
撮影=名鹿祥史
『相棒』(テレビ朝日系)の米沢守役などでおなじみの、人気個性派俳優・六角精児(50歳)。最近はバラエティ番組への出演も増え、その愛嬌あるルックスと、親近感の湧くトークに癒やされている人も多いことだろう。
そんな一見愛されキャラの彼だが、過去の私生活を覗いてみると、ギャンブル狂い、サラ金地獄、4度の結婚、そして作家・西村賢太の分身ともいえる北町貫多に自身を投影……と、なかなかパンチのある生き様を見せていた。
発売中のエッセイ集『三角でもなく 四角でもなく 六角精児』(講談社)には、赤裸々に綴ってあるということで、著者本人を直撃した。
――著書では、ギャンブルや借金、離婚のことなども、かなりぶっちゃけてますね。
六角精児(以下、六角) こういうダメな人間だってなんとか生きてるぞ、ってことを知っていただけたらうれしいですね。ダメな人間だって、生きる資格がないわけじゃないですから。まあ、そんなに大したことが書いてあるわけじゃないですが、お金をドブに捨てる気持ちで買っていただけたらと。
――いや、結構大したことが書いてありましたよ(笑)。これを読んだ方の中には、六角さんのイメージが変わったという声もあると思うのですが。「人からよく見られたい」「かっこつけたい」というような気持ちは薄いほうですか?
六角 薄いというか、ないですね。「こうなりたい」と思ってもなれないのが常ですから、人をうらやむ気持ちもないです。普通の自分を出して、どう思っていただけるかだけで十分だなって思います。
――あくまでも自然体なんですね。3年ほど前まで、6畳のネズミが出るような部屋に暮らしていたと著書に書かれてましたが、テレビで人気者の自分と、私生活の差に戸惑ったりはしませんでしたか?
六角 特になんとも思いませんでしたね。その頃は、飲み屋の兄ちゃんと共同生活してまして。僕の部屋は、掃除をしていなかったのでペットボトルが積み上がってましたね。ちなみに隣は、飲み屋の兄ちゃんの部屋でした。

――他人と比べたりしないんですね。
六角 比べないですね。ほかの人はほかの人だし、自分のことって自分でもよく分からないじゃないですか?「自分のここがよくないな」って思うところが、案外、人から見たら魅力的だったりすることもありますし。
――著書の中で、西村賢太さんの私小説の主人公・北町貫多にご自分を投影しているあたりは、思わず笑ってしまいました。
六角 いや~、北町貫多は人間らしいですよ。人間って、ああいうことでしょう!
――貫多は、家賃は滞納するわ、卑屈だわ、人を裏切るわ、かなり強烈なキャラクターですが(笑)。
六角 もちろん貫多と僕は違うところもあるとは思うんですけど、ダメさ加減は似てるなって思うんです。初めて読んだ時に「分かる、分かる♪」って。
――貫多に共鳴してしまうとは(笑)。ところで、雑誌などのインタビューで、よく「なぜそんなにモテるんですか?」という質問を受けてますよね。
六角 多いですね。結婚・離婚を繰り返してるから、そう思われるのかなあ。自分ではまったくモテると思ってないですし、自信もないです。
――それでも、4回もご結婚されているわけですが。
六角 僕みたいにダメなヤツを「私が救ってやらなきゃ」と思う女性って、結構いらっしゃるんですよね。それに女性って、結婚すると男性が変わると思っていらっしゃる方が多いんですよ。
――男性は女性で変われないものですか?
六角 変われる人は、きっと“不自然体”でいることに慣れてる方だと思うんです。例えばちゃんとした会社勤めの方とかは、普段から大概、不自然体でいると思うんですよね。ですが僕の場合、ずーっと自然体なものですから(笑)。
――でも、現在はギャンブル漬けから抜け出されたんですよね。
六角 借金がなくなって一度ギャンブルから離れたことで、見え方が変わってきたんです。今でもたまにパチンコ・パチスロをやりますけど、前みたいに「絶対に勝ってやる」とは思いませんから。

――独身よりも、結婚を選んできた理由はなんでしょうか?
六角 実は、最初から自分で望んでした結婚って、そんなにないんですよ。10年くらい付き合って、ある時、彼女の実家に連れていかれて、お父さんに「じゃあ結婚するのか!」って言われて、「は、はい」って言ったりとかですね。仕事上の理由で「けじめが欲しい」と言われたり。あるいは子どもができたり。結婚しろと言われた時に、それを拒む理由もなかったので。
――でも結婚すると、責任が増えますよね。男性は特に。
六角 そうなんですよ。それに気付いたのは、随分、後のことでございまして……。
――離婚の原因は、なんだったんですか?
六角 やっぱり僕の経済力のなさと、不誠実さですね。30代の頃も仕事がなかったわけじゃないんですけど、収入をほとんどギャンブルに使ってましたから。最初は個性的な珍獣みたいに思われて結婚したとしても、思い通りにならないわ、どんどん憎たらしくなっていくわで手に負えなくなって、結局、すべて相手の方から離れていきました。どこぞの公園の池に、持て余した飼い主に捨てられるワニみたいなものですよ。
――離婚した時は毎回、落ち込むんですか?
六角 落ち込みますね。「またか……人間としてどうなんだ」って。ただすぐに「あ、でも4度離婚した人、知ってるぞ! あの人、結構ちゃんとした人だし。やっぱ巡り合わせなのかなあ……」とか考えちゃったこともありますけど(笑)。
――現在の奥様とは、1年半前に2度目の結婚をされましたが、離婚へのおびえみたいなものはありますか?
六角 ないですね。お互いに何がダメで別れたか分かってますから。そこを自分なりに努力しようと思ってます。
――そんな紆余曲折を経た六角さんですが、劇団扉座(旧「善人会議」)を旗揚げされてから30年以上がたつそうですね。最近の若い劇団員を見て、思うことはありますか?
六角 自分の世界だけを大切にする人が多くて、「つまんないなあ」と感じることはありますね。若い方は、あまり出会いや経験に対して欲がないのかなって。自分の考えって、自分ではいいと思ってても、ちっぽけなものが多かったりするんですよ。もっと良いことも悪いことも経験して、それから取捨選択してほしいですね。
――「いろんな経験」とは、六角さんが言うと説得力がありますね(笑)。
六角 役者で食べていくのは大変です。よっぽどキレイな人だったり、面白い人だったり、頭がいい人じゃないと、まず無理。んで、キレイな人はどこかですでにスカウトされて事務所に入ったりしてますから、劇団に来るってことは、無意識のうちに審査に漏れている可能性が高い。そのハンデを打破するために、若いうちはもっと積極的に無茶をして、何かをつかんでほしいなって思いますね。
(取材・文=林タモツ)
●ろっかく・せいじ
1962年生まれ。82年の劇団「善人会議」(現「扉座」)旗揚げメンバー。テレビ朝日系ドラマ『相棒』シリーズで人気を博し、09年には、同シリーズの映画『鑑識・米沢守の事件簿』で映画初主演。13年4月から放送のTBS系金曜ドラマ『TAKE FIVE』(毎週金曜22時~)、NHK BSプレミアム『真夜中のパン屋さん』(毎週日曜日22時~)にレギュラー出演、NHK Eテレ『SWITCH インタビュー達人達』でナレーションを務める。近年は、自らボーカル・ギターを担当する「六角精児バンド」でのライブや、エッセイ執筆(『三角でもなく 四角でもなく 六角精児』講談社刊)を行うなど活動の幅を広げている。