
前田に詰め寄る乱入者と、それを制するセキュリティー。
ダル弟デビュー! ヤカラ乱入!──リングス・前田日明が主催するアマチュア総合格闘技大会『THE OUTSIDER(アウトサイダー)初・大阪大会』が8日、大阪市中央体育館・サブアリーナで開催された。メジャーリーガー・ダルビッシュ有の実弟、翔(24)が初参戦することで注目を集めた本大会だが、地元のヤカラが会場に乱入し、警察が出動する騒ぎも起きた。トラブルの原因は何なのか? そのとき翔は?──緊迫の舞台裏をレポートする!
これまで東京を主戦場としてきたアウトサイダーが、大阪へ初上陸。おまけに大阪が地元の翔も初参戦するとあって、この日の会場は超満員となった。
数試合が終わり、会場が温まったころに選手控え室を覗いてみると、ひときわ体の大きな男がジャージ姿で寝そべっていた。兄によく似た目鼻立ち。そう、この男こそが、第19試合に出場する翔である。
「格闘技を通じた不良の更生」をテーマとするアウトサイダーには、元不良が多く参戦しているが、翔もご多分に漏れず暴走族出身で、傷害と大麻所持で逮捕歴があるという。おまけに身長182センチ、体重100キロという巨漢ゆえ、その威圧感は半端じゃない。
恐る恐る近付いてインタビューを申し込むと、「すんません、試合前は勘弁してください。試合後やったらなんぼでも喋りますんで」と関西弁で丁重に断られてしまった。
仕方がないので客席へ戻ると、第9試合が終わった直後に、事件が起きた。
主催者席にいた前田日明の元に突然ペットボトルが飛んで来て、それを合図に5~6人のいかつい男たちが「前田、コラ!」などと叫びながらリングサイドになだれこんで来たのだ。そのうちの1人が前田につかみかかろうとしたところでセキュリティーが割って入り、前田はいったんバックスステージへ避難。それを追う者、群がる野次馬、逃げ惑う観客らで、会場はしばし騒然となった。

前田と強者関係者が話し合う会議室の外には、警察官の姿も。
乱入してきたのは、大阪の地下格闘技団体「強者」(昨年末に解散表明)の関係者たち。「大阪で興行をするのに、挨拶がなかった」ことに腹を立て、乱入を企てたようだ。ほぼ同時に、ロビーで消火器が撒かれる事件も起き、警察と消防が出動する騒ぎとなった。

騒ぎを聞きつけロビーに現れた翔。
やがて会場内の会議室にて前田と「強者」関係者の話し合いが持たれたが、その間、大会は中断。これが1時間以上に及んだため、痺れを切らした翔の後援者が「いつまで待たすんや! ワシらもう、選手も客も全員連れて帰るで!」と怒鳴り込んで来る一幕もあった。
騒ぎを聞きつけた翔もロビーに現れたが、後援者から「帰るで!」と言われると顔を曇らせ、「(試合を)やるんか?」と聞かれたら、「やります!」と即答。後援者はこれを聞き入れ、客席へと引き下がった。
結局、1時間半ほどの中断ののち、大会は再開。そして迎えた第19試合、翔がフードをかぶって颯爽と入場すると、会場はこの日一番の歓声に包まれた。アウトサイダー初出場の翔、その総合格闘技歴はわずか半年だという。
対する出田源貴(35)は、アウトサイダーの黎明期(2008年)から出場を続け、同大会で5勝2敗の戦績を誇る強豪。キャリアを考えれば、「翔に勝ち目なし」というのが下馬評だった。
ところが試合が始まると、翔は素早い踏み込みからフックやローを繰り出し、積極的に前に出る。力任せに押し倒し、丸太のような太い腕で出田を締め付ける場面も。

寝技で優勢に立つ場面も。
しかし2ラウンドに入ると攻撃パターンを見切られたのか、出足をローで制される場面が増え、動きは鈍化。一方の出田もスタミナ切れで動きが鈍り、結果は判定ドローとなった。「倒せなかったのが悔しい」という翔だが、その表情からは満足感も見て取れた。

兄の投球フォームに似ている?

試合後の翔に話を聞く。
──ナイスファイトでした。
「ですかね? まだわかんないんですよ、格闘技始めて3戦目なんで。(自分の攻撃が)効いてるのか効いてないのか、ようわからへん」
──なぜアウトサイダーに出ようと思ったのですか?
「精神的に弱いんで、それを克服したかったんですよ。今までの人生、大事なところで弱気になってしまうことが度々あった。(今日出場したことは)格闘技うんぬんではなく、人生的にすごいよかったな、と思う。今後の人生につながっていけばいいな、と」
──緊張は?
「まったくしなかったし、会場が大きいのもまったく気にならへんかったけど、やっぱり相手(のレベル)が普通のアレとは違いますね。要所要所、うまいっすよ。フックで入ったとき、ヒザ蹴りを合わせてきたりとか。うまいです。入り込めなかった」

──翔選手の踏み込みも速かったですよ。
「それが売りなんですよ。でも、速かったけど、行き切れてなかったでしょ? ビビってんですよ、あれ」
──ケンカとの違いは?
「あのね、ケンカって自分のアドレナリンで戦えるじゃないですか? ムカつくこと言われて自分でキレて、その勢いでバーッといけるけど、格闘技は違う。まったく知らない人と試合組まれて、日にち決められて、まったくムカついてもいない人とヨーイドン! で戦わなくちゃならない。これって結構、しんどいですよ(笑)」
──完全燃焼できましたか?
「あとであれこれ思うだろうけど、今日の段階でのベストは尽くせました」
──今日試合があるということをお兄さんに報告は?
「してないけど、知ってると思います。駄目出しされると思います」
──激励メールなどはもらえないんですかね?
「(兄は)そういうヤツじゃないんで。心の中で何かしら感じるタイプなんで。もっと自分が上に行けば相手してもらえるかもしれないですね。自分はまだまだです」
──今後の抱負は?
「とりあえず年内(の試合)はないです。次回は未定ですが、東京(開催のアウトサイダー)に行くかもしれません」
──応援団の人数がすごかったですが、全部で何人?
「450人ぐらいです」
──試合後、握手攻めにあっていましたね。
「こんなん、生まれて初めてです」
──今日は人生最良の日?
「間違いないです!」
大会終了後、前田日明は翔について、こうコメントした。
「正直、出田には勝てないと思っていたので、引き分けたのはたいしたもの。技術的には接近戦のショートフックがよかったですね。ハーフは優性遺伝の塊。ヘビー級でやるならもっと筋肉をガッチリつけて、110キロぐらいまで持っていって、そこから絞って動けるようにすれば、プロでも85から90キロのトップでいけるかも。アウトサイダーはヘビー級が人材不足。日本人の相手はちょっと見当たらないので、米軍とやらせてみたいですね」
翔の参戦により、これからの展開がますます楽しみになってきたアウトサイダー。次回大会は12月開催の予定である。また、アウトサイダーを題材にしたドキュメンタリー映画『タイトロープ』が11月9日(土)よりシネマート六本木ほかで全国順次ロードショーされることが決定した。詳細は公式FB(
https://www.facebook.com/tightrope1109)でご確認あれ!
(取材・文=岡林敬太)