『あまちゃん』(NHK)や『半沢直樹』(TBS系)が大きな話題を呼んだ2013年。いわば、テレビドラマの当たり年だった。『半沢直樹』は40%を超える好視聴率を記録。一方で、同じTBSの『夫のカノジョ』が今世紀民放連ドラ最低を更新したことも話題となった。「いいものを作れば『半沢直樹』のように視聴者は見てくれる」とよく言われるが、それは半分正しいが、半分は間違っている。「いいもの」は、これまでもちゃんと作られていた。しかし、それが「見つからなかった」だけだ。『半沢直樹』や『あまちゃん』の成功で、「連続ドラマを見る」という習慣が戻ってきた。いいドラマが見つかりやすくなったのだ。そのことこそが、『半沢直樹』や『あまちゃん』の大きな功績のひとつだろう。そこで今回は、今年のドラマ界の注目トピックスをランキング形式で選んでみた。
1位 朝ドラの当たり年
2位 オリジナルドラマの傑作が誕生
3位 個性派主演男優対決
■堺雅人 VS 長瀬智也、そして綾野剛
13年を代表する俳優として、真っ先に思い浮かぶのは堺雅人だろう。『半沢直樹』では過剰な顔芸をシリアスに演じたかと思えば、『リーガルハイ』(フジテレビ系)でエキセントリックな弁護士・古美門研介をコミカルに演じ、視聴者を笑わせた。もともと、繊細で静かな役を演じることが多かった堺だったが、それとは180度違う役柄で魅了した。とかく「やりすぎ」と言われてしまいがちなところ、それを感じさせないのは、これまでの役で培った「品」があったからだろう。だから、過剰な演技の合間に見せるちょっとした仕草や表情に「憂い」のようなものを感じ、半沢や古美門が立体的で重層的な魅力を持つ人物となったのだろう。
また、長瀬智也も『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)と『クロコーチ』(TBS系)の2本で主演。まったく違うキャラクターを演じた。前者では、ヒロインが描く漫画の世界の住民で、その世界から現実の世界に飛び出した「はらちゃん」役。無知で無垢なキャラクターを演じた。一方、後者では、劇画の世界から飛び出したような無骨な刑事・黒河内役。策士で暴力的、荒々しくて豪快な男になりきった。まったく正反対の役を、それぞれハマリ役にしてしまった。
『最高の離婚』(フジテレビ系)、『空飛ぶ広報室』(TBS系)、そして大河ドラマ『八重の桜』(NHK)で印象的な助演を務めた綾野剛も印象的だった。
■次々生まれたオリジナルドラマの傑作
震災前の数年、ゴールデンタイムに放送されるテレビドラマは刑事ドラマ、医療ドラマ、原作モノばかりになっていた時期があった。しかし、震災後の2012年、その傾向が変わり、オリジナルドラマの秀作が増えていった。それが結実したのが13年だろう。『あまちゃん』を筆頭に、『泣くな、はらちゃん』『最高の離婚』『リーガルハイ』『Woman』(日本テレビ系)、『独身貴族』(フジテレビ系)など、オリジナルドラマの傑作が作られた。「震災」という抗いようのない「現実」に、どう立ち向かっていくか。そのひとつの回答が、宮藤官九郎、坂元裕二、岡田惠和、古沢良太ら、現在のテレビドラマをけん引する脚本家たちが13年に書いたオリジナルドラマで見せた「物語の力」だった。
象徴的なのは『泣くな、はらちゃん』だ。「世界とは何か?」「物語とは何か?」「人間とは何か?」、そして「生と死とは何か?」を、無垢なはらちゃんの目を通して見つめ直している。そして人間が生きること、死ぬことを、物語の力でしかできない方法で肯定し、救おうとした。それはテレビの連続ドラマでしか成し得ないもので、テレビドラマとしての矜持があふれていた。
■『あまちゃん』『ごちそうさん』 朝ドラ当たり年
傑作ドラマが多かった13年、その中でも突出していたのが『あまちゃん』だった。宮藤官九郎の脚本を井上剛、吉田照幸らが演出し、能年玲奈、橋本愛、小泉今日子らが演じたこの作品は多くの人を虜にし、語り合わずにはいられないドラマになった。かつて学校や会社で人が集まれば、「昨日あれ見た?」とテレビ番組の話題になるのが日常の風景だった。そんな見慣れた風景が失われて久しかった。だが、『あまちゃん』が始まってからというもの、人と顔を合わせれば「『あまちゃん』見た?」という会話をすることが多くなった。『あまちゃん』は日本の共通言語となったのだ。その話題も物語の行方はもちろん、役者の魅力や劇中アイドルたちの歌、モチーフにされた80年代カルチャー、そしてクドカンドラマの真骨頂とも言える小ネタの数々と多岐にわたり、果ては役者たちの今後までをみんなで心配する始末。「あまロス」などという言葉も生まれ、その後、数多くの関連番組も作られた。間違いなく13年を代表するドラマであると同時に、朝ドラ史、テレビドラマ史の中でも、これまでのテレビドラマを総括するような重要な作品のひとつであるといえるだろう。
そんな傑作の後で苦戦が予想された『ごちそうさん』は、それをいい意味で裏切り、視聴率でいえば『あまちゃん』を上回る好調っぷり。昔の「少女マンガ」のような展開と明るいノリだった「東京」編から「大阪」編に移ると、そのヒロインの明るさや前向きさの毒性という重いテーマを軽いタッチそのままに描く離れ業。
2本とも、毎週1時間という一般的な連ドラよりも毎日15分という現代の視聴習慣には合致しやすい朝ドラの優位性を活かした作りで成功している。13年は朝ドラの当たり年でもあったのだ。
■総括~『あまちゃん』世代台頭で新時代へ~
上に挙げたもの以外でも、『ダンダリン 労働基準監督官』(日本テレビ系)、『信長のシェフ』(テレビ朝日系)、『名もなき毒』『刑事のまなざし』(以上、TBS系)、『家族ゲーム』『天国の恋』(以上、フジテレビ系)や、深夜ドラマも『裁判長っ!おなか空きました!』(日本テレビ系)、『放課後グルーヴ』(TBS系)、『終電ごはん』『まほろ駅前番外地』(以上、テレビ東京系)など、個性的で印象深い作品が多かった。
また特筆すべきは、NHKの単発ドラマ『特集ドラマ「ラジオ」』。震災後の女川を舞台に実在の女川さいがいFMを描いたドラマで、刈谷友衣子が主演し、繊細で瑞々しい演技が光った。思えば、刈谷は『あまちゃん』の能年や橋本と同世代。3人は10年の映画『告白』でクラスメイトとして共演している。この世代の役者が今後、ドラマでさらなる活躍をしていくはずだ。テレビドラマが新たな時代に突入することを予言するような新世代の台頭だ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから
テレビウォッチャー・てれびのスキマが選ぶ、2013年のテレビ事件簿【ドラマ編】
『あまちゃん』(NHK)や『半沢直樹』(TBS系)が大きな話題を呼んだ2013年。いわば、テレビドラマの当たり年だった。『半沢直樹』は40%を超える好視聴率を記録。一方で、同じTBSの『夫のカノジョ』が今世紀民放連ドラ最低を更新したことも話題となった。「いいものを作れば『半沢直樹』のように視聴者は見てくれる」とよく言われるが、それは半分正しいが、半分は間違っている。「いいもの」は、これまでもちゃんと作られていた。しかし、それが「見つからなかった」だけだ。『半沢直樹』や『あまちゃん』の成功で、「連続ドラマを見る」という習慣が戻ってきた。いいドラマが見つかりやすくなったのだ。そのことこそが、『半沢直樹』や『あまちゃん』の大きな功績のひとつだろう。そこで今回は、今年のドラマ界の注目トピックスをランキング形式で選んでみた。
1位 朝ドラの当たり年
2位 オリジナルドラマの傑作が誕生
3位 個性派主演男優対決
■堺雅人 VS 長瀬智也、そして綾野剛
13年を代表する俳優として、真っ先に思い浮かぶのは堺雅人だろう。『半沢直樹』では過剰な顔芸をシリアスに演じたかと思えば、『リーガルハイ』(フジテレビ系)でエキセントリックな弁護士・古美門研介をコミカルに演じ、視聴者を笑わせた。もともと、繊細で静かな役を演じることが多かった堺だったが、それとは180度違う役柄で魅了した。とかく「やりすぎ」と言われてしまいがちなところ、それを感じさせないのは、これまでの役で培った「品」があったからだろう。だから、過剰な演技の合間に見せるちょっとした仕草や表情に「憂い」のようなものを感じ、半沢や古美門が立体的で重層的な魅力を持つ人物となったのだろう。
また、長瀬智也も『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)と『クロコーチ』(TBS系)の2本で主演。まったく違うキャラクターを演じた。前者では、ヒロインが描く漫画の世界の住民で、その世界から現実の世界に飛び出した「はらちゃん」役。無知で無垢なキャラクターを演じた。一方、後者では、劇画の世界から飛び出したような無骨な刑事・黒河内役。策士で暴力的、荒々しくて豪快な男になりきった。まったく正反対の役を、それぞれハマリ役にしてしまった。
『最高の離婚』(フジテレビ系)、『空飛ぶ広報室』(TBS系)、そして大河ドラマ『八重の桜』(NHK)で印象的な助演を務めた綾野剛も印象的だった。
■次々生まれたオリジナルドラマの傑作
震災前の数年、ゴールデンタイムに放送されるテレビドラマは刑事ドラマ、医療ドラマ、原作モノばかりになっていた時期があった。しかし、震災後の2012年、その傾向が変わり、オリジナルドラマの秀作が増えていった。それが結実したのが13年だろう。『あまちゃん』を筆頭に、『泣くな、はらちゃん』『最高の離婚』『リーガルハイ』『Woman』(日本テレビ系)、『独身貴族』(フジテレビ系)など、オリジナルドラマの傑作が作られた。「震災」という抗いようのない「現実」に、どう立ち向かっていくか。そのひとつの回答が、宮藤官九郎、坂元裕二、岡田惠和、古沢良太ら、現在のテレビドラマをけん引する脚本家たちが13年に書いたオリジナルドラマで見せた「物語の力」だった。
象徴的なのは『泣くな、はらちゃん』だ。「世界とは何か?」「物語とは何か?」「人間とは何か?」、そして「生と死とは何か?」を、無垢なはらちゃんの目を通して見つめ直している。そして人間が生きること、死ぬことを、物語の力でしかできない方法で肯定し、救おうとした。それはテレビの連続ドラマでしか成し得ないもので、テレビドラマとしての矜持があふれていた。
■『あまちゃん』『ごちそうさん』 朝ドラ当たり年
傑作ドラマが多かった13年、その中でも突出していたのが『あまちゃん』だった。宮藤官九郎の脚本を井上剛、吉田照幸らが演出し、能年玲奈、橋本愛、小泉今日子らが演じたこの作品は多くの人を虜にし、語り合わずにはいられないドラマになった。かつて学校や会社で人が集まれば、「昨日あれ見た?」とテレビ番組の話題になるのが日常の風景だった。そんな見慣れた風景が失われて久しかった。だが、『あまちゃん』が始まってからというもの、人と顔を合わせれば「『あまちゃん』見た?」という会話をすることが多くなった。『あまちゃん』は日本の共通言語となったのだ。その話題も物語の行方はもちろん、役者の魅力や劇中アイドルたちの歌、モチーフにされた80年代カルチャー、そしてクドカンドラマの真骨頂とも言える小ネタの数々と多岐にわたり、果ては役者たちの今後までをみんなで心配する始末。「あまロス」などという言葉も生まれ、その後、数多くの関連番組も作られた。間違いなく13年を代表するドラマであると同時に、朝ドラ史、テレビドラマ史の中でも、これまでのテレビドラマを総括するような重要な作品のひとつであるといえるだろう。
そんな傑作の後で苦戦が予想された『ごちそうさん』は、それをいい意味で裏切り、視聴率でいえば『あまちゃん』を上回る好調っぷり。昔の「少女マンガ」のような展開と明るいノリだった「東京」編から「大阪」編に移ると、そのヒロインの明るさや前向きさの毒性という重いテーマを軽いタッチそのままに描く離れ業。
2本とも、毎週1時間という一般的な連ドラよりも毎日15分という現代の視聴習慣には合致しやすい朝ドラの優位性を活かした作りで成功している。13年は朝ドラの当たり年でもあったのだ。
■総括~『あまちゃん』世代台頭で新時代へ~
上に挙げたもの以外でも、『ダンダリン 労働基準監督官』(日本テレビ系)、『信長のシェフ』(テレビ朝日系)、『名もなき毒』『刑事のまなざし』(以上、TBS系)、『家族ゲーム』『天国の恋』(以上、フジテレビ系)や、深夜ドラマも『裁判長っ!おなか空きました!』(日本テレビ系)、『放課後グルーヴ』(TBS系)、『終電ごはん』『まほろ駅前番外地』(以上、テレビ東京系)など、個性的で印象深い作品が多かった。
また特筆すべきは、NHKの単発ドラマ『特集ドラマ「ラジオ」』。震災後の女川を舞台に実在の女川さいがいFMを描いたドラマで、刈谷友衣子が主演し、繊細で瑞々しい演技が光った。思えば、刈谷は『あまちゃん』の能年や橋本と同世代。3人は10年の映画『告白』でクラスメイトとして共演している。この世代の役者が今後、ドラマでさらなる活躍をしていくはずだ。テレビドラマが新たな時代に突入することを予言するような新世代の台頭だ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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