロインである小明さんの自然な演技も素晴しい。実名で登場する小明さんの存在が、どこまでがフィクションでどこまでがリアルなのかの境界線を曖昧にしてしまう。フェイクドキュメンタリーの世界で、とても重要な役割を果たしていると思います。
小明 自然な演技というより、そのままの素の状態でカメラに映っていただけです(笑)。以前、私が迷走していた頃に出ていたDVDシリーズ『小明の感じる仏像』のプロデューサーから連絡があって、「映画に出てみない?」ってすごく軽い乗りで言われたんですね。その頃の私、国に払わなきゃいけない公金の支払いを溜め込んでいて、一気に支払ったらクレジットカードが使えない状態になって……。スケジュールもすかすかだったし。それで、「どうせ、出て1~2分で死んでしまう、ヒロインの友人役だろう」くらいのつもりで打ち合わせに行ったんです。そうしたら、意外と出ずっぱりだし、ゲストヒロイン的な扱いで驚きました。「誰か降板したんだろうな」と思ったんですけど、白石監督は丁度“売れないアイドル”を探していたみたいですね(笑)。低予算で過酷なロケにも文句を言わず、呼びやすい手頃なアイドルという条件を満たしていたのが私だったみたいです(笑)。

「お金がなかったこと、暇だったこと、そして敬愛する白石晃士監督の作品だということが、今回の出演の決め手でしたね」と笑顔で語る。
■白石監督はその人が持っているものを200%にしてしまう
──工藤ディレクターら『コワすぎ!』撮影クルーとの打ち合わせの席で、絶版になった写真集『エプロン宣言』(ぶんか社)や『アイドル墜落日記』(洋泉社)を持参して懸命に自己アピールした後、他の出演者たちが「心霊現象はあるかないか」を熱く討論しているのを、つまらなそうに聞き流している。あの表情が絶妙ですね。
小明 私、バラエティー番組に出てても、他の人のトークには興味ないんですよね(笑)。でも、そんなにつまらなそうな表情をしてました? まったく無自覚でした。『コワすぎ!』の撮影現場って、いつカメラが回っているか分からないんです。台本は一応あるんですけど、最低限のことしか書いてない。工藤ディレクターたちレギュラー陣は、ツーカーでアドリブできるし、台本を現場で読んでいる人は誰もいませんでしたね。私も「その台詞は感情を込めて」とか言われるとダメなんで、白石監督には事前に演技できないことはお話していたんですが、白石監督の返答は「全然、大丈夫です」でした(笑)。私自身が売れないアイドルでギャラ欲しさに参加したわけですし、その人が普段から持っているものを200%にして、白石監督はカメラに収めるみたいですね。
──「ギャラ欲しさ」とのことですが、そんな人間の欲望や好奇心が『コワすぎ!』の世界では超常現象を呼び起こすトリガーになっていますよね。足を踏み入れると全員発狂すると言い伝えられるタタリ村へ、小明さんたちは「ギャラ欲しさ」で同行してしまう。ここで引き返せばまだ間に合うという段階でも、「この映画、絶対話題になるから」「仕事がバンバン入るようになるから」と工藤ディレクターの甘言に釣られて、最後まで付き合ってしまう。売れたい、お金がほしいという欲望と自分の命とを天秤に掛けて揺れ動く人間の浅ましい姿が赤裸々に描き出されていく。
小明 去年の夏ごろの撮影だったんですが、私その頃は本当にお金がなかったんです。仕事の選り好みできなかったですね。多分、マジでヤバい心霊スポットの体験レポートでも引き受けていたと思います(笑)。低予算映画だと聞いていたのでギャランティーはあまり期待していなかったんです。サブカル系のお仕事だと“足代”だけなことが多いんですが、それでもいいから仕事くださいって状況でした。それで事前にギャランティーの金額を教えてもらったら、私が考えていたよりはかなり多かった。「あっ、けっこーくれはるやん!」って(笑)。二泊三日で東京郊外の山に登るというロケ撮影だったんですが、工場で1週間働くよりは全然いいなって(笑)。はい、それでバラエティー乗りで現場に行ったら、ガツンと痛い目に遭いました……。タタリ村のロケ地は車を降りて40分ぐらい山を登ったところにあって、かなりヤバい雰囲気のところでしたね。廃屋だらけで実際に何かあったみたいなところなんですよ。サブカルっ子は基本、廃屋が好きなんで写メをパシャパシャ撮っていたら、撮影クルーはどんどん先に進んで、私ひとりだけ取り残されかけましたね。

さっさと引き返せばよかったのに、ギャラ欲しさにタタリ村に来てしまった小明。カメラには怪しい影が映っていた!
──タタリ村でみんな不機嫌そうにしているのは、リアルにしんどかったから?
小明 そうなんですよ! かなりキツい山道で、最初はみんなで「歌でも歌いましょう♪」とか言っていたのが、次第に「しゃべると疲れる」みたいに黙りこくってしまった。それと、いちばんしんどかったのは、最後のトイレタイムから10時間くらいずっと尿意を我慢してなくちゃいけなかったことですね。女性は私と市川役の久保山さんの2人だけだったんです。それで男性スタッフが気を遣って野外用の簡易トイレを用意してくれたんですが、使用後に猫砂を掛けるタイプのもので、撤収する際にその猫砂を持ち帰らなきゃいけない。男性スタッフに使用済み猫砂を持ち帰らせる勇気は、私にはなかった。まだ、そういうプレイを平気で楽しめるほど大人ではないですね……。久保山さんは慣れたもので、ずっとトイレに行かなくても平気みたいでした。「こういう人が『コワすぎ!』のレギュラーになるんだなぁ」と感心しました。不気味な廃村で、歩き疲れ、しかも尿意をずっと我慢しての撮影。いろんなものとの闘いが現場では待っていました。しかも私と物理学者役の金子二郎さん(金子修介監督の実弟で本職は脚本家)以外はみんなレギュラーで仲いいし、金子さんはコミュニケーション能力のある方だし、私だけアウェー感を感じながらのロケだったんです。
■自分の中にいる、もう一人の自分のドキュメンタリー
──疎外感を感じ、ギャラか身の安全かで揺れ動いていた売れないアイドルに、“もののけ”が取り憑いてしまう。ゾンビアイドルとしても知られる小明さんが、まるでシュールレアリズムの絵画を思わせるとんでもない状態に。
小明 ありがとうございます。そう言ってもらえると、うれしいな♪ まだ完成品を観てないので、自分がどのように画面に映っているのか知らないんです(笑)。別に乳首が出てたり、ヘアが丸見えなわけじゃないんですよね? じゃあ、全然OKです(笑)。私としては、その後にもらった工藤パンチのほうがリアルに衝撃でした。大迫さんはボクシング経験者で、パンチが速くて見えないんです。本番の前に一応、「パンチを浴びる直前に首をのけぞらせると当たっているように見える」とレクチャーしてもらったんですが、私は体育の成績がずっと2でしたから。私のリアクションが遅いとパンチが入るし、私が首をのけぞるタイミングが早すぎると撮り直しになるし、勢い余って砂利の上に吹っ飛ばされるし……。工藤パンチを何発も浴びた後は、マジで朦朧とした状態のまま撮影が続いてましたね。
──白石組の現場もテストやリテイクはあるんですね?
小明 そうですね。白石監督が「このシーンはこんな感じです」ってザッと説明して、一回だけ軽くカメラテストして、後はすぐ本番って感じですね。大事なシーンに関しては撮り直しもあるみたいです。カメラマン役の白石監督がそのまま撮影しているんですが、すっごく楽しそうに生き生きとカメラを回している。「あ~、『コワすぎ!』は白石監督のライフワークなんだなぁ」って感じましたねぇ。
──お話を聞いていると『コワすぎ!』はフェイクドキュメンタリーではあるものの、ドキュメンタリー的側面がとても強い作品のようですね。
小明 本当にそうだと思います。私に関してはガチなドキュメンタリーでしたね。工藤役の大迫さんとも話したんですけど、カメラが回ってないと普通の方ですけど、お子さんと遊んでいるときとかに「ふと自分の中に工藤がいることに気づく」と言ってましたね。多分、久保山さんの中にも、アシスタントの市川というキャラクターがいるんでしょうね。自分の中にいるもう一人の自分を、白石監督はドキュメンタリーとして撮っているのかもしれないですね。だとするとヤバいなぁ、もう一人の私は今も山の中をさまよっているのかも! いや~、かなり大変な目に遭った撮影でしたけど、オールアップの瞬間は不思議なくらい「やりきった!」という充足感がありましたね。カメラに向かって思わず「みなさん、よくこんな過酷なロケに耐えてますね。我慢強いですね!」なんてケンカを売るようなことを口走ってしまいました(笑)。あのコメント、DVDの特典映像に入るのかな。

──では最後に、劇場版『コワすぎ!』を観るにあたって事前にチェックしておくとベターなものがあれば教えてください。
小明 そうですね、『増量版 アイドル墜落日記』が今年出たので、事前に購入していただけると、「こんな墜落人生を送ってきた売れないアイドルが、それでもめげずに低予算映画で頑張っているんだ」と劇中の私にすごく共感できると思うんです。おすすめですね(にっこり笑顔)。もちろんこの劇場版は、今までのシリーズを見ていなくても、充分に楽しめますよ! というわけで白石監督、これからますます続くだろう『コワすぎ!』シリーズにまた是非呼んでくださいね~!
(取材・構成=長野辰次)
『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』
監督・脚本・撮影/白石晃士 助監督・音響監督/中川究矢 出演/大迫茂生、久保山智夏、白石晃士、宇賀神明広、小明、金子二郎、大畠奈菜子、金子鈴幸ほか
配給/「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」上映委員会 5月3日(土)より渋谷アップリンクにて公開 ※公開初日は同劇場にて、白石監督、大迫、久保山、小明による舞台あいさつあり。また、シリーズ作品を一挙上映する「コワすぎ!祭」を現在開催中。
(C)ニューセレクト
http://albatros-film.com/movie/kowasugi
●あかり
1985年栃木県出身。2002年に眞鍋かをりを輩出した「ホットドッグプレスドリームガールズ」で準グランプリに選ばれ、芸能界入り。09年には『アイドル墜落日記』(洋泉社)を刊行するなどアイドルライターとして活動する一方、村上賢司監督、矢島舞主演映画『ゾンビデオ』(12)ではゾンビ女子高生を熱演し、ゾンビアイドルという新しい地平線を切り開いている。フェイクドキュメンタリーの第一人者である白石晃士監督の『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』に出演したのに続き、“Vシネ界の良心”城定秀夫監督の新作が公開待機中。女優として、何気にインディペンデント系の巨匠たちとのコラボが続いている。ゾンビアイドルとしてのグラビアページを追加した『増量版 アイドル墜落日記』(洋泉社)が現在発売中。