
ノイズミュージックのパイオニア、非常階段の中心人物であるJOJO広重氏。
【リアルサウンドより】
コシノジュンコのメンバー入りや、全裸写真・MVで話題を集め、オリコンチャート1ケタを記録するアイドルグループの
BiS。聖水、汚物まき散らしライブ等で伝説化しているノイズミュージックのパイオニア、非常階段。2つの独創的なグループがコラボしたBiS階段のアルバム
『BiS階段』が、米音楽誌SPINの年間アヴァンギャルドベストアルバムにて7位に選出された。本ランキングではティム・ヘッカーや、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー等が選出され、ヴェルヴェッツやソニックユース、ニルヴァーナの名盤と並び評されている。
日本の音楽シーンの中では快挙といえるが、BiS階段の活動自体は、残念ながら国内の音楽メディアではほとんど取り上げられなかった。いったいなぜ、海外と国内でこれほど評価に差が生じたのか。BiS階段の首謀者であるJOJO広重氏に話を訊いた。
――なぜ日本のメディアは『BiS階段』を大きく取り上げなかったのでしょう。
JOJO広重(以下、JOJO):そもそも日本の音楽誌は広告を出すことで記事スペースを割く傾向にあります。これは邦楽と呼ばれるものが完全に国内向けに制作されるので、いかに国内でセールスするかという命題に対して、レーベルとメディアが相互扶助関係にあるから。つまり、広告を出稿したミュージシャンを悪く書けない、むしろ提灯記事になってしまうわけです。一方で僕らのようなアヴァンギャルドな音楽は言葉の壁が無いことで世界中からオファーが来ます。僕がやっている初音階段(初音ミク×非常階段のユニット)でもイギリス、スイスからライブオファーがありました。
――日本の音楽メディアには、アーティストが正当な評価を受けにくい構造があると。ではノイズミュージックへの評価は、海外と国内でどのように違うのか。
JOJO:これはノイズミュージックに対してだけではなく、アートと呼ばれるものに対しての理解度やニーズの違いかと思います。僕は日本の教育システムの問題も大きいと思っているのですが、日本はどうしても、勝てば官軍、売れたもの勝ちの思想が強いですよね。反対に海外は、オリジナルなものやアーティストへのリスペクトが高いし、国も積極的に援助しています。SPINなんて、レディ・ガガやマドンナも載る超メジャー雑誌ですからね。その雑誌がアヴァンギャルド・ランキングを毎年発表し、日本のノイズ・アイドルグループを7位に推すなんて、日本では考えられないでしょう。歴史を振り返ると、日本は戦争を境に欧米の価値観や文化がなだれ込む中で、全体主義、結果主義に過度に移行した面もあるのではないでしょうか。実は江戸時代は現在よりもっと文化的かつ享楽的だったといわれていますし。

BiS階段『BiS階段』(avex trax)
――日本の音楽シーンは、JOJO広重氏にどう映っているのか。
JOJO:海外はロックはロック箱(箱=ライブハウス等の会場)、ジャズはジャズ箱で演奏されます。日本では1つの箱でロックもヒップホップもジャズもノイズもやりますよね。そんな良い意味でのカオス感、ジャンク感から新しい組み合わせが生まれると思うんです。SPINのインタビューを受けた時、「非常階段が日本のトップアイドルとコラボできた事自体が凄いね。アメリカでやったらセルアウト呼ばわりだよ!」と言われました(笑)。もちろん僕も非常階段のファン、BiSのファン、初音ミクのファンを失望させたくないので細心の注意を払って作っています。でも、この3つのファンは大方「面白い!」「最高!」って楽しんでくれているようで、そんな聞く耳を持った柔軟な音楽ファンが日本にも沢山いる。これは凄いことだし、日本の音楽シーンはまだまだ面白くなる可能性がありますよ。音楽シーンだけではなく、ビジネスや社会の仕組み全体にいえることですが、視点をずらすことでコラボレーションの妙はまだまだ発見できると思っています。灰野敬二さんが車のCMに出たりとかね(笑)。絶対インパクトありますよ。
――最後に、JOJO広重氏にとってノイズミュージックとは何か?
JOJO:うーん…ドーナツの穴みたいな存在かな。あるけど無い、無いけどある。生きていくのに必要なものではないけど、意味すら無いのかもしれないけど、実は身近な生活に溢れているものでもあるという…。形が無いだけにあらゆる音楽と共存可能だとも言える。僕もノイズを35年やっていますが、まだ分からないし、簡単に分かってほしくないものでもありますね。
インタビューを通して、実はJOJO広重は狂気と好奇心と自尊心、そして客観性のバランスに長けた稀有なミュージシャンであることがお分かり頂けたと思う。昨今のCD不況やライブ動員の活況等、ビジネス面のみが話題にのぼることも多い音楽シーンだが「日本の音楽シーンはまだまだ面白くなる」と断言するミュージシャンがいること、その音楽を受け止めるファンが多くいることを、我々はもっと誇りに思っていいはずだ。
■取材・文=高根順次
スペースシャワーTVのアーカイブサイト
『DAX』、ドキュメンタリー映画
『フラッシュバックメモリーズ3D』のプロデューサー。BiS階段のライブ演出や企画プロデュースも担当。