今夏にプロデビューが予定されている、ロンドン五輪金メダリストの村田諒太。既報の通り、アマチュアボクシング界の至宝であった村田をプロに引っ張り出したのは、フジテレビ&電通の強力タッグによる力業だった。数千万円とも噂される破格の契約金に加え、東洋大学の職を辞す村田にフジのグループ会社での正社員待遇を保証してまで本人を口説き落としたというから、まさに資本力にモノを言わせた大人買いである。 そんな村田の所属先は過去に輪島功一ら3人の世界チャンピオンを輩出した三迫ジム(東京都練馬区)。同時に、業界最大手である帝拳ジムとの共同プロモートになることも発表された。これは一般的には知られていないレアケースだが、まずはその経緯を解説しよう。 そもそも長年に渡ってフジのボクシング番組に試合を提供してきたのは三迫ジムだ。フジが絡むことから、村田が三迫ジム所属になるのは自然な流れであるが、本来、日本テレビ系である帝拳ジムがサポートに絡むのは極めて異例。これは村田自身がプロ入りの条件として、帝拳ジム入りをかたくなに主張したためだと業界内で囁かれている。 「古くは大場政夫から西岡利晃まで、多数のチャンピオンを輩出してきた帝拳は世界に広いネットワークを持ち、国内随一のプロモート能力を備えたジム。特に村田の主戦場となる重量級のマーケットはアメリカ中心で、国内で世界タイトルマッチを組むのは容易ではありません。本気でプロの頂点を目指すなら、帝拳以外は考えられないという村田の主張は正しい」(某ジム会長) 帝拳ジムはプロモート面だけでなく、レベルの高い海外での練習環境を提供するなど、村田育成プロジェクトの中枢を実質的に担うことになる。業界内ではこれを「長年培われてきたクラブ制度【1】を崩壊させかねないウルトラCだ」(別のジム関係者)と揶揄する向きもあるが、国民的な知名度を誇るトップアスリートの参画は、ボクシング界を活性化させる話題に疑いはない。 こうした中、村田がプロ転向を発表した4日後の4月16日、当のフジが21年ぶり【2】にゴールデンタイムでボクシングの生中継を 敢行 したことも話題になっている。 中継されたのは、高校7冠のアマチュア実績を引っさげてプロ入りした、井上尚弥のプロ第3戦。ノンタイトル戦でありながら生中継がついたのは、辰吉丈一郎や畑山隆則を凌駕する素材と期待される井上であればこそ。村田のプロテスト中継(これまた異例のことだが)とのセット放送で、2時間の枠を用意する力の入れようだった。しかし、井上の過去2試合は、フジではなくTBSが中継してきた。局をくら替えしてのこのVIP待遇の裏には、フジの並々ならぬ野心が見え隠れする。 「井上が所属する大橋ジムでは、井上が価値のある商品に育つことを見越して、TBSとは1試合ごとの単発契約にとどめていたとか。そこで井上獲得に名乗りを上げたフジが破格の契約金を提示。TBSも負けじと提示額を吊り上げ、『大橋ジムとしては理想的な競り合いが繰り広げられた』ともっぱらです」(スポーツ紙記者) 村田獲得が大人買いなら、こちらはいわば先物買い。そもそもテレビ業界にとってボクシング中継は、ここぞというタイミングで高視聴率を叩き出す優良コンテンツのイメージが根強い。近年の亀田興毅の20%超えはいうに及ばず、1994年の薬師寺保栄vs辰吉丈一郎の一戦(関東地区平均で39・4%、関西で43・8%)などはもはや伝説的だ。 とりわけ昨年の大晦日には、井岡一翔を擁するTBSと内山高志を擁するテレビ東京がボクシング中継で好成績を挙げたのに対し、裏番組で『料理の鉄人』あらため『アイアンシェフ』で煮え湯を飲まされたフジである。村田と井上が、近い将来の大晦日商戦への切り札として期待されるのはもはや必然だろう。 だがしかし、井上第3戦はゴールデン枠にもかかわらず、平均視聴率6・9%という結果に甘んじた。 「番組制作を担当したプロデューサーK氏は、ボクシング界とお笑い界に太いパイプを持つことで知られる人物。CSのボクシング番組でも、昨年からMCに千原ジュニアを起用するなどファン層拡大のテコ入れに努めてきました。今回、村田&井上のために用意された2時間番組でも千原のほか、パネラーに9人の元世界チャンピオンを招くなど、少しでも視聴者の興味を引こうと努力していましたが、視聴者の声を拾ってみると、今ひとつMCと元王者たちの対話がかみ合わず、全体的に間延びした印象が指摘されています」(同) いささか不安が残るフジの思惑だが、一方で、確かな収穫もあった。プロテストで元日本王者とのスパーリングに臨んだ村田が、随所にプロに向けたモデルチェンジを感じさせる出色の出来と好評なのだ。 「アマ時代はブロック主体で地味なスタイルが目についたが、フリッカージャブを振ったり、世界ではやりのL字ガードを見せたり、プロで頂点を獲るための試行錯誤が感じられた。それまで『あのスタイルでは、プロでは厳しい』と見ていた関係者が翌日、『順当に育てばイケるかも』と手のひらを返していたのが印象的です(笑)」(某ジム・トレーナー) こうなると、井上で思い通りの数字が取れなかったフジにとって、村田への期待は俄然高まるはず。「今年は無理でも、来年の大晦日なら世界挑戦もあり得るのでは!?」(同)との声も上がっている。 そして、村田特需に期待を寄せるのは、テレビ局だけではない。これまで日が当たりにくかった国内の重量級ボクサー【3】が、こぞって村田との対戦をアピールしているのだ。なにしろ村田の対戦相手に選ばれれば、生中継がつくのは確実で、一気に全国区の知名度が得られる。まして、あわや 村田食い を果たそうものなら、即座に世界戦線に踊り出るのも夢ではない。もっとも、テレビならではの弊害も囁かれている。 「局の都合で、弱い相手ばかりを選んで勝ち星を積み重ね、いざ世界へ挑む段階でボロを出すパターンを我々は何度も目撃してきました。これでは拙速なキャリアづくりを強いられ、せっかくの素材を潰してしまうことになる。村田クラスの注目度でそれをされるのは、競技全体のイメージダウンにもつながります」(前出・スポーツ紙記者) テレビ局にとってボクシングは、あくまでビジネス。それゆえの論理が、不世出の逸材に重い足枷とならなければ良いが……。 (友清哲) 【1】クラブ制度 日本では伝統的に、プロボクサーは所属ジムが管理する制度が主流。これに対し、海外では選手がトレーナーやマネージャーを選んで契約する手法が採られている。後者のほうが人気選手同士のビッグマッチが組みやすいメリットがあるといわれている。 【2】21年ぶり フジテレビがボクシングの試合を生中継するのは、92年11月のWBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ、ヘナロ・エルナンデス vs 渡辺雄二戦以来のこと。渡辺は10戦10勝(10KO)のパーフェクトレコードを持つイケメンボクサーで、同局の大きな期待のもとに王者エルナンデスに挑んだが、6RTKO負けで戴冠は叶わなかった。 【3】重量級ボクサー 長らく日本重量級の第一人者として活躍してきた石田順裕もそのひとり。石田はこの3月に引退を表明したばかりだが、先だって催されたトークショーで村田との対戦希望を明言。村田の持つ抜群の知名度は、去りゆく選手の後ろ髪を引くほど魅力的なのだ。『101%のプライド』(幻冬舎)
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名古屋・栄を拠点に活動する人気アイドルグループの1期生であり、月刊「サイゾー」の連載でもお馴染みだった二次元同好会【編註:同グループのアニメ・マンガ・ゲーム好きのメンバーによって結成された同好会】の初代会長としても活躍しながら、「足の病気の治療に専念したい」として、2011年9月30日に惜しまれつつも卒業した“ゆいみん”こと松下唯。そんな彼女が、卒業から約1年半の時を経て、念願のソロデビューを達成! 5月22日にリリースされるデビューシングル「Shooting Star」(徳間ジャパンコミュニケーションズ)に対する思いや、“ソロ歌手・松下唯”として活動していく今後の展望などについて聞いてきた。
──まずはソロデビューおめでとうございます!
松下唯(以下、松) ありがとうございます! 連載の収録ではお世話になりました。もう2年くらい前になりますかね……?
──そうですね。松下さんが卒業される半年前くらいに収録したので。当時から「ソロ歌手になりたい」という気持ちはあったんですか?
松 実はもともと前のグループに入った時から、「将来的にはソロのアニソン歌手になりたい」と思ってはいたんですよ。ただ、あいりん(古川愛李)も同じくアニソン歌手志望で、取材とかで将来の夢について聞かれた時に「答えが被っちゃうのはマズいかも」と思ったら、なかなか言い出せなくて……。
──え? 古川さんは2期生ですよね? 後輩なんだしそこまで気を遣わなくても……。
松 いえ、気を遣っていたわけじゃないんです。あいりんはグループに入る前にアニソン歌手のオーディションを受けたりしていたし、入った当初から「アニソン歌手になりたいです」とはっきり口にしていて、そこで「私も~!」と被せるのは何か微妙じゃないですか(笑)。でも、ちょいちょい小出しにはしていたんですよ。「平野綾さんみたいになりたいです」とか言ってみたり。
──平野綾さんが目標ということは、ゆくゆくは声優業にも進出を?
松 声優さんのお仕事もできたらいいなって思います。ただ、やっぱり一番の夢はアニソン歌手として活躍できるようになることで、平野綾さんに関しても声優よりアニソン歌手として目標にさせていただいているんですよ。あと、アニメ『Fate/Zero』(TOKYO MXほか)の主題歌などを歌われているLiSAさんも大好きで、あんな風にかっこいい曲調のアニソンが歌いこなせるようになりたくて。その思いをレコード会社のスタッフさんたちにお伝えして、作っていただいたのが「Shooting Star」なんです。
──確かに「Shooting Star」は王道のアニソンサウンドで、いかにもアニメの主題歌に起用されていそうな感じですよね。拝聴して改めて思ったんですが、松下さんって見た目は物すごく華奢で、声も普段は可愛らしい感じなのに、歌声は太くてかっこいい。そのギャップが素敵です。
松 ありがとうございます。グループにいた頃から歌うとビックリされることが多くて、「Innocence」という曲でソロパートを歌った時も、メンバーやファンの方から「え、ゆいみんってこんな声出るの!?」って(笑)。私の普段のイメージでいうと、3曲目に収録されている「LOVE MONSTER」が一番近いかもしれないです。すごくポップな曲調なんですけど、レコーディングではキャラソン【編註:声優が演じているキャラクターに扮して歌っている曲】を意識して、もうノリノリで歌わせていただいたので。
──「LOVE MONSTER」は歌詞も松下さんっぽいな……と思ったら、作詞をされているんですね。どうりで!
松 そうなんですよ! あらかじめ「おてんば娘みたいなイメージで」という設定をいただいてはいたんですけど、今まで作詞なんてしたことがなかったので、最初にマネージャーさんから「書いてみて」と言われた時は、「いやいや無理ですよ、ド素人ですよ!」って抵抗しちゃいました(笑)。それで始めてみたら、やっぱり難しくて。音とフレーズをきっちり合わせなきゃならないし、その中で伝えたいことを表現するには、どんな言い回しとか言葉を選んだらいいんだろうとか……ほんとに試行錯誤しながら書きましたね。でも、結果的にスタッフさんたちから「面白い!」とか「ライブで盛り上がりそうだね」と言っていただける曲に仕上がったので、頑張って良かったなと思います。
──こうして松下さんがひとりの歌手としてスタートを切れたことは、今もグループに現在も在籍しているメンバーの皆さんにとっても、すごく励みになりそうですね。
松 そんな存在になれていたとしたら、とても嬉しいです。実は卒業してから、メンバーとはなんとなく連絡を取らなくなっちゃって、疎遠になっていた時期もあったんですけど、最近またLINEを通じて頻繁にやり取りするようになって。ソロデビューが発表になった時は、(松井)玲奈とか(斉藤)真木子とか、たくさんのメンバーが「おめでとう」とメッセージをくれたんです。(大矢)真那からも「私は唯ちゃんの歌がすごく好きだから、ソロデビューが決まって嬉しい!」とメールが届いたりして、私のほうこそ励みになりました。
──まさに“持つべきものは友”ですね。では、最後に、今後の展望について教えてください。
松 まずはアニメのタイアップ曲を歌えるようになること。そして、一人前のアニソン歌手として認めていただけるようになったら、アニメロサマーライブ【編註:毎年夏に開催される世界最大級のアニソンライブイベント】の舞台に立ちたい──。今の私からしたら、大き過ぎる夢かもしれませんけど、「夢はでっかく!」と思って(笑)。実現できるように頑張ります!
(構成/アボンヌ安田)
■松下唯(まつした・ゆい)
1988年、福岡県生まれ。2008年に、名古屋発の人気アイドルグループの1期生メンバーとしてデビュー。怪我をした足の治療に専念するため、11年に同グループを卒業。12年より、活動を再開した。
オフィシャルブログ『Yui♡Love』(