
冗談みたいなジョーダン・ベルフォードの実話を映画化した『ウルフ・オブ・ウォールストリート』。年収49億円のリッチライフがあなたのものに。
「この映画さえ観れば、あなただって億万長者になれるんです」。ドヤ顔でこちらを見つめるレオナルド・ディカプリオの口から、そんな言葉が聞こえてきそうだ。ディカプリオ主演作『ウルフ・オブ・ウォールストリート』には自己啓発セミナー的な面白さがある。元手がなくても、学歴がなくても大丈夫。ほんのちょっとしたコツを覚えて、ポジティブ思考さえ身に付けさえすれば、たちまち大金が転がり込んできて、美女にモテモテのウハウハ人生を送ることができるようになるんですよ。ウソじゃありませんって。だって、これは実在した伝説の株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォートの成功談なんですから。
1)すべてのピンチはチャンスと思え!
ディカプリオ演じるベルフォートは、いかにして20代で“ウォール街の狼”と呼ばれる男となりえたのか。ベルフォートが最初に勤めた職場、投資銀行の上司ハンナ(マシュー・マコノヒー)が成功への扉を開く鍵を握っていた。ハンナはチョー変人だ。ランチタイムにベルフォートを誘って高級レストランに行くが、食事は注文せずに昼間からテキーラを頼む。平気な顔して、鼻からコカインを吸引する。それも、とてもスマートに。コカインをキメることで頭がシャープになり、仕事の能率がアップするという。さらに1日2回は会社のトイレでオナニーするよう勧める。1日中株価を追い、セールスの電話ばかりしていると頭がバクハツしそうになるから。オナニーすることで血の巡りが良くなり、体がすっきりするというのが彼の持論。オナニーを怠ったばかりに自殺に追い込まれた部下がいたらしい。オナニーをバカにするな。はい、ここ大事です! 上司からブローカーとしての心得を教わり、目をランランと輝かせるベルフォート。ところが入社して半年、1987年10月19日、世に言うブラックマンデーが起きる。株価は暴落し、会社は倒産。上司ハンナともそれっきり。ベルフォートはプー太郎となるも、やる気マンマン! もぐりの株屋に再就職し、快進撃の始まり始まり。

ディカプリオの相棒役を演じたジョナ・ヒルのアドリブ演技がサイコー! 『グッドフェローズ』のジョー・ペシを思わせる名優ぶりだ。
2)セールスの基本は笑顔と安心感。商品の中身は関係なし!
青木雄二の漫画に出てきそうな、詐欺まがいの株屋で再スタートを切ったベルフォート。ここでは“ペニー株”と呼ばれる安いけれどリターンの見込みのないうさん臭い株を扱っている。すでにウォール街でトーク術を学んだベルフォートは、巧みなセールストークでビンボー人にペニー株を売りつけまくる。ビンボー人は株についての知識がないから、ペニー株の実体を知らずにホイホイ買ってしまう。ゴミをゴミ回収車に手渡す感覚だ。ビンボー人からお金を巻き上げるのはチョー楽勝。とはいえ、いつまでもビンボー人を騙し続けるのはしんどい。そこでベルフォートは気の合うドニー(ジョナ・ヒル)らゴロツキ仲間たち6人で新たに証券会社を設立。警戒心の強いお金持ちを相手にするのはビンボー人相手より難しいが、財布さえ開かせてしまえば後は簡単。だってお金持ちはビンボー人よりも強欲だから。最初だけディズニー株など“ブルーチップ”と呼ばれる優良株を紹介し、安心させてから“ペニー株”を大量に売りつける。ベルフォートはこのとき26歳。会社は瞬く間に成長し、ベルフォートの年収は何と49億円に!
3)金髪美女を侍らせろ。仕事の意欲がぐんぐん湧くぞ!
ブローカーたるもの、常にイケイケドンドンでなくてはならない。ベルフォートにドニー、会社の幹部そろって仲良くドラッグをキメる。重役会議はみんなハイハイハイ! かつての上司ハンナは1日2回オナニーしろと言ったけど、忙しくて手が離せないので、アシスタントの女の子に抜いてもらう。男性社員は誰もがこの子のお世話になった。社員みんなでスキンシップ♪ さらに社員への福利厚生として、ストリッパーやコールガールたちを職場に呼び込む。オフィスはもはや乱交パーティー状態だ。でも、そのぐらいのハイテンションさをキープしていないと、ウォール街でのし上がっていくことはできない。金持ちからお金をむしり取るベルフォートのことをマスコミは「現代のロビンフッド」と評する。ゴージャスな美女ナオミ(マーゴット・ロビー)と再婚し、大豪邸への帰宅は深夜タクシーならぬ深夜ヘリコプター、豪華クルーザーを海に沈めても平気なベルフォート。腰が痛くても、ドラック依存症になっても、決して弱音は吐かない。ギンギンギラギラ、株を売って売って売りまくれ~!

2番目の妻ナオミを演じたマーゴット・ロビーは豪州出身の23歳。ゴージャスなスーパーボディを惜しみなく披露してくれる。
本作を撮ったのは、ディカプリオとは5度目のタッグとなるマーティン・スコセッシ監督。前作『ヒューゴの不思議な発明』(11)で好々爺化したかと思いきや、ベルフォートたちを金融界のギャングスターに見立てることで傑作『グッドフェローズ』(90)や『カジノ』(95)ばりのクレイジーさが復活! 男たちは金の亡者となり、女たちはすっぽんぽんで、み~んな欲望丸出しの世界。敬虔なカトリック信者であるスコセッシ監督が描く、現代のソドムの市ですよ。とことん下品だが、ベルフォートら登場人物はみんな自分の欲望に正直に生きているという清々しさがある。ディカプリオが資金を集め、スコセッシ監督が撮りたいように撮れる製作環境をセッティングしたとのこと。ディカプリオ自身も出世作『ギルバート・グレイプ』(93)以来と思われる好演技を見せている。世間の常識や社会的倫理観にさえ縛られなければ、人間にはとんでもない可能性がまだまだ隠されていることを本作は教えてくれるのだ。
結局、ベルフォートは株価の不正操作とマネーロンダリングの罪を問われて、36歳で金融界を去ることになる。裁判で有罪判決を受けるものの、監視のいちばんユルい収容施設で3年間おとなしく過ごすことで釈放された。今回、ディカプリオが役づくりするのにベルフォート本人が協力したそうだ。スピーチが得意だったベルフォードは全社員をフロアに集めて、こう言ったという。
「オレのやり方をクレイジーだと思うか? そう思うヤツは今すぐ、この会社から出ていけ。そしてマクドナルドでアルバイトでもしてろッ」。人に扱き使われる人生とクレイジーな人生、あなたならどっちを選ぶ?
(文=長野辰次)
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
原作/ジョーダン・ベルフォート 製作/マーティン・スコセッシ、レオナルド・ディカプリオ 監督/マーティン・スコセッシ 出演/レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マシュー・マコノヒー、マーゴット・ロビー、ジャン・デュジャルダン、ロブ・ライナー、ジョン・ファブロー、カイル・チャンドラー 配給/パラマウント ピクチャーズ ジャパン R18+ 1月31日(金)より全国ロードショー
(c)2013 Paramount Pictures.All Rights Reserved
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