
ドラマ24『みんな!エスパーだよ!』(テレビ東京)
「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。
夏帆が大変なことになっている。パンチラや喘ぎ顔を晒し、おっぱいを揉まれ、「オナニー」やら「ヤリマン」などと口にする。
『みんな!エスパーだよ!』は、テレビ東京の金曜深夜枠「ドラマ24」で放送されているドラマである。若杉公徳の同名漫画が原作で、映画監督である園子温や入江悠らがメガホンをとっていることでも話題だ。物語は「なんの才能もなく、特に目立つこともなく、好きな子がいてもほとんど話せず過ごしてきた」東三河のボンクラ高校生・嘉郎(染谷将太)が突然、「他人の心が読める」超能力テレパシーに目覚めたところから始まる。「この力を使えば未解決事件の解決とか、世界で起きとるテロや戦争を未然に防ぐこともできるダニ!」「僕は僕の人生の主人公になれるんだ!」と息巻く嘉郎は、やがてこの町にほかにも同じ能力者がいることを知る。しかし、そのエスパーたちは、ことごとくその能力を自分の欲望、すなわちエロのために使うのだった―――。
と、そんなストーリーはどうでもいいとばかりに、ドラマ全編がチープでバカなエロで包まれている。主人公の嘉郎はすぐに勃起するし、ヒロインのひとりで夏帆が演じる嘉郎の幼なじみのヤンキー美由紀は、前述のとおりパンツ丸出しだ。そしてもうひとりのヒロインは、東京から転校してきたばかりの浅見紗英(真野恵里菜)。清楚な外見とは裏腹に、ひとたび嘉郎が心を読むと「絶対あたしでオナニーしてるよな」「シロウト童貞臭え」などと吐き捨てる。そして入浴中に悶えたりまでしている。“清純派”とも言われる夏帆と真野の2人が、一皮も二皮も剥けて、文字どおり体当たりでエロシーンを演じているのだ。
喫茶「シーホース」のマスターで嘉郎を幼い頃から知る輝さんに扮するのは、マキタスポーツ。映画『苦役列車』の演技でブルーリボン賞新人賞を獲ると、瞬く間に名バイプレイヤーの仲間入りを果たした彼の今回の役回りは「エロ本は動かせるけど、新聞は無理。ローションは動かせるけどシャンプーは無理。エロのDVDは動かせるけど映画のDVDは無理」というエロいことにしか使えない念動力を持つ男。浅見から「シロウト童貞臭え」と言われたのが彼である。輝さんは日々、念動力でスカートをめくりパンチラを狙っている。
そしてこの町に超能力者が集まっていることを聞きつけやってきた謎の教授(安田顕)は「19世紀のアメリカ・ミネソタ州でも超能力を発症した者が突如多数現れた。それと同様なことがこの町でも起きている」と解説しながら巨乳助手(神楽坂恵)のおっぱいを揉みまくっている。
このドラマで描かれるのは、すがすがしいほどのエロだ。後には何も残らない。中学生男子あるいは童貞男子たちの妄想をそのまま描いているかのようだ。世界で起こっているテロや戦争、環境破壊のことよりも、今、目の前にあるエロが大事なのだ。
事実、主人公が「この力を使えば未解決事件の解決とか、世界で起きとるテロや戦争を未然に防ぐこともできるダニ!」と宣言したそばから「浅見さん、見とってね! 君にふさわしい男になってみせるでね!」と叫ぶように、その動機は不純。目の前の女に好かれるためだ。
『モヤモヤさまぁ~ず2』や『やりすぎコージー』などテレ東の数々の人気バラエティ番組を手がけている名プロデューサー伊藤隆行は、かつて「エロはチャンネル(テレ東)に与えられた使命」だと語っている。もちろん、それはドラマも同じはずだ。『みんな!エスパーだよ!』はまさに、現在の地上波テレビではテレ東深夜にしかできないドラマだ。
男子は「正義」と「性」に憧れる。ドラマの冒頭には毎回、詩人で劇作家のシラーの言葉が引用されている。
「青春の夢に忠実であれ」
まさにこのドラマは、男子の青春の夢と欲望と妄想を忠実に映像化している。そしてこの妄想劇はエスパーたちの増加と比例するように今後さらに、加速していくだろう。
主題歌を担当する高橋優は「ロックンロールを奏でた人達が唄った Love&Peaceは今どこにありますか?」と歌う。かつてロックンローラーが歌に乗せて叫んだように、現在、映画監督はバカバカしいエロをテレビドラマで描いてLove&Peaceを叫ぶ。超能力ではテロや戦争を防ぐことはできないだろう。けれどエロは世界を救う、かもしれない。いや、間違いなくボンクラな僕らを救ってくれるのだ。
(文=てれびのスキマ <
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